浅田次郎/講談社
西太后、張作霖に加え、袁世凱に対しても新解釈を加えた浅田氏の作品、読みごたえがあった。
私は宋教仁という人を知らなかったが、この人は斬新な考え方をもって袁世凱のブレーンとなったが、逆に袁世凱より支持されて、これからという時に暗殺されてしまった。宋教仁が生きていたら、彼の国は別の歴史・・もっと民主的な道を歩んでいたかもしれないが、暗殺されてしまって再び混迷の中へ。宋教仁を暗殺したのは一般には袁世凱と言われているが、はっきりはわかっておらず、孫文という説もある。本書ではそのどちらでもない人物を設定。
袁世凱は宋教仁を失ってから進路を見失い、列強による分割を恐れて帝政を敷くが、宋教仁のおかげで目覚めた民衆の反感を買い、100日で辞任。その後、本作ではハワイに逃れようとしたところ、宋教仁を殺した人物に憤死を装って殺されることになる。
順治帝が長城を越えるシーンと、張作霖らの馬賊が長城を越えるシーンを重ねる。張作霖らは天命を象徴する龍玉を保持している。龍玉を保持している者が天命を得た中国の本当の皇帝になるという氏の描いたストーリーがある。天命を得ない者が龍玉に触れると木っ端微塵に粉々になるという。末尾の占いによると張作霖が天命を得ていたのは、中国東北地方の支配者というところまでで、長城を越える程の力は持っていないということだった。本書ではまだ書かれていない、張作霖爆殺事件への伏線がここにあるのだな。
次回作のマンチュリアンレポートでそこらへんのところが書かれるのかどうか、溥儀や、日本から帰国した梁文秀がどう描かれるか・・楽しみにしている。