よみびとしらず。

あいどんのう。

RAIN

2020-07-18 11:12:49 | 散文
空っぽの空に降る雨は
雨上がりの空の青さを知っていて
空っぽの空に降る雨は
降り止まぬ灰色の雲に覆われる

どしゃ降りに閉ざされた室内に
空っぽなわたしは虚(うつろ)な瞳で
どんなに水を飲んでも喉の渇きは癒えぬまま
窓の外はこんなにもどしゃ降りで水の溢れる
渇きからは遠くかけ離れた世界の内側で
濡れることもないこの身は不自然なまでに凝り固まった
指先ひとつ動かす勇気も持てなくて

勇気知らずの空は灰色の
雲に覆われたまま全てを流す
ひとの苦しみも歓びも
みんな水に流して知ったことかと
世界は無責任な美しさを呈示(ていじ)して
ここまで辿り着いてみせろとはっぱをかけた
誰の耳にも届かぬその声色は
雨音に流されてひとびとは眠る
どうか明日は晴れますようにと
てるてる坊主に思いをのせた
臆病者は夜も眠れず
聴こえるはずもない誰かの声音に耳すます

晴れわたる空を仰ぎみて
わたしの内側に今日もどしゃ降りの雨は降る
わたしは雨上がりの空の青さを知る者よ
喉の渇きは携えたまま
足元の水たまりにうつる透明な空まで駆けていき
足元の水たまりを飛び越えて広大な大地を駆けていく

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