寿命時計は、午後7時50分3秒です!

私の平均余命83.846歳(厚生労働省H28年度データ)を24時として、私の生きて来た人生は上の通りです。後残り時間は?

「思いつき、Myショートショート」#017~022

2014年03月03日 22時10分54秒 | 「思いつき、Myショートショート」

★ 関テレの番組で「よく考えるとハッとしてキャーな話」の中で、気に入ったお話をご紹介致します。
うる覚えなので、設定など勝手に脚色したかもしれませんが、オチは合っていると思います。

危篤状態のおじいさんと幼い孫の会話。
病院のベッドの横で孫のカナが、おじいさんの手を握って涙ぐんでいる。

おじいさんが、かすかな声で「じいちゃんは、おまえを愛してるよ・・・じいちゃんが死んだら悲しんでおくれ・・・」っと言って、この世を去って逝きました。

孫のカナは、「わかった」っと言って、おじいさんの手を握って大泣きをしました。
数日後、病院の近くの池で、幼いカナの遺体が発見されたそうであります。

そう・・・カナはおじいさんの遺言を守って自殺をしたのでありました。
「じいちゃんが死んだら悲しんでおくれ・・・・・じいちゃんが死んだらカナ死んでおくれ」・・・っと、カナはそう聞こえたのでありました。




   #022 「コラージュ」

「どう、これ!凄いだろう!」っと、アキラが幸雄と幸雄の彼女の唄子、そしてアキラの彼女の亜美に言っている。

4人は、正午から24時間交通量調査のバイトに行く前に、腹ごしらえに喫茶店に入っているのであった。
アキラが、食事をしている3人の前に一枚の写真を見せている。

「うわっ、これって例の・・・・・」
「そう、心霊写真!偶然撮ってしまったのよ!」っとアキラ。

写真は、住宅街の中の一角にある、昔からの小さな墓地が写っている。
その小さな墓地の墓石の上に、5,6歳くらいの髪の毛の長い少女が、ぼんやりと写っていた。

「うそだろう・・・」っと、幸雄。
「ホント、ホント!」っとアキラは言いながら、3人が真剣に写真を覗きこんでいるのを楽しんでいる。

すると、亜美が、「なんか、コレ、おかしくない?・・」
「この少女の身体の輪郭が、背景と比べると・・・変!・・」

「これって、・・・・合成でしょ・・!」
アキラは、「いやいや、いや、もうバレました?・・・早すぎ!もうちょっと怖がってよ・・!」

3人は、「馬鹿じゃない!・・・」「アホらし・・・」っと言って、アキラに写真を突き返すのであった。
アキラは、「やっぱりフリーソフトは、それなりのもんなのよねー!」

「でも面白いでしょ!コラージュって、面白いんだよ、例えばパンダの顔に自分の顔を張り付けたりとか、自分の写っている写真の顔に有名人の顔を張り付けるとか、結構楽しめるよ!」

「アキラは、相変わらず幼稚な事が好きなのよねー」っと亜美は、アキラを馬鹿にしてコーヒを飲みながら言っている。

しかし、唄子が「私もやって、やって・・・!」っとアキラの話に飛びついた。
「じゃー、俺もやってもらおうかな?・・・」っと幸雄も言い出した。

「ああ、いいよ!」っとアキラが、嬉しそうに言っている。
唄子は、「それじゃ、紅白歌合戦のきゃりーぱみゅぱみゅのワンシーンで、私の顔を張り付けて・・・」

「俺は、北島三郎がドラゴンに乗っているシーンに、俺の顔を付けてよ・・・」っと二人は、乗り気満々である。

横で、亜美は呆れている。
「面倒臭せーな!・・・でもいいよ!・・・じゃー、ちょっと二人の顔を撮らせてよ」っとアキラが、デジカメで二人を数枚撮るのであった。

「亜美は、どう?・・」「私は、いいよ!」っと相手にしない、「そろそろ、バイトの集合時間よ」っと亜美が言うと、バタバタと身支度をして喫茶店を出る4人であった。



数日後、違う場所での交通量調査のバイトで、4人が喫茶店で集まる予定であった。
アキラが、店に入ると「あれ?亜美だけ?・・・幸雄と唄子は、まだ・・?」っと言いながら、亜美のテーブルの対目に座ろうとする。

「そうなのよ、いくら電話しても二人は出ないの・・・」
幸雄と唄子は、いっしょに暮らしている。

「じゃー、バイト休むつもりなのか?・・・いいかげんな奴らだなー!」っとアキラは、呆れている。
「でも、その方が、好都合だなー・・」

「なんで、都合がいいの?・・何か知っているの?」っと亜美。
「そうじゃないよ、あいつらの事は知らねーよ!ただ、この間のコラージュの写真・・・うまくいかなかったんだ・・・」

「二人の希望のシーンに、顔を貼り付けようとしたんだけど、これが、何度やっても、うまくいかなくて、あげくの果てには、フリーズしてしまい、もう、止めにしたんだ!」

「やっぱ、フリーソフトは、アカンわ!ちゃんとした物を買わないとね・・・」っと、メニューを見ながら、カレーを注文するアキラである。

「ふーん!・・・」っと、言いながらコーヒーを飲んでいる亜美。
「でも、この間の少女は、うまく張り付いたのに、なんでだろうね・・・」っとアキラ。

少女の写真をカバンから取り出し、テーブルの上に置いてじーっと眺めだした。
すると、亜美もその写真を見ながら、「えっ、これ、前の写真っといっしょなの?・・」

「うん、いっしょだよ・・・」っとアキラ。
「でも、この少女、手に何か持っているみたいだけど、前はなかったよね?・・」っと亜美。

「えー、そんな馬鹿な・・・」っとアキラは、じーっと目を凝らして見ている。
たしかに、少女の両手にぼんやりと、黒いもやもやしたものが付いている。

小さくてよくわからないので、携帯でその写真を撮ってみて拡大してみた。
すると、「これって、人の頭みたいな物、持ってない・・?」っと亜美。

アキラは、「まさか、そんなわけないでしょーに!・・・」っと言い、亜美と顔を見合わせるのであった。
「気のせいだよ・・」「そう、かな・・?」

二人は、食事を終え、もう一度、幸雄らに電話するのであったが、出ない。
「あいつら、休む事、ちゃんと連絡してんだろうな・・・嫌な予感・・・怒られそう!・・」っとブツブツ言いながら、亜美と二人でバイト先に向かうアキラであった。



その日の夕方のニュースで、幸雄と唄子の首なし死体が自宅マンションにて発見されたと報じていたのを、アキラと亜美は知る由もなかったのであった。





「桂枝雀のSR(ショート落語)」

枝雀が、生前、短いネタをやっていたのを思い出して、ちょっと書いてみました。
うる覚えなので、多少違うかもしれませんが、オチは合っていると思います。

ある親子が、流れ星を見ていて、お母さんが「お願い事をするなら、今でしょ!」っと子供に言っている。
「うんわかった、じゃー言うね、えーと、お父さんに早く会えますように・・・」っと手を合わせ、空に向かって願い事を子供が言っている。

すると、お母さんが「お父さんに悪いわよ、もう少し、あちらの世界で楽しませてあげましょう」っと・・・・・・




  #021 「現実にありそうなお話?・・・」

とあるオフィスビルの夕方5時、「それじゃー、お先!」っと言って祐一は、同僚の孝子に向って敬礼をして、カバンを持って退社しようとしている。

孝子は、「また、合コン行くんでしょう!」っと祐一に指差している。
「せー、かーい、じゃね!」っと祐一

「ちょっと、ちょっと、待って・・」っと飛び出して祐一の後と追う孝子。
「なんだよ、急いでるんだから・・・」

「ごめんごめん、ちょっとお願いがあるんだけど、手間取らせないから、5分だけ、いい?・・」っと孝子は、両手を合わせて、祐一にお願いしている。

祐一は、時計を見ながら、「5分だけだぞ・・・」っと仕方なさそうに言っている。
孝子は、祐一を廊下にある飲料水の自販機の前のテーブルにひっぱって行き、「実は、田舎からお母さんが出てくるのよ・・・それで、今度の日曜日、会って欲しいの・・」

「なんで、おれが、孝子のお袋に会わなきゃいけないんだよ・・・」
「違うの、実は、田舎で私の縁談があって、どうしても見合いをしろときかないのよ・・・」

「見合いなんて嫌で、フィアンセがいると、つい言ってしまったのよ・・・」
「だから、わかるでしょ?」

「知らねーよ、なんで俺が孝子のフィアンセなんだよ・・・」
「だーかーら、お芝居よ!お母さんが帰るまでの間だけだから・・・」
っと、手をこすりあわせながら、祐一にお願いをしている孝子。

「嫌だよ、お袋さんを騙すなんて、良心が痛むよ!・・・お・こ・と・わ・り!」っときっぱりと、祐一は孝子に言う。

「そう・・・・、3万出すって言ったらどうする・・・?」っと祐一に背中を向ける孝子。
「えっ、3万・・・いやいやいや、金の問題じゃない・・そんな、人を騙すなんて・・」っと祐一の目が踊っている。

孝子は、追いうちをかけるように「これは、ビジネスよ、ちょっとしたアルバイト、仕事と思えばどうよ!」

「もし、ばれても、私からお母さんにちゃんと謝るから、他人を騙すわけじゃないし・・・」っと、ニヤっとしながら祐一を見ている孝子。

「アルバイト?仕事?・・か?うーむ、孝子の家の問題だからな・・・わかった、アルバイトやってやるよ・・そのかわり、ちゃんと、3万円用意しとけよ・・」っと祐一は、自分で自分を納得させるかのように、うなずいている。

「よし、契約成立ネ!、今度の日曜日、必ず家に来てね!」っと孝子は、急いで立ち去る祐一の背中に大きな声で言っている。

日曜日、孝子の家、小さなテーブルに孝子と祐一、向いに母親が座っている。
3人は、孝子のなべ料理を食べた後で、コーヒーを飲んでいる最中であった。

けっこう、調子に乗って祐一は、孝子のフィアンセ役のお芝居をリアルに演じている。
3万円だと思えば、罪悪感もない様子ではりきっている。

しかし、そんな祐一と孝子の様子を見て、母親は、笑いながら「なんか、ぎこちないような気がするんだけど、ほんとに結婚するの?」っと祐一の顔をじーっと見ている。

「ほんとですよ、・・・なぁ、孝子」っと、言っている。
「お母さん何言ってるのよ!祐一さんに失礼じゃない・・・」っと、おどおどしている孝子。

「何か変!・・・証拠でも見せてよ?・・」っと母親。
「証拠?・・・じゃー、」っと祐一は言って、口を突き出し孝子にキスをしようとする。

孝子は、祐一を掃いながら、タンスの引き出しから書類を持って来て、「これなら、どうよ・・」っとテーブルの上にその書類を広げるのであった。

祐一は、「こ・婚姻届・・・いつのまに・・・」っと不審げな顔をしながら、祐一は、孝子の耳元で小声で言っている。

孝子は、「こゆう事もあろうかと、一応準備しておいたのよ・・・」っと孝子は、祐一に小声でこそっと囁いている。

「どう、お母さん、ここで二人で署名するから、見ててよ!・・」っと孝子は、印鑑を持ち出して、自分の欄の署名をして印鑑を押すのであった。

横でおたおたと見ていた祐一は、「おれ、印鑑持ってないよ!」と小声で言っている。
「大丈夫、あなたの印鑑も用意してあるから・・・百均だけどね・・」っと祐一の顔を見ながら孝子は、笑っている。

祐一は「あー、そう・・・」っとしか言えず、黙って署名と捺印をしている。
「まぁ、怪しいけど、認めるわ!・・・・ちゃんと、役所に必ず出しなさいよ!」っと母親が笑っている。

「もちろんよ・・・」っと孝子。
「じゃー、帰りが遅くなるといけないから、これで帰るわ・・」っと母親は、荷物を持って、玄関に行くのであった。

「気をつけてね、式の日取りが決まったら、また連絡するからね・・・」っと孝子と祐一は見送るのであった。

玄関の扉が閉まり、二人が顔を見合わせて、「終わった!」っとため息をついている。
「お前なぁ、婚姻届まで用意するなんて、ワルだなー!びっくりしたよ」

「あーでも、しなければ疑い深いうちの母親は、納得しないのよね・・・」
「じゃ、これ破いていいね・・・」っと祐一は、婚姻届を破ろうとすると「あっ、ちょっと待って、お母さんが、忘れ物とか言って戻って来るかもしれないから、家に着くまでちょっと、置いておくよ」っと祐一から婚姻届を取り上げる孝子。

「あっそー、どんな親子なんだよ・・・」っと呆れる祐一。
「じゃー、これアルバイト料」っと言って、三万円入りの封筒を祐一に渡す孝子。

「サンキュー、ちょっと後味の悪いアルバイトだったけど、もしバレたら、ちゃんと説明するんだよ・・・」と、封筒のお札を確かめている祐一。

「ほんと、助かったわ、ありがとう・・・そのお金、合コンなんかに使わないでよ・・」
「いやいやいや、今のうちに遊んどかないと、後になって後悔しても始まらないからね・・・・」っとニヤニヤしながら、「じやー、お疲れ!」っと言って孝子のマンションを出て行くのであった。

孝子は、テーブルにあったコーヒーを入れなおして、一息ついている。
そこへ、母親からの電話が入って来た。

「孝ちゃん、うまく行った?」っと母親。
「バッチリよ・・これで、祐一は私の物」と孝子が言いながら、テーブルの上の婚姻届を眺めている。

「バレたら知らないからね・・・これって、結婚詐欺よ・・・」っと母親。
「心配ないわよ、自分の戸籍ってめったに調べないから、当分わからないわよ!」

「しかも彼の自筆の署名だもの・・・彼が違うっと言っても、誰も信じないって!」
「そして、彼が不当だと言って、離婚でもしようものなら、慰謝料をガッポリと取れるもんね・・・」っと孝子。

「ホント、あんたワルだよね・・・昔からだけどね・・・」っと母親
「お母さんに似たのよ・・・」っと笑みがこぼれる孝子でありました。

祐一が、街一番の大病院の御曹司だった事を孝子は知って、入社したのでありました。



   #020 「眠たい・・・」

「ふぁぁ・・、よく寝たなぁ・・」っと和也が、橋の下の草むらの斜面からムクっと起き上がった。

和也は、くんくんと鼻で周りの空気を嗅いでいると、「なんか、焦げた変な臭いがするなぁ・・・誰か焚き火でもしているのかなぁ・・・今何時?・・うわ、もう7時じゃん」辺りは、どっぷりと暮れていている。

「受験勉強で、寝てなかったからなぁ・・」っとカバンを持ち、立ち上がろうとすると、「痛い、頭痛い・・・風邪引いたかな?・・・・こんな所でうたた寝すれば、風邪もひくよね・・・・っというよりも、早く帰らないと、また、お袋さんに怒られるわ!」というと、一目散に走って家に帰るのでありました。

「ただいま・・・」っと和也がドアを開け、家に入ると、誰もいない。
和也の家は、父親の大手電機メーカーの平屋の社宅であった。

「あれ、二人ともどこへ行ったのかな・・?」っと、部屋をあちこち捜してもいない。
でも、電灯はついている。

変だなっと思っていたら、「あっ、そうだ、今日、親父たち、銀婚式?っと言って、二人で温泉旅行に行くと言ってたよね・・・忘れてたわ・・・でも、いい気なもんよね、人が受験で苦しんでいるっというのに・・・

まぁ、いいか・・・今日は、俺一人だもんね、たまに勉強をやめて、ゆっくり羽のばそう・・・」っというと、ゴロっとソファーに寝っころがるのであった。

しかし、眠くて眠くて仕方がない和也は、自分の部屋のベッドへ向かうのでありました。
すると、両親の部屋のドアが開いていて、灯りもついており、変だと思い、中へ入るのであった。

和也が、部屋に入ると、両親のダブルベッドの上にベットリと血がついているのであった。

和也は、一瞬に目が覚め、「うわぁ・・何これ・・・、いったい、どうゆうこと・・・」と言って、その場で座り込んでしまった。

辺りをキョロキョロと見回しても、両親の姿が見えず、床に両親を引きづった後のような血のりがついている。

和也は、「親父・・・お袋・・・どこにいるんだよ・・」っと大声を上げながら、恐怖が全身を駆け巡るのを感じるのであった。

そばにあった父親のゴルフクラブを持ち、剣道のかまえのように身構えながら、家の中をジリジリと捜しまわるのであった。

しかし、両親はいない。
和也は、警察だと思い、電話をかけるのであるが、受話器から発信音がない。
「電話線を切られてる?!・・・」「くそ・・・!」っと言って、キョロキョロしながら、クラブを両手で持ち、家の外に出るのであった。

そして、父親の車がないので、犯人はその車で両親を連れ去ったのだと思うのでありました。

和也は、隣の社宅に走って行き、呼びリンを鳴らし、ドアを思いっきり叩き、「助けて、開けてください!」っと何回も叫ぶのであった。

しかし、誰も出てこない、仕方ないので、また隣の家に行き、叫ぶのであるが、誰も応答がなく出てこない。

ふと、自分が居眠りをしていた遠くにある橋のたもとを見ると、煙が出ていて、パトカーやら、野次馬などでごった返している様子が目に入った。

「み・・みんな、あそこに行って誰もいないのかなぁ・・・」っと思い、「そうだ、あそこに警官がいるんだ!」っと和也は叫び、一目散に橋へ走りかけようとすると、自分の腕が掴まれる感覚に気がつくのであった。

振り向くと、二人の男女が立っていた。
「親父、お袋、えぇぇぇ・・どうしたの?・・生きてて良かった!・・・心配したじゃん・・・」

二人の元へ駆け寄ると、両親の頭から血が流れているのを和也は、見て驚き、「血が出てる・・・早く病院に行かないと・・・」っと言うと、母親は、「もう、いいんだよ、和ちゃん」っとにっこりと微笑んでいる。

父親も「いろいろとお前も苦しんだんだよなぁ・・・もう心配いらないから、母さんたちといっしょに行こう・・・」っと言って、グイっと和也の腕も取り、母親がもう片方の和也の腕を取って、「病院へ行くの?・・・」っという和也の言葉と共に霧の中へ3人は消えていくのでありました。

翌日の朝刊の3面記事に、受験生の息子が、両親をゴルフクラブで殺害、父親の車で逃走したものの、橋の上でスリップをして、川べりに転落、その後、息子は睡眠薬自殺をはかった様子で、3人が絶命している所を通りがかりの通行人に発見されたもようであります。

息子の学校の友人は、以前から受験の事で、両親と言い争いをして悩んでいたと言っており、これが直接な原因かと警察は慎重に調べを進めているそうであります。・・・っと、小さな記事で書かれてありました。




   #019 「おみくじ」

県立第八九高校、野球部の夏合宿が始まった。
いつも県大会では、一回戦で負けている弱小野球部である。

今年も、コールド負けであった。
中学からの仲間であるキャッチャーの上田勇、ファーストの佐々木一郎、ピッチャーの野村肇の3人は、中学時代の野球部からの親友である。

今年同じ高校に進み、そして野球部に入り、ゆくゆくは、甲子園へ行く事を夢見る若者たちであった。

合宿は、一週間、山の中腹にある小学校の校庭で、練習をするのが毎年恒例であった。
宿舎は、3キロ離れた、山の麓にあるお寺の大部屋で、住職のご好意で貸してもらっている。

朝8時から、夕方4時までみっちりと体力造りと練習をするのであった。
宿舎のお寺から練習場までの3キロは、山歩きに等しいくらい坂道が多く、ランニングをして登るのは、結構つらいものがある。

そんな中、3人も今年から初参加をして、ヘトヘトの毎日であった。
ある日、練習がいつもの4時に終わり、3人は、帰り下山をしていると、空の雲行きが怪しくなり、今にも雨が降りそうな気配である。

遠くで、雷も鳴るっているみたいで、野村は、「オレ、雷、幼い時から嫌いなんだ・・」っと言っている。

上田が「まだまだ、雷の音も遠いから、大丈夫やろ」っと言って、この間DVDで観たオカルト映画を大げさに話している。

他の部員たちというと、大雨が降ると言って、走って帰ってしまっていた。
そんな事も気にしなくて軽く見ていた上田たちが、二人を脅かそうとオカルト映画のオチを大声で言おうとした時、・・・・もの凄い轟音と共に、10m先の大木が、火を吹いて倒れるのを目の当たりにするのであった。

3人は、大声で「わぁわぁ、落ちた!」っと叫んで、その場で倒れこむのであった。
すると、大粒の雨が、勢いよく地面に叩きつけるように降って来たのであった。

3人は、「ひぇー!」っと言って、慌てて走るが、前が見えないくらいの豪雨で、滝のように、上から坂道を転がるように、水が流れ出して来たのであった。

佐々木が、豪雨の中で左手に、薄らと影が見えるお堂らしき建物を発見、「あの、建物に避難しよう・・」っと言って、まっしぐらにお堂へ走るのであった。

二人も佐々木の後を追って、何度かこけながら一目散にお堂へ突き進むのであった。
なんとか、3人は小さなお堂の庇(ひさし)の中に入り、ホッと一息をつくのであったが、ずぶ濡れである。

でも、夏なので意外と気持ちがいい。
「まさか、いきなり来るとはね・・・それに、雷が落ちたの初めて見たよ」っと上田。

「まだ、震えが止まらないよ・・・のちのちトラウマになるような気がする・・・」っと、野村は、膝を抱えている。

「まぁ、夕立だから、すぐ止むよ・・しばらく様子を見よう・・・」っと佐々木。
上田が、何気なしに野村の横にある箱らしき物を見つけて、「それ、何だろう?・・・おみくじって書いてある、一回百円・・・」っと指を差している。

「ほんとだ・・」「やってみようか」「お金持ってないよ」「いいよ、いいよ、誰もみてないから・・」っと上田が言って、おみくじが入っている箱に手を入れると、野村が、「だめだよ、泥棒じゃん・・それに、バチが当たるよ・・」っと上田の腕を掴むのであった。

「硬い事言うなよ、誰も見てないよ」っと辺りをキョロキョロしながら上田が言っている。

「いいからこれ使えよ!」っと言って、野村はポケットから三百円を出して、小さな代金箱に入れるのであった。

「あっ、俺たちも出来るの?」っと佐々木、「さすが、金持ちのボンボンの野村さまだこと・・」っと上田が言って、先におみくじを一枚取り出すのであった。

そして、佐々木、野村の順でおみくじを引くと、「これって、印刷じゃなくて、手書きじゃん、それも、色がくすんだ紙で、ボロボロ・・・」っと上田。

「なんか、そこいらのガキが小遣い稼ぎで作った悪戯じゃないの?」っと佐々木も首をかしげている。

おみくじの箱は、年代物の木箱で、手が入る程度の丸く切った穴があるだけの、みすぼらしい物であった。

中味のおみくじも、厚手の和紙が名刺大の大きさの物で、一般のおみくじみたいに木に括り付けられる物ではない。

ただ、毛筆で一行、綺麗な美文字で書かれていた。
上田は、「凶・・・災難あっても運がつく・・・なんじゃコレ?」

佐々木は、「小吉、捨てる神あれば拾う神あり・・だって・・・」
「俺のも、小吉、待てば便りの日和あり・・・って、タヨリって、海路だろう・・・いいかげんだなぁ・・・」っと野村が呆れている。

「おいおい、俺だけ・・・凶・・・お前らだけ小吉で、なんで、俺だけ凶なの?・・・」
「もう一回ひくぞ・・」っと上田は、手をおみくじ箱に突っ込み、一枚のおみくじを取って、抜こうとすると・・・抜けない・・

「えぇぇ、どうなってるの、抜けないよ・・」
「手を放してみたら・・・」っと野村が言うと、上田がおみくじを放すと手が抜けた。

「やっぱり、お金を入れなきゃ取れないんだよ・・・なぜか?・・」
「わかったよ、上田のためにもう百円出してやるよ」っと野村が言って、百円を代金箱に入れると、今度は、なぜか上田のおみくじが取れたのであった。

「変なの、ようわからん・・・」
「さてさて」っと、両手で手のひらの中のおみくじをゆっくりと上田が片目で見ると、なんと・・・なんと・・・やっぱり「凶」・・・・

「なんでやねん、連荘で凶なんてありえへんやろ」っと関西弁が出てしまった。
もともと、上田は関西出身であった。

「まぁまぁ、偶然だろ、小吉も凶もそんなに、変わんないよ!」っと野村。
「そろそろ、雨も止んだ事だし帰ろうぜ」っと佐々木が言って、軒下からショルダーバッグを肩に下げ、歩いて行くと、もう日も暮れ始め、カラスが鳴き始めた。

すると、前を歩いている上田に「ピシャ」っという音がして、野村と佐々木が「あっ!」っと叫んだ。

上田が振り返ると、自分の肩のショルダーバッグにカラスのデカイ落とし物が・・・・べったりと付いている。

「うぁ・・」っと上田は、ショルダーバッグを投げ捨てるのであった。
「マジかよ・・!」

「ティッシュ!ティッシュ!」っと言って、佐々木からティッシュをもらい、気持ち悪そうに拭いている。

「当たったネ!おみくじ・・災難あっても運が付く・・・運じゃなくて、糞のダジャレ?・・・」っと野村が笑っている。

「アホらし、むっちゃ、腹立つわ!」っと拭き終わった上田がぶつぶつ云いながら、カラスの爆撃に気を使いながら、ローリングして先に歩いて行った。

ようやく、麓まで降り、小さな木の橋の近くで佐々木がつまずくのであった。
「大丈夫か?・・」っと野村。

「あぁ、何か踏んだみたい・・」っと佐々木。
「おや、あなた様も運じゃなくて、犬の糞でも踏んだんでしょうかね?・・」っとニヤニャと意地悪そうに上田が言っている。

佐々木は、踏んだ物を手に取ると「財布みたい、中に・・・・5・・54000円入っている・・・」っと驚きを隠せない様子。

上田や野村も寄って来て「ホントだ!」すかさず、上田が「山分けにしようぜ!・・・一人、18000円?」っと言うと「アホ!」っと野村に一喝されてしまう。

「お寺の近くに駐在所があるから、届けよう」っと言う。
上田は、納得がいかなくてブツブツ言っているが、佐々木は、仕方がないと思い、野村の言うとおり、駐在所に届ける事にした。

もう、午後6時半を廻っており、宿舎では晩飯の時間であった。
「俺、届けてくるから、先に晩飯やっといて・・・」っと言うと二人と別れる佐々木であった。

「ネコババすんなよ」っと上田が言っている。
その頭をコツンと叩いて「早く、帰ろうぜ」っと野村が走り出した。

しばらく歩くと「風呂、入りたいなぁ・・」っと上田が云うと、上空から落下物が・・・「ピシャ」っと上田の顔面に直撃!2回目の凶の分であった。

「もう、踏んだり蹴ったりや、絶対に、絶対に、お前ら殺してやる!」っと言って、手で大量のカラスの糞を拭うのであった。

「お前、あの時、おみくじをネコババしようとしたから、恨まれているんだよ」っと自業自得という顔をしている野村である。

「今7時前か、5時から6時半までが入浴タイムだからなぁ・・・でも、うまく行くかも?・・・」っと野村が言っている。

お寺の大広間に着くと、「先生が、お前らどこで何をしてたんだ!」っと予想していた通り怒鳴られてしまう。

二人は、ペコペコしながら、雷や豪雨、そして、佐々木がサイフを拾って届けている事を説明するのであった。

「よし、わかった、お前ら罰として、・・・」っと言うと、すかさず野村が、「風呂掃除やります!」っと答えるのであった。

先生は「よし!」っと言って、御飯を食べ始めた。
他の部員は、もう食べ終わっており、3人の分だけ残っていたのであった。

先生も、心配して、御飯に手を付けていなかったのであった。
「なっ、これで風呂が入れるだろう・・」っとニヤニヤしている野村の顔をみて、「さすが・・」っと思ってしまう上田であった。

「やっぱり、あのおみくじ、当たったなぁ、捨てる神あれば拾おう神あり、って落とし物の事だったんだなぁ」っと野村。

「うむうむ」っと夢中で食べている上田。
「でも、駐在所に届けたら、半年先だったかな?引き取り手がない場合のみ、手に入いるのと、ちゃうの?」っと上田。

「たしかに・・・」そうこうしていると、佐々木が帰って来て、「お待たせ、先生にうまく言ってくれた?」っと言って、続けて「それがさ、駐在所に言ったら、落とし主のおっちゃんが居て、駐在さんといっしょに探しに行こうとしていた処なんだって・・・」

「それで、すごく感謝されて、感謝感激雨あられって訳のわからない事を言われて、謝礼に1万円くれたんよ」っと興奮気味の佐々木。

「えぇ・・・!」っと二人。
「やっぱり、あのおみくじ本物や・・・」っと顔を見合わせている上田と野村・・・・・・。「1万円を3で割ると・・・割り切れへんなぁ・・・」

午後8時を廻って、3人は風呂場の掃除をしている。
「野村・・・お前のおみくじは、どうなったの?・・・」と佐々木。

「いやー、別に変化はないけどね・・・やっぱ、偶然の出来事だろう・・・たまたまの事件だって、気にする事ないよ・・・」っと掃除ブラシでタイルをゴシゴシとこすっている野村である。

上田は、風呂にちゃっかり入っており、手ぬぐいを頭に載せ、「お前らだけええ思いして、俺だけ2回も凶だからな・・野村にいい事があったら、俺の立場ないじゃない、可愛そうなオレちゃん・・・」っと言って、ブクブクと湯の中に沈むのである。

呆れ顔の佐々木と野村は、掃除を終えて、風呂場の電気を消して部屋に戻るのであった。
真っ暗の中「おい、ホント冷たい奴らやな、お前ら・・・」っと言って、慌てて風呂場を出る上田であった。

大広場で、20人の部員が、寝ている。
けっこういびきが響いているのであるが、みんなはぐっすりと寝ている様子である。

ただ、眠れないのは、野村だけであった。
風呂場の掃除の帰りに、メールの着信が入ったのであった。

メールの差出人は、由紀であった。
由紀とは、中学の卒業式以来の事で、当日、野村は、今までの想いを由紀に告白をしたのであった。

告白に驚いた由紀であったが、あれ以来、由紀からの連絡がなく、もう野村は、諦めていたのであった。

あれから4ヶ月である。
由紀から、野村が甲子園で投げているのと一所懸命に応援をしている自分の姿が夢の中へ出て来て、その夢が、次の日にも同じ夢を見たというのであった。

それで気になってメールをして来たというわけであった。
野村は、喜びに浸っている自分と、おみくじのせいだと、不安で頭が混乱している。

これは、由紀の本心じゃなく、いつわりの事なんだと自分を戒めているのだが、やはり、うれしい自分を感じているのであった。

あぁー、眠れない!・・・・翌朝、ぐっすりと寝た上田は、朝食時に、「今日、帰り、またあのお堂へ行ってみようぜ・・・」っとニヤついている。

「このままでは、男がすたる・・・3度目の正直や・・」っと鼻息が荒い。
野村は「嫌だよ、今度は、凶になって前の小吉がなくなったら嫌だもん」と言っている。

「でも、野村、お前、何も変化ないて言うてたやん・・・」っと上田。
「実は・・・」っと顔を赤らめながら由紀とのいきさつを話すのであった。

上田と佐々木は、あの中学校一の美人の由紀に、告白をしてたなんて、全然気がつかなかったのである。

そして、その由紀からメールが来ていた事に、こいつ信じられないっという裏切られた気持ちと怒りが重なって興奮する二人であった。

特に、上田は、「あかん、絶対もう一回引くべきや・・・」っと、野村の不幸を願っている様子である。

上田は、自分だけが不幸で不憫だと思い、人の不幸は蜜の味にしたいのであった。
「わかった、わかった、おみくじを引くのは、出来ないけど、いっしょに、ついて行くよ!」っと野村。

上田は、しぶしぶ了解するが、かわりに俺のおみくじ代を払えとセコイ事を言っている。
一方、佐々木は、「俺もやるよ!」っと言っている。

今回の小吉で、お金を貰ったから、また一から、挑戦して、今度、大吉を当てて、宝くじを当選させるよ!・・・」っとこいつも欲が出て来た一人であった。

上田と佐々木は、ダメで凶であっても、カラスの糞くらいだから、大金をもらえるチャンスの方に賭けたのであった。

3人は、練習を終えて、またあのお堂へ出向くのであった。
今日は、いい天気で青空いっぱいである。

お堂に着いた3人は、おみくじ箱の前で、一礼をして、上田が野村から貰ったお金で、まず最初にくじを引くのであった。

「うっそー!、また凶・・・」がくぜんとして倒れる上田。
次に佐々木が、引くと「うっそー!、や、やった!・・・だだ・だ・い・き・ち・・いきなりホームラン!」っとこちらも腰を抜かして倒れこむのであった。

佐々木は、ここへ来る前に宝くじを二枚だけ買っていたのであった。
一等5000万円である。

上田が佐々木のくじを覗き込み「うそやろー!なんでやねん!信じられへん・・・・
でも、5000万を3で割ると一人・・・割り切れへん・・・」

「ついて来た!・・・もう一回やるよ・・・!」っと佐々木、「えぇー、止めた方がいいよ・・危険だよ・・もともこもないよ・・」っと野村。

「一郎ちゃんってギャンブラーなのね・・・」っと羨ましくみつめている上田。
佐々木の家は、中小の部品メーカーの会社経営で、棒大手企業の液晶テレビの部品の下請けをやっており、設備投資で1億もの大金をつぎ込んでいたのであった。

目測を誤った大手電機メーカーは、下請けへの注文をストップしたため、佐々木の父親の会社は、多額の借金を背負う事になってしまったのであった。

そんな、父親の姿を見ている佐々木にとって、この上にないチャンスなんである。
「俺は、ついている、今行かなきゃ、きっと後悔する」っとふんだのであった。

もう、5000万、祈る想いで、くじをひくのであった。
上田と野村は生唾を飲んで見守っている。

すると、佐々木の血の気が引くのであった。
「大凶・・・家族ともども、一家心中あり」と書かれてあった。

佐々木は、「嘘だ!っと叫び、再びトライするのであったが、大凶が続き、同じ文言が書かれてあった」

がくぜんとする佐々木を尻目に上田も何回もチャレンジをしていた。
こちらも、いっしょで、凶のオンパレードで、ハズレくじ10枚にもなっていた。

上田は、「野村、由紀は、お前の甲子園で活躍している姿に惚れているんやろ、ここで、お前が本物かどうか、勝負してみたらどうや?・・・」っと上田が云う。

たしかに、自分の実力では、由紀の願いはとうてい叶えられそうもないのであった。
冷静な野村の心にも、自分の運にかけてみようという気にさせられるのであった。

そして、頭を垂れている佐々木を尻目に願いを込めて引くのであった。
すると、凶の文字が見え、横の大の字も書かれてあったのである。

野村は、がくぜんとするかと思い気や、意外と冷静で、なぜか、そのくじを元の箱に手を突っ込んで放すのであった。

そして、手を箱から抜くと、一枚の白紙が手のひらに残っていた。
意味がわからず、じーっとその白紙を見つめていると、あぶり出しのように、文字が浮き上がって来るのであった。

「是諸法空想(ぜしょうほうくそう)」と書かれており、般若心経の一節であった。
この世の存在の全ては実体がなく、一喜一憂も時の流れで消えて行く。

だからこそ、この瞬間瞬間を大事に一生懸命に生きてゆかなければならない。
野村は、はっと思い、佐々木に同じように、大凶のおみくじを元の箱に入れるように云うのであった。

すかさず、佐々木は野村のまねをすると、同じく白い紙が出て来て、同じ文言が浮かび上がるのでした。

大凶の呪いが解けたっと二人は思うのでありました。
それを見た上田も同じ事をしたら、なぜか、凶のおみくじが手のひらから放れずに戻ってくるのでありました。

上田は、箱に向かって「どうゆうこと・・・どうゆうこと!おれだけ、なんで・・・!」と叫ぶのでありました。

夕陽が、お堂を照らし始め、野村は、「もう、帰ろうか・・」っと言うのでありました。
野村の携帯の由紀からの着信メールが消え、佐々木も拾得物の御礼として貰った1万円も消えておりました。

3人は、帰り際にお堂を振り向くと、あのおみくじの箱は、煙になって消えておりました。

「なんか、3人で同じ夢を見てたんだね・・」っと野村、「うん、俺、アルバイトでもして、少しでも家の足しになるように頑張るよ、そして実力で、プロ選手になってみせるよ、自分の力で・・・」

「俺も、もう一度由紀に連絡してみるわ、当たって砕けるわ・・・・・・・」
「あれって、それぞれの願いをあのくじは、わかっていたんだよね・・・人の願望や、心を読んだんだ・・・」っと野村。

「お前らは、それでいいかもしれないけど、俺は、嫌やで!努力なんて大嫌いや!人間ナチュラルに生きるのが幸せなんや・・・チャンスがあれば、ものにする、どのチャンスか、人生チョイスの仕方で人生決まるんや・・・」っと上田。

「お前らしいわ、でも選択を間違うと、大変な事になるからこそ、自分のOS,基本ソフトがしっかりメンテされてないと、バッドチョイスになるんだよね・・・」っと野村。

「いつもの事やけど、おまはんの言うてる意味がようわからんわ・・・」っとすると、空に黒い影が現れ、こちらに向かって来るのであった。

「うわ、カラスの大群や・・・なんでや、呪いは消えたんやろ」っと逃げまどう上田。
「10羽いてるよ、10回凶を引いたからな、仕方ないよね・・・」っと佐々木。

「冗談やないで、絶対に、殺してやる・・・」っという上田の顔に次々と連続爆撃・・・・
そして、10羽のカラスは任務完了と大空に消えて行くのでありました。

上田の顔は、石膏で固めたように、白く固まりになっており、息をする鼻の穴だけが黒くなっており、ボーリングの玉の指を入れる穴のようにも見えるのでありました。

「上田、早く風呂を入らないと、入浴タイムアウトになるよ!」っと野村が言うと、一目散に上田は走って帰るのでありました。





   #018 「知未ちゃん・・・?」

今村真二、38歳、某中小企業の主任である。
真二は、4歳の女の子、知未といっしょにタクシーで大阪駅に向かっていた。

大阪駅西口の高架下に一台の観光バスが停まっている。
タクシーを降りた真二は、知未を連れて慌ててバスの方に走っていた。

バスの乗車口前で、同じ会社の武が、手を振って叫んでいる。
「早く早く、遅いですよ、もう出発時間をオーバーしてますよ」っと幹事の武。

今日は、年に一度の一泊二日の社内旅行で、長島温泉に行く日であった。
真二は、息を切らせながら、「悪い悪い・・・、連絡をしようにも携帯を忘れて連絡が出来なかったんだ・・はぁはぁ・」っと言っている。

知未は、ケロとしている。
その知未を武が見て、「あれ、お子さん連れの参加なんですか?・・っというよりも、主任・・・独身じゃなかったですか?・・・」

「ごめんごめん、今朝、妹から電話があって、いきなり盲腸になって、入院する事になったから、この知未、あー、妹の子供で、ともみと言うんだけど、預かる事になったんだ。旦那は、海外出張でいないらしく、仕方なく引き受ける事になったんだよ・・・」

っと言うと、バスから、数人降りてきて、「主任のお子さんですか、かわいい・・」っと女性社員、「お譲ちゃん、お名前は・・?」知未は、「はい、ともみ4歳です・・」っと左手の指を4本立てている。

「お姉さんは、24歳でしょ・・・」っと知未。
「えぇ・・なんでわかるの?・・・当たってる」すると、横にいた女性も「私は、いくつに見える?・・・」知未は、「26歳!・・・」

「うわぁ、当たっている」っと次々と聞いて来る人たちを言い当てている。
「僕は、いくつに見える」っと調子に乗って武も言うと、知未は、「29歳!・・・」っと言っている。

「あー、当たっている・・でも、お兄ちゃん、明日で30になるんだよね・・・でも、凄いね・・・」っと知未の頭をなでている。

真二は、「楽しみにしてたんだけど、そうゆう事情で、この子の面倒と、今から妹が入院をしている病院へ行かなければならないんだよ・・・すまん!・・」っと手を合わせて、幹事の武に謝っている。

「仕方ないですね、旅行費用は返金できませんのであしからず・・・でも、お土産を買って来ますよ・・」っと武は、真二に言って、車外に出ているみんなをバスの中に押し戻して、出発をするのであった。


バスの窓から、みんなが手を振って、「知未ちゃん、今度はいっしょに遊びに行こうね!」っと言っている。

真二は、手を振っているが、知未は、無言で無表情である。
見送った真二は、知未を見て、「お腹空かない?・・」っと聞いている。

朝6時に妹に呼び出され、妹の家に着いた時には、妹は、おらなくて、救急車で行ってしまい、残った知未をよろしくっとメモに書かれており、入院先の病院も書かれてあったのであった。

真二は、家に携帯を忘れたため、登録されている幹事の武に連絡が出来なくて、知未を連れてとりあえず集合場所に慌てて行ったのであった。

朝飯も食わず今になってお腹が空いてきた真二であった。
地下街の喫茶店でモーニングをとり、知未といっしょに食事をするのであった。

食べたら知未は眠ってしまい、真二も、喫茶店の新聞を読み、少しゆっくりするのであった。

1時間ほどして、真二は、知未を起こし、タクシーで妹の入院している病院へ行くのであった。

真二は、タクシーの中で、「ともちゃん、よくみんなの年がわかったね・・なんで、わかったの?・・・おじさん、いくつに見える?・・」っと、聞いてみた。

する知未は、じーっと真二の顔じゃなく、頭の上を見て、「41歳!・・」っと大きな声で言った。

真二は、「えぇー、なんでだよ、みんなは当たっていたのに、身内の俺はハズレかよ・・・」っと、ちょっとがっかりしている。

知未は、「別に、年を言ったわけじゃないもん・・」っと言いかけていると、タクシーのラジオから、「番組の途中ですが、ここで、ただ今入ったニュースをお伝えいたします。」っと言っている。

「名神高速、上り車線、天王山トンネルで事故があった模様で、トラック、観光バスを含む10台の車両が、玉突き衝突をした様子で、火災が発生しているっという情報が入いりました」っと言っている。

真二は、「トンネルで事故ったら、通行止めになるだろうし、あいつらうまく通り抜けた・・・・観光バスって言ってたな・・まさか・・・」っと言うと「運転手さん、江坂の私の自宅に変更してもらえますか?」っと真二は、病院よりも家に忘れた携帯を取りに行こうとするのであった。

「武に電話しなければ・・・思い過ごしだといいが・・・」っと、後部座席から身を乗り出しながら、ラジオに集中していると、真二の背広の袖を引っ張って知未が何か言っている。

「おじさん、あれ、年じゃなくて、死んじゃう年だよ・・・」っと、いきなり、変な事を言い出した。

真二は、知未をじーっと見つめながら、「あっ・・・まさか・・・」っと、目を大きく見開くのであった。

ラジオから、トンネルの火災で、もくもくと黒い煙と、時折、火柱が見えると言って、消防隊も近づけないと言っている。

真二は、「絶望かも・・・」っと肩を落としながら、無邪気に眠ってしまっている知未の顔をぼんやりとみつめるのであった。

「俺は、41歳?・・・後3年・・?」と、つぶやく真二であった。
タクシーは、淀川大橋で渋滞に巻き込まれているのでありました。




恐るべき未来を知る知未ちゃん、あなたのそばにもこうゆう子がいるかもしれません・・・ね





   #017 「ゾンビ襲来・・・?」


「最近、やけに警察や特別機動隊が走り廻ってるよね・・」っと武が言っている。
「そうそう、この春先になると、やけにこの町も騒々しくなるのよね・・」っと友達の勝が言っている。

「なんせ、テロ集団が襲い掛かって来ると言って、警官が、むやみやたらに襲いかかって来ると言うじゃない・・・身なり格好が、おかしいっと云うだけで、特に問題がない人を間違って捕まえていると言う噂なんだって・・・」

「ほんと、怖いよね・・出来るだけ静かに、目立たなくしている方が得策だよね・・・」
「いやな世の中になったもんだ、昭和初期の憲兵みたいや・・・」っと、二人が立ち話をしていると、そこへ、血相を変えてひろしがやって来て、

「おい、おい、大変だ!、隣町にゾンビが一般市民を襲っているらしい・・・」っと息を切らせながらひろしは、しゃべっている。

「ゾンビにやられた一般市民が、逆にゾンビ化して、わしらの町に向かっていると言うじゃない・・・」

「まじ?・・・警察は、どうしたん?・・・」
「いや、警察や機動隊も歯が立たないらしく、これまたゾンビ化しているらしい・・・そして、どうもやつら、川を渡って各地へ移動しているみたいなんだよ・・・」

「家の近くにも大川があるよね・・どうしよう、早く逃げんとやられてしまう・・・」
「国防省はどうしてるの?」

「どうも、お手上げみたいで、よそからの応援を要請して、核爆弾で全滅させようとしているみたい・・・」

「なんやて、そんな、あほな、わしらはどうなるんや・・・」
「多少の犠牲は、仕方ないという見解らしい・・」

「えぇぇぇ・・神様・・・・助けて・・・」っと慌てて3人は家に帰り、荷物を持って遠くへ逃げ出すのでありました。


「先生、私やっぱり、花粉症ですよね」っと涙目の今日子が、診察を受けている。
「はい、立派な花粉症ですよ・・・花粉症は免疫システムが過敏になる為、花粉をばい菌と間違って起こる現象なので、しゃーないですね・・・

それは、いいんですが、ところで、実は、今日子さん、検査で小さな癌がみつかりました」

「えーー!、ホントですか?・・」
「はい、ほんとです。でも安心して下さい、初期なので、放射線療法で解決出来ると思いますが、癌細胞だけでなく、正常細胞も影響を受けるので、多少辛い事もあるでしょうが、頑張りましょうね・・・」っと、医師は今日子に言っている。

今日子は、「転移は、大丈夫ですよね・・」っと言って、花粉症の涙目が、本当も涙目になっていた。

「今の処、大丈夫だと思いますよ、治療が遅れると、癌細胞が血管に入り、やっかいですからね・・・早く治療をした方がいいと思いますよ」っと医師。

今日子は、病院を出て、「えぇぇぇ・・神様・・・・助けて・・・」っと言って、慌てて家に帰り荷物を持って、入院手続きをするのでありました。

病院のベッドで、今日子はカメラに向かって言っている。
「人間って、自分だけの物っと思っていると、その中には、何兆個の細胞たちが一生懸命に真面目に働いております。」

「みんなの為にも、日ごろから身体をいたわって、仲良く健康に暮らしましょうね・・・今日子でした。」

「ハイ、OKです!、今日子さん、疲れさまでした!」





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