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●『日本の公安警察』読了(1/2)

2010年04月24日 07時07分05秒 | Weblog

日本の公安警察』、4月に読了。青木理著。講談社現代新書。2000年1月刊(2004年10月、八版)。

 「1章 厚いベールの内側」、「2章 特高から公安へ」、「3章 監視・尾行から工作まで」、「4章 公安秘密部隊」、「5章 戦後の公安事件簿」、「6章 オウム・革マル派との〝戦い〟」、「7章 警察の外にある公安」、「8章 監視社会と公安警察」。

 
オウム真理教事件でも使われた手口。「公安警察内で「転び公妨」と呼ばれる手法がある。・・・/日本国内に潜入していた日本赤軍メンバー、丸岡修が・・・逮捕されたのは・・・、典型的な「転び公妨」だった」(p.34)。

 GHQの策略・謀略。「一九四九年は、いわゆる公安事件が続発した年だった。下山事件(七月五日)、三鷹事件(七月一五日)、松川事件(八月一七日)・・・・・・。いずれをとっても謀略の色が濃く、・・・「キャノン機関」が実行に関わったと指摘されるなど、今も多くが謎に包まれている事件ばかりだ」(p.52)。
 「A級戦犯として公職追放されていた岸信介らが追放解除されたのは、一九五一年八月六日のことだった」(p.56)。

 「一方、安保闘争の高揚に〝呼応〟する形で右翼によるテロ事件も続発する。/一九六〇年一〇月一二日、・・・浅沼社会党委員長が聴衆の面前で一七歳の右翼少年に刺殺された。・・・さらには六一年二月一日、雑誌「中央公論」に掲載された深沢七郎の小説「風流夢譚」が、皇室を侮辱した内容であるとして中央公論社長の家に押し入り、お手伝いを殺害し嶋中夫人にも重傷を負わせた、いわゆる「風流夢譚」事件が起きる」(p.68)。

 奇々怪々な「菅生(すごう)事件」という謀略とその後の無茶苦茶な経緯、〝爆弾犯の異常な出世(pp.108-116)。「・・・当時国家地方警察大分県本部に所属する公安警察官だった。・・・事件は一転して、公安警察による謀略事件だった疑いが浮上した。/・・・〝オトリ捜査〟・・・。/・・・共産党員らに有罪を言い渡した原判決を破棄し、全員無罪の判決を下した。/寒村で突如として起きた「共産党員による駐在所爆破事件」は、地元の共産党周辺へと投入された公安警察官らによる謀略事件だったのである。/・・・大分地裁は戸高を爆発物取締罰則違反で起訴し、その後福岡高裁も戸高の有罪を認定したが、結局は「爆発物に関する情報を警察の上司に報告したことが自首にあたる」として刑を免除される。驚くべきはこの後の戸高に対する処遇だった。警察庁は有罪判決からわずか三カ月後、警部補として復職を認めたのである。/・・・/復職後の戸高は警察大学校教授、警察庁装備・人事課長補佐などを歴任して警視の地位まで昇任。八五年、警察大学校術科教養部長を最後に退官したノンキャリアの公安警察官としては異例の出世だった。/・・・「パチンコ疑惑」・・・参院予算委員会で、再び「戸高・・・」の名前が物議を醸す。・・・警察OBが占める「たいよう共済」の常務に問題人物が就任・・・。戸高・・・のことだった。・・・こんなところにも顔を出している。・・・菅生事件の〝亡霊〟は事件から四〇年以上を経ても警察組織の中枢でひっそりと息づいていた。そしてプリベイドカードは、今も巨大な警察利権の一つとして指摘されている」。斎藤茂男(p.112)。

 盗聴。「中野の警察大学校に本拠を置く「サクラ」部隊は、そんな秘密工作活動を発足以来三〇年以上にわたって延々と、そして水面下で続けてきた。だが一九八六年、組織に大きな転機が訪れる。共産党の緒方国際部長宅盗聴事件の発覚である。/・・・/緒方側の申し出を受け、NTT職員は現場を所轄する警視庁町田署に事実関係を通報した。しかし、到着した町田署員は緒方側から事情を聴くと近所で長時間の電話をし、緒方らに対して「警察は静観する」と言ったきり捜査に乗り出すことを拒否。NTT側が一一月二八日、同署に告発したにもかかわらず、これを受け取らず、翌二九日になってようやく受理した。/ところが一二月一日になると突如として実況見分を実施し、大量の〝証拠品〟を持ち帰ってしまう。極めて不透明な形で行われた見分は証拠隠滅すらうかがわせるものだった」(pp.126-133)。当時の検察総長伊藤榮樹氏のたとえ話・おとぎ話。損害賠償請求訴訟では賠償が命じられ、高裁でも勝訴、国側の上告断念で判決は確定。

 「過去の「サクラ」あるいは「チヨダ」のキャップ=裏理事官・・・。裏理事官に就任するのはすべてがキャリアの警察官僚である。・・・/最近で最も著名な裏理事官経験者は衆院議員の亀井静香だろう」(p.143)。
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●『日本の公安警察』読了(2/2)

2010年04月24日 07時03分43秒 | Weblog

青木理著、日本の公安警察

 寺澤有さんのこと? 「最近では捜査情報の漏えいをめぐり、情報源を突き止めるため、監察チームがあるジャーナリストを追尾していたところ、発覚してもめ事になる騒ぎもあった。ある公安警察官によれば「昔なら信じられない失敗。質の落ちた稚拙な追尾が原因」という」(p.147)。

 自民党との癒着。「・・・警察に強い影響力を持つ代議士の剛腕ぶりと警察情報が無縁であるとは思えない。/・・・公安警察の本旨が「体制の擁護者」である以上、・・・。/・・・/「情報は、大物政治家や警察OBの代議士に流れているというのが、仲間内での公然の秘密であった。元来、秘密のベールに包まれているはずの『第四係』の懇親会終了後に自民党選出の国会議員が顔を見せるというのも、警察と自民党との癒着を物語るものであろう」・・・」(p.148)。

 右翼と公安警察の「親しげな様子」(pp.150-161)。児玉誉士夫(p.150)。「・・・警察の警備の不足を右翼によって補おうとした首相・岸信介が・・・を通じて児玉に働きかけ、児玉は警察当局と打ち合わせて計画を練ったとも言われる」。鈴木邦男さん(p.151、152)。「「反共」ゆえに「親米」に転化し、自民党政府や財界と密接な関係を有していた既存右翼に対し、「反米」を鮮明に登場したのが新右翼だった」(p.154)。
 朝日新聞社襲撃事件での小尻知博記者殺害(pp.155-156)。

 〝教本〟表紙の写真(p.149)。「企業連続爆破事件の犯行前に東アジア反日武装戦線〈狼〉が発行した「・・・教本」の『腹腹時計』」(p.149、171)。
 日本赤軍の重信房子さん(p.167)。東アジア反日武装戦線〈狼〉〈大地の牙〉〈さそり〉(p.169)。「大道寺将司、あや子、佐々木規夫ら〈狼〉グループ」。松下竜一さん『狼煙を見よ』(p.171)。

 微罪・別件の乱発。「・・・公安警察は全国でオウム殲滅戦・・・。/・・・ありとあらゆる手法が駆使されて片っ端から逮捕された。公務執行妨害はもちろん、カッターナイフを所持していれば銃刀法違反、ビラをまきにマンション敷地内に入れば建造物侵入、駐車違反や車検切れなど極めてまれな逮捕も続いた。・・・大半が微罪だった」(p.179)。

 監視社会Nシステムに出会うたびに不快。エンジニアの移動を〝監視〟する会社について、「・・・形容しがたい不快感がわき上がってきた。いくら効率的だろうと、一日の自分の移動状況がすべて監視されているなどというのは尋常なことではない。/テクノロジーの発達と裏腹に制限されるプライバシー。・・・公安警察が縦横無尽に駆使し始めたらどうなるか。そんな不吉な予感もわき上がる」(p.241)。
 「「自動車ナンバー自動読み取りシステム」。通称「Nシステム」。・・・/・・・データは警察庁をはじめとする警察組織のどこからでも検索可能で、調べようと思えば目的や時期を問わず、誰が所有する車両であろうと、その移動状況を容易に把握できるということになる。/・・・九七年末段階で幹線道路を中心に約四〇〇カ所・・・。市民団体などの調査によると・・・全国で566ヵ所に設置され、今も毎年約五〇台ものペースで増え続けているという。費用は一台で約一億円!!(pp.241-244)。これこそ事業仕分けすべきでしょうに。「・・・これほど巨大な監視のシステムを警察に与えてしまうのは絶対に好ましくない。・・・/・・・必要と思われる場面で後手に回りつづけ、硬直化した作業に膨大な人員と金をつぎ込んできた公安警察の生態を考えればそれはあながち杞憂とは言えまい。/・・・最近のNシステムは、本州の日本海側や沖縄、あるいは自衛隊の演習地近くなど、犯罪捜査の有益性よりも公安警察的発想による新設が急増しているというのだ」(p.246)。

 国民総背番号制の〝実験〟が島根県出雲市で既に実施(p.251)。

 参考文献として斎藤貴男『プライベートクライシス』(p.262)。
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