よみびとしらず。

あいどんのう。

月のカラス

2018-05-31 11:19:48 | 散文
カラスは隠れて月に棲む

ひとりぼっちになりたくなったカラスは遠い月まで旅に出た
誰もいない月は居心地が良くて孤独だった

流れる星を見かけては
おおいおおい ちょっとだけこっちへ来いよ と声をかけるも
ほうき星は見向きもせずに流れていく

そこから眺める地球は美しかったけど
あそこは美しいだけの世界ではないと
カラスは知っていた

あの地球色みたいな涙を流したいと思うことはあっても
あそこへ帰りたいとは思わなかった

月で起き 月に眠るカラスの姿は闇にとけ
誰の瞳にもうつらない

けどもひとりぼっちのかたまりは
月を恋慕う
月のカラスに

火に水を
火は水にとけなお燃えあがり
孤独の闇を灯すとも
とどまることを知らぬ水の音は
全てを流して月へと辿り
巡りくる命にカラス鳴く

ひとりぼっちのなき声は
青色の夜に
切なるさみしさはとけていく

月のカラスへ届くまで

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