よみびとしらず。

あいどんのう。

かがみ

2019-01-13 21:58:45 | 散文
昨日みた景色のなかにあなたは居らず
明日を告げる鐘の音のなかにもあなたの声は響かない
目の前に伸ばしたわたしの指先はあなたに絡まることなく空をつかみ
わたしの世界はあおみどり
あなたの姿は影すら見当たらない

鏡の向こうにうつる姿は確かに
わたしの姿であるはずなのに
鏡にうつる景色のなかに
わたしはあなたの影さがす

水の音が告げるとばりの奥に
笑うあなたに似た影法師
鏡砕けては往き来もできまいと
あなたはあなたうつす鏡隠して
わたしはあと追うかくれんぼ

かがみ写し鏡(うつしみ)現せ世(うつせみ)いつとて

風のなかに昇る月は沈黙を貫き
海は波音をつなぎて沈黙を破る
そのあいだで私はまるくなり
真実が何者であるかも知らぬまま
胸に鏡抱きて今宵も眠る

最新の画像もっと見る

コメントを投稿