寿命時計は、午後7時48分56秒です!

私の平均余命83.846歳(厚生労働省H28年度データ)を24時として、私の生きて来た人生は上の通りです。後残り時間は?

「思いつき、Myショートショート」#012~016

2013年03月26日 21時15分29秒 | 「思いつき、Myショートショート」
   #016 「GS・・・?」

「井上主任、いいとこ見つけましたよ」っと井上勝のデスクへやって来て、井上のデスクの端末を操作して、何やら検索をし始めた。

「ほら、これ・・・どう思います?・・・」っと、3年後輩の小谷徹が言っている。
大阪難波のビルにオフィスがある中古車販売の会社で、営業勤務をしている井上と小谷である。

井上28歳、小谷25歳のセールスマンである。
しかし、仕事の話だと思って、端末をよく見ると、「心霊スポット情報」であった。

「なんやねん・・・仕事の話とちゃうのん?」っと井上、「いやいや先輩、今度は本物ですよ!」っと小谷。

そう、この二人は、心霊写真を撮りたがる、心霊マニアたちであった。
そこへ、もう一人、事務の佐々木紗枝が、やって来て「まーた、油売っている・・!」っとニヤニヤしながら近寄って来た

佐々木は、小谷と同期であり付き合っている女性である。
去年、忘年会の帰りにこの3人が、酔い覚ましに、近くの神社で缶コーヒーを飲みながら休憩していた時に、境内の隅から火の玉のような灯りを目撃した時から、心霊にはまってしまった仲間でもあった。

佐々木が、井上の端末画面を見て、「あっ、これ、私も知ってる!・・今、話題の所やん・・」画面には、自殺者急増!と書いてあり、天王寺の7階建てビルから飛び降り自殺が後を絶たないらしい。

「先輩、今度行ってみません?・・今度は、イイ写真が撮れるかもしれませんよ・・・」っと小谷。

「ほんまかいなぁ・・・」っと言って、数日後、小谷と佐々木、井上の3人は、深夜11時頃、話題の雑居ビルに行くのであった。

その前に、ちょっと腹ごしらえに居酒屋に行って、心霊談義に花を咲かせてその後に、行ったのである。

雑居ビルなので、出入りが自由である。
3人は、そこの雑居ビルに入っているテナントの社員のふりをしながら、屋上で休憩するかのように、行くのであった。

ちょっと、お酒が残っている3人である。
屋上に行くと、近くに通天閣のネオンが見える。

「いゃー綺麗、こんな所から飛び降りるなんて、考えられへんわ・・」っと佐々木。
屋上には、涼しい風が吹いている。

3人は、屋上をくまなくデジカメで撮影をするのであった。
高感度カメラでフラッシュは焚かずに、絞りを全開にして、小さな三脚まで用意して撮影をしている。

ガラス窓の部分は、フラッシュを焚いて、ガラスの反射の様子を見るらしい。
1時間くらい、もそもそと撮影をしていたが、いまいち、何も映っていないカンジであるが、帰ってからパソコンで拡大して見るという楽しみにかけようとする3人であった。

屋上から帰ろうとすると、井上が「あれ、何だ!」っと言い出した。
二人は、振り返って井上の指差す方向に目を向けると、・・・・・「何がですか?・・」っと小谷。

「あれ、これって、何かの立体映像・・?」っと井上。
「何を言ってるんですか、通天閣でしょ・・・またまた、酔っ払ってるか、人を脅そうとしてるんでしょ・・・、もう、早帰りましょ、終電に乗り遅れますよ・・」っと言って、さっさとっ佐々木と小谷は、階段を降りるのでありました。

この時間になると、エレベータは止まっている。
「おい、ちょっと待ってくれよ・・・」っと言って、慌てて小谷らを追いかける井上でありました。

後から考えると、井上は、酔って幻を見たんではと、思うでありました。
翌日、お昼を食べた後、小谷と佐々木がデジカメのメモリーカードを持ってきて、井上の端末で、3人で検証するのでありました。

じっくり拡大しながら、見てもそれらしき、霊は映っていないのである。
「やっぱり、難しいのかなぁ・・」と佐々木。

しいて言えば、井上が撮った一枚だけ、屋上の隅っこに薄らと、白い影が写っているのがあり、拡大してみると、人間らしき顔が炎に包まれているような気もするが、気のせいかもしれないという写真であった。

「これって、心霊写真か、なぁ・・」っと首をかしげる小谷であった。
そうこうしている内に1時になり、小谷と佐々木は自分のデスクに戻り、「また今度、もう一度行ってみましょう」っと言っている。

井上のメモリーカードに写っていた写真よりも、あの幻がやはり気になるのでありました。

井上が見た幻とは、ビルの屋上、通天閣方面へ細い吊り橋がかかっており、下は谷底で薄暗くてよく見えないカンジであった。

吊り橋のかかっている向こう岸の崖から奥へと、一本道の小さな道であり、その先に洋館のような屋敷があるように見えたのである。

それが、通天閣のネオンの光と重なっており、よくは見えなかったが、やっぱり、あれは、本物じゃないかと疑う井上であった。

他の二人に話しても信じてもらえないので、こっそりと一人で、晩に雑居ビルに行くのでありました。

一人、雑居ビルの屋上でまわりを見渡している。
特に通天閣方面へは、双眼鏡を持ち込みじっくりと観察をしている。

やっぱり、何もない・・・まだ、時間もあるし、ちょっと、休憩しながら様子をみる事にした。

コンビニで買ったサンドイッチと200ccのワンカップ酒をチビチビとやりながら空を見ていた。

霊がダメならUFOでも見れないかなぁーっと思いながら、屋上の隅でぼんやりとしているのでありました。

最近、お酒を飲むと胃がチクチクして、あまり飲めなくなっており、この時もカップの半分位で、胃が急に痛みだした。

もう帰ろうと思った矢先、通天閣方面が異様に明るくひかり、幻だと思っていたあの光景が、井上の目の前に現れたのでありました。

「やっぱり、本当や!・・・幻ではなかったんや・・」っとおもむろにカメラを持ち出し、トクダネや!っと言いながらシャッターを切り続けるのでありました。

よく見ると、吊り橋の先が自分の目の前まで来ている事に気がつく。
触ってみると、確かに感触があり、「えぇぇ・・・」っと思っていると、ゆっくりと身体が勝手に動き、渡り始めたのでありました。

下は、黒く見えないほどの谷底、5分くらいかけてゆっくり歩いて渡り、向こう岸に着いて、ふと振り返ると、あの雑居ビルが見えている。

怖くなって引き返えそうかと思ったら、橋がスーっ消えてしまった。
「これは、夢だ!」っと思って、頬をつねったが、感触がない。

「やっぱり、夢だ!」っと思い、先を進む事にしたのであった。
しばらくすると、古い洋館が見えてきて、鉄格子の扉を開け、庭に入り、洋館の入り口に着いた。

「やっぱり、これは夢なんやなぁ」っと思う井上が見たのは、GSと書かれた電光飾の文字であった。

中に入ると、ホテルのロビーのような落ち着いた雰囲気である。
何人か、ソファーに腰掛けながらテーブルの飲み物を飲んで歓談をしている。

右手にフロントらしきカウンターがあり、井上はそちらに行くのであった。
カウンターには、グィネスパルトロウ風のちょっとタレ目美人が、井上の方を見て微笑んでいる。

「お待ちしておりました」っと女性。
「えっ、僕の事知っているんですか?」っと井上。

「ええー、井上勝様、よくいらっしゃいました・・・まぁ、よろしかったら、お酒でもいかがですか?・・」っと、カウンターごしに、グラスにお酒をつぎ、井上の前に差し出した。

井上は、カンターの席に座り、「いやぁー、今日は胃の調子が悪いんで、遠慮しときますわ・・・」っと言って、自分の胃を押さえると、痛くなくなっている。

嘘のようにキリキリと差し込んでいない。
「あれっ」っと思いながら、注がれたグラスを口にして、ちょっと飲んでみたら、何ともない。

っと言うよりも、「これ、バーボンじゃないですか?・・よく僕の好みがわかりましたね・・・」っとすると、女性はビンのラベルを井上に見せると「うわっ、アーリータイムズや!・・・なんで・・・なんで・・僕の好きなお酒、わかったんですか?・・」っと井上は驚いている。

「これは、夢やったなぁ・・」っと思っていると、「井上様の事は、なんでも知っております。今日こちらに来ていただいたのは、井上様の今後についてでございます。」っと、一礼をして話続けるのであった。

「ご存知かどうかわかりませんが、まもなく井上様は、今のお身体から離脱する事になります。つまり、胃癌で亡くなるという事でございます。」っと淡々としゃべっている。

「えぇぇー、何ですか、どうゆう事ですか?・・・ここって、一体どこなんですか?・・・」っと立て続けにわめく井上。

「落ち着いてください・・・ここは、現世から旅立たれる方への今後についてのお知らせをする案内所でございます」

「言っている意味がわからない・・・」っと、グイっとグラスのお酒を飲みほす井上。
「表の看板にGSっと書いてあったけど・・ガソリンスタンド?」っと井上。

「いいえ、油は売ってはいません、真面目に仕事をやっております。これは、ゴッド・ステーションの略であります。私は、神に仕える従業員の一人で、みなさま方の案内役を仰せつかっておりまする」

「それで、井上様は、まもなく亡くなられます」っと言って、井上のグラスにバーボンをついでいる。

「まもなくって、いつ?・・」
「正確な時間は、私には、わかりかねます・・・」

「井上様がなくなる前に、選択が出来るのです、選択とは、・・・・」っと言って、奥にある二つの扉を指差している。

「右手の黄色いドアが、即、成仏出来る扉で、左手の青い扉が、現世に通じる扉であります」

「成仏出来れば、新しいお身体をご準備しますので、待機して頂きます。しかし、現世の記憶は全て消去されてしまいますので、もう、ご家族の方とかお別れが出来ません」

「そして、もう一つの扉は、入って奥にあるトンネルを通れば、元いた場所に戻ります。ご家族に会ってお別れをする事が出来ますが、肉体の痛みや悲しみが降りかかり、最後を迎えます。」

「そして、金色の光の帯が天から降り注がれたならば、すぐにそこへ入って下さい。
途中、誰からも声をかけられても返事をせずに、まっしぐらに行ってください。」

「でないと、浮遊霊につかまり、二度と成仏出来ない恐れがあります。」っと井上の目を見て話す女性。

頭がクラクラして来た井上だったが、死を覚悟したみたいであった。
半分やけくそに、バーボンをドンドンおかわりして酔っ払うのであった。

そして、「とりあえず、家族に会ってからですね・・・」っと言って、ふらふらしながら、左の青い扉に向かうのでありました。

じーっと、井上を哀しそうに見つめる神の使いである案内役の女性に「すみません」っと声をかける女性が来て,おもわず「いらっしゃいませ!」っと笑顔で応対する女性であった。

井上は、ドアを開けると、小鳥がさえずる竹の小路が見え、「あーあ・・」っと竹やぶに腰掛けてぼんやりするのであった。

すぐそこに、トンネルが見えている。
目をつぶると走馬灯のように、家族や友達の事が目に浮かぶのであった。
目頭が熱くなり、溢れてくるのであった。

一方、雑居ビルの屋上で意識不明の男性が、救急車に運ばれ病院にかつぎこまれるのであった。

病院側ですぐさま、井上の会社の身分証明書から、会社に連絡、連絡を受け取った小谷は、井上の家族に連絡をして、佐々木と共に病院へ駆けつけるのでありました。

ベッドに横たわる井上の姿を見て、小谷と佐々木は「なんでまた、一人で行ったんや」っと突然の事に動揺を隠せないでいる。

家族も、井上の病気を突然医師に聞かされ大泣きである。
その本人の井上は、どうも竹林で眠ってしまったみたいであった。

あたりを見渡すと、竹林やトンネルがゆがんで見えるのであった。
だんだん薄くなり消えそうになるトンネルに慌てて駆け込み、現世に吸いこまれて行くのでありました。

気がつくと、真っ暗の狭い部屋にいるようである。
目も徐々に見えるようになり、指先にも血が通い始め、仮死状態の身体から生気を取り戻す井上であった。

耳も聞こえるようになり、遠くでお経に混じって泣き声が聞こえるのであった。
そして、機械的な音と共に、井上の入っている部屋が動き出した。

井上は、これが棺おけだとすぐわかり、ドンドンと天上を叩き、「俺は生きてるぞ!」っと叫ぶのでありました。

しばらくすると、ゴー!っという音に包まれるのでした・・・・

以前、井上があのビルで撮った白い影・・・・初めて撮った心霊写真が、まさか、自分の未来の姿だったとは、本人知るよしもないのでありました。



  #015 「人生は、チャラ・・?」

悟と舞は、安アパートにいっしょに住んでいる。
悟23歳、飲食店の店員でアルバイトをしている。

同じく舞も近くのスーパーで、レジ打ちをしているパートさんである。
舞22歳、二人がこの町に住んで一ケ月になるだろうか。

貧しくても、若さと信頼の絆で、日々を過ぎしているのであった。
ある日二人は、この町の氏神さんにお参りをしようと、小高い丘の上にある神宿神社に来たのだった。

舞が、おみくじを引こうと言うと、悟は、「そんなの当たらないよ、お金がもったいないよ」っという間もなく、舞は200円でおみくじを引いていた。

くじを開けると、なんと「大吉」で、望みが叶うと書かれていた。
舞は、大喜びをして、記念写真を撮ろうと言って、悟といっしょに携帯で撮るのであった。

悟も、けなしてた割には、まんざらでもなく、喜んでいる。
そして、おみくじがいっぱい結んである枝に結ぼうとすると、悟が、「これだけあると、僕らの大吉が目立たないから、どこか目立つ所がいいなー」

舞が、「あっ、いい所、見つけた」っと言って、しめ縄の張ってある御神木にくっつけようとしている。

「この樹って、やばくない・・?」っと悟。
すると「こら、お前らどこに、くっつけてるんや・・・」と、どこからともなく、聞こえて来た声に、二人は、びっくりして、「ごめんなさい」っと、キョロキョロしながら謝っている。

「こっち、お前らの目の前の樹や・・・」
二人は、樹がしゃべったっと逃げ出そうとすると、「待ちなさい・・!」と樹の主の声。

「君たち、大吉を引いたのよね・・・望みを叶えてあげようか・・・」っと樹の主。
二人は、「はい」っと言って、樹の周りをまわりながら、声の出所を探している。

「どっきりやないよ、この御神木の主なのよ、怪しいもんでもないよ、神に仕える従業員の一人よ」っと言っている。

二人は、笑いながら、「それだったら、山の手の豪邸に住みたいんだけど、願いが叶うの?」
「そして、100迄長生きして舞と二人、いや、子供たちや孫と幸せに暮したい・・・」っと悟。

「まぁ、所詮、人間の願いってそんなもんや・・・な」
「いいか、よう聞きや、ここだけの話やけど、君たち人間は、この現世で、服役している囚人なんやで・・・」っと樹の主。

「意味、わかんない」っと二人。
「あのな・・・・・・おい、そこの女、しめ縄から、勝手に中へ入るな!・・・あのな、君たちの身体の中に入っている魂が、君たちその物で、外側の肉体が、魂の自由を奪う足かせであり、鎖なんだよ」

「刑期を終わるまで、そのやっかいな肉体と共に暮らす事になっているんや」っと樹の主。

「おっしゃっている意味が、いまいち、わからないんですが、刑期って、私たち何をしたんですか?」と舞。

「それは、下々の俺の立場ではわからないし、刑期も何年かはわからない・・・」っと樹の主。

「はぁー、なんか、馬鹿馬鹿しい気がしてきた」っと悟。
「まぁ、待て、ここにいる人間全てが罪人、つまりこの地球全体が刑務所みたいなもんなんじゃ、・・・・刑期も魂の罪にもよるが、500年から1000年くらいが普通かな?・・・人間の寿命が90年くらいとして、早死にしなければ、6回から十数回生まれ変わって、服役する事になるんやね。」

「死ねば、今までの記憶を消され、成仏し、新たな人生を送り、来世から来世へと刑期満了まで続くんやね。」

「一端死ねばどこへ行くんですか・・・?」っと悟。
「おまはんが立っている、地球の奥深く、コアの部分じゃ・・・つまり地球の中心部で再生され、地表に魂として送られるんじゃな・・」

「さっき言ったように、魂がその物で、肉体は、車みたいなもんやね。」
「魂が運転手で、車が動かなくなったら廃車して、新しい車、新車に乗り換えるでしょ・・・それといっしょ!わかる?・・・そして、ある刑期の年数が終われば、晴れて足かせの肉体がとれて、魂・・念だけになり、自由となり幸せの境地に入れるんだよ・・・」っと樹の主。

「わかったようで、よくわかんないけど、でも、僕たち、今幸せですよ・・・」っと舞と顔を見合わせる悟。

「でも人生、悲しみ、苦しみ、喜びなど様々な喜怒哀楽の感情の渦の中でもがいて、結局は死という最大の悲しみの終着に達するんだよ・・・誰しも・・・」

「我々の世界での幸せとは、そうゆう煩悩や感情を超越した、無心の世界を言うんじゃよ・・・悟りに似ているかもね・・・」っと樹の主。

「もうこんな時間、悟、今晩何食べたい?」っと舞。
「おい、人の・・・神の話を聞いてなかったんか・・・っちょっと、待ちぃなぁー」っと帰ろうとする二人を必死で呼び止める樹の主。

「何ですか、もういいです、明日、朝早いからまた気が向いたら来ますよ」っと悟。
「ちゃうちゃう、ちょっとお願いがあるんや・・・」っと樹の主。

「逆でしょ、人間が神に願い事をするのが普通で、神が人間にお願いなんて、聞いた事ないっしょ!・・・」っと悟。

「いや、実はね・・・」っと樹の主。
「誰も、話し聞くとは言ってないし、話、進めないでよ・・・」っと悟。

「まぁ、そう言いなさんな、まじで、君たちの望みの豪邸をプレゼントしようやないの・・・頼みを聞いてくれたらやけど・・・どう・・・そこの綺麗なお嬢さん・・・」っと樹の主。

「気持ち悪いな・・でも、話だけなら聞いてあげてもいいかな?・・・」っと舞。
「よっしゃ、よう言った、実は、簡単な事じゃ、わしの裏に小さな砂のような入った袋があるじゃろ・・・それと、神社からくすねたお守りがあるじゃろ・・・」

「くすねた・・・?」っと悟。
「まぁまぁ、細かい事は気にせんで・・・その金色した砂粒、仏舎利をお守りに入れて、この町の人間に配って欲しいんじゃ・・・えっ・・質問は後じゃ、わしがしゃべっているから、最後まで聞け・・・えー、それでな、なんでそんな事をするんやっと言いたいんじゃろが・・・つまりこの砂粒は、発信機の役目をしていて、全ての罪人、いや人間に付けたいんじゃ、なぜかと言うと、どこに何という人間がいるのか、把握してないからなんじゃ・・・神のホストコンピュータが壊れてなぁ・・・各社寺に指令が降りて、情報収集をする事になったんよ・・・わしがやればいいんじゃが、浮遊霊を成仏させる仕事があるんで、手が廻らないんよ・・ね・・」っと樹の主。
「タスケテ・・・」

「でも、このお守りをみんなに渡しても、必ず肌身離さず付けているとは限らないと思うんですが・・・」っと舞。

「あー、大丈夫、この粒が一端、人の手に渡れば、身体に入り込み、そこから発信するから大丈夫・・・」

「これって、寄生虫?・・・」
「あほな、魂じゃぞ・・・一年しか持たないけどね・・よくお守りを一年経ったら、正月なんかに社寺へ返すでしょ・・・魂抜きをするからって・・・聞いた事ない?・・・あれといっしょ・・」

「とにかくこの地域はわしが、やる事になってるんだけど、さっきも言ったように浮遊霊を一掃しなければならんでな・・・悪い・・・」

「浮遊霊って何?・・・」っと悟。
「普通、我々のシステムでは、人間が何らかの事情で死に至って、刑期の中断が起こると、次の肉体の手配をして、古い肉体から離れた霊魂を回収して、浄化し、新たな肉体に宿す作業がある。」

「つまりこれが成仏させるっと言う事じゃな、しかし、現世に未練が残ってしまう霊魂が、たまにあり、成仏出来る光の帯に入らずに、さ迷う事が多々あるんじゃ、これが、やっかいで、一度成仏出来なかったら、自力では成仏出来ず、一生無限に現世でオーブとなってさ迷う事になるんじゃ、それだけなら、おとなしくしていればまだましじゃが、中には、恨みで死んだ魂があって、この念が強く、何も知らない浮遊霊を誘って吸収、増大なオーブとなり、すごいネルギーを発して、現世に悪影響を及ぼすんじゃ・・・これが、人間どもが恐れている呪い、怨霊というものである。」

「なんとか、悪霊を成仏させる為に、人間に宗教を覚えさせ、釈迦やキリストなどに成仏させる仕事をさせており、また一般人間にも霊媒師を配して、浮遊霊、悪霊の成仏をさせているんじゃが、まだまだ手が足りなくて、わしも忙しくて、神の人間名簿造りまで、手がまわらないんよ・・・わかってくれる?・・・」っと樹の主。

「うーん、本当に、さっきの願いを叶えてくれるの?・・・そして、100歳まで幸せに生きられる?・・・」と悟。

「あー、保証する、しかし、言っとかねばならないんだけど、世の中の現象の法則として、静止している物が動こうとすると、元に戻そうとする反発するエネルギーが生まれ、動いた分、逆に動くという法則、つまり、人生を人間界でいう富裕になると、反発して、極貧になるよっという法則、名づけて「人生、チャラ法則」プラスマイナスがゼロになるという法則なんよ。」

「今、富裕層の仲間入りをしても、来世では、極貧で苦労する。
しかし、次の来世では、富裕になるかもしれない・・・金持ちでもなく、そう貧しくもない中間層が、一番安定して幸せだと思うんやけどなぁ・・・それでも、棚ボタで豪邸が欲しい?・・・」っと樹の主。

「うーん、ちょっと考えさせて・・・この仕事終わってからでもいい?・・・」っと悟。
「あー、いいよ、よーく二人で考えて、物欲よりも、もっと大切な事に気づけば、服役終了になるかも・・よ・・・、あっ、ごめん、如来会議を忘れてた・・・ワリイ、先、行かせてもらうわ・・・それ、頼んだよ・・・」っと言って、御神木が大きく揺れると、金色をした眩しいオーブが、空高く上って行くのでありました。

「あー、言いたい事言って、行っちゃった・・よく、しゃべる神だよね・・・」
悟と舞は、夕陽が差す境内をお守りの入った箱を抱えながら、空を見上げて歩いておりました。

「舞、どう思う?・・・」っと悟。
「なんか、夢見ているカンジなんだけど、でも、あの人が言っている幸せの価値観とやらが、なんとなくわかるような気がする・・・そして、悟といっしょになったのも、前世で結ばれなかった反動かな?っという気もする・・そういう意味では、私たち今が一番幸せなのかな・・っと思ったりもする」と舞が悟を見上げながら言っている。

「じゃ、来世では、今度は結ばれない・・・って事・か?」と悟。
「そうね、反動でもっと美男でかっこいい人とめぐり合えるのかもしれないよね・・・」っと舞。

「なんでやねん」
境内を歩いている悟と舞を夕陽が照らし、長い二人の影が、御神木に重なっておりました。



  #014 「屋 敷」

介護士の資格を持つ家政婦の飯島敏子(32歳)は、アパートで二人の小学生の子供と夫と4人暮らしである。

夫は、失業中である。
家計は苦しいながらも、一生懸命に働く敏子であった。

そんな敏子が、次の仕事場へ訪問するのであった。
門の入り口から、立派な屋敷の庭を通り、ドアのチャイムを鳴らすのであった。

この古い屋敷の庭には、珍しく黒いユリが咲き乱れていた。
屋敷の中から、主人である神頭幸恵が杖をついて出て来た。

81歳の老婆である。
一人暮らしで、お手伝いさんもいない。

敏子は挨拶をして、幸恵の血圧を測り、お風呂の準備をするのであった。
二人はたわいない世間話に花を咲かせていた。

敏子は、初め幸恵の事を気難しい人だと勝手に想像していたので、ホっとしている様子であった。

しかし、幸恵は、家族については、あいまいな事しか言わないので、敏子は、あまり聞かないようにするのであった。

月日は流れ、次第に屋敷に慣れ、自由に買い物などのお金も任されるようになるのであった。

そんなある日、タンスの中を整理していたら、屋敷の登記済権利證書を見つける。
じーと権利證書を見つめる敏子、敏子は司法書士の勉強もしており、ゆくゆくは資格も取りたいと思っていたので多少の知識はあった。

敏子は、急に魔が差し、その権利證書の名義を自分に書きかえるように手続きを図るのであった。

アパートに帰り、夫や子供に、もう少しでいい家に住まわせてあげるからねっとニヤニヤする敏子であった。

そんな妙な動きの様子を幸恵は、見て黙っているのであった。
敏子は、見られているとは知らずに、幸恵の字を真似、印鑑を勝手に持ち出し、自分名義に書き終えるのであった。

すると、どうした事か、敏子は、みるみる内に老いて老婆になり、杖がないと立っていられなくなるほどに老けてしまうのであった。

ぼーぜんとしている敏子は、自分の後ろから、誰かがゆっくりと近づいて来るのがわかり、振り向くと、知らない女性が立っているのであった。

「誰!」っと敏子は、叫んだが、よく見ると、幸恵の服装の女性であった。
幸恵は、敏子に向かって「ご苦労様、大成功・・だね・・」と言った。

「この日を待ちわびたよ」っと言うと、何がなんだか、訳がわからないで、うつむいている敏子に、幸恵は、椅子に腰掛け、いきさつを話始めるのであった。

要点は、こうである。
1年前、21歳の幸恵は、この家の財産に目をつけ、夜、盗みに入った時に、ここの住人である80歳の神頭貞子に見つかり、殺害し、この屋敷の庭に埋めたのであった。

そして、ここの家の権利證書を見つけ、知人を介して、名義を変更したのであった。
すると、幸恵の姿が、80歳の貞子の身体と同じになってしまった。

自分の身体ではあるのだが、貞子の年齢と持病を引き継いでいる状態であった。
顔や姿は、老婆になり、友達にも信じてもらえず去られて行き、行方不明扱いなってしまう。

その結果、一人ぼっちの孤独な老人になってしまうのであった。
逆に、埋めた貞子は、幸恵の21歳の若さで死体の姿になってしまったのであった。

幸恵は、これはこの屋敷の呪いだと思い、誰かを身代わりにしなければと、網をはって求人広告を出したのであった。

そして、ひっかかったのが敏子であった。
敏子は、幸恵の話を半信半疑で聞いていたが、この現象で信じざるを得なかった。

敏子は、勝手な幸恵の話を聞いている内に、むらむらと怒りがこみ上げ「きっと、お前を殺してやる・・・」っと憎悪をむき出しにするのであった。

幸恵は、これで解放されたと思い、笑いながら身支度をして屋敷を出て行った。
残った敏子は、家に電話をして、夫や子供に来てもらったが、老婆の敏子を信じてもらえず、夫は帰ってしまうのであった。

途方にくれ、一人取り残された敏子は、どうする事も出来ない自分に沈みこんでしまう。
一方、屋敷を出て行った幸恵は、昔の泥棒仲間の妹分である静代に会いに行った。

1年ぶりである。
ちょっと老けた幸恵に、ピンと来なかった静代だったが、すぐに打ち解け懐かしがるのであった。

静代は、幸恵がいなくなって1年、ホームレス同然のみすぼらしい暮らしをしていたのであった。

そして、幸恵は、静代の話を聞いて愕然としてしまうのであった。
数日後、幸恵は、私に考えがあるから心配をするなっと静代に言って、もと居た屋敷へ静代と戻るのであった。

屋敷に戻ると、驚いている敏子に、幸恵は、ここであった今までの事を内緒にしてくれるならば、ここにいる22歳の静代の若さをあげるというのであった。

ホームレス同然の静代に、いい暮らしをさせてあげたいからだと言うのであった。
敏子は幸恵の話に腑に落ちない様子であったが、早く自分の家族の元に帰りたかったから、幸恵の条件を呑むのであった。

そして、敏子から渡された書類に静代はサインをすると、みるみる内に、敏子は若返り、静代は老婆と化するのであった。

それを見た幸恵は、老婆と化した静代を抱きしめ、静代の耳元へ「これでもう苦しまなくても大丈夫だよ・・・後は、別の若い身体を見つけてあげるからね・・・」っと言っている。

幸恵は、背後に近づく気配を感じ取ると背中に激痛が走るのであった。
敏子が、果物ナイフで背中から一撃で幸恵を刺したのであった。

「お前を殺してやるっと言っただろう・・・」っと若くなった分、憎しみも倍増された様子であった。

しかし、我に返った敏子は、急に怖くなって屋敷を逃げ出すのであった。
泣きじゃくる静代に抱かれながら、幸恵は「やっぱり、この屋敷は呪われているんだな・・・静代・・・ご・め・ん・・・」っと言って息を引き取るのであった。

屋敷内に、老婆になった静代の声が悲しみに響くのであった。
敏子は、真っ直ぐ家に帰ると、半信半疑の夫や子供たちが、敏子を温かく迎えてくれるのであった。

また、もとの生活に戻ったと敏子は思い、家族の幸せな日々を送るのであった・・・・
しかし、半年後、敏子は癌で亡くなるのであった。

そう、敏子は、末期の癌の静代の身体を受け継いでしまったからであった。
同じ頃、屋敷内で一人取り残された静代は、幸恵の亡骸を横に、何も食べられなくなり、衰弱し、死んでしまうのでありました。

すると、どこからともなく火が屋敷内に出て、みるみる内に全焼してしまうのであった。
消火にあたった消防団員が、焼け跡から、幸恵と静代の死体を発見し、庭のから土に埋まった白骨化した遺体、貞子の亡骸も発見するのであった。

その遺体の手には、権利證書の燃え残りを握りしめてありました。
この花壇も火がまわり、焼け焦げたが、一部残った百合の花の色が、黒から白くなって生き生きと咲いているのでありました。




  #013 「死神シンちゃん」

小山大二郎、43歳、某中小企業の営業課長職である。
この不景気で、営業部の成績が伸び悩んでおり、毎晩遅くまで、残業やら会議で身体を酷使しているのであった。

そんな大二郎の唯一の慰めはお酒であった。
会社帰りには、いつもの小さな小料理屋のカウンターで、一杯引っ掛けるのが常であった。

しかし、最近の健康診断で、肝臓の数値で引っかかり、病院で診て貰うように言われるのであった。

休肝日なしで毎晩飲んでいる大二郎にとって、耳が痛いところであったが、部下の手前仕事を抜けて、病院で再検査を受けるのは、抵抗があったが仕方がない。

数日後、再検査の結果を聞きに病院へ行くのであった。
病院で診察の順番待ちをしていると、名前を呼ばれた。

診察室へ歩き始めると、診察室から、大二郎の前の患者が出て来て、やけにニヤニヤして出て来る姿が印象的だった。

「きっと、検査結果がよかったんだろうな・・・」っと心の中でつぶやいて、自分もそうなりたいと願うのであった。

しかし、大二郎の期待もむなしく、医師から出た言葉は、凍りつくような言葉であった。
大二郎は、「ま、まっ、末期の肝臓癌ですか・・・・」っと信じられない様子。

自分でも肝臓の調子が悪い事は感じていて、慢性の肝炎かな?っと疑った事もあったが、いきなりのまさかの展開である。

医師は、静かにうなずき、MRIの検査写真に目をやり、説明をするのであった。
恐る恐る余命を聞いたら、医師の言葉は、あと半年という冷たい返事であった。

目の前が真っ暗になって、どう病院を出て、どのように自宅に帰ってきたか、全然覚えていない状態であった。

ふと気がつくと、布団の中でうずくまっている自分を感じ取っている。
目には熱いものが溢れ、枕を濡らし、ボーっと天上を眺めていると、目の大きなギョロっとした男が、大二郎の顔を覗き込んでいるのが目に入り、「うわぁぁぁー!・・」っと大声を出してしまった。

男は、貞子のような髪の毛の長さで、ボロ布をまとっており、一件、ねずみ男のような出で立ちであった。

男は、大二郎本人かを確認する為に、彼の背広の胸ポケットの運転免許証入れの中の写真を見て、何やら紙を入れているのでありました。

見るからに死神のような風貌に、大二郎は、とうとう来たか・・っと思うのであった。
そんな、大二郎の様子を見て、「あれ?・・僕の姿、見えるの?・・・」っと言って、大二郎の顔面10cmまで近寄って来た。

「希に、あるんだよねー、普通は見えないんだけど・・・私、自己紹介をすると、あなたの思っている通り、死神でありんす、シンちゃんと呼んでください」

怖い風貌とは違って、軽いノリの死神である。
「とうとうお迎えが来たのか・・・」っと、踏んだり蹴ったりの自分の人生に哀れさを覚える大二郎であった。

しかしながら、よく考えてみると「あれ、先生(医師)は、余命半年って言ってたのに、なんで・・・」っと聞き返すと、死神は、「あぁ・・、君は癌では死なないよ!」っと言っている。

「えぇー、・・・・じゃー・・誤、診なの・・・?」っと目を大きく見開いている。
「誤診・・・と言えば、そうなのかもしれないけど、君は交通事故で死ぬんだよ」っと死神。

「はぁ・・・、やっぱり死ぬんじゃないの・・・」
「でも、交通事故なら今からでも避ける事、出来るよね・・・」

死神は、「君には理解出来ないだろうけど、きまりは決まりで変更が出来ないんだよ」っとおもむろに、タブレット端末を出して、ボヨヨーンっと映像を出すのであった。

大二郎は、死神の端末から3D映像が、飛び出して来たのを見て、「うわ、近代的・・・でも、なんでローソクの映像???」

そう、飛び出した映像は、死神の持ち物で古くから知られている、あの、寿命のローソクであった、ローソクには、大二郎の名前が付いていて、もう残りわずかで消えそうである。

「うわ、・・・何とかしてよ、消えちゃうやないか・・」
「隣の長いローソクに取り替えてよ・・・昔、映画で見たよ・・はやく・・」

「あほぬかせ、そんな事出来るわけないやろ」
「昔は、こそっと寿命ローソクの小屋に行って、他の人のローソクを折って、接ぎ木みたいにした事もあったけど、今は、データ管理の時代やから、勝手に操作は出けへんのや・・・あほ」っと死神。

「なんやねん・・」「じゃ、オレにどうしろと言うんだよ・・・」っと大二郎。
「いやー、ちょっと話づらいんだけど、ここだけの話なんだけど・・・」っと急に大二郎にすり寄る死神。

「実は、さっき行った病院なんだけど、ちょっと手違いで、君のカルテと他人のカルテを間違ったみたいなんだよね」

「はぁー、どうゆうコト?・・・・!」
「むー、病院へ行った時、ほれ!君の前のニヤニヤした患者、いただろう?」

「あー、嬉しそうに帰って行ったやつね・・・いたいた!・・・」
「あいつは、小山田二郎と言って、病院が偶然に名前を読み間違えたんだよね・・・ハハハ・・」

「君の名前と似てるだろう?・・・ほれ、小山田次郎、小山大二郎・・・ね」
「なんやて、そうすると、俺の前にいたやつが・・小山田やったっけ・・・そいつが、末期癌で・・俺はどうなの?・・・」

「至って健康みたい・・・・」笑顔の死神。
「はぁーん・・・、それで、あいつはニヤニヤとしてたんやね・・・」

「それと、あんた、死神とどうかかわりがあるの・・・・」
「それやがな・・・あいつ、小山田次郎は、誤診だと気がづかずに、自分は健康だと思ってしまい、癌なのに思いっきり酒を飲みまくったのよね・・・昨夜」

「それで、急性アルコール中毒で、あっけなく死んじゃったのよね・・・」
「これが、こちらの想定外というか、スケジュール外というか・・大変な事になったのよね」

「なんで、どっちみち末期の癌で死ぬんでしょ」と大二郎。
「そうなんだけど、彼が、本当は、交通事故で死ぬ予定なんだよね・・本当は・・ね」

「予定通りに行かないと、周りの人の運命も少なからず影響が出るのよね・・・ホント」
「それに、彼はドナーカードを持っていて、移植提供者メンバーなのよね、だから、交通事故で亡くなった後は、彼の心臓を取り出して、ある大物政治家に移植をする予定になっているのよね」っと言いながら、端末を覗き込みながら、スケジュールを見ている。

「この大物政治家は、この日本を立て直す役割を背負っている大事な人なのよね・・」
「だから、上はてんやわんやの大騒ぎ・・・こんな不祥事は初めてだと・・・カンカンになっているのよね」

「まぁ、そちらの事情はわかったけど、俺には関係ないよね・・・」っと大二郎。
「いやー、ここからが本番なのよね、大二郎ちゃん・・」

「きもい・・・・近寄るな・・」
「実は、死んだ彼と君の名前もよく似ているんだけど、君の・・・つまり、心の臓も一致しているのよね・・・なぜか・・・」

「で、・・・・上は、君に目をつけ、彼のスケジュールを君に実行してもらい、事故で心臓摘出、移植という段取り・・・これで、日本も安泰じゃー、めでたし、めでたし・・・っというスケジュールに変更したんだけど、どう思う大二郎ちゃん・・・」

「あほ、なんでやねん・・・お前ら、勝手に人の運命をおもちゃにしやがって・・・・それに、なんでその死神の頭は、その政治家にこだわるねん?・・・」

「いろいろあるのよね・・・こちらの大人の事情ってものが・・・」
「それに、俺はドナーカード持ってないし、絶対、臓器提供はせえへんぞー・・・」

「こうゆう人がいるから、日本人は国際社会にとり取り残されるのよね・・・」
「なんでやねん、病院のチョンボと、ちゃんとそいつのフォローしなかった、あんたが悪いんでしょ!」

「まぁ、きつい、それを云われるとツライけど、ちゃんと大二郎ちゃんのフォローを、しに来たじゃない・・」

「なんでやねん、俺に死ねというフォローやんか・・・・フォローになってないやん・・・」
「まぁまぁ、そういいなさんな・・これからが本題やがな・・・」

「大二郎ちゃん、助けたる・・・バレたら地獄の門番させられるんだけど、事故現場と時刻を教えてあげるから、そこへは、絶対に行かないようにするんや」

「ええか、明日、・・・いや、今、深夜やから、今日やけど、朝の7時半に駅前に通じる交差点の茶髪草交差点があるじゃろ、あそこが事故現場や、右折車が、直進するオートバイに気をとられて、思わずダッシュしたら歩道を歩いているおマハンに突っ込むというスケジュール・・・」

「いくらなんでも、気づいて、歩道で立ち止まって、車をやり過ごすやろ・・・」
「いやー、甘い・・大二郎ちゃん、歩道を渡っている内に携帯がなるんやね・・これが・・・上の者が非通知無言電話をかけるんやね・・・」

「そして、ドーン!・・・救急車の中でご臨終というスケジュールでおます。」
「まぁー、手の込んだ事を・・・ようやるわ!・・・」っとあきれ顔の大二郎。

「それで、この交差点には、行かずに駅前に行く道で、遠回りになるけど、小さな交差点のある九番地交差点から駅に入ってね・・・」

「そして、お昼の12時まで、会社でじっとしていてほしい」
「なんで?・・・」

「大物政治家の移植のタイムリミットが、12時なんだよ。それを過ぎれば、もう、大二郎ちゃんの心臓は、関係ないっというワチキのもくろみでアリンス・・・」


「あんた、ナニ人や・・・・」
「でも、あんた、バレて、・・・・地獄の門番やったっけ?・・・落とされる事になるのと違うの?・・・」

「いいのよ、大二郎ちゃんのエエ歳した大のおっさんが、枕を濡らしているのを見て、気が変わったんよ・・・長生きして、残りの人生エンジョイしてな・・・」っと言うと、この死神は、涙を浮かべながら消えて行くのでありました。

どうも、死神が涙を流すと消えるみたい??・・であります。
「ありがとう、ええ死神も居てるんやね・・・感動するわ・・・あっ、地獄の門へ行く前に、俺の寿命ローソク、こっそり増やしといてね・・頼んまス・・・・」っと言って、こちらも薄らと目頭を熱くしながら、死神を見送るのでありました。

さて、大二郎は床に着いたのでありますが、失敗したら死ぬと思うと寝られなく、朝を迎えてしまいました。

そして、支度をして、家を出る大二郎でありました。
いつも通る茶髪草交差点を横目で見ながら、予定通り、路地に入り、駅の裏手にある九番地交差点に入りました。

ちょうど時間は、7時30分、・・・・っとその時、携帯が鳴り、大二郎は、電話機を鞄から取り出していると、そこへ路地から出て来た救急車が九番地交差点に飛び出し、大二郎を跳ね飛ばしてしまいました。

大二郎は、「わっ!!」っと叫びましたが、すでに遅く即死状態でありました。
救急隊員は、慌てて蘇生をしましたが、間に合わず、身元を調べるために運転免許証入れ見たら、死神が偽造したドナーカードが入っておりました。

救急車は、サイレンを鳴らしながら、町の雑踏の中へ消えていきました。
それを近くで見ていた死神は、携帯電話をかけている。

「次郎ちゃん、もう大丈夫だよ、君の心臓は、大二郎が身代わりになってもらい、おまけに、肝臓も貰えるように手配をしておいたからね。」

「安心して、お父様(大物政治家)によろしくと伝えておいてね。」
「じゃー、君の肝臓移植の段取りをするね」っと言って、死神は、携帯をしまうのでありました。

「次郎ちゃんには、末期の癌だと言ってないんだよね。」
「まぁ、何とかごまかすか・・な・・・」

「大二郎ちゃん、悪いね・・・騙してしまって・・・死神に上司なんていないのよね・・・これも、大人の事情なのよ・・・ね!」

そして、大二郎が事故にあった九番地交差点を見て、「車は急には、止まれない・・・か・・・なんちゃって・・・」っとポツリと言って消えて行きましたとさ。

ちなみに、茶髪草交差点は、逆から読むと嘘っぱちでありましたとさ・・・悪しからず!




#012 「さくらの花びら」

もう1年になるだろうか、亡くなった幸子を思い浮かべながら、浩二は幸子のブログを開いている。

幼馴染みで幼稚園からの付き合いであった。
いつもいっしょで、大学も同じで、いつしか口には出さないが、意識をしている仲であった。

そんな彼女に、突如白血病という病が襲い、昨年の春、帰らぬ人となってしまった。
浩二は、何も手がつけられないほど、泣きじゃくった。

ようやく、落ち着いて、幸子のブログをまともに見れるようになったくらいであった。
そんな幸子のブログには、二人で行った風景写真や、K君という文字が、浩二の心を締め付けるのであった。

もっと、いいたい事を口に出して言っとけばよかったと悔いを残している。
「そうだ、幸子のブログに書き込みをしよう」っと思いついた浩二は、想いをキーボードに走らせるのであった。

しばらくすると、「浩ちゃんありがとう、私も生きている内に、素直になって話しとけばよかったよね・・」っと返事が来た。

浩二は、びっくりして、「えぇー、誰か悪戯してんの・・」っと思い、「君は、誰?・・・」っと」書き込むと、「幸子よ」っと書かれている。

そう、ブログには、本名は書かれていないので、悪戯では、幸子という名前や浩ちゃんとい名前はわからないはずであった。

浩二は、「元気?そっちの様子はどう?・・・」っと恐る恐る書いてみた。
すると、「とっても穏やかでいい気持ち、ほわーっとして、ふわふわ浮いているよ」っと幸子。

浩二は、半信半疑ながら「何か、見えるの?」っと聞くと。
「霞のような薄い雲の上に、小さな笹の葉で作ったような舟の上に乗って、ゆっくりと流れているみたいなの」

「さくらの花びらがいっぱい浮かんでいて、変なんだけど上流へ流されているみたい」
浩二は、「他に誰かいるの?」っと聞くと、「話した事はないんだけど、いっぱい舟が浮かんでいて、赤い玉がその舟に乗っているの」

「たぶん、その玉がここへ来た人たちだと思うの」
「舟に乗って、どこかへ行くの?」っと浩二。

「わからない、ただ、急にその赤い玉が、舟からなくなっている時があるの」
「たぶん、もう一度人生をやり直す為に、下界へ行ったんじゃないかと思うの」

「じゃー、幸ちゃんもこっちの世界に来るかもしれないっと言う事なの?」
「たぶんそうなると思うの、でも生まれ変わる時、記憶を消されるので、浩ちゃんとわからない気がするの、もし、覚えていたら会いにいくね」

「わかった、デジャブーを期待しているよ・・・」っと浩二は、言っていた。

カーテン越しに朝日が、浩二を包み込んでいる。
浩二は、幸子のブログを開いたまま寝入ってしまったようである。

よく見ると、ブログに書き込んだはずの幸子とのやりとりが、載っていない。
「夢?・・・なんだ・・・・そうだよね」ちょっとがっかりしながらも、笑っている浩二であった。

「あっ、もうこんな時間だ、面接の支度しなきゃ」っというと、パソコンの電源を落とし、洗面所にいくのであった。

キーボードの上には、一枚のさくらの花びらが乗っているのであった。


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