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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

2015-02-09 07:45:05 | 読書
村上春樹 文藝春秋 (2013/4)

図書館に何冊か並んでいたので借用.賞味期限間近をスーパーで買った気分.

主人公 36 歳が大学進学後に,かっての高校時代の仲良し5人組で疎外された問題を追求するために巡礼の旅に出る.残り4人の姓にアカ・アオ・シロ・クロが含まれているのに,多崎という姓には「色彩がない」.ちなみに灰色くんも登場するが,主人公の彼女にはやはり色彩がない.

私事だが,先日高校時代のクラスメートから突然電話がかかってきた.
また,大学の教師になって受け持った最初の学生が今は 30 台半ば.そのせいか,主人公が悪戦苦闘しながら,なにやらもっともらしいことをつぶやくあたりなどに,リアリティを感じた.

ミステリっぽい展開だが,中途半端で放り出す.エンタメ小説は真面目だが純文学はズルいな.その代わり ? 一字一句ちゃんと書いてあるので,読後感は悪くない.
思ったより軽 ~ い小説.

影のトリック

2015-02-07 08:20:11 | お絵かき
二紀 広島巡回展に展示された,二紀会理事長・日本芸術院会員・山本貞画伯の作品「桜咲く日」.
http://www.chugoku-np.co.jp/event/article/article.php?comment_id=290&comment_sub_id=0&category_id=374
緑陰に男の子というテーマの絵が多かったと思うが,今回は華やか.これでは小さくて分からないが,女性たちの表情が興味をひく.

ところで,芝生の上の遊具の影が,向かって左では根元から左へ,右端では根元から右へ落ちている.背後の樹木の影もやはり右に落ちている.
太陽は無限の遠方にあると言って良いから,地面から直立しているものの影は平行になると思う (右端のぶらんこと,そこで遊ぶ子供の影はどうなるのか,難しい).
具象画なのに影たちを,あえて平行でなく放射状にしたところ,それで自然に感じさせるところが,芸術なんだろう.

散文的な話題のタネにしてしまい,申し訳ないです.

ついでながら,文字通り殺風景な話題.このところ影に敏感なのは,イスラム国のこの写真の合成説のせいである.右の絵解き絵は YOMIURI ONLINE に出ていたのだが,今見たらサイトから引っ込められていた.科学警察研究所(科警研)が「合成、加工の痕跡はない」との見解を明らかにしたためらしい.


ラピスラズリ

2015-02-03 08:14:49 | 読書
山尾 悠子,ちくま文庫 (2012/01).

BOOK」データベースより*****
冬のあいだ眠り続ける宿命を持つ“冬眠者”たち。ある冬の日、一人眠りから覚めてしまった少女が出会ったのは、「定め」を忘れたゴーストで―『閑日』/秋、冬眠者の冬の館の棟開きの日。人形を届けにきた荷運びと使用人、冬眠者、ゴーストが絡み合い、引き起こされた騒動の顛末―『竃の秋』/イメージが紡ぐ、冬眠者と人形と、春の目覚めの物語。不世出の幻想小説家が、20年の沈黙を破り発表した連作長篇小説。*****

2003 年に国書刊行会から刊行されたものの文庫化.国書刊行会はカビ臭い本の復刻専門というのがぼく的印象だが,この本もなにやらカビ臭い.と言っても,けなすつもりはなく,平成生まれの小説とは思えない貫禄を,むしろ褒めているつもり.
相性が良かったのだろう.読みやすくはないし,読んでも解らないのだが,最後まで読んでしまった.大風呂敷に包まれる快感だ.
残念ながら,お色気はゼロ.

著者の着想だろうか? 冬眠者は,冬の間眠っているため,成長するのに年数がかかる.そのぶん老化も遅れるという設定がおもしろい.
全5話の構成.第2-3話の舞台は中世のヨーロッパらしく,第1話で示される銅版画の絵解きらしい.第4話の舞台は日本で,最後の第5話「青金石」(ラピスラズリ) にはアッシジの聖フランチェスコが登場する.

解説 千野帽子.

作家の履歴書

2015-02-01 08:45:50 | 読書
サブタイトル「21人の人気作家が語るプロになるための方法」
角川書店 (2014/2).

「小説 野生時代」に連載された,表紙に名前がある 21 人へのインタビュー集.サブタイトルも,また北川次郎による解説も,作家を目指す人を対象にしているが,作家になるつもりなんかなくても面白く読めた.純文学ではなく,エンタメ系の作家が対象である.

本文は各作家一律 5 ページで,写真も載っている.じつは桜庭一樹という人はずっと男性と思っていた.

「志望動機」「転機」「自分を作家にした経験」など,質問もわりに統一されているが,例外もある.「おれ,びびっちゃってさ」椎名誠 のような口調もあれば.「まことに隔世の感がある今日このごろでございます」北村薫 のような口調もある.作家名で五十音順に並んでいるが,小池真理子と藤田宣永を読み比べるのも面白い.
この世界は,とにかく「賞」をもらわないと,どうにもならないらしい.

もっと古い世代だったら戦争体験が履歴を左右したと思うが,ここでは辛うじて森村誠一が,「空襲で焼けた畑のかぼちゃを食べていた.ぽつんと落ちていたのが人間のもげた頭だった」と述べている.小説より強烈...もうどこかで使っているかもしれないが.

図書館で借用.

reading

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