少年

男の子は追いかけた
西も東も分からずに
お化け煙突は見るたびにその数を変えていく

三本 二本
一本 四本

両目は痛みをひきついで
痛みも色もなくしてなお笑う

一本 三本
四本 二本

お化け煙突はゆらゆらゆれる
水のなかもぐり 世界はゆらめく

不機嫌な狸は男の子の裾(すそ)つかむ
離れまいとて
真昼の太陽は目眩くも
かれの瞳には応答なし

ハローハロー お化け煙突
本当のすがたはなんですか？

一本 二本 三本 四本
四本 三本 二本 ・・・ひとつ

お化け煙突はけむりと一緒に夜をはきだす
あの夜のさきにあの子はいるから
男の子はただ駆け抜ける
不機嫌な狸は不機嫌なままついていく
右も左も分からなくとも

「今度こそは手離すまい」と