動物たちにぬくもりを!

動物愛護活動の活動経過や日々の出来事、世の中の動き等幅広く紹介します。

身重の体で震災直後の被災地へ動物を救いに行ったカナダ人女性

2020-03-15 06:00:01 | 東日本大震災

妊娠5カ月…身重の体で震災直後の被災地へ
 9年前、動物たちを救うため東日本を回ったカナダ人女性

2020年3月10日(火) まいどなニュース


東北の被災地で保護したクリスは今もスーザンさんと一緒に暮らしている

東日本大震災から9年がたとうとしています。
多くの人々が亡くなったのは言うまでもありませんが、動物たちもまた、命を落としたり、ケガをしたり、飼い主とはぐれたり…。
特に人の手で飼育されていた動物たちは、水も食べ物も調達する術を知りませんから、救うにはやはり“人の手”が必要でした。


取材前日にやって来た秋田犬のひめちゃんと。ハート徳島では今も約100頭の動物を保護

ニュースで一報を聞いた『NPO法人ハート徳島』代表のスーザン・マーサーさんは、すぐに行動に移しました。
ハート徳島は2006年に設立された動物保護団体。
2000年に来日したカナダ出身のスーザンさんが徳島、さらには四国全体の状況を憂いて、ボランティアさんたちと立ち上げたものです。
「徳島には野犬がたくさんいます。でも当時、それを管理するのは県の(動物愛護管理)センターしかなかった。四国全体がそうでした。保護された動物の90%が殺処分されていたんです。命を救うにはセンターだけでは無理。だからアニマルシェルターを作りました」(スーザンさん)
これまでに約2000頭の犬や猫を保護し、約1600頭を温かい家庭に送り出してきました。
譲渡先は国内にとどまらず、カナダ、アメリカ、フランス、ドイツ、ベルギーなど世界中に広がっています。


スーザンさんが被災地で目にした光景

そんなスーザンさんにとって、被災地のニュース映像は衝撃的なものでした。
動物たちのことを思うと、じっとしてはいられません。
すぐに志を同じくする仲間たちと連絡を取り合い、被災動物を保護するための団体『JEARS(ジアーズ)』を立ち上げました。
Japan(日本)Earthquake(地震)Animal(動物)Rescue(救護)Support(支援)の頭文字を取ったものです。
スーザンさんが初めて被災地に入ったのは地震発生の約1週間後。
宮城・石巻市の避難所を回り、現状把握などに努めました。
それから女川町、仙台市荒浜地区などに計4回。
5月には福島にも行き、被災動物の保護やペットフードの配布など、動物の命を救うために尽力しました。


被災地に入ったとき、スーザンさんは妊娠5カ月だった

実はこのとき、スーザンさんは妊娠中でした。
3月の時点で妊娠5カ月。
日本人の感覚でいえば、余震が続いている被災地に行こうとは到底、思わないでしょう。
周囲も猛反対するはずです。
でも、スーザンさんに迷いはありませんでした。
「カナダやアメリカでは妊娠中もランニングをしたり、体を動かすのが普通です。余震が危ないといっても、徳島にいても地震はあるかもしれないでしょう?自分の体は自分が一番よく分かっています。走ったりしないように気を付ければ、行くのは当たり前のことだと思っていました」(スーザンさん)
余震への恐怖心よりも、動物たちを助けたい気持ちのほうが上回っていたのです。
一緒に活動した夫の東條仁志さんも反対はしませんでした。
「言っても無駄なんで(笑)。さすがに原発の避難区域には行かせませんでしたけどね」(仁志さん)。


余震への恐怖よりも動物を助けたい気持ちが上回ったという


夫の仁志さんとともに被災地で活動

ただ、スーザンさんの活動が地元・徳島の新聞に掲載されたことで、担当の産婦人科医から厳重注意。
それ以降は徳島で保護犬や保護猫の受け入れに専念したそうです。
ハート徳島で引き取った犬や猫は全部で130頭ほど。
多くは里親さんのもとへ巣立っていきましたが、施設で寿命を全うした子もいます。
そして今も4頭がハート徳島で暮らしています。
スーザンさんたちが手を差し伸べなければ、被災地で命を落としていたかもしれない動物たちです。


スーザンさんのお腹にいた長男・兼衣(かい)君も元気に成長(右から2番目)。左端は夫の仁志さん、その隣は次男の之愛(のあ)君

最後にスーザンさんに尋ねました。
もしまた同じような災害が起きたら、同じ行動を取りますか?
「規模にもよります。東北の地震のようなスケールだと地元の団体だけでは無理ですから行くかもしれませんし、現地のことは任せて、私は他にできることを考えるかもしれません。東北の地震の後、日本にはたくさんの動物保護団体ができました。日本もアニマルレスキューの経験を積んだと思いますし、私はそのときにできることをしたいと思います」(スーザンさん)
最終目的は「レスキューが必要な犬や猫を減らすこと」。
そのためには保護・譲渡活動だけでなく、「ペットショップで買うのではなく、保護犬や保護猫を迎えること」「最後まで責任を持って飼うこと」などを伝えていくのも大切だと話します。
遠くカナダからやってきた一人の女性が、日本の動物たちの命を救い、未来への希望を与えています。

(まいどなニュース特約・岡部 充代)

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