ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

ありのままの

2019-08-30 08:27:24 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題
「生命尊重」8月26日
 『「ジビエ」野生呼び覚ます』という見出しの記事が掲載されました。『駆除されたシカやイノシシを、ライオンやトラなどの餌として与える大牟田市動物園の取り組み』について報じる記事です。具体的な様子も紹介されています。『毛や骨が付いたままのヤクシカに興奮したのか、日ごろはおとなしいホワイティ(トラ)は餌をくわえ獣舎の中をぐるぐると回り始めた。約20分間、くわえたり、なめたりを繰り返した後、皮をはいで肉をかじり~』と。
 記事によると、『欧米の動物園では近年、家畜をほぼそのままの状態で与える「屠体給餌」という取り組みが広まりつつある』とのことで、『野生動物本来の行動を呼び覚ますことで、オリの中での生活でたまったストレスを軽減』する効果が期待できるということでした。
 当然予想されることですが、一部には「かわいそう」という声もあるようです。しかし、私はこの「屠体給餌」というやり方に賛成です。以前、動物園で幼児が猛獣のオリに手を出し、手をかみちぎられるという惨事が発生したことがあります。その子は、絵本やアニメでみるトラやライオン、ヒグマやシロクマの愛らしい姿を頭の中に思い浮かべ、頭をなでなでしてあげようと思った、という趣旨のことを話していました。
 つまり、子供は野生動物の本当の姿を知らないまま、過剰な感情移入をしてたということです。私もそんな子供のことを笑えません。実際の野生動物の生態を知ろうともせず、勝手に擬人化して野生動物を見ていることが多いのです。
 ライオン親子を主人公にしたドキュメンタリーでは、何日も餌を獲れずに空腹で歩き回るライオンに同情し、草食獣を取り上げた番組では、間一髪ライオンから逃れることができたシカを見てホッとするという具合です。同じ行為を映しているにもかかわらず、設定によって、善人と悪人が入れ替わってしまうようなものです。
 動物を擬人化し、過剰に感情移入して可愛がるという行為は、真に動物を、その命を大切にしていることにはならないのではないかと考えます。生きるために殺して食う方にも、生きるために必死で逃げる方にも、同じように命のための必死な営みがあるというリアルな認識をもつことが、生命尊重の基盤であると思うのです。
 学校では、小動物を飼育する活動が盛んです。しかしそこに、保護されるべき命、人間より一段下にある命、という感覚を感じてしまうことがしばしばです。かわいそう、かわいい、という幻想だけで接している子供もいます。それは、本当の意味で生命尊重教育に結びついているのか、疑問に感じることもありました。
 生きるためには他の動物を殺す、それは我々人間も同じです。そうまでして生きてきたからこそ、生命は尊いのだという考え方、これが学校でも求められているのだと思います。
 
コメント
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