Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

首ざむらい

2024-05-09 08:43:11 | 読書
由原 (よしはら) かのん「首ざむらい 世にも快奇な江戸物語」文藝春秋 (2022/11)
左が「首侍」として雑誌・オール讀物に発表されたときの伊野孝行による挿画,右が単行本カバー.こうなるか !

出版社の CM*****
第99回オール讀物新人賞受賞作
ニヤリ、クスリ、ホロリ 選考委員も癒された、新・癒し系時代奇譚
叔父を訪ねて大坂へ向かった男の道ずれは、首だけのサムライだった⁉(受賞作「首ざむらい」)
とある若侍が死体で発見された。下手人は河童らしく……。(書下ろし「よもぎの心」)
現代人の疲れた心と疲れた身体に、ただただ楽しく、チャーミング(&時々すっとぼけ)な時代小説をご用意しました!
*****

著者はお蕎麦屋さん.50 台から客足が途切れた午後3時からの2時間を執筆に使うようになり (昼と晩は蕎麦屋のおばちゃん、おやつは物書き が自己紹介) ,本書が還暦をすぎてからの処女出版.表題作以下4中編を所収.
サブタイトルに「快奇な」とあるが,100% 快ではない.上記 CM に「ただただ楽しく」とあるのも違う.「癒し系」も疑問.

「よもぎの心」はホモと自殺を扱った救いのない作品.
最後の「ねこまた」はハッピーエンド.たいていの作品で主人公は武士の出でそれを意識しているが,落ちぶれている.父・母に曰くがあるという設定が共通している.
「首ざむらい」の首だけの侍はヤンチャな十代,この首を拾った挙句兄弟のように仲良くなってしまうのは 20 才という設定で,この小説はふたりの成長物語とも言える.「孤蝶の夢」もまた もうひとつの主人公の成長物語.こちらはふたつの作品を加筆訂正の上,ひとつにまとめたとある.もとの2作品では孤蝶の正体はどうだったんだろう.

どれも手練れの作という感じからは遠いが,著者の人生を感じさせる.
江戸初期の人たちは,化け狐 河童 猫又などの存在を半ば信じていたのだろうと思うと,荒唐無稽な設定が現実味を帯びてくる.
図書館で借用.

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