「九条自由広場」

「昭和区九条の会」(名古屋)のブログです。会と市民の皆さんとの交流の広場です。ぜひ「コメント」をください。

新聞・放送はメディアの真の役割を果す報道を  大西五郎

2009-07-27 12:34:45 | Weblog
自民を選ぶか、民主を選ぶかに集中
新聞・放送はメディアの真の役割を果す報道を、
というタイトルで、7月22日に大西五郎さんから届いた記事です。
転載します。ちょっと長いですが、読み応えは充分。(落石)

   

 衆議院が7月21日解散され、8月18日に公示、同月30日の投票日が決まった。
これを受けて22日の新聞各紙は一斉に「実質選挙戦始まる」と報じた。
その内容を点検してみる。

 各紙の一面の見出しは「自民か、民主か」のオンパレード
 
[朝日]政権争奪 火ぶた 麻生首相「責任力問う」、鳩山代表「革命的選挙」
    「民主主義の前進賭けて」政治エディター 根本 清樹
[毎日]衆院選実質スタート 政党の責任力問う 麻生首相 革命的政権交代を 鳩山代表
    「変革の担い手決着の時」政治部長 小菅 洋人
[読売]衆院解散 総選挙 8・30政権選択 与野党過半数攻防
    「スローガンより中身だ」政治部長 村岡 彰敏
[中日]衆院選 事実上幕開け 麻生首相「景気と安心実現」、鳩山代表「自公連立打倒」
    「国のかたち示せ」政治部長 佐藤 育男
[日経]衆院解散 総選挙へ、「自公」継続か政権交代か 
    (トップニュースは、アップル「iphone」販売7.3倍 4~6月期は増収増益)
[産経]衆院解散 「自民大敗」の観測 天仰ぐベテラン議員
    「政権交代確実だからこそ」政治部長 乾 正人

 社説でも同様の傾向が見られる
 
[朝日]「大転換期を託す政権選択」
     戦後の日本政治を率いてきた自民党政治になお期待を寄せるのか、
それとも民主党に国を託すのか。
そして、どんな政権であれ、失敗があればいつでも取り換え可能な新しい政治の
時代を開くのか、
有権者が待ちわびた選択の日がやってくる。
 それにしても、自民党に対する民意の厳しさは尋常ではない。
明日の暮らしと国の未来への人々の不安や危機感を受け止められない
自民党政治への失望だろう。
民意が今の流れのままなら、民主党政権誕生の可能性は高いだろう。
確かに政権を代えてみたいという期待は強い。だが懸念や不安もある。
 選挙後の勢力次第で、政局は予断を許さない。
自民党内からは政党再編論が早くも聞こえてくる。
自民も民主も基本的には差はない。危機には国を挙げて、という理屈だ。
しかし、政権交代しやすい小選挙区制を導入して15年。
民意が政権公約に基づく選択でそれを機能させようというところまできたのに、
いきなりその選択を無にしようという発想はいただけない。
複雑な大変化の時代だからこそ、選択の結果を大事にしたいというのが
有権者の思いではなかろうか。
 この選挙で課題がすべて解決するわけがない。
だが、まずは民意の力で「よりましな政治」へかじをきる。
日本の民主主義の底力を示す好機だ。


[毎日]「政権交代が最大の焦点だ」
     民主党を中心とする政権に交代させるのか、
それでも(ママ)今の自民・公明政権が続いた方がいいと考えるのか。
有権者の選択が最大の焦点となる。
 麻生内閣の支持率は17%で前月より2ポイント下落。
自民党の支持率は18%で36%の民主党に大きく引き離されている。
有権者の間には「一度政権を交代させてみたら」というチェンジ志向が
確実に広がっていると見ないわけにはいかない。
 一方の民主党も、消費税は4年間引き上げないというが、
財源の手当てはできるのか。
党としての統一感に乏しい安全保障政策はどうするのか。
それらの疑問に具体的に応えるのがマニフェストだ。
鳩山氏の政治資金問題もさらなる説明が必要となる。
 自民、公明両党はこれまでの実績を強調するだろう。
だが、消費税率引き上げに関し、どこまで具体的に書き込むかなどの課題が残る。
共産党や社民党、国民新党、新党日本、今後できるかもしれない新党を含め、
大切なのはこの国をどんな形にするのかだ。
未来に向けたビジョンを示してもらいたい。


[読売]「政策本位で政権選択を問え」
     自民、公明両党の現政権の継続か、民主党を中心とする新政権の誕生か。
これが最大の焦点になる。
 民主党の鳩山代表は「第一党で政権交代」を目標に掲げている。
民主党は、衆院で過半数を制しても、参院で単独過半数を確保していないため、
社民党や国民新党と連立政権を組むという。
これで安定した政治を行うことができるのかどうか。
 一方、自民、公明の与党はこれまで、衆院3分の2以上の多数による
再可決で、「ねじれ国会」をしのいできた。
今回の選挙でこれだけの議席を確保することは不可能だろう。
 いずれにしても、衆参両院による意思決定をいかに円滑に進めるか
という難題が、政治に突きつけられることになる。
 今、多くの国民は、不況に苦しみ、少子高齢化社会への不安を募らせている。
対外的には、軍事大国化する中国や核武装を急ぐ北朝鮮など、
我が国周辺の安全保障環境の悪化を懸念している。
各党は、国民の不安解消に向けた処方箋を示す必要がある。
各党は、年金、医療など社会保障や、新たな日米関係をはじめ、
対北朝鮮など安全保障題についても、政策論を戦わせてほしい。
自民、民主両党のどちらに「政権担当能力」があるかは、
そこから自ずと見えてくるはずだ。


[中日]「政権交代か否か」
     「政権交代」の四文字が全国の選挙区で浸透しているのは、
否定のしようがない。
ただ、政権の選択は政策の選択でもあることを確認したい。
争点は山ほどある。加速が止まらない少子高齢化と光の見えぬ雇用情勢。
外にはオバマ米政権誕生後の世界新秩序づくりの胎動。
地球温暖化対策も喫緊の課題だ。
年金、医療、介護の社会保障政策や景気対策、格差是正などに世論の関心が高い。
自民は景気回復後に消費税増税するという。党内に異論もある。
合意事項なのか。バラバラの公約で有権者を欺くなら論外である。
民主は税金の無駄遣い削減などで約十七兆円の財源を生み出すという。
優先順位のつけ方次第で、しわ寄せが及ぶ分野も出よう。
厳しい財政事情の下、四年間消費増税しないという方針に裏付けはあるか。
何より、民主は政権を担当する力量があるのか、自民とどこが違うのか、
有権者の不安や疑問を真摯に受け止めるべきだ。
公明は迷走する自民との距離感に悩んでいる。
共産、社民、国民新などの野党は存在感をどうアピールするのかが課題となる。
全政党の政策をじっくり吟味したい。


[日経]「政権選択選挙の名に恥じぬ政策論争を」
 解散されたにもかかわらず、自民党は政権公約の骨格すら示していない。
各党は事実上の選挙戦に突入したが、政権公約なしで、
自民党候補は一体何を訴えるのだろうか。
首相は早急に政権公約をまとめなければならない。
 都議選など一連の大型地方選で連勝を続ける民主党は、
政権交代に向けて勢いづいている。
だが政権交代は手段にすぎない。大事なことは政権交代後に何を実行するかだ。
民主党が候補者向けに配った主要政策のポイント解説集には、
月額2万6000円の子ども手当、高校授業料の無償化、
農業の戸別所得保障制度など目玉政策が列挙されている。
これらの新規施策は無駄遣いの削減、埋蔵金の活用で財源を生み出すというが、
本当に財源を生み出せるのか。
 民主党政権が実現した場合の大きな不安要素は、外交・安全保障政策だ。
インド洋上での会場自衛隊の給油活動については、
鳩山由紀夫代表は政権獲得後も即時撤退はしない考えを明らかにした。
現実的な外交路線に修正する試みかどうかを注視したいが、
社民党は反発し、波紋が広がっている。
民主党政権ができた場合、共産党は一致できる政策には是々非々の立場で
協力する「建設的野党」を目指す方針を打ち出した。
与党の公明党や、民主党の連立相手に想定される社民、国民新両党も
党の姿勢を明確にして選挙に臨んでほしい。


[産経]「国のありよう競い合え 政権担当能力が判断に規準」
     争点にすべきは、日本の基軸をどうするかである。
例えば、北朝鮮の核や弾道ミサイルの脅威に加え、中国の軍事力の強大化に
日本はどう向き合うのかという問題がある。
日米同盟関係を弱める選択をすることで日本の安全はまもられるのかどうか。
消費税などの負担の問題も避けていては年金などの難題は打開できない。
 年金、医療、介護や少子化対策などの社会保障は、国民生活に直結する。
不安の解消と将来の安心感を高めるものとして自民、民主両党とも柱としている。
民主党はとくに年金制度改革の必要性を主張しているが、
無年金・低年金者救済のため創設する「最低保障年金」の財源には
消費税を全額充てるが、消費税は4年間引き上げないという。
自民党は景気回復を前提に、消費税を含む税制の抜本的改革を
3年後に行うとしているが、どれだけマニフェストで徹底できるかだ。
選挙に不利だとして増税論議を避けることは、もはや両党とも許されない。
 民主党の教育政策を危惧する声は多い。
日の丸、君が代問題などに見られる日教組のイデオロギー闘争を
教育現場に持ち込むべきではない。


   

 メディア本来の役割を果せ 
 新聞の論調に共通しているのは、「今度の選挙は自民か民主かの選択だ」
ということに有権者を誘導していることである。
解散に至るまでの「政局報道」でも、自民党と民主党の政策の内容や
その違いは詳しく報道されたが、両党以外の党の政策はほとんど紹介されなかった。
選挙に当たってのメディアの役割は、有権者(国民)に各政党の政策を
均等に紹介し、選択の材料を提供することである。  
メディアは二大政党が議席の圧倒的多数を占めるだろうと予測している。
新聞・放送当事者の興味・関心が「自民が勝つか、民主が勝つか」に集中している。
だから紙面・画面は「政権選択」に偏っているが、
読者・視聴者のために奉仕するメディア本来の役割を果すべきだと強く指摘したい。