◎警察庁長官狙撃事件と老スナイパーN
一昨年一〇月四日のブログでは、「警察庁長官狙撃事件は、なぜ解決できなかったのか」と題するコラムで、この事件について考察した。
以下は、その日のコラムの前半部分。
二〇一〇年三月三〇日、警視庁公安部の青木五郎部長は記者会見をおこない、一九九五年(平成七)の同日に発生した警察庁長官狙撃事件が、「本日、午前0時をもって」時効を迎えたと発表した。
事件の捜査が失敗に終わったことは、誰の目にも明らかであった。一九九六年には、オウム信者である現職警察官Kの存在を伏せようとして問題となり、二〇〇四年には、元警察官Kら四人を逮捕したが、すぐに釈放せざるをえなかった。二〇〇七年には、みずからが犯人だと名乗り出ていた老スナイパーNについて、捜査一課による捜査が本格化したが、結局、これも立件できなかった。
優秀であるはずの警視庁が、なぜこの事件を解決できなかったのか。なぜ事件の犯人を特定できなかったのか。この問題については、いろいろと論じたいことがあるが、とりあえず本日は、警察の「見込捜査」体質ということを指摘しておきたい。
上記の記者会見で、青木五郎部長は、「これまでの捜査結果から、この事件はオウム真理教の信者グループが教祖の意志のもとに、組織的・計画的に敢行したテロであったと認めました。しかし、犯行の個々の関与者やそれぞれが果たした役割について、刑事責任の追及に足る証拠をもって特定・解明するにはいたりませんでした」と述べた。
質疑応答の部では、次のようなヤリトリがあったという。
問 今回、オウム真理教による組織的犯行と断定するだけの証拠があるといえるのか
答 報告書に記載の通りです
問 死刑判決を受けた教団幹部が、銃撃事件に限って関与を否定したり、麻原(彰晃死刑囚、本名・松本智津夫)が銃撃事件を速報するテレビのテロップを見て驚き、「上前をはねるようなのがいるのか」と話しているのを教団幹部が聞くなど、捜査結果と矛盾するような状況も出てきている
答 犯行主体の判断の根拠となった捜査結果について私どもの評価を記載した
要するに、オウム真理教の犯罪に違いないという見込捜査をおこなったが、結果が得られなかった。しかし、この見込そのものは誤っていなかったと言っているのである。見込捜査が失敗したことに対する反省は、ひとかけらもない。ここに私は、警察の、あるいは警視庁公安部の「見込捜査」体質を見るのである。
この日のコラムでは、警察あるいは警視庁公安部の「見込捜査」体質を問題にした。もちろん、この事件をめぐる問題は、それにとどまるものではない。
昨日、テレビ朝日の「日本2大未解決事件スペシャル」が、後半の数時間を使って、この事件を取り上げていた。非常に有益な番組であった。これを見た結果、おそらく、次の諸事実は間違いないという感想を持った。
1 老スナイパーN(番組では実名)は、間違いなく、この事件に関与している。
2 犯行に使われた拳銃と実弾は、老スナイパーNが、アメリカで入手したものである。
3 警視庁は、これらを把握していたが、何らかの理由で、これを立件しようとせず、時効の成立に際しても、この事件はオウムの犯行であると強弁した。
しかし、番組を見て、あらたに疑問が生じたこともある。これについては次回。
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