さそり〜3月19日

さそりのこどもが部屋にでてきました。
四匹です。殺虫剤で三匹殺しました。でもあともう一匹を、仕留め損ないました。
そのまま寝て、そして起きたら、わたしの枕元の横、目の前10センチくらいの場所に仕留め損なった一匹がいました。それはもう、声もありません。わたしは今度こそ仕留めたと思います。最後のあがきにと、さそりはものすごくのたうちわまって飛びました。同じ空間には父もいたけど、わたしの父は何もしませんでした。

場面はかわり、どこかの外にわたしはいます。
おじいちゃんにもおばあちゃんにも見える方に、わたしはさそりの話をしました。その方は車椅子に乗っていました。帽子を目深にかぶっているのでお顔はほとんど見ることができません。

「さそりのこどもがいなくなったならようやく家に帰れる。どうもありがとう」

車椅子に座ったおじいちゃんだかおばあちゃんだかの人はそういうと、静かに去っていきました。