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●『首都圏生きもの記』読了(1/2)

2010年04月25日 04時48分47秒 | Weblog

『首都圏生きもの記』、4月に読了。森達也著。学研新書。2010年3月刊(第1刷)。

 帯より、

「都会は人間だけのものじゃない!/都会は人間が暮らすエリアだ。
 
でもこの環境に適応して暮らす生きものはたくさんいる。
 
プラナリア、クワガタ、ナナフシ!? 彼らを見ればいろいろなことが見えてくる。
 
首都圏に生息する生きものたちを、独自の視点で語る!」

 ちょっと驚くような知識の披露が随所に。それに加えて、「オウムドキュメンタリー放送禁止歌動物実験下山事件、それに最近では死刑問題などをテーマにしてきた印象があるためか、テレビ・ディレクター時代には硬派でジャーナリスティックな問題ばかりを扱ってきたのでしょうね、などと時おり言われる」(p.233)森さん独自の視点でのコメントが。

 『カッターでプラナリアを三等分!』。「・・・資本主義はダーウィニズム市場原理とは切り離せない。競争があるからこそ商品の性能は向上するし、価格も下がる。これが行き過ぎると弱者切り捨ての新自由経済になってしまうけど、・・・」(p.22)。「だって切断面の細胞は、どの方向の身体が欠損したかを認識していることになる。・・・/・・・ヘッジホッグ・・・」(p.32)。

 『身を挺して水を浄化するイトミミズ』。「・・・溶存酸素・・・。/・・・指標生物という。これに選定される条件としては、生育できる環境が極めて限定的であることだ。/河川などの水質階級マップ・・・強腐水性水域・・・」(pp.54-55)。

 『がんばれ皇居の外来種』。「・・・網に掛かった魚三千四百匹のうち、三千三百五十六匹をブルーギルとブラックバスが占めた。つまり九十八パーセントが外来種。・・・同じような状況の湖沼は日本中にある」(pp.66-67)。「・・・今生天皇は、「桓武天皇の生母が百済の武寧(ぶねい)王の子孫であると『続日本紀』に記されていることに、韓国との所縁(ゆかり)を感じています」と記者会見で公式に発言した。/・・・声を潜めて「タブーらしいよ」などと囁き合っていた天皇家と朝鮮半島との関係について、・・・まさしくカミングアウトした瞬間だ。/でもこの事実を覚えている人はあまりいない。なぜならテレビや新聞は、この発言についてほとんど報道しなかったからだ。/・・・天皇としては、相当に強い決意をした上での発言であるはずだ。これをスルーしてしまう方がよほど不敬じゃないかと思うのだけど。/・・・/あらゆるジャンルでグローバル化は進む。そして交雑する。ハイブリッドが進む。それはこの小さな国の宿命だ。無理に抗うことではない。自然さを回復するために不自然さを選択すべきではない」(pp.68-69)。

 『冬の畑の生きものたちと相転移』。「水をゆっくり冷やしてゆくと、零度を過ぎても液体のまま氷結しないという現象がある。過冷却だ。・・・成虫で越冬する虫たちのほとんどは、この過冷却能力が非常に大きい。彼らの血液には氷核形成物質が少なく(いい換えれば液体の純度が高い)、グリセリンや糖類などの凍害防御物質が多量に含まれているのだという。/・・・微かな物理的な刺激で一気に氷結する。それこそ数秒でみるみる凍るのだ。その逆が突沸。・・・やはり物理的な刺激で一気に沸騰する現象だ。日本の世相のあらわれかたによく似ているメディアによって一気に氷結し、あるいは沸騰する。・・・アザラシのタマちゃんへの善意溢れる熱狂が、・・・白装束集団・・・に対する過剰な危機意識とまったく同じ時期に現れたことは、とても象徴的だ。・・・つまりメディアという温度変化によって、この国は極めて相転移を起こしやすい。でもその自覚はあまりない。まあその自覚があるのなら、これほど安易に相転移を繰り返さないだろうと思うけど」(pp.122-123)。
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●『首都圏生きもの記』読了(2/2)

2010年04月25日 04時46分20秒 | Weblog

森達也著、『首都圏生きもの記』】

 『アヒルはカモ、ガチョウはガン』。「結局のところフセイン政権とアルカイダには関係などまったくなかったし・・・大量破壊兵器も見つからなかった。・・・ブッシュ・・・、この国は国際社会に先駆けて従属した。支援した。・・・。/つまり今のイラクの混迷の責任の一端はこの国にもある。当然ながら米軍の空爆で(あるいはその後のテロで)死んでいった多くのイラク市民に対して、この国は絶対に無関係ではない」(pp.132-133)。

 『史上最悪の苦手な生きもの』。「つまりムカデ・・・。スズメバチなど・・・同様にアナフィラキシー・ショックで重篤な状態になる場合がある」(p.141)。
 『セキュリティー意識の高揚とアシナガバチ』。「・・・アナフィラキシー・ショック・・・。・・・アシナガバチも同様だ」(p.177)。「安倍晋三元首相が「美しい時代」と形容した「三丁目の夕日」の時代の少し前である一九五四年、この国の治安は最悪だった。殺人事件の認知件数は・・・二〇〇九年は・・・。戦後最小だ。ここ十数年は毎年のように戦後最小を更新している。・・・彼らの天下り先を保障しなければならない。治安セキュリティーの業界が冷え込んだら困るのだ。/こうして危機管理意識が上昇するばかりの東京。いいよ。どんどんあがれ。僕は東京には住まないから」(p.173)。

 『首都圏生きもの記韓国篇』。「「ハトを現場に持って行ったらしいよ」/つい先日、旧知の新聞記者はそう言った。/「ハト?」/「そう、伝書バト」/・・・/「戦後だよ。だってメールどころかFAXもないのだから・・・」・・・/中には周囲の動きに同調してしまうハトもいるらしい。つまり「空気を読みすぎる」ハト。だから時おり読売のハトが朝日のハトの動きにつられたり、あるいは毎日のハトが共同通信のハトを誘導してしまったりすることも、少なからずあるようだ。そうなると抜かれる。大事な記事を落とす。だから優秀なハトを育成することは、当時の新聞社にとって死活問題だったという」(pp.148-149)。

 
『ヒキガエルの国へのご招待』。「ヒキガエルを好んで捕食するヤマカガシは、・・・ヒキガエルの毒を体内に貯めて、頸部から分泌される毒として再利用・・・」(p.159)。UMA(p.166)。

 『外国産バイキングに舌鼓のサギ』。「確かに国産のメダカやタニシ、ザリガニなどは、絶滅危惧種かそれに近い状態だ。外来がいないことにはサギたちの生活は成り立たない。何となく食料自給率が極度に低いこの国の人間社会と重複する。かつて・・・彼らのえさは国産のカエルやドジョウやザリガニだったはずだ。でももう国産はほとんどいない」(pp.216-217)。サギが希少種あるいは絶滅危惧種だったらというおとぎ話(p.219)。マスコミや国家のバカ騒ぎ・から騒ぎ。
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