大学4年生になったタイミングで設置された日本画教室
卒業制作を進めながら 教育実習が小中学校で6週間ある上 就職の教員採用試験もある超多忙な中
日本画なる物をかじってみたい!!と両親に相談を持ちかけてみると
素晴らしい講師の先生に教えてもらえるのなら 好い機会だからやってみたら!と背中を押されたのが 出逢いのきっかけでした
日本画教室は 週に1回 午前中3時間 基本から全てを細かく指導を受ける授業だったのを覚えています
大学の美術棟内の書道教室で 大きな窓から 野原に1本 ポプラ(風響樹)がよく見えていました
講師は 石川 響先生で 油絵のゼミでお世話になっていた国領 経郎先生と日展の審査員でつながっているとのこと
超初心者が日本画の初歩を教えてもらうには 過ぎる指導者なのではないか・・・・・・・・と
気が引ける思いでしたが 残り少い学生生活で 日本画を吸収してみたいと必死の思いで取り組んでいた気がします
石川先生は 温和で気さくな方で 気取らない でも絵に対する姿勢はこうでなければ と芯が通った日本画家
岩絵の具を画面にのせる所作を 目の前で見せてくださる姿は 鮮明に覚えています
授業は 笑いの絶えない和やかな雰囲気で 技法を学びながら 何枚か制作していました
合間には 先生の画業を伺ったり 日展に出品した作品についてのエピソードを楽しく聞かせてもらったり・・・
日展では出品作品を ポストカードにして販売するので 過去に特選になった作品のポストカードをくださいました
その中で 北海道の広大な風景を描いた「原野」 というポストカードが好きで 実際の作品を見たいと
ずっと思っていました
大学卒業後も 年に1回 卒業生で「風響会」という日本画展の場を作って下さり 事前に指導もして下さいました
仕事 結婚 育児 と 絵を描く時間が無くなる中 石川先生には
「絵を描かない美術教師になんか、ならないように!」 とか
「卒業してから 絵を描く枚数が減っているので 年々下手くそになっているなぁ!」と 本気で叱られ
反省しながら それでも 日本画展があるから夏休みに必死に描く という最低限度の作品制作しかできず
先生には きちんとした恩返しが出来ていない事が 毎年 申し訳ない思いでいっぱいでした
そんな折 2000年に 先生の作品が 日展で 内閣総理大臣賞に選出され そのダイナミックに北上川を
描かれた作品に心を動かされ 会の皆で祝福したい!!と思っていたら・・・・・・・・
その年の暮れに 突然帰らぬ人となってしまいました
石川先生の画業では シルクロードの旅と仏教がメインテーマとなり
画集や作品展では沢山の作品を見せて頂き NHKでも特集番組が放映されました
昔の作品 「原野」には出会う機会が全くないまま 年月が流れてしまいました
コロナ禍で2年連続 風響会が開催できず 今年こそは 有志だけででも開催を決めたところでした
会のことで 気をもませていた幹事さんから 思いがけないメールをもらいました
日曜美術館の番組で 山種美術館で開催が始まった『奥田元宋と日展の巨匠」展に 石川先生の「原野」が
紹介されましたよ!!と
驚きました
今頃になって 憧れの 「原野」の実際の作品が見られるなんて!!
わくわくしながら 恵比寿駅から徒歩圏内の山種美術館へ向かいました
その作品は 思った以上に大きくて 広大な原野が 本当に大きな画面に広がっていました
岩絵の具が重なり温かみのある色彩で自然を表現している迫力に圧倒されてしまいました
古い農機具の錆びた車輪が 時のうつろいを感じさせ ゆったりとした川が 時間を止めているようにも感じさせる
不思議な感覚で 絵の前に立っていました
この絵が描かれてから 半世紀 ずっと美術館で眠っていたのかと思うと
出会えた喜びを感じて あらためて石川先生に心の中でお礼を言いました
その夜 先生からいただいたポストカードを 必死に探し 遂に見つけ出しました!!!
多分机に飾っていたためか 変色しているようですが スキャンしてみました
1枚だけ 撮影許可された展示作品です
そして 山口蓬春画伯の作品や 石川先生の恩師である加藤栄三画伯の作品も展示されていて
つながりのある日本画家の大作を一時に目の当たりにした感動の余韻に浸っています
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