よみびとしらず。

あいどんのう。

真冬の太陽

2019-01-20 19:38:56 | 散文
消えたものを探しにいっても仕方ないよという周りの声を無視して
僕は消えたものを探す旅にでた
いつまでも囚われて
結局僕は消えたものを見つけだすことができぬまま
僕の身体は動かなくなった

「だから言ったのに」
「愚かだよね」
「自業自得だ」

そんな声に包まれて
僕の世界に一切の灯火(ともしび)なく
僕の大切な大切な消えたものも見つからない
消えたものは暗闇と同化しそこにあるのだと
光なき世界で僕はひとり薄く笑った

手を伸ばした先には何もなく
ぬくもりを放つのはただ僕の身ひとつ
このぬくもりは暗闇と同化せず
僕の個体はいつまでも僕のまま
あたたかな光を求めずとも
僕の外側の世界では太陽がどこまでも輝きを放っている

暗闇にも染まれずに
太陽ほどの輝きもなく
こんな中途半端な存在に一体なんの意味があるのかと
拒もうとする僕の思いとは裏腹に
この身体のなま暖かいぬくもりは
僕が生きていることを肯定する

他の誰かがどうであれ
僕の思いがどうであれ
血潮は全力で僕の体内を駆けめぐる
夜にはなれない身体を少し疎(うと)んじながら
僕は僕から離れることのない僕とともに
冷たい外気にさらされて
僕は僕の世界の外側にある真冬の太陽のしたに立つ
ふるえる身体のもつ意味とは
僕はなに一つ知らぬまま
確かにいまここから踏みいだすはじめの第一歩

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