Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

探偵ダゴベルトの功績と冒険

2013-06-13 08:41:08 | 読書
バルドゥイン・グロラー, 垂野 創一郎 訳. 創元推理文庫 (2013/04)

ダゴベルト (蛸帯 ?) という変な固有名詞と,文庫カバーのイラストに惹かれ図書館で借用.我が市の図書館は,失礼ながら,余り売れそうもない ? ミステリの宝庫なのだ.

探偵ダゴベルトもの が書かれたのは1910代で,シャーロック・ホームズより後発だが,著者グロラーはコナン・ドイルより早く亡くなってしまった.
この本はダゴベルトが登場する 18 タイトルの半分を収めているとのことで,シリーズの傾向を知るには十分.でも乱歩が気に入ったらしい「奇妙な跡」など,残っているのも面白そう.

本書の惹句にはダゴベルトは高等遊民とされているが,確かにこの探偵は上級社会の一員であって上級社会のために (あるいは自己満足のために,無償で) 働く.多くの場合,探偵の「功績」は貴族のスキャンダルのもみ消し.この時代のウィーンならではの小説だろう.

ダゴベルトが友人夫妻 (と言っても,彼の目的は もと女優の奥さんのほう) に語るというスタイルで,訳者はシェラザードになぞらえている,この奥さんと探偵の機智に富んだ会話が面白い.また,訳者は探偵が,インターネットでググるようにデータベースを活用することにも注意を促している.このような訳者による うがった解説も読み逃せない.

ミステリを期待すると外れるかも.しかしミステリであることを忘れて,十分楽しんだ.

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