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●『自民党の終焉』読了(1/4)

2010年04月18日 02時32分04秒 | Weblog

自民党の終焉 ~民主党が政権をとる日~、4月に読了。森田実。角川SSC新書。2007年10月刊(第1刷)。

 参院選後の2007年9月時点での素晴らしい洞察力。小沢氏を過大に評価しているように思われるが、その後の衆院選と自民党の崩壊を見事に予測。小泉竹中 新自由主義構造改革路線の明確な否定と反戦の確かな視点を感じました。
 目次は以下の通り。
まえがき
第 1章 日本政治激動の予兆 ――政権交代の条件が整った
第 2章 「自公」から「自公VS民主」時代へ ――「二大政党制への道が開いた」
第 3章 否定された小泉構造改革路線
第 4章 小泉政治の〝興隆〟と〝破綻〟を振り返る
第 5章 小沢と安倍、どちらの訴えが国民に届いたのか
第 6章 与野党の財源論争を検証する!
第 7章 民主党・国民新党の共闘で小泉構造改革路線に決別を!
第 8章 外交なき国の外交論争 ――従米国家からの脱却
第 9章 政治をここまでダメにした世襲議員たち ――自民党長期政権の弊害
第10章 民主主義を忘れた自公時代錯誤内閣に起死回生の妙薬はない!
第11章 自公支配から脱却した参議院が本来の使命を取り戻す
第12章 民主党政権の可能性はホンモノか?
第13章 命運尽きたり! 自公連立政権
第14章 小沢民主党の「中道保守主義」を解き明かす
第15章 憲法第9条改正をめぐる政治情勢の変化
第16章 従軍慰安婦発言で歴史認識の甘さを露呈した安倍前首相
第17章 「民主党の政権を任せられるのか?」を検証す
おわりに ――2007年8月15日、戦後62年を振り返りつつ、いまを考える

 
「・・・カーティス教授は・・・。/≪第一に、有権者は、指導者としての安倍晋三首相に「NO」と言った。≫/≪第二に、有権者は、安倍首相の政策アジェンダ(課題)の優先順位に「NO」と言った。国民が関心を抱いているのは、医療問題、年金制度の健全さ、公立学校教育の向上、所得と地域間の格差である。だが、安倍首相が優先させるのは、戦後レジームの脱却、愛国教育、憲法改正、そして美しい国づくりだ。・・・国民に一番身近な課題に具体策を示さないばかりか、大きな関心さえ示さなかったことへの「NO」であった。≫/・・・/7月29日の参議院議員選挙において有権者は安倍政権を不信任したのである。不信任された首相が・・・具体的な反省点を示さないまま首相の座に固執しつづける姿は異常であった」(pp.15-16)。
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●『自民党の終焉』読了(2/4)

2010年04月18日 02時29分58秒 | Weblog

森田実、『自民党の終焉 ~民主党が政権をとる日~

 小泉政権による生活の破壊。彼らの唱える「痛み」は弱者のみへ。「小泉構造改革が推進した市場原理を最大限尊重する政策、自由競争主義、過度の規制緩和政策により、強者はますます強くなる半面、弱者は切り捨てられた。労働法制は経営者と株主(資本家)優位に変更された。正規雇用者は減らされた。かわって低賃金の派遣社員とフリーターが増加した。ワーキングプア(働いても働いても食えない層)が増大した。/小泉構造改革はごく少数の強者に利益をもたらした半面、大多数の国民を貧困化させた。小泉構造改革によって日本の総中流社会は解体され、格差と差別を一層拡大する社会構造に改変された。少数の強者・富者はますます強く、豊かになる半面で、大多数の国民は富も生活の安定も失った。そして、ついに希望すらも奪われた。」(p.31)。
 小泉政治のデタラメさ。「・・・「改革や成長の名のもとに強者だけが生き残り、弱者と地方が切り捨てられる」政治(これこそが小泉政治)を厳しく批判した。/小泉元首相は、5年5カ月間「自由競争と自己責任」の生き方を国民に向かって繰り返し説いた。・・・「自己責任」とは、自己責任では生きることができなくなった弱者に向かって、「どんなみじめな状況になろうと、政府を頼りにするな」というに等しい冷酷な響きを持った言葉だった。/自称「負け組」の一人は、「・・・私には自殺しろと言われているように思える」と語っていた。まことに小泉元首相の政治は冷酷な非人道的政治だったのである。安倍前首相はこの小泉政治の最大の協力者だった。安倍氏は首相としてこの小泉政治を継承した」(p.37)。「5年5カ月の小泉政治によって、日本社会は荒廃した。貧困になった。地域社会は荒れ果てた。再建するには、小泉政治が破壊した期間の2倍の時間が必要であろう。/小泉政権という一種の「化け物内閣」を作った代償は深刻である。小泉政権づくりに加担した政治家、官僚、財界、マスコミ、学界、宗教団体指導者は、責任を取らねばならない」(p.42)。

 石川真澄さんの造語。戦後日本の保守と革新の比率について「1と2分の1体制」。

 小泉政権の「詐欺的政治」、それを支持するマスコミの大罪。「小泉政権は、特にマスコミを全面的に影響下におくことに成功した。日本マスコミは政治権力と癒着し、権力の一部と化した。マスコミは連日、小泉首相と小泉構造改革を称賛した。・・・「不偏不党」の原則をかなぐり捨てて、報道から小泉批判者を一掃し、小泉首相を稀代の英雄に仕立てるための報道を行った。/・・・マスコミファシズムというべきものだった。・・・権力一体化したマスコミの暴走ほどおそろしいものはない」(p.44)。
 「第 4章 小泉政治の〝興隆〟と〝破綻〟を振り返る」は小泉政治に対するまことに的確な批判となっていて、この章だけでも一読の価値がある。

 農業の破壊。「・・・スターリンによるコルホーズ(農業集団化)にたとえられるような非人道的政策であると私にはみえる。日本政府は21世紀の今日、このような非人道的農業政策をとろうとしているのである。/・・・日本農業のなんたるかを知らない愚劣な輩である」(p.63)。

 「2001年に小泉政権が登場して以来、政府は一貫して緊縮財政をつづけてきた。この財政政策で、国の借金は減らなかった。逆に増大した。失敗したのである。/・・・怠慢の謗りを免れることはできない。/・・・財政再建のためには、多くの犠牲をも辞さないとの態度をもって取り組んできた。だが、結果はどうか。財政状況は2001年度よりもさらに悪化している。・・・国民を犠牲にし、大多数の国民を貧困化したが、財政赤字を増やしてしまったのだ。/・・・小泉・安倍政権の財政再建が失敗したということである。しかも尋常な失敗ではない大失敗したのだ。・・・/政府、財務省は、何もしていない。明らかな失敗すらも認めていない。検討すらもしようとしていない。あまりにも鈍感であり、無責任である。猛者を求める。/・・・財政はさらに悪化し、国民生活は貧困化し、大多数の中小零細企業の経営の危機はさらに深刻化した。/国民生活を破壊して、財政だけが健全化するなどということはありうることではない。森全体を枯らして、財政という一本の木だけを成長させるなどということはできることではないのだ。小泉政権と財務省は信じられないほどの大きな過ちを犯した」(pp.70-73)。

 「民主党は小泉批判を徹底すべきである」。「・・・数え上げればきりがないほどの国民生活の劣悪化・悲惨化は、小泉構造改革という政府の暴挙、暴走によって生み出されたものである。・・・/・・・小泉首相を支える役割をはたしたのが、民主党内の構造改革派だった。/小泉首相は民主党内の構造改革はを徹底的に利用して自民党内の抵抗勢力を孤立化させることに成功し、郵政民営化解散・総選挙の際に、抵抗勢力を追放した。このあと、小泉首相にとって役割を終えた民主党内の構造改革派使い捨てられた。民主党内の構造改革派は小泉首相によって弄ばれた上で切られたのである。・・・民主党・・・。愚かものにつける薬はないのかもしれない。/・・・民主党内の構造改革派の中にはブッシュ米大統領の戦争と弱肉強食主義政治の支持者が少なくない。安倍首相のタカ派的政治路線の共鳴者もいる。これら民主党内のブッシュ・小泉・安倍政治の同調者は、小沢体制成立後、分裂策動を繰り返してきた。民主党全体が反小泉路線をとることにブレーキをかけ続けてきた。/・・・民主党以上に、明確に徹底的に小泉構造改革を批判した政党と政治家がいた。/・・・亀井氏の小泉構造改革に対する激しい怒りが伝わってくる」(pp.74-76)。
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●『自民党の終焉』読了(3/4)

2010年04月18日 02時28分02秒 | Weblog

森田実、『自民党の終焉 ~民主党が政権をとる日~

 アジアとの関係の悪化。「小泉首相は靖国神社への参拝を繰り返し、中国韓国両国民の神経を逆なでした。小泉首相のやり方は挑発的だった。これに対して小泉首相は、状況をあたかも楽しむがごとく、不真面目な態度をとりつづけた。この結果、日本はアジアで孤立状況に追い込まれた。/・・・日本のマスコミは支持した。マスコミの驚くべき頽廃である。政府もマスコミも「まとも」な感覚を失っていた」(p.83)。

 傲慢になり、不真面目になった政治家たち。「第1は、・・・謙虚だった。もちろん吉田茂岸信介のように傲慢で権力をふりかざす政治家もいたが、多くの政治家は一般国民に対して謙虚だった。・・・/第2は、ものの見方が変わった。・・・/第3は、人間の社会や人生に対する態度において不真面目な人間が増えてきた。小泉純一郎元首相や麻生太郎元外相に、精神の不真面目さを私は感じている。・・・「強気にゴマをすり、弱きを見捨てる」タイプの軽薄な政治家ばかりが目立つようになった。/第4は、エゴイストの増加である。・・・」(pp.91-93)。

 はぐらかしと秘密主義・隠蔽。「郵政民営化をめぐる国会議論の中で、何人かの議員が「年次改革要望書の存在について小泉首相竹中平蔵郵政担当相に質問したが、二人は質問者をはぐらかし、無関係なことを答弁し、質問に真面目に正面から答えようとしなかった。2人はとぼけつづけたのである。小泉首相と竹中郵政担当相は、郵政民営化が米国政府の長年にわたる強い要求であるという事実を隠し続けた、/・・・大マスコミは小泉政権と一体化していた。マスコミ自信が情報隠しに協力するのは異常である。マスコミは戦時中と同じことをしたのだ。マスコミの自殺行為であった。/国民は、・・・知らないまま、2005年9月の総選挙において、・・・。米国保険業界の日本への進出の狙いがあることも知らないまま、・・・。大多数の国民は郵政民営化の本質を知らないまま郵政民営化に賛成した」(pp.122-123)。

 愚かな政治家。「・・・前原誠司前代表のように、安倍自公連立政権のエピゴーネンで、テレビ局、テレビ番組からおだてられた、・・・安倍自公連立政権を喜ばせた愚かな政治家もいた。だが、前原氏は孤立した。」(p.131)。

 日米関係と自民党の二つの政治路線。「一つは保守中道路線と云うべきもので、外交政策においては国連中心主義をとりつつ米国とも中国、韓国などアジア諸国とも友好関係を維持し、国内政策においては国民生活を重視し、・・・。・・・石橋湛山、池田隼人、田中角栄三木武夫、大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一、・・・細川護煕、村山富市らであった。/もう一つは、・・・従米路線である。・・・岸信介中曽根康弘小泉純一郎であった。安倍晋三もこの路線の政治家である。/・・・両者の中間路線である。・・・佐藤栄作、福田赳夫、海部俊樹、橋本龍太郎らであった」(pp.134-135)。
 ミルトン・フリードマン学派と宗教政治。「小泉・安倍政治は「アメリカのブッシュ主義」という一種のイデオロギーを重視する政治である。小泉構造改革の経済理論は新古典主義であり、フリードマン理論・・・であった。・・・。/小泉・安倍両政権が忠誠をつくしたブッシュ米国大統領が行ってきた政治は本質的には宗教政治であった。ブッシュ政権は、大統領が信ずるキリスト教原理主義の理念に従ってというより、神の予言を聞いたように感じてアフガン戦争イラク戦争を行った。・・・米国のフリードマンに引き継がれてきた特殊な経済理論である。・・・というより強者のためのイデオロギーとでもいってよいものである。/・・・アメリカ政府崇拝イデオロギーに基づく政治だった。安倍政治は初めに憲法改正ありきであり、また、教育基本法改正ありきであった。これも右翼主義に立つ一種のイデオロギー政治である」(pp.145-146)。
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●『自民党の終焉』読了(4/4)

2010年04月18日 02時25分10秒 | Weblog


森田実、『自民党の終焉 ~民主党が政権をとる日~

 保守主義とは何か。中島岳志氏(p.149)。

 憲法改正への右傾化。「憲法改正を自民党が強く宣伝し始めたのは中曽根康弘氏が首相に就任した1982年以降である。・・・。/・・・右翼的マスコミであった。・・・憲法改正を報道機関としての方針とする新聞社まで現れ、護憲を非難し、改憲を煽るようになった。・・・。/・・・小泉首相は・・・あたかも中国韓国を挑発するかのように行動した。・・・北朝鮮政権と対立が激化する中で、日本国民は右傾化し、世論は憲法改正論とくに第9条改正論に傾いた。」(pp.156-157)。とんでもなく危険な時代。ホニャララ党(ⓒきっこ氏)の矛盾(p.160)。

 「歴史認識が甘すぎる安倍前首相の発言が招いた危機」(pp.165-167)。「歴史を見直そうとする一部の右翼思想家たちの活動に政治家は加わるべきではない。・・・思い上がりである。・・・愚か過ぎいるほど愚かで軽率な行為だった。・・・。/・・・河野談話を否定する運動が起きた。・・・安倍晋三氏はこの運動の中心にいた。/「従軍慰安婦は歴史的事実に反する」という者がいたら、その人は戦争のことをほとんど知らない人である。そうでなければ異常な人である。・・・無神経な話はとうていできないであろう。具体的な政府文書があるかないかは、どうでもよい問題である」。
 
歴史認識について、「たとえば安倍応援団の一つとみられている読売新聞は、・・・。・・・まことに愚かである。過ちを重ねている」(p.170)。

 森田実さんの「敗戦で決意した不戦への思い」(pp.186-187)。「・・・。/これが私のこの62年間の思想と行動の原点である。・・・戦争は絶対にしてはいけない政府に戦争をさせてはいけない。国民を不幸にするような政治は変えなくてはいけない。すべての母親に悲しい思いをさせてはならない、政治は国民を幸せにするためにある――この思いを胸にこの62年間生きてきた」。『害悪老人』や『老害人』、『迷惑千万の老害政党』と何という違いか!!


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