動物たちにぬくもりを!

動物愛護活動の活動経過や日々の出来事、世の中の動き等幅広く紹介します。

ツシマヤマネコの餌場保全へ 

2022-01-31 05:44:35 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

ツシマヤマネコの餌場保全へ 
「保護区」の植生後退 守る会、3月から植樹

2022年1月14日(金) 長崎新聞社

対馬島内に推定90~100匹生息するとされ、絶滅が危惧されている国の天然記念物ツシマヤマネコの保護活動をしている長崎県対馬市のNPO法人「ツシマヤマネコを守る会」(山村辰美会長)は3月から、同会が独自に設置したツシマヤマネコの「保護区」で植樹活動に取り組む。
常緑樹400本を植樹し、ヤマネコのすみかや餌場の保全につなげる考えだ。


植生が後退し、荒れた保護区を歩くツシマヤマネコ=2020年9月、対馬市上県町(ツシマヤマネコを守る会提供)

守る会は1993年に発足。島内外の会員約300人で構成している。
保護区は、対馬北西部の上県町佐護地区の75ヘクタール。
守る会が10年ほど前から会費や寄付金、補助金で民間から買い取った山林で、ヤマネコの水飲み場などを設けるなどしてきた。
しかし近年、イノシシやシカによる食害に加え、塩害により保護区の植生が後退。かつて生い茂っていた草木が徐々になくなり、ヤマネコの身を隠す場所や、ネズミやモグラといった獲物となる小動物が減っていた。
植樹するのは、ヒノキ科のカイヅカイブキとレンプクソウ科のサンゴジュ合わせて400本。
いずれも民家の生け垣や街路樹によく使われ、丈夫な樹木として知られているという。
植樹の資金確保のため、守る会は10月からクラウドファンディング(CF)で寄付を募り、約500万円を集めた。
資金は苗木の購入費用に加え、作業に使う重機のレンタル代や作業員の人件費などに充てる。
守る会の羽根佳雄理事(60)は「山林を増やすことはヤマネコだけでなく他の生物や人間にとってもいいこと。こうした植樹活動は守る会だけでは限界があるので、島内で広がってほしい」と話す。

 

ツシマヤマネコについて

更新日:2021年4月1日 長崎県対馬市

 

ツシマヤマネコ【国指定天然記念物】

 ツシマヤマネコは対馬にのみ生息する野生のネコ科哺乳類で、約10万年前に当時陸続きだった大陸から渡ってきたベンガルヤマネコの亜種とされています。
生息環境の悪化や、交通事故などで生息数が減少し、2010年代の生息数は70頭又は100頭と推定されています(注釈)(2012.環境省)。
(注釈)生息数を推定するために用いた方法(計算式)が2通りあるため、推定された生息数も2つになっています。
1971年には国の天然記念物に、1994年には国内希少野生動植物種に指定され、現在、保護および増殖のための事業が実施されています。

ツシマヤマネコ寄付金申込方法

ツシマヤマネコの特徴

体重3~4キログラム、体長70~80センチメートルと、イエネコとほぼ同じ大きさですが、ツシマヤマネコにはイエネコとは異なる特徴が何点かあります。

対馬野生生物保護センター

ツシマヤマネコをはじめとする対馬の生き物の生態や危機的状況、保護の取り組みについて解説し、野生生物保護への理解や関心を深めていただくための普及啓発や、ツシマヤマネコの保護増殖事業・調査研究業務・情報収集などを実施しています。
ツシマヤマネコをはじめとする対馬の生き物を守るためには、市民・専門家・行政団体等様々な関係者と連携を取り進めることが必要であり、センターはこれらの接点としての役割を果たしています。
館内では以下の見学ができます

ツシマヤマネコの一般公開

2003年12月から、ヤマネコの一般公開が始まりました。
現在公開されているヤマネコは四代目で、飼育下繁殖事業に取り組んでいただいている福岡市動物園で生まれ、対馬にやってきました。
一般公開されるにあたり、対馬の古代山城・金田城(かなたのき)にちなんで「かなた」と名付けられました。
金田城と同様に多くの人に関心を持ってもらい、日本中から、海の彼方から沢山のお客さんが対馬に来ますようにという願いも込められています。
観察室では職員の解説を聞きながらヤマネコを観察することができます。
ツシマヤマネコの一般公開はヤマネコの体調不良などの理由により休止することがあります。
ご来館の前に、センターまでお問い合わせください。

ツシマヤマネコ ライブカメラ 配信中!(対馬市CATVのサイト)

展示室

ヤマネコを見学した後は展示室でツシマヤマネコの生態や危機的現状、保護の取り組みについても知ることができます。
パソコンを利用したクイズコーナーやヤマネコの声を聞けるコーナーは子どもたちに大人気です。

レクチャールーム

対馬の自然やヤマネコ保護の取組みのビデオを上映しています。
ご希望の方は受付へお声かけください。部屋の後方には工作ができるヤマネコ工房やヤマネコのスタンプコーナーもあります。ご来館の記念にどうぞ。

イベント

対馬の自然の豊かさを学び、誇りを持ってもらう事を目的とした自然ふれあいイベントの開催やヤマネコ講座などの環境学習も行っています。
詳しくはセンターまでお問い合わせください。

利用のご案内
開館時間:10時00分~16時30分(入館は16時00分まで)
入館料:無料
休館日:毎週月曜日(ただし、月曜日が祝祭日の場合はその翌日)、年末年始
注意事項:館内での飲食・喫煙・ペット等の持ち込みはできません。
お問い合わせ:電話.0920-84-5577

対馬野生生物保護センター トップページ

この記事に関するお問い合わせ先
自然共生課
〒817-8510
対馬市厳原町国分14411番地
電話番号:0920-53-6111
ファックス番号:0920-53-6122

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猫の“一生懸命”に胸キュン!

2022-01-30 05:51:35 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

猫の“一生懸命”に胸キュン!
 レンズ越しの表情に魅了された写真家


ほ・とせなNEWS編集部


「コレはナニ?」(C)MARCO

日本が誇る精巧な作りの食品サンプル。
食べ物に見えるのに、おいしい匂いがしない。
スパゲッティの食品サンプルを興味深く見つめる猫たち。
「おいしい匂いがしニャい……」「これは何の食べ物だニャ?」と、まるで猫たちの会話が聞こえてくるよう。
この表情豊かな猫たちの写真を撮影したのは、平日は会社員、休日はアマチュアカメラマンとして活動するMARCOさんです。


「おもちくジャンプ」(C)MARCO リモートで取材に応じてくれたMARCOさん

MARCOさんは週末に、おでんにちなんだ名前をつけた4匹の保護猫「おでんカルテット」と、実家の犬猫3匹「飯闘呼組(いとこぐみ)」のユーモアあふれる写真を撮り続けていて、9月17日からは、札幌市で写真展も開催しています。

レンズ越しに見る猫の表情に魅せられて

「金魚とにらめっこ」(C)MARCO

旅先用に購入したミラーレス一眼カメラで飼っている猫を何気なく撮影したMARCOさん。
撮っていくうちに、レンズ越しに見る猫の表情に魅了されたそうです。
「たまたま自宅に猫がいたので撮ってみたら、めちゃくちゃ写りがよくて感動してしまったんです。最初はカメラの性能に感動していたのですが、そのうち猫って、肉眼では見えない表情がカメラの中に写る……そんな世界を感じて徐々にハマっていきました」


ねこじゃらしで遊びながら、ジャンプの写真を撮影。 一番のポイントは私の横で覗いているがんも

一般的に、“呼んでも来ない”のが猫の習性ですが、MARCOさんはそのマイペースなところこそが彼らの魅力だと話します。
「猫ってとことんマイペースなんですよね。マイペースだけど、自分のやりたいことには一生懸命なんです。それが表情としてグッと出るんだと思います。その一瞬を切り取って、おもしろい一面も知ってもらえたらなって」


「ねこレンジャー発進!」(C)MARCO

おでんカルテットのうちの1匹「がんも」も食べ物が大好き。
食べ物を机に置いていると自然に表情に現れるのだそう。
その一瞬を撮影しています。
「猫って1回嫌になると二度と来てくれなくなるので、根気よくやっています(笑)ガチガチに気合を入れると大体うまくいかない気がするので、相手を楽しませるようにやっています」


「がんもと天むす」(C)MARCO

猫との暮らしに寄り添いながら
平日は仕事をし、休日のみアマチュアカメラマンとして活動するMARCOさんですが、今のバランスがちょうどよいと話します。
「老後まで末永く趣味で写真を撮りたいので、仕事という世界もありつつ、写真の世界もありつつっていう、今の状態がちょうどいいなと思っています。猫たちとの生活も大切にしたいので、毎日カメラを構えているのも、それもどうかなって思いますし。暮らしの中で撮っていけたらいいですね」


「じゃましたい」(C)MARCO 実家にて撮影

カレンダーの整理をしていたら、じゃまをしにきたメイ。困る父。
猫との暮らしを大切にしているMARCOさんだからこそ、それぞれの猫たちの魅力的な表情を引き出せるのかもしれません。
おでんカルテット、飯闘呼組の写真は、MARCOさんのInstagramでも公開中です。


相関図(C)MARCO おでんカルテットと飯闘呼組の関係が明らかに!

【写真】猫たちのユニークな“一生懸命”の瞬間


愛猫失い1年 養老先生の思いとは

2022-01-29 05:49:15 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

愛猫失い1年 養老先生の思いとは
 死を受け入れる過程は言葉にできない

2022年1月14日(金) 東京新聞

解剖学者の養老孟司さん(84)=写真=は約1年前、17年共に暮らした猫「まる」の死を経験した。
テレビ番組で取り上げられたり、写真集になったりと人気者だったまる。
生と死の境や、死の受け入れ方についても説いてきた養老さんに、まると過ごした日々や、別れを通して感じていることを聞いた。
(小林由比)

「よく寝ていた日当たりのいい場所につい目が行って。『あれ、いない。あ、そうだった』という感じ」。
まるが2020年12月に死んでから約1年。
養老さんは今も、そんな感覚を覚えるという。


養老孟司さんとまる ©平井玲子

03年9月、養老さんの娘に連れられ、まるはやってきた。
「付かず離れず、適当な距離で付き合ってきた」と振り返る。
「飼っているという気はなくて、楽に生きてもらえるよう環境を整えるだけだった。動物に教え込もうとするのは好きじゃない。その点、猫は気楽でいい」
家の中でも、好きな所で気ままに過ごし、配慮も忖度(そんたく)もないまる。
そんな姿を観察するのが養老さんには、安心できる時間だった。
「僕にも浮世の義理ってやつがあるけれど、ああ、これでもいいんだと楽な気持ちになれた」
そんなかけがえのない存在を失ったことは、つらい出来事だった。
飼育する動物との死別で深い悲しみを経験する「ペットロス」という言葉がよく使われるようになったが、今の状態を「そういうことになるのかもしれない」と分析。
ただ「感覚に関すること、感覚に伴う質感みたいなものは、言葉では表せない」。
ものごとを理屈にし、言葉を紡いできたが、まるとの付き合いや、その死を受け入れていく過程は、言葉にできない経験だという。
一方、「まるの死は、まる自身には関係がない」と言う。
「死というのは二人称。人間は社会性動物だから、親しい人の死があるけれど、動物にはそれはない。まして自分の死はなんの関係もない。これは人間も一緒」と養老さん。
「まるのことは、こっちが勝手に二人称扱いしている」
子どもが手を離れた後など、中高年になってペットを飼う人も多い。
「人はやっぱり世話をしたいもの。今は核家族で、孫の面倒を見ることもないとなると、猫あたりが一番無難」。
ペットロスを恐れ、飼育をためらう人には「先のことを考えすぎて、今の気持ちを犠牲にする必要はない」と助言する。
自然から遠ざかり、「感覚」を軽んじる現代社会に警鐘を鳴らし、都市の人が田舎で暮らすことを提唱してきた。
新型コロナ禍が世界を覆ったこの2年、ますますその重要性を感じている。
「田舎に暮らせればいいが、生き物と暮らすことも、そんな感覚を取り戻すことに近い」
まるに「時々、しみじみ会いたいなあと思う」
養老さんは、今は新しい猫と暮らす気にはならないという。
「先日、瀬戸内の島で出合った猫がおなかをすかせていて、ビスケットをあげた。今はせいぜい、あの猫たち寒くなってきたからどうしてるかな、と気にするくらいかな」と笑った。

養老さんは昨年12月、まるとの日々や、その死に直面して考えたことを写真とともに伝える本を出版した。


養老先生と愛猫「まる」の一日

2017年7月26日 産経フォト


養老孟司さんの愛猫「まる」=神奈川県鎌倉市(伴龍二撮影)

「まるの性格? ひと言で言うと、『鈍い』だな」
そう言い放ちながら、目尻を下げて愛猫「まる」を見つめる養老孟司さん(79)は、ベストセラー「バカの壁」で知られる解剖学者。
まる自身も、「うちのまる~養老孟司先生と猫の営業部長」「まる文庫」などの写真集も出版されるほどのカリスマ猫だ。



奈良県で生まれたまるが、神奈川県鎌倉市の養老家に来たのは平成15年。
幼いころから身体も態度も“猫一倍”大きく、ゴロゴロしているだけなのにあっという間に養老家および養老研究所を牛耳り、「営業部長」の肩書も手に入れる。
子猫のころ、ベランダに来たリスを捕ろうとして閉めてあったガラス戸にぶつかったり、家人が留守のとき野良猫に餌を食べられながらも、誰かが帰宅して野良猫が逃げ出すまで傍観、逃げた背中を見て「フーッ」とうなったりというエピソードにも“大物感”が漂う。
「まるを見ていると、生きるってことも『だから、それがどうした』。人のことも『どうせ人間のやること。たかがしれてる』と思えてくる」と養老さん。
そんなまるが唯一、能動的に動くのが、おなかがすいたときだとか。
「明け方に腹がすくと私を起こしにくる。ひと鳴きして、ベッドに乗って、私の顔をなめて起こすんだ」
また、養老さんが仕事や旅行で数日家を空け、帰宅すると足元にすりよって「わにゃ、わにゃ」。
「大好物のマヨネーズをくれってさ。身体に悪いから家人はあまりやらないが、私だったら必ず一口くれると分かってる。まるにとって私は、関心をひくと好物をくれる『餌出し器』なんだろうな」



まるは、食卓の食べ物も食べないし、噛んだり、ひっかいたりもしない。
「怒るところは何もないんだけど、原稿とか書いていると、どこからかアイツのいびきが聞こえてくることがある。それを聞くと、仕事をやる気がなくなるんだ。猫は仕事の邪魔だね」
そんな養老さんのため息もどこ吹く風。
まるはきょうも一日、特技の“どすこい座り”で思索にふける。

(文 : 服部素子)

 

「まる ありがとう」

著者:養老 孟司
写真:平井 玲子
発行:西日本出版社 
発売日:2021年12月2日
価格: 1,200円+税
176ページ

◆紹介
2020年12月21日、まるが天国へ旅立ちました。
養老さんは愛猫まると18年の時間を過ごし、その様子はNHKの「まいにち、養老先生、ときどき まる」でおなじみとなりました。
まるを自分自身の「ものさし」と語ってきた養老さん。
まると過ごした日々、まるの死を通じて養老さんは、意識中心で頭でっかちになりがちな人間社会の危険性や、生き物にとって大切な感覚の世界について改めて思索を広げ、その視点は独自の「自足」論として本書で展開されます。
まるとの出会いと日常、生きていく術、死、ペットロス、生き物らしさなど、かけがえのない存在だったまるの死に直面して考えたことを、養老さんが語りつくしました。
まるの写真114枚掲載。

まるに寄り添い、写真を撮ってインスタグラムやブログにアップしてきた、養老さんの秘書平井さんのエッセイも掲載しています。
「ものごとを理屈にすることに長年励んできた。八十歳を十分に超えてみると、バカなことをしたものだと感じている。理屈で説明しようがするまいが、ものごとが変わるわけではない。その意味では、理屈にすることは一種の虐待であって、何に対する虐待かというなら、「生きること」に対する虐待であろう。まるは理屈なんか言わず、素直に生きて、素直に死んだ。いまでも時々しみじみ会いたいなあと思う。また別な猫を飼ったら、といわれることがあるが、それでは話が違うのである。まさに一期一会、かけがえがないとは、このことであろう」
(本書 まえがきより)

「まるがいなくなって、ほぼ一年になる。まだついまるを探す癖は抜けない。まるが好んで寝転がっていた縁側に目が行く。ポンと頭を叩いて、「バカ」というと、少し迷惑そうな顔で薄目をあける。それができなくなったのが残念である。ときどき骨壺を叩いてみるが、骨壺の置き場所が、まるがふだんいたところと違うので、なんだか勝手が悪い。
「安らかに眠れ」というのが欧米の墓碑銘の紋切り型らしいが、いつも寝てばかりいたまるの墓碑銘としては、屋上屋の感がある。カントの著作『永遠平和のためにZum Ewigen Frieden 』はカントがどこかの墓碑銘から採ってきたといわれるが、このほうがいいかもしれないと感じる。みんながまる状態になれば、まさに世界は平和であろう」
(本書あとがきより)

◆目次
まえがき
・図らずも人気者に
・ときどきまる
・最期
・死に場所
・まるが来た日
【コラム①】秘書・玲子の今日もまぁくん日和 日常
・無口な猫
・ペットロス
・人命は地球より重いか
・まるが死んでから分かったこと
・まるはものさし
・感覚が優先する社会
・日本人は「実感信仰」
【コラム②】秘書・玲子の今日もまぁくん日和 営業部長
・まるの生き方
・ブータンの幸福
・自足する者の強み
・死んだ動物のすむ星
【コラム③】秘書・玲子の今日もまぁくん日和 男らしさ
・四門出遊
・大切なのは生き物らしさ
・多様性の否定
【コラム④】秘書・玲子の今日もまぁくん日和 二度と戻らない日々
・安藤忠雄さんからの手紙
・散歩
・虫塚
・こだわらない心
・特別な猫

・あとがき
・参考文献

著者プロフィール
養老 孟司  (ヨウロウ タケシ)  (著)
1937年、神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。幼少時代から親しむ昆虫採集と解剖学者としての視点から、自然環境から文明批評まで幅広く論じる。東大医学部教授時代に発表した『ヒトの見方-形態学の目から』(筑摩書房)で89年、サントリー学芸賞。2003年刊行の『バカの壁』(新潮新書)は450万部を超える大ベストセラーとなった。

平井 玲子  (ヒライ レイコ)  (写真)
2005年5月、養老孟司の秘書として有限会社養老研究所に入社。10年3月、インターネットで「そこまるブログ」をスタートさせ、まるの写真を投稿し始める。19年11月にはinstagramにて「まるすたグラム」のアカウントを開設。まるのフォトブック『そこのまる』(武田ランダムハウスジャパン)、『うちのまる』(ソニー・マガジンズ)やDVD「どスコい座り猫、まる」の制作にも携わる。


「飼えなくなった」ペットの保健所への持ち込み、後を絶たず

2022-01-28 06:01:47 | 国・行政

「飼えなくなった」ペットの保健所への持ち込み、後を絶たず
 動物保護管理センターの職員に“殺処分”の実態を聞いた

2022年1月8日(土) 

環境省が昨年度(令和2年度)の保健所などで殺処分された犬や猫は約2万3000匹を数えると公表、過去最少となりました。
譲渡会を開くなど自治体の努力もあり、殺処分は減少傾向にあるようです。
しかし一方で、コロナ禍で在宅ワークや外出を控える人たちが増え、自宅でペットを飼う人が増加傾向にある中、「飼えなくなった」と保健所にペットを持ち込む人たちは後を絶たないといわれています。
「滋賀県動物保護管理センター」(滋賀県湖南市)でも、昨年度飼えなくなったとして持ち込まれた犬猫は合わせて約270匹を数えるとのこと。
そして、持ち込まれた犬猫たちは譲渡先が見つからなければ殺処分に・・・どうすることもできない動物の死と向き合う同センターの職員たちは苦悩と葛藤を感じているそうです。
こうした同センターで働く職員の方に収容される犬猫や殺処分の実態などについてお話を伺いました。


譲渡適性があれば譲渡候補として新しい飼い主を募集し、譲渡適性がなければやむを得ず致死処分となる(滋賀県動物保護管理センター提供、譲渡候補の猫)

■譲渡適性がなければやむを得ず「致死処分」 麻酔薬の過剰投与により実施
――センターにおけるご担当の業務について教えてください。
「直接の担当は譲渡や地域猫、多頭飼育対策の事業、特定動物許可などですが、職員が少人数であるため、ブリーダーやトリミングなどの動物取扱業監視、苦情対応などさまざまな業務を行っています」

――センターで収容される犬や猫はどのような扱いになるのでしょうか。
「元の飼い主が現れなかった迷子や、飼い主がやむを得ない理由で飼えなくなったとして持ち込まれたものは、譲渡適性チェックを行います。譲渡適性があれば譲渡候補として新しい飼い主を募集し、譲渡適性がなければやむを得ず致死処分となります」

――致死処分いわゆる、殺処分はどのような方法で行うのでしょうか?
「麻酔薬の過剰投与(注射)により実施しています。以前はガス室での炭酸ガスによるものでしたが、少しでも苦しまないようにと平成26年度から麻酔薬に切り替えました」


滋賀県動物保護管理センターでは、麻酔薬の過剰投与(注射)により致死処分を実施(滋賀県動物保護管理センター提供、譲渡候補の犬)

――ここ数年の殺処分数を教えてください。
「ここ数年の致死処分数については、犬が124匹(平成28年)、79匹(同29年)、102匹(同30年)、97匹(令和1年)、80匹(同2年)。猫は577匹(平成28年)、453匹(同30年)、618匹(令和1年)、530匹(令和2年)と推移しています」

■譲渡前には飼い方講習会を開催 動物愛護パネル展などで啓発活動にも注力
――犬は100匹前後、猫500匹前後で推移しているようですが、センターが殺処分を減らすための取り組みをお聞かせください。
「譲渡候補の犬猫についてはインターネットを使って譲渡先を募集し、一般の方への譲渡が難しい犬猫の場合、動物愛護推進員への譲渡などを行っています。また、譲渡前に飼い方講習会を受講していただいたり、若年層向けの夏休み飼い方体験学習や動物愛護パネル展といったイベントを行ったりと啓発活動にも力を入れているところです。このほか、放し飼いや無責任な餌やり防止の啓発、地域猫活動補助金を創設して野良猫が増えないように不妊去勢手術などを実施する地域猫活動の支援にも取り組んでいます」

――こうした殺処分を減らす取り組みをされている一方で、コロナ禍の今、センターへ飼い猫などを持ち込む人が増えていると伺いました。
「はい。飼えなくなったとしてセンターへ持ち込まれたペットは、昨年度だけで犬が68匹、猫は204匹を数えます。飼えなくなった理由として急増しているのが飼い主が高齢であることに起因する、『世話ができない、入院することになった、亡くなられた』です。普段から飼えなくなったときに世話をしたり、もらい受けてくれる方を探しておくよう啓発していますが、なかなかそういった準備はしていただけていないのが現状のようです。 特に猫では不妊去勢手術をしていなかったために増えてしまって飼いきれない、いわゆる多頭飼育のケースが目立ちます。こちらも不妊去勢手術の啓発を継続しています」


コロナ禍でぺットを飼う人が増加傾向にある中、「飼えなくなった」と保健所に犬猫を持ち込む人たちは後を絶たないという(滋賀県動物保護管理センター提供、譲渡候補の猫)

――飼育放棄のほか、身勝手な遺棄も増えているとか。
「遺棄とみられる事案に関しては、子猫や疾病を抱えた犬が段ボールに入れて置かれているケースをはじめ、猟に使えなくなったか、あるいは猟を終えたであろう猟犬が徘徊しているケース、繁殖に使われたような犬が捨てられ保護されるケースなどが後を絶ちません」

■センター職員「われわれのできることは、啓発活動の継続と最期は静かにいかせてあげること」
――飼育放棄や遺棄などが絶えないわけですね。そんな中、殺処分される犬猫のことを考えると心が痛いです。
「人間の身勝手の犠牲となり、大変申し訳ない気持ちです。われわれにできることは、致死処分となる犬猫を減らすために啓発を続けることと、最期は静かにいかせてあげることだと思います」

――センターの職員として、今後の課題をお聞かせください。
「犬猫の収容施設のさらなる改善をはじめ、高齢者の飼育放棄や多頭飼育対策、また野良猫への無責任な餌やりに対する啓発・指導などが主な課題です」


動物愛護パネル展といったイベントを行ったりと啓発活動にも力を入れている(滋賀県動物保護管理センター提供)

――急増しているという高齢者の飼育放棄のケースについて、具体的な対策は?
「高齢者の方については、普段から飼えなくなった際に飼ってもらえる方を見つけていただくこと、飼う前に最期まで飼えるか冷静に考えていただくようお願いしたいです」

――収容・殺処分される犬猫を減らすため、最後に訴えたいことをお願いします。
「いつも注目される譲渡活動は、あふれた水をすくう活動です。譲渡活動にマンパワーを割かれ、蛇口を閉める活動つまり、幅広い年齢層へ向けた啓発活動や地域猫のさらなる支援といった発生源対策が推進できないことに日々葛藤を感じています。不幸な動物たちを増やさないためにも、飼い主や餌やりの方に犬猫の適性な飼い方や関わり方を考えていただきたいです。蛇口を閉めるのは、センターではなく犬猫を世話する方一人一人です」


犬猫の譲渡前には飼い方講習会を受講してもらう(滋賀県動物保護管理センター提供)


センターの職員が最大限できることは、「啓発を続けることと、最期は静かにいかせてあげること」、不幸な犬猫を減らすためにも「蛇口を閉めるのは、センターではなく犬猫を世話する方一人一人」と訴える(滋賀県動物保護管理センター提供、譲渡候補の猫)

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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最高です! あなたの人生にペットが必要な15の理由

2022-01-27 05:54:08 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

最高です! あなたの人生にペットが必要な15の理由

BUSINESS INSIDER JAPAN


Auscape/Getty Images

犬、猫、鳥…… どんなペットでも、動物を飼うということはある意味で冒険だ。
ただ、どんなストレスや孤独の中にあっても、ふわふわのお友達はいつでもわたしたちのそばにいてくれる。
ペットを家族に迎える時、人間はペットの生活をより良いものに変えたと考えがちだが、ペットも同じくらい飼い主の生活に良い影響を与えている。
あなたの人生に彼らが必要な15の理由を紹介しよう。
動物を家族に迎えるべきかどうか迷っているなら、ぜひ参考にしてほしい。

1.一緒にいると気分が良くなる

Sean Gallup/Getty Images

ペットはあなたが感じているストレスを軽減する役に立つ。
研究によると、ペットと一緒に時間を過ごすことでオキシトシンが増えるという。
オキシトシンは「幸せホルモン」としても知られている。
これは、ペットとの絆を感じたり、親密感を抱くからだ。あなたの全体的な気分も上げてくれる。

2.あなたの社会生活を向上させてくれる

Shutterstock

ペットの存在は、あなたの次のZoom会議の会話を始める最高のきっかけになるだけでなく、新たな友人を作る助けにもなるだろう。
犬はもともと他の犬や人を含め自分の置かれた環境に対する好奇心が強く、社会的交流の良いきっかけになり得る。
犬を飼っていれば、見ず知らずの人から声をかけられることもあるかもしれない。
だが、ネコなど他のペットもあなたの社会の輪を広げてくれる。
オーストラリアとアメリカで行われた2015年のある研究によると、ペットを飼っている人はそうでない人に比べて、近所の人と知り合いになることが圧倒的に多いという。

3.恋人探しの役に立つことも

China Photos/Getty Images

ペットは、恋人を見つけるチャンスを増やす良い方法になり得る。
ピュリナの調査では、54%の人が、自分の飼っているペットが興味のある人との会話を始めるきっかけになったと答えている。
また、63%の人がペットを飼っている人とデートしたいと答え、3人に1人はオンラインデートのプロフィールに自分の飼っているペットの写真を上げている人に会いたいと答えている。

4.パートナーがいる場合、ペットは2人をより幸せにし、ストレスを軽減してくれる

SAM YEH/Getty Images

雑誌『Psychology Today』が引用した研究によると、ペットを一緒に飼っているカップルはそうでないカップルに比べて平均して血圧は低めで、幸福度が高いという。
また、ペットのいるカップルはそうでないカップルに比べ、会話も多いという。

5.あなた自身もより良い人間になれる

Sandy Huffaker/Getty Images

BarkBoxの研究によると、犬を飼うとより良い人間になれるという(少なくともそう思えるようになる)。
ペットを飼っている人の93%が、忍耐強くなったとかやさしくなったなど、ペットが自分をより良い人間にしてくれたと思う点を少なくとも1つはすぐに挙げられるという。

6.職場にペットを連れて行くと、やる気が増し、ストレスをコントロールできる

Barcroft Media/Getty Images

在宅ワーク中のウェブ会議であなたのペットを見せることは、あなただけでなく同僚にとっても場を明るくしてくれる。
アメリカ、ノースカロライナ州のある製造会社で行われた2012年の研究では、職場に飼い犬を連れてきた従業員のストレスレベルは1日を通じて低く、仕事への満足度も高く、雇い主の評価も高かった。

7.仕事で疲れたあなたをリラックスさせてくれる

Hulton Deutsch/Getty Images

ペットはあなたに慰めと安堵感を与えてくれる。
2003年のある研究では、ストレスフルな状況が続いた後にペットをなでると、不安が和らぐことが分かった。
「不安軽減効果は、動物好きに限らずさまざまな人に認められた」という。

8.ペットが近くにいると(特に犬)、安心感が増す

Barcroft Media/Getty Images

ジャーマン・シェパードやロットワイラーといった大型犬は、飼い主に大きな安心感を与えてくれる。
「その忠誠心、信頼感、保護本能」から近年、ロットワイラーの人気が高まっている。

9.寒い夜、いつでも甘えられる誰かがいる

Hulton Deutsch/Getty Images

眠りを邪魔されることもあるかもしれないが、ペットが自分の近くで丸くなってくつろいでいるのがいいという飼い主もいる。
眠りにつくあなたの心に安らぎを与えてくれるだろう。

10.ペットと一緒の散歩やヨガなどのおかげで、あなたがより活動的になる

Shutterstock

犬を散歩に連れて行くことでからだを動かす機会が増え、あなたの体調も良くなる。
「ラッシー効果」とも呼ばれる。

11.ペットと遊んだり、芸を教えることはものすごく楽しい

PhotoPlus Magazine/Getty Images

犬を飼っていれば、天気の良い夏の日に飼い犬と一緒にボールを投げたり、拾って来たりして遊ぶ楽しさを知っている人は多いだろう。
犬に握手やロールオーバー、合図に応えて吠えることを教えることも可能だ。
だが、芸を教えられるのは犬だけではない。
猫にもお座りやハイタッチを教えることができる。

12.ねこや犬のようにふわふわではないが、オウムといった鳥も"生涯の伴侶"になり得る

China Photos/Getty Images

鳥は社会的な生き物で、ゲームをしたり、芸を見せることが大好きだ。
だが、他の動物と違って、オウムやその他の鳥たちには人間の言葉を学び、真似をする能力がある。
また、その寿命は人間とほぼ同じで、中には100歳を超えるオウムもいる。まさに一生の友だ。

13.子どもの学習の助けになる

Justin Sullivan/Getty Images

Blue Crossによると、幼い頃からペットを飼っていると、子どもの自信と共感力が増すという。
ペットは素晴らしい"聞き役"だ。

14.ペットは子どもに"責任感"を教えてくれる

Barcroft Media/Getty Images

American Pet Product Associationの調査によると、ペットを飼っている人の58%は、ペットが子どもに"責任感"を教える役に立ったと答えた。
小さな子どもでも、家族であるペットに食事を与えたり、散歩に連れて行ったり、風呂に入れる手伝いができる。

15.素晴らしい創作活動のインスピレーションにもなる

イギリスの俳優オリバー・リードと飼い猫のフェリックス。Chris Ware/Getty Images

ペットはさまざまな方法で人間にインスピレーションを与える。
イギリスの俳優オリバー・リードは、飼い猫のフェリックスと一緒に映画の台本をチェックしていた。
アルバート・アインシュタインは、飼い猫のタイガーが動き回るのを見ている時に、よく独自の理論を思いついたという。
フローレンス・ナイチンゲールは、怪我をした犬がきっかけで看護師になった。

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世界のトップアスリートが愛してやまないペットたち


「愛する人と一緒にいられるのは幸せなこと」パートナーを失った2羽のペンギンが寄り添い合う写真が話題に

[原文:15 reasons why having a pet is good for you and your family

(翻訳、編集:山口佳美)

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女性400人が選んだ「飼ってみたいペット」ランキング!

2022-01-26 05:46:00 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

女性400人が選んだ「飼ってみたいペット」ランキング!
 3位は「うさぎ」、2位に僅差の1位は?

2022年1月13日(木) All About NEWS

現在ペットを飼っていない女性400人に聞いた「飼ってみたいペット」ランキングを発表!
NEXERの100%子会社であるpepyは、「女性400人に聞いた、飼ってみたいペットランキング」を発表。同調査は、現在ペットを飼っていない全国の女性400人を対象に、2021年12月25日~2022年1月6日の期間、インターネット上で実施されたものです。

第3位:うさぎ/25票
おとなしく、癒し系のイメージが強い「うさぎ」が3位。

回答者からは、「見ていてかわいくて癒されそうなので」「子供の頃から、飼いたいと思っています」などのほか、「賃貸のアパートで飼えるし、可愛いから飼ってみたい」「泣き声もしないので、隣り近所には迷惑をかけないと思うので」など、静かで近所に迷惑がかからず、「飼いやすそう」なところも人気を集めました。

第2位:猫/145票
ペットの人気ランキングで常に上位を争う「猫」が2位でした。
回答者からは、「猫の動画を観ていつも癒されているから」「かわいい。もふもふしている」など、猫が好き、という理由のほか、「以前猫を飼っていて、とても楽しかったので」「散歩はそこまでやらなくても良くて、自由気ままな感じがよいなって思って」「犬より猫の世話の方が楽と思います」など、散歩が必要ないことなど、犬より世話が楽なイメージを抱く人も多いようです。

第1位:犬/168票
2位に僅差で「犬」が1位を獲得。
回答者からは、「極小の犬をYouTubeで見て一目惚れしてしまったので」「柴犬が好きだから。犬は人懐っこくて可愛い」などのコメントのほか、「イヌが大好き。実家では飼っていたので」「以前飼っていて亡くなってしまったがまた飼いたいと思っている」など、過去に飼っていたので「また飼いたい」、という声も上がりました。
また、「一緒にお散歩して犬も私も運動不足解消出来るし、小型犬ならお部屋で飼えるので」など、一緒に散歩したい、というコメントも寄せられました。

※回答者のコメントは原文ママです

女性400人が選んだ「飼ってみたいペット」ランキング! ※出典:pepy


文:福島 有紀


飼い猫に火で不起訴が一転 許されない動物虐待

2022-01-25 05:50:00 | 動物実験・動物虐待

飼い猫に火で不起訴が一転 許されない動物虐待
 専門家「犯罪と認識すべき」

2022年1月7日(金) 産経新聞

ストレスを理由に飼い猫に火を付けてやけどを負わせたとして、動物愛護法違反の疑いで書類送検されたものの不起訴となった男性(31)について、大阪地検は令和3年10月に一転、同罪で略式起訴した。
検察審査会が「起訴相当」と議決したことで検察側が再捜査し、判断が覆った。
検審の議決書は、猫に火を付けた男性の行為を「悪質で常軌を逸した残忍なもの」と厳しい表現で非難。
専門家も「犯罪と認識すべきだ」と指摘しており、動物虐待に対する世間の風当たりは強くなっている。


飼い主に火を付けられた三毛猫のトラ(木村知可子さん提供)=大阪府箕面市

■「精神的に参っていた」
オスの三毛猫。
名前はトラという。
部屋で無邪気に遊ぶ姿が愛らしいが、かつて味わった虐待は過酷だった。
令和3年1月8日、飼い主だった男性(31)=大阪府箕面市=に消毒用のエタノールを浴びせられ、火のついた割りばしを体に押し付けられた。
耳は焼けただれ、腹部の毛は焼け落ち、全身にやけどが広がった。
翌9日、箕面市内の動物病院でやけどの治療を受けたが、トラを連れてきた男性が「ストレスがあり、精神的に参っていた」と獣医に虐待を打ち明けた。
病院側からの通報を受けた大阪府警は、事情聴取をした後の同26日、動物愛護法違反容疑で男性を書類送検。
地検は男性がトラを連れて動物病院を受診したことなどを考慮し、不起訴(起訴猶予)とした。

■進む厳罰化
しかし、この不起訴処分をめぐっては、トラを譲った保護猫カフェを営む木村知可子さんや、動物愛護団体などが反発し、検察審査会に不服を申し立てた。
検審は「起訴相当」と議決し、地検は再捜査の末に男性を略式起訴。
令和3年10月に簡裁が罰金10万円の略式命令を出した。
トラはその後、順調に回復し、新たな飼い主の元で生活しているが、耳の傷ややけどの痕は残ったまま。
木村さんは「起訴はされたが制裁が軽すぎる」とし「動物を虐待する人を増長させてしまう」と憤る。
法務省の統計によると、検察が扱った動物愛護法違反事件は平成23年は62件だったが、令和元年に過去最多の194件を記録した。
近年は厳罰化も進んでおり、平成25年には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」から「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」に。
令和2年には「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」と罰則が改正された。

■コロナ禍でブーム
新型コロナウイルス禍で人々の在宅時間が延び、ペットを飼い始める人が増えたというデータもある。
一般社団法人「ペットフード協会」(東京)が20~79歳を対象に調査を実施して推計したところ、令和2年10月までの1年間で、犬は約46万頭(前年約40万頭)、猫は約48万頭(同41万頭)、それぞれ飼育頭数が増えた。
ただ、同協会が実施した意識調査では「飼育にストレスを感じる」と回答した人が一定数存在した。
関西国際大の中山誠教授(犯罪心理学)は、人間のストレスがペットへの加害行為を引き起こす可能性があると指摘した上で「近年は人だけでなく、ペットの虐待にも厳しい目が向けられるようになった。長く一緒に過ごす自信がないのであれば、最初から飼うべきではない」と話している。


塹壕のウクライナ兵、犬や猫との触れ合いが慰みに

2022-01-24 06:07:06 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

塹壕のウクライナ兵、犬や猫との触れ合いが慰みに

2022年1月13日(木)  

【AFP=時事】
ロシアの大軍が国境付近に集結し、戦争の危機が迫る中、ウクライナ東部の塹壕(ざんごう)で、兵士は野良猫や野良犬との思いがけない触れ合いに慰めを見いだしている。


ウクライナ南東部アウディーウカ近郊の塹壕で、最前線を監視する予備役(2022年1月9日撮影)。(c)Anatolii STEPANOV / AFP

「敵が攻撃を仕掛けてくると、ほえたり、うなったりする」。
アウディーウカ(Avdiivka)近郊の凍えるような寒さのぬかるんだ塹壕で、ウクライナ兵のミキータさん(21)は所属部隊が拾った雌犬をなでながら、今や重要な戦力だとAFPに語った。
「一緒にいると安心し、気持ちも落ち着く。犬は人間の最良の友だといわれるのも納得だ」
ウクライナ東部では2014年、政府軍と親ロシア分離独立派との戦闘が激化し、200万人を超える住民が家を追われた。
その際、多くのペットが置き去りにされた。
「動物たちのせいじゃない。悪いのは戦争だ」と、同じく兵士のウォロディミルさん(49)は猫たちに自分のスープを分けながら言った。
「置いて行かれて、自力で生きなければならなかった。私たちが餌をやらなければ」
ウォロディミルさんが守備につく塹壕では、15匹ほどの猫と数匹の犬が兵士と寝食を共にしていた。
爆撃で破壊された民家の地下室で寝泊まりしている兵士のドミトロさん(29)は、「チェルヌハ(Chernukha)」と名付けた黒猫を手放しで称賛した。
「冬になると塹壕の中を野ネズミが走り回っていたが、全部つかまえてくれた」


ウクライナ南東部アウディーウカ近郊の最前線で、猫をなでるウクライナ兵(2022年1月9日撮影)。(c)Anatolii STEPANOV / AFP

ドミトロさんは14年に親ロシア派と戦った時にも、当時の最前線スラビャンスク(Slavyansk)付近で生後およそ1か月の子犬と友達になったという。
子犬はあっという間に部隊の「小さなお守り」となった。
砲撃が始まる数分前に、子犬がぱっと物陰に隠れたのを覚えていると笑顔で語った。
「私たちも大急ぎで子犬のまねをした。防弾チョッキとヘルメットをつかんで、走ったんだ」
ロシア軍が侵攻してくるかもしれないという緊迫した状況下で、動物のおかげでリラックスでき、代わり映えのしない日々の任務でもつかの間の休息を得られると兵士たちは話す。
「拠点に戻ってきてベッドに横になると、チェルヌハがやってくる。おなかの上に横たわり、なでてほしそうにこちらを見る」とドミトロさん。
「まさに鎮静剤だ」


ウクライナ南東部アウディーウカ近郊の最前線にある塹壕で、犬と触れ合うウクライナ兵(2022年1月9日撮影)。(c)Anatolii STEPANOV / AFP

【翻訳編集】 AFPBB News


介助犬が小学生に貴重な「学びの機会」を提供

2022-01-23 05:53:03 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

介助犬が小学生に貴重な「学びの機会」を提供

2021年12月19日(日)  REANIMAL

日本介助犬協会は、介助犬の育成だけでなく肢体不自由者のリハビリテーションを行い、障害者の自立支援に取り組んでいる。
介助犬使用者(以下、ユーザー)が社会参加するためには、介助犬や障害者への社会的な理解が進むことも必要となる。

同協会では、「介助犬総合訓練センター」(愛知県)での見学会や「介助犬フェスタ」など、様々なイベントで介助犬と触れ合う機会を設けている。
小学校での講演会もそうした活動の一環だ。
今回は、同協会の本部がある神奈川県で行われた出張授業を取材した。

◆新米PR犬の「ナビ」
この日は、ゴールデン・レトリーバーの「ナビ」がデモンストレーションを行う「PR犬」として学校に出向いた。
ナビは介助犬としての作業は完璧にこなすものの、少し気弱なところがあるそうだ。
そのため、介助犬としてユーザーと社会参加するよりも、社交的な性格を活かして様々なイベントで人と触れ合うPR犬が向いていると判断された。
この日もまだ新米とは思えないリラックスぶりで、張り切ってデモンストレーションを披露した。
また、それ以外の時間は尻尾を振りながら、常に撫でてもらう余裕も見せていた。
期待のルーキーだ。


小学校に「出張」した介助犬PR犬のナビ

◆小学生もデモンストレーションに参加
デモンストレーションでは、介助犬の「主要8動作*」の中から靴・靴下を脱がす、落とした物を拾う、冷蔵庫から飲み物を取って来る、携帯電話を探して持ってくるといった作業が紹介された。
脱がせた靴下を脱衣かごに入れたり、飲み物を取った後に冷蔵庫の扉を閉めたりする動作には、参加した小学4年生から拍手が沸いた。
各クラスの代表5名の生徒も、車いすに座って落とした鍵をナビに拾ってもらう体験をした。
「(これなら)安心です」と、笑顔で感想を語っていた。

◆すべての人に優しい社会をめざして
同協会からは介助犬だけでなく、盲導犬や聴導犬など「働く犬」についての説明があった。
DVDを活用したりクイズを織り込んだりと、分かりやすい講義に参加した生徒たちがとても積極的に参加していたのが印象に残った。
話は犬に留まらず、障害をもった人に一声かける大切さにも触れられた。
「すべての人に優しい社会になるように願っています。みなさんも、お友だちが困っていたら一声かけることから始めてみてください」。
日本介助犬協会が標榜する「人にも動物にもやさしく楽しい社会をめざして」という姿勢は、このようなところにも表れていた。

◆介助犬は短命だと言う誤解
生徒からは、「介助犬は早く死んでしまうと聞きましたが本当ですか?」という質問があった。
ストレスのために短命だと一部で思われているようだが、そうしたデータは存在しない。
協会からは、介助犬として暮らしてもストレスを感じない性格の犬を選び、仕事は遊びのように楽しく生活しているとの説明があった。
決して短命ではないことが伝えられ、生徒も納得した様子だった。
介助犬や盲導犬の場合、何世代も前にさかのぼって遺伝性疾患がないことを確認した上で繁殖が行われる。
生まれてからは、引退後も定期的な健康診断を受ける。
10歳の元気なうちに引退し、愛情あふれる家庭に迎えられるため、一般のペットと変わらない寿命であることが丁寧に説明されていた。


期待のルーキーはお仕事中もリラックス

◆貴重な「学ぶ機会」

働く犬たちについての幅広い講義も行われた

この小学校では、4年生が「優しい街」を考える学習の一環として、介助犬講演を毎年行っているそうだ。
「本を読んで学べることも多いですが、実際に体験することでその印象が子どもたちの心に強く残ります」と校長は言う。
介助犬に会い、実際に触れ合うことで、障害者に対して「自分たちに何ができるのかを、よく考えるきっかけになっている」とのことだ。
貴重な「学ぶ機会」として、今後も継続していくそうだ。
日本介助犬協会も、「小学校の講演は、現場に入ると子供たちのキラキラした目を感じることができとても楽しい時間です」とやりがいを語る。
また、小学生たちから出る質問は的を射たものが多いとのことで、介助犬や障害者に対する理解を効果的に深めるきっかけになっているようだ。


飲み物を取った後、冷蔵庫の扉を閉める動作に小学生から拍手が

◆盲導犬や介助犬の寿命に関する専門家の意見
埼玉県獣医師会は、補助犬が短命であるとの説を否定する正式なコメントを出している。
「盲導犬や介助犬は、□仕事のストレスがかかって寿命が短い□と思っている人も多いようですが、大きな誤解の一つです。仕事をストレスと感じない適性のある犬だけが選ばれているので、ストレスによって寿命が縮まるということはありません。(中略)寿命は一般のペットと変わりません」(同医師会HPより)。
また、日本獣医生命科学大学らによる論文(2007年)でも、「盲導犬は酷使されるので寿命が短い、という話を聞くことがあるが、この話は科学的な根拠はない。(中略)家庭犬の平均寿命についての調査に比較して高いことが明らかになった。」とされている。
ペットよりも長寿であるという調査結果も存在する。
もちろん、すべての使役犬育成団体やユーザーが理想的な環境を犬たちに提供しているとは限らない。
稀ではあるが、補助犬に対する虐待が疑われるケースが報道されたこともある。
少なくともこれまでに取材した各種使役犬の団体では、犬たちがとても大切に扱われていた。
動物福祉に限らず、すべてのことには例外が存在する可能性はある。
今後も盲導犬や介助犬だけでなく、使役動物たちの福祉について様々な角度から取材を続ける。

* 落ちた物を拾う、指示したものを持ってくる、緊急連絡手段の確保(電話を取って来るなど)、ドアの開閉、衣服の脱衣補助、車いすの牽引、起立・歩行介助、スイッチ操作

飲み物を渡して尻尾を大きく振りながら嬉しそうにハンドラーの目を見つめるナビ

REANIMAL 石川徹

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日本の入り口で不正薬物の密輸を防ぐ麻薬探知犬[インタビュー]


人と動物が最後まで幸せに暮らすために準備すべきこと

2022-01-22 06:01:18 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

高齢の飼い主がペットの世話をできなくなったら――
 人と動物が最後まで幸せに暮らすために準備すべきこと

2021年12月30日(木)  

久しぶりに帰省したら、老親の愛犬が世話をされていない状態で――。
認知症や体力の衰え、入院などで、高齢の飼い主がペットを飼育できなくなったらどうするか。
一人暮らしの高齢者が増えるなか、介護の現場にも影響が出ている。
ペットの世話は介護保険の対象外なので、排泄物が始末されていない様子を目にしても、ヘルパーは手を出せない。
当事者や介護従事者、解決に向けて取り組む人たちを取材した。
(取材・文:篠藤ゆり/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)


(撮影:編集部)

◆遠方で暮らす認知症の母と8頭の犬
東京在住の佐々木薫さんは、6年前の「あの日」の光景が今も忘れられない。
九州で暮らす母親(当時85歳)に認知症の症状が出て、施設に入居することが決まったため、久しぶりに帰省。
リビングに足を踏み入れると、8つのケージが置かれ、中に1頭ずつ犬がいた。
以前から母親がボルゾイとイタリアングレーハウンド2頭、チワワ3頭を飼っていたのは知っていたが、いつの間にか2頭増えている。
しかもケージに閉じ込められた犬たちは、きちんと世話をされておらず、毛はボサボサ。
排泄物の始末もいい加減で、においもひどい。


搬送中の柴犬。抜けた毛が固まってくっついていた(写真提供:薫さん)

薫さんは当時をこう振り返る。
「母は本当に動物が好きで、ずっと犬を大事にしていたのでショックでした。このままにしておいたら、犬たちは保健所に送られかねない。そうなったらかわいそうだけど、どうしていいか分からなくて……。部屋の様子を動画と写真に撮り、いったん東京に戻りました」


新い飼い主のもと、すっかり元気になったチワワ(写真提供:薫さん)

友人、知人に実情を打ち明け、写真や動画を見せると、知人たちが「車で九州まで行くから、まずは助け出そう」と申し出てくれた。
準備をして実家に戻るとボルゾイは死亡していた。
7頭の犬を獣医師のもとに連れていくと、柴犬が重度のフィラリアにかかっていることが判明。
リードにつないで屋外に連れ出したら、戸惑って固まってしまう若い犬もいた。
生まれてから一度も散歩に連れていってもらっていないようだった。
九州で良心的な動物保護団体を探し、3頭を引き取ってもらった。
4頭の犬は東京に連れていき、東京の動物保護団体や知人のつてで譲渡成立。
それぞれ新しい飼い主のもとに引き取られた。
「母は70代の頃、寂しいから新たにチワワを飼いたいと言い出しました。当時は母とちょっと疎遠だったこともあり、本人に任せておいたんです。今思えば、母は孤独から動物に救いを求めたのかも。あの時、もっと母の気持ちを理解できていたら――。その年齢から犬を迎えても、最後まで面倒を見るのは無理だと説得するべきでした」

◆ペットの世話は介護保険の対象外。ヘルパーの思いは

介護福祉士の藤原るかさん(撮影:編集部)

自宅に訪問している介護ヘルパーやケアマネジャーが、世話されていないペットに遭遇するケースも少なくない。
介護保険の制度内のサービスと自己負担サービス、両方を行っている「NPO法人グレースケア機構」で介護福祉士を務める藤原るかさんに話を聞いた。
「あるお宅では、シェパードが大きなケージに入っていました。力が強いから、ほえながらケージごと動いて近づいてくる。するとケージについている便も一緒についてきて、床が汚れてしまうのです」
ある高齢者は認知症が進み、屋内に犬がいるのに認識できず、外で探し回っていた。
自宅近くの区役所のケースワーカーからその話を聞いた藤原さんは、親族の了承も得たうえでその犬を預かり、譲渡先を探した。


藤原さんが預かったクウちゃん。譲渡先は見つかった(写真提供:藤原さん)

ペットの世話は介護保険の対象外なので、原則としてヘルパーは手を出すことができない。
全額自己負担であれば、介護サービスの前後などに行うことも可能だ。
ただ、ヘルパーのなかには、飼い主の自己負担が難しく、ボランティアでエサを買いに行ったり、排泄物の掃除をしたりしている人もいる。
「ボランティアではヘルパーの負担も大きいし、根本的な解決にはなりません。例えばドイツの介護保険には現金給付も含まれていて、それをペットの世話にあてることも可能です。条件付きでもいいから、日本でも認めてほしい」
グレースケア機構は、自費サービスでペットケアを一部受け入れてきたが、いずれペット事業部を設けることを視野に入れ、準備会を立ち上げた。
「この冬は久しぶりに帰省される方も多いでしょう。親の体力や認知能力が変化していないか、ペットの状態が悪くなっていないか、少し見ただけでは分からない場合もあります。毛がちゃんとブラッシングされているかなど、観察してみるとよいかもしれません」

◆転倒リスクを散歩代行サービスで回避する

散歩代行中の丹羽さん(撮影:編集部)

高齢者によるペットの世話には思わぬリスクもある。
犬の散歩中に転んで骨折してしまい、それをきっかけに要介護となることも。
そのまま高齢者施設に移行し、ペットを家族が引き取れず譲渡先が見つからなければ、最悪の場合には殺処分されるケースもある。
転倒を防ぐ方法の一つが、散歩代行だ。
散歩代行などのペットケアサービスを提供している「おさんぽWan」(東京)を訪ねた。
散歩代行料金は犬の大きさによっても違うが、1回30分で2000円前後だ。
代表の丹羽やすまささんが定期的に散歩を代行している高齢者の飼い犬は5頭ほど。
そのうちの1頭が、87歳になる高橋好子さんが飼っている柴犬のさくらちゃん(7歳)だ。


高橋さんとさくらちゃん(撮影:編集部)

高橋さんは息子一家と暮らし、朝の散歩は息子の担当だ。
午後は息子家族に負担をかけないよう、散歩代行を丹羽さんに依頼している。
高橋さんはこう話す。
「いつも犬を飼っていましたから、いない生活は考えられないんです。去年までは自分で散歩に連れていっていたんですけど、腰椎圧迫骨折をして、足腰が弱っちゃって。散歩に行けなくなりました」
「さくらちゃんは私の相棒です」という高橋さん。
夜は一緒の布団で寝ている。
夢はリハビリをがんばって、もう一度一緒に散歩に行くことだ。
高橋さんの場合、本人が丹羽さんに頼むことができたが、飼い主の子どもが依頼主のケースもある。
丹羽さんはこう言う。
「犬の散歩は毎日必要ですし、犬がけがや病気で動物病院にかかることもあり、医療費が必要です。場合によっては子どもに経済的負担がかかる事態を、飼い主さんが想像していないこともありますね」

◆人間の福祉と動物の福祉を両立させるために

さくらちゃん(撮影:編集部)

行政とボランティアが連携して問題に取り組んでいる自治体がある。
「かわさき高齢者とペットの問題研究会」は、かわさき犬・猫愛護ボランティアの有志が2015年に設立。
メンバーには行政書士、介護福祉の関係者、大学教授や研究者など、各方面の専門家がいる。
また、行政の職員がアドバイザーとして参画、協働している。
研究会の渡辺昭代さんはこう語る。
「愛護ボランティアの活動をするなかで、この数年、高齢者とペットの問題が顕在化してきました。困っているという話があちこちから耳に入るようになったんです。人間の福祉と動物の福祉を両立させるには、愛護活動の当事者、人間の福祉にかかわる人、包括支援センター、行政などが一体にならないと物事が進みません。ケアマネさんやヘルパーさんがペットの問題に気づくことも多く、包括支援センターの方たちは、私たちより早く情報をつかめる。その情報をお互いに共有して、問題解決のために取り組んでいます」


リーフレット「残されたペットのためにあなたができること」(撮影:編集部)

高齢者のペットを保護する際に障壁となるのは、ペットが法的に「個人の財産」とみなされる点だ。
急な入院や死亡など、飼い主の不在で動物が弱っていても、本人か身内の同意がなければ手を出すことができない。
認知症の場合も、本人が「この子とは別れない」と主張すると、たとえ飼育放棄状態でも救うことが難しい。
そこで「かわさき高齢者とペットの問題研究会」では、不測の事態に備え、飼い主の意思表示の契約書にもなるリーフレット「残されたペットのためにあなたができること」を作成した。
法的効力はないものの、飼い主が最後まで飼育責任を持つように啓発している。
「高齢化は進み、独居の方も増えています。孤独から動物を求める人も多く、問題は深刻化していくでしょう。高齢者がどう社会と結びついていくのか、孤独にしないためにはどうしたらいいのか、社会全体として考えていかなければいけないと思います」

◆飼い始めるのは何歳まで? 「自分は元気」と思っても

「Hope to Life チームZERO」の峰昌姫さんが2018年に引き取ったヨークシャーテリア(写真提供:峰さん)

約20年にわたって動物保護活動を続けている「Hope to Life チームZERO」代表の峰昌姫さんは、しばしば切羽詰まった状況での判断を迫られる。
「2018年11月、地域包括支援センターの方から電話がありました。利用者さんが急遽施設に入ることになり、行き場のない犬がいる、と。時間の猶予がないので、とりあえず駆けつけて引き取りました」
引き取ったからといって、すぐに譲渡先が見つかるわけではない。
「飼い主が高齢者の場合、犬や猫も高齢の場合が多く、なかなか譲渡に結びつかないことがあります。愛護団体は犬猫の譲渡先が見つからない場合、自分たちが飼育者にならざるを得ない。ですから、無責任に全て引き取るわけにはいかないのです」


峰さんが保護した生後2カ月の子猫。宮崎県から来た(撮影:編集部)

60、70代の人から、犬や猫を譲渡してもらえないかという問い合わせもある。
定年退職後、時間ができたからペットを飼いたい。
犬の散歩は健康に役立つ。
そういう声もある。
だが、「自分はまだ元気」と思っていても、年を重ねればいつ何があるか分からない。
「私は55歳以上の人には、原則、子猫を譲渡しないことにしています。55歳以上の方に『5歳くらいの猫はどうですか?』と聞くと、やっぱり子猫がいいと言う。でも75歳になった時、その人が元気かどうかは分かりません」
一般社団法人ペットフード協会が発表した「令和3年 全国犬猫飼育実態調査」によると、犬全体の平均寿命は14.65歳、猫全体は15.66歳。
20年生きる猫も珍しくはない。
自分の年齢に20年を足した時、その時点で責任を持って飼える状態かどうか、よく考える必要があるだろう。

◆自分がもし面倒を見られなくなったら――

峰さんが保護した生後6カ月の猫(撮影:編集部)

ペットと人間の関係について研究している帝京科学大学生命環境学部の濱野佐代子准教授は、高齢者がペットを飼うことは、決して悪いことではないと言う。
「孤独感が軽減されますし、ペットを通じて社会とつながることもできる。ただ、面倒を見られなくなった場合の準備はしておくべきです。ペットを飼っている高齢者に自分に何かあったらどうするか調査をしたところ、約6割の人が『同居の家族か離れて暮らしている家族がなんとかしてくれるだろう』と期待を持っていました。しかし『期待している』だけでは、実際にそうなるという保証はありません。もちろん、家族や知人と話し合って、いざという時の行き先を決めている人もいます。散歩で親しくなった犬友だちに、お金を渡して託すと決めている人もいました。それから、ペットが次の場所で幸せに暮らすためには、きちんとしつけをしておくことも重要ですね」


峰さんが保護した推定2歳の猫。譲渡先が決まった。「Hope to Life チームZERO」はホームページで里親を募集している(撮影:編集部)

具体的にどのような準備をしておけばいいのか。
取材に応じてくれた各所の意見をまとめると、以下のようなことが考えられる。
・飼えない状況になった場合に備えてペットを託せる人や場所を確保し、きちんと文章化しておく。
・困難が生じた際、知人やボランティア団体に相談できるか。情報をあらかじめ収集する。かかりつけの獣医師から情報を得られる場合も。
・ペットも高齢になると医療費などの費用がかかる。子どもや知人に引き取ってもらう場合、その費用も準備しておく。
・ペット信託などの制度を利用する。
年齢を重ねてから動物と暮らしたい場合は、動物保護団体と相談のうえ「預かりボランティア」という制度を利用する方法もある。
譲渡先が見つかったら別れなくてはいけないかわりに、自分に何かあった場合、引き取ってもらうこともできる。
人も動物も最後まで幸せな時間を過ごすために、どのような事態が起きるかを想像し、元気なうちから準備しておくことが飼い主の責任といえるだろう。