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NPOの現状や日々の雑感などを徒然なるままにお伝えします。

江戸の段階的養育法 <理(ことわり)十五で末決まる>

2010年05月05日 | 江戸
今日は、子育てしぐさの「三つ心、六つ躾(しつけ)、九つ言葉、文(ふみ)十二、理(ことわり)十五で末決まる」の最後で、「理(ことわり)十五で末決まる」についてです。

理(ことわり)とは、物事の正しい筋道のことであり、人として行うべき正しい道のことで、数え年の十五歳にもなると、森羅万象に対する理解が深まってきます。この年齢になると、子どもの将来性を見抜き、適材適所に振り分けていくのが、寺子屋の師匠や江戸講の講師の務めであったそうです。

「親は苦をする 子は楽をする 孫は乞食をする」という諺があります。初代は多くの苦労を積み重ねて商売を拡げるが、その子の代になると守りに入り、孫の代になると家業のやり方も知らずに、ついには家を潰してしまう例が多いという意味ですが、大店(おおだな)ともなればそんなことを言ってはいられません。

江戸の商家では、跡取りが決まってからも更に厳しく商人道を学ばせましたが、現在の三越・三井グループの前身である三井越後屋には、次のような後継者育成方法が家訓として遺されています。

「同族の小児は一定の年限内に於ては、他の店員と同一の生活待遇をなし、番頭、手代の下に労苦せしめて、決して主人たるの待遇をなさしめざるべし。」

「己れ其道に通ざれば他を率ゐる能はず、宜しく子弟をして小僧の執るべき事務を習熟せしめ、漸(ぜん)を追うて其奥に達する時は、支店に代勤して実地に当らしむ可(べ)し。」

一族の子どもは店に出して実務を覚えさせるという現場重視の考え方ですが、三井家では明治になるまでこれを守っていたそうです。現代にも通用するOJTによる人材育成プログラムが、すでに江戸時代に行われていたのですね。

*記述の一部は、NPO法人江戸しぐさ理事長越川禮子さんの著書を参照させていただきました。
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