動物たちにぬくもりを!

動物愛護活動の活動経過や日々の出来事、世の中の動き等幅広く紹介します。

動物保護に尽力する女性と必死に生きる動物の姿が胸を打つ(印)

2020-11-30 05:44:53 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

「安楽死寸前の動物に第二の人生を」
 保護に尽力する女性と必死に生きる動物の姿が胸を打つ(印)

2020年11月18(水) Techinsight

虐待、育児放棄、事故、老い、病気などで特別なケアが必要な動物ばかりを集め、愛情を注ぎ続ける女性がいる。
インド在住の女性と第二の人生を与えられた動物たちとの関わりを捉えた姿が、多くの人の心を捉え感動を与えている。『InspireMore.com』などが伝えた。


特別なケアが必要な動物を保護する女性(画像は『The Logical Indian 2020年10月24日付「MyStory: ‘Tails Of Compassion’ Is About Giving Hope, Unconditional Love To Specially-Abled Animals’」』のスクリーンショット)

インドのハリヤーナ州グルグラムに住むディブヤ・パーササラティさん(Divya Parthasarathy)は2017年8月、動物保護団体「Tails of Compassion(ToC)」を設立した。
幼い頃から動物が大好きだったというディブヤさんは「動物保護施設はたくさんあっても、年を取ったり障がいを負って捨てられた動物の引き取り先がほとんどない。安楽死されてしまうしかない動物たちをなんとか救えないだろうか」とリサーチを重ね、慈善団体である「ToC」を立ち上げた。「Tails of Compassion(ToC)」の「Compassion」とは思いやりを表す言葉で、ディブヤさんの活動をストレートに表している。
「もし人間だったら『年を取ったからもういらない』とか『事故に遭って歩けないからもう世話をしない』なんてことはしないでしょう。でも一部の心無い人たちは、動物をいとも簡単に捨ててしまう。なぜ人間は思いやれるのに、その愛を動物に向けることができないのか…。そこから私の活動が始まったのです」と熱く語るディブヤさん。
現在は犬が約40頭、ヤギ3頭とニワトリ1羽、子牛数頭とかなりの数の動物を保護しており、3年間で保護した動物は300頭以上になるという。

「ToC」の活動は寄付や地域の協力で成り立っており、ディブヤさんは保護した動物や施設の様子をSNSに頻繁に投稿している。
その活動はインドのメディアでも取り上げられており、今夏に保護したオス犬“マスター・シフ(Master Shifu)”の様子を捉えた動画は多くの人の関心を集めた。ディブヤさんによると、マスター・シフは骨の成長不良などにより骨や関節が変形してしまうくる病を患っており、市場に捨てられていたところを保護されたという。
ディブヤさんは「マスター・シフは前足が変形して上手く歩けず、市場で保護されなかったらきっと命はなかったと思います。しかも獣医に安楽死を勧められ、私たちが引き取ったのです」と明かすと、このように続けた。
「私は動物にまだ生きる可能性が残されているなら、安楽死をさせることが正しい選択とは思っていません。」
「マスター・シフが施設に来た当初は、大型犬に喧嘩をふっかけるなどかなり攻撃的でした。また自分の殻にこもり人間や犬たちにも打ち解けられないようでしたが、私は時間をかけて『ここは安全なんだよ。あなたが大好きよ』という気持ちを伝え、少しずつ信頼を得たのです。マスター・シフが心を開くまで1か月半ほどかかりました。」
マスター・シフのように「ToC」にやって来る動物たちは、虐待を受けたり、事故に遭ったり、捨てられたりとつらい経験をしてやってくる。
施設内にいるほとんどの動物たちが足がなく上手く歩けなかったり、目が見えなかったりと何らかの障がいがある。
しかし「ToC」のSNSの動画や写真を見ると、動物たちはのびのびとしており、ディブヤさんをはじめとするスタッフのことを心から信頼しているのが分かるのだ。
ディブヤさんは『The Logical Indian』のインタビューに応じ、動物たちへの想いを次のように語った。
「ここにやってきた動物たちが、自分らしく変化を遂げていくのを見るのは本当に嬉しいし、この仕事にやりがいを感じます。」
「事故に遭い、身体が麻痺してしまった犬でも魂はあるのです。私は動物たちの『生きたい。障がいに負けない』という気持ちを大切にしてあげたいのです。」
「犬は物ではありません。だから犬を所有するという考えはもう捨てるべきです。私はToCにやってきた全ての動物たちを、自分の子供だと思って接しています。私たちは犬の飼い主ではなく犬の親なのです。そしてできればより多くの人が老犬や障がいを持った犬に興味を持ち、親になってくれることを願っています。」
なおディブヤさんの夢は今の施設を拡張し、もっと多くの動物たちを保護することだそうで「経済的にも、肉体的にも、精神的にも決して楽ではありません。でも私は愛と希望を与えることができるこの仕事が大好きだから、前進あるのみです」と瞳を輝かせた。

(TechinsightJapan編集部 A.C.)


動物愛護には3つの形がある

2020-11-29 05:44:30 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど



2020年11月23日(月)

飼わないことも愛。動物愛護には3つの形がある。

個人的には動物愛護にはザックリ3つの形があると思っていて、
1つめは、たくさんの動物に手を差し伸べている人
2つめは。自分の周囲の動物を大切にしている人
そして3つめは、今飼えない人は飼わない選択をすること(動物が苦手な人は動物に関わらないこと、それも愛)
なのではないかと思っているんです。
前回のまんがで書いたのは3の人たちです。
3の人は、状況を客観的に把握できる思いやりがあり、愛情深いだろうからいざ飼える環境が整えば、人も動物も幸せに暮らすのだろうなと思うと心が温かくなるのです。

前回のまんが


コロナが改めて浮き彫りにした「毛皮工場」の存在

2020-11-27 05:43:11 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

コロナが改めて浮き彫りにした「毛皮工場」の存在......
年間約1億匹もの動物がされている

2020年11月16日(月) Newsweek
松岡由希子

<デンマークで1700万匹のミンクが殺処分の対象になったことで、あらためて「毛皮工場」の存在に注目が集まっている。ミンクやキツネ、アライグマなど、年間約1億匹もの動物が劣悪な環境で飼育され、されている......>


欧州では、「毛皮工場」を禁止する動きが広がってきていたが...... Ritzau ScanpixREUTERS

デンマーク国立血清研究所(SSI)は、2020年11月、家畜のミンクからヒトに感染した新型コロナウイルスの変異株がデンマーク国内で確認されたことを明らかにした。
6月8日から10月18日までの間、北部の北ユラン地域を中心に214名からこの変異株が検出されたという。
この変異株には新型コロナウイルスの抗体をつくる能力を弱める作用があり、「現在開発中のワクチンの有効性を脅かすおそれもある」と警鐘を鳴らしている。

◆デンマークで1700万匹のミンクが殺処分の対象になった
デンマークでは、6月以降、北ユラン地域のミンク飼育場で新型コロナウイルスに感染したミンクが相次いで確認されており、その数は11月6日時点で216カ所となっている。
デンマーク政府は、10月1日から、新型コロナウイルスへの感染が確認された飼育場およびその半径7.8キロ圏内にある飼育場を対象にミンクの殺処分をすすめてきたが、デンマーク国立血清研究所の調査結果を受けて、11月4日、「国内で飼育されているすべてのミンクの殺処分を義務づける」と発表した。
殺処分の対象となるのは最大で1700万匹にのぼる。
しかし、その後、政府には感染が確認されていない農場にまでミンクの殺処分を命じる法的権限がないことが判明し、10日、この命令を撤回して、感染が確認された飼育場から半径7.8キロ圏外の飼育場に対しては、全ミンクの殺処分を勧告するにとどめた。
ミンクへの新型コロナウイルスの感染は、デンマーク以外でも確認されている。
スペイン北東部アラゴン州の飼育場では、7月16日、新型コロナウイルスの集団感染により、ミンク9万2700匹の殺処分が命じられた。
オランダでも、南東部フェンラユの飼育場7カ所で新型コロナウイルスへの感染が確認され、飼育中のすべてのミンクが殺処分されている。

◆欧州では、「毛皮工場」を禁止する動きが広がってきた
アニマルウェルフェア(動物福祉)の啓発に取り組む非営利団体「フォー・パウズ・インターナショナル」によると、市場で流通している毛皮の95%が飼育場で飼育された動物によるものだ。
ミンクやキツネ、アライグマなど、年間約1億匹もの動物が劣悪な環境で飼育され、されている。
欧州では、このような「毛皮工場」を禁止する動きが広がってきた。
英国では2000年にいち早く禁止され、2004年には、オーストリアでも禁止された。
現在、スロベニア、クロアチアといった東欧諸国や、ノルウェー、ベルギーなどでも、原則禁止されている。
また、オランダでは、2024年に毛皮工場を全面的に禁止する計画であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、これを2021年に前倒して実行する見込みだ。

◆毛皮の需要は、中国や南米など、一部の地域で伸びている.....
毛皮の需要は、中国や南米など、一部の地域で伸びているものの、毛皮に対する消費者の考え方や姿勢は変わりつつある。
「フォー・パウズ・インターナショナル」がドイツで1046名を対象に実施したアンケート調査によると、回答者の84%が「ファッション産業の毛皮生産のために動物を飼育し、することに反対する」と答え、76%が「毛皮の販売は時代遅れだ」と答えている。


ペット規制、ブリーダー大量廃業で犬猫13万頭が「殺処分」?

2020-11-26 05:41:26 | 国・行政

ブリーダー大量廃業で犬猫13万頭が「殺処分」?
 「小泉進次郎」のペット規制で

2020年10月30日(金) デイリー新潮

◆「悪質な事業者を排除するレッドカードを出しやすい、そういう明確な基準とする」、「厳格な対応をより一層速やかに進めることができる」、「動物目線の基準とすることができた」


「犬好き」が結んだ縁

今後の動物愛護行政を左右する“基準案”について、小泉進次郎環境大臣は7月10日の記者会見でこう胸を張った。
この案は今月7日の有識者会議で正式にまとめられた。
 ここで語られた基準案とは、昨年改正された動物愛護法に基づいて、目下、環境省が詰めの作業を進める“数値規制”を指す。
動物愛護法の改正は過去にもあったが、業者に対して厳格な数値規制が盛り込まれるのは初めてのこと。
劣悪な環境で動物たちを飼育する悪質業者の排除を目的としており、この新基準を含む環境省令が来年6月に施行されることになる。
 実は、この会見の前日、進次郎氏の妻である滝川クリステルは、全国100カ所の犬猫保護団体に対して20万円ずつ、計2千万円の寄付を行ったと公表したばかり。
自身の名を冠した動物保護団体「クリステル・ヴィ・アンサンブル」の代表を務める滝川は、東日本大震災の際に福島県で保護されたレトリーバー犬のアリスを引き取るなど、大の愛犬家で知られる。
得意のテーマで夫の会見前に露払いを務めたことからも、婦唱夫随の連携プレーぶりが窺える。
一方、進次郎氏がこの仕事に力を注ぐのには理由があった。
政治部デスクによれば、「存在感が薄まる進次郎にとっていまは正念場です。記者クラブから中身のない会見を“ポエム”と批判されて針のムシロ。環境省に改善要求を出される始末です。また、政府は福島第一原発に溜まる放射性物質を含んだ処理水について、海洋放出する方針を固めましたが、進次郎による地元への説得は全く進んでいない。大臣には国益のために泥を被る覚悟も必要。それだけの胆力があるのか、真価が問われています」
そんな進次郎氏にとって“実績”作りは急務と言える。
その点、飼い犬・猫の数が約1900万頭にのぼる日本で「ペット問題」は国民的関心事。
耳当たりが良く、大衆の支持を得やすい動物愛護に絡むテーマはうってつけなのだ。
ところが、そんな夫婦の“共同作業”がペット業界を震撼させているという。
大手ペットショップチェーンの幹部はこう訴える。
「今回の数値規制が現実のものとなれば、ペットの価格がこれまで以上に高騰して、日本は世界で最もペットを飼いづらい国になってもおかしくありません。同時に、ブリーダーの廃業も相次ぎ、彼らが飼育する多数の犬や猫が行き場をなくしてしまう」
 令和のビッグカップルが動物愛護の美名のもとに推し進める新基準――。
だが、そのせいで、むしろ動物たちが命の危険に晒される事態が懸念されているのだ。
問題の基準案は、概ね次のような内容である。
〇業者の飼育頭数に上限を設ける。繁殖用の犬は従業員1人につき15頭、猫は25頭まで。販売する犬は1人につき20頭、猫は30頭までとする。
〇運動スペースと分離して犬猫を飼育する場合のケージの広さは、原則的に縦と横がそれぞれ体長の2倍と1・5倍。高さは犬で体高の2倍、猫は3倍とする。
〇交配年齢については、犬猫ともにメスは原則6歳まで。また、犬の生涯出産回数は6回までとする。
これに加えて、幼い動物たちの健康面をケアするため、改正動物愛護法で定められた、生後56日以下の子犬や子猫の販売を禁じる「8週齢規制」も来年6月にスタートする見込みだ。
先のペットショップチェーン幹部が続ける。
「これまではペット業界も“悪徳業者を淘汰するために法律で厳しく取り締まるべきだ”という論調が大半を占めていました。ただ、今回の数値規制はあまりにも非現実的だと感じます。なかでも、我々にとって死活問題なのはペットの価格です。2005年の動物愛護法改正でブリーダーが登録制になり、趣味で繁殖を手掛けるホビーブリーダーは減少。供給が減ったことで犬の価格は15年前の4倍近くに高騰している。今回の数値規制でブリーダーの飼育頭数が減れば、さらに2倍近く価格が跳ね上がってもおかしくありません」

◆3割以上が“廃業”

愛犬と散歩する滝川(撮影・大橋和典)

仮に価格が倍増すると、現在、約30万円で販売されるチワワは60万円に、都内のペットショップで50万円ほどの値がつくフレンチブルドッグは100万円に達する。
とても子どもの誕生日プレゼントとして購入できる金額ではない。
一方、ペットショップ以上に煽りを食うのはブリーダーたちである。
犬猫のオークション事業に携わる、一般社団法人ペットパーク流通協会の上原勝三会長はこう語る。
「頭数制限が課されるとは聞いていましたが、従業員1人につき繁殖犬15頭までという規制は想定外でした。世界でも数値規制を導入している国は少なく、アメリカでは1人につき50頭~70頭、ドイツは10頭と開きがあります。今回の数値規制は、世界で最も厳しいドイツに近い数字ですが、そもそも、ドイツでは大型犬を扱うホビー目的の小規模ブリーダーが大多数を占めている。法規制や産業実態が全く違うドイツと大差ない数値規制をそのまま日本に当てはめるのは、さすがに無理があると思います。繁殖制限もあるのでブリーダーは7歳を超えた繁殖犬を泣く泣く手放さざるを得ない。再来年には改正動物愛護法で定められたマイクロチップの装着義務も始まります。およそ200年前に動物愛護法ができたイギリスをはじめ、欧州ではペットに関する法制度に長い歴史がある。日本ではここ数十年、急ピッチで法改正が進められてきたが、これほどの変革が一気に押し寄せては業界としても対応しきれません」
こうした事態を受けて、上原氏が会長を務める協会は、犬猫適正飼養推進協議会とともに繁殖業者への緊急アンケートを実施。
結果を見ると、まず犬の平均飼養頭数は28・9頭で、猫は42・6頭。犬の繁殖業者のうち64・8%、猫の31・7%が頭数基準をオーバーしていると回答した。
基準を超えて飼育できないとなれば、犬猫を合わせて13万頭以上が行き場を失うと推計されている。
入れ替わりが激しいため、業者が飼育する正確な頭数は行政も把握しておらず確認できないが、13万頭もの犬や猫が路頭に迷えば、もはや社会問題であろう。
さらに、従業員数を増やすことが難しい小規模ブリーダーが経営難に陥ることは避けられない。
実際、犬の繁殖業者の32・3%、猫の18・9%が“廃業”を視野に入れているという。
譲渡先が見つからず、さらにブリーダー自体が大量廃業に追い込まれれば、動物たちが山奥に遺棄されたり、野良犬や野良猫となって殺処分される危険性が高まるのだ。

◆科学的根拠に乏しい
全国ブリーダー協会で名誉学術顧問を務める筒井敏彦氏も懸念を口にする。
「問題は数値規制に科学的根拠が乏しいことです。私は獣医学者の立場から犬と猫のブリーディングの研究を続けてきましたが、犬のサイズにかかわらず同じ規制をかけることには首を傾げざるを得ません。小型犬の平均寿命は15歳前後で、大型犬は平均10歳前後。“交配は6歳まで”と定めたところで、大型犬と小型犬では寿命や繁殖能が大きく異なります。“8週齢規制”にしても、生後7週で親から離した場合と、生後8週の場合のデータに科学的な違いはありませんでした。せっかく殺処分数が減り続けているのに、きちんとしたデータに基づかない規制によって増加に転じたら元も子もありません」
実は、平成30年度における犬と猫の殺処分数は3万8444頭と、平成19年度の約30万頭から大きく数を減らしている。
にもかかわらず、動物愛護を目的とした新基準によって、大量の殺処分を招く事態になったら話になるまい。
他方、滝川は13年10月に公開されたウェブ上の記事でこんな発言をしていた。
〈海外では産後8週以内の赤ちゃんの販売は禁止されています。生まれてすぐに親から引き離され、精神的にも不安になり、病気の状態もわからない〉(「DRESS」HPより)
滝川の発言は“8週齢規制”を後押ししたもので、さらに夫の所管大臣就任で動物愛護行政をラジカルに動かした格好である。
「悪徳ブリーダーを排除するという目的自体には賛成です。しかし、今回の基準は全く実情に即していないと感じています」
そう打ち明けるのは、都内で約100頭の犬を扱うブリーダーの臼井祐子氏。
「私はシェットランド・シープドッグ、通称“シェルティ”という中型犬を専門に飼育しています。実は、今年2月に新居が完成して、冷暖房を完備した犬たち専用の部屋を作ったばかり。いまのケージは犬たちが立ち上がっても頭が天井に触れない高さですが、基準案に沿った大きさや素材で新調すると、ひとつ2万5千円かかります。100頭分だと出費は250万円にのぼりますし、専用部屋に入り切りません」
 臼井氏を含めスタッフは7人いるため、いまのところ頭数規制には引っ掛からない。
しかし、「一人でも辞めたら、その分の繁殖犬15頭はどうしたらいいのか……。ブリーダーとしての責任があるので、譲渡する際にはシェルティを飼育する大変さをきちんと伝えています。そのため、里親が見つかるのは年に2~3頭程度です。今後は善良な業者ほど法律を守ろうとして追い込まれていくでしょう。その反面、悪徳ブリーダーが“こんなに基準が厳しいならもう殺すしかない”と考えるのではと心配でなりません」
その一方で、動物愛護派からは「もっと厳しい基準を」との声が上がっている。
 新基準がペット業界を混乱に巻き込んでいることについて環境省に質すと、「基準の施行に伴う遺棄、殺処分、不適正飼養等を生じさせないよう、繁殖を引退した犬猫や保護犬猫の譲渡が促進される環境づくりを進める」とした上で、「経過措置について検討する」と回答したが、具体的な解決策は見えてこない。
 そもそも、賛否の割れるテーマで手腕を振るうのは政治家の役割だろう。
だが、いまの環境大臣に、妻をはじめとする急進的な動物愛護派と、悲鳴をあげるペット業界の双方を納得させるだけの手腕があるかと問われれば、“否”と言わざるを得ない。
週刊新潮」2020年10月29日号 掲載

新潮社

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中国の食肉店で命を失う直前に救出された白い犬

2020-11-25 05:46:52 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

中国の食肉店で鎖につながれ命を失う直前の白い犬、
 手を差し伸べ助けを求める。その後の展開に胸をなで下ろす

2020年11月19日(木) FINDERS

人類の生活をより豊かにしてくれるペットたち。
しかし、国や地域によって食文化がことなるため、犬食文化が残っている地域もあるのもまた事実。
中国もその一つだ。
そんな中、昨年10月に中国・吉林省で撮影された1本の動画が今、中国版TikTok「douyin」で大きな注目を集めている。

を待っている犬



ヤンヤン

投稿された動画には、白い毛並みのアメリカン・エスキモー・ドッグが映し出されている。
だがよく見るとこの犬は鎖で鉄柵につながれており、どこか怯えた表情だ。
投稿者によれば、撮影場所は食肉店の前だったという。
そう、この犬は食用犬としてされる運命にあったのだ。
動画の中で、撮影者の男性が声をかけながら手を差し伸べると、犬はまるで助けを乞うように片手を差し出した。
この犬は幸運にも、この男性によって引き取られることに。
ヤンヤンと名付けられたこの犬は現在、元気に過ごしているとのことだ。
撮影者は「動物の虐待を禁止する法整備を出来るだけ早く」と訴えた。
動物福祉団体Humane Society International (HSI) の担当者によると、ヤンヤンは他の飼い主の元から誘拐されたのではないかと考えている。
「動画の中でヤンヤンは人間の差し出す手に応えるように前足を差し出しています。これはヤンヤンがほぼ確実に以前ペットだったということです。つまり、食肉取引のために盗まれた可能性が高いことを示しています」と『MailOnline』に語った。
また、この食肉店では同月、似たような白い犬が救助されたという。

中国でも高まる犬食禁止の機運
中国政府は今年5月、今まで食用目的の家畜として分類されていた犬を、コンパニオンアニマル、つまりペットとして分類する政令案を正式に承認。
今の所これによって犬食を禁止するものではないが、今後規制に向かっていくことを示唆している。
元々犬肉を食べる食文化を持つ中国においても、犬や猫といったペットとなる動物を保護しようという機運が高まっているようだ。
国や地域によって育まれた食文化は異なるため、犬食文化それ自体を否定することは難しい。
しかし、時代の移り変わりに応じて形を変えていくのも文化の特徴といえるはずだ。
これから、人類だけでなく動物の幸福も求められる時代において、中国はどのような動きを見せるのか期待していきたい。


住宅街、イノシシとヤギ「お友達」 実は深刻な状況

2020-11-24 05:51:42 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

住宅街、イノシシとヤギ「お友達」 実は深刻な状況

2020年11月15日(日) 熊本日日新聞

熊本市南区に接する宇土市。
市中心部には、JRの駅や大型量販店が並び、熊本市の市街地から車で約30分という利便性の高さから、ベッドタウンとしての人気も高い。
「野生のイノシシと飼われているヤギが遊んどるけん、取材せんですか」。
9月中旬、読者から支局に電話が入った。
現場は市中心部にある支局から北西に1キロほど。
市役所からも南西に1・5キロほどしかない。
市道沿いの閑静な住宅街の一角で、とてもイノシシが出るとは思えない場所だ。
現場に駆け付けた時にはイノシシの姿は既になかったが、電話をくれた近くの前田寛さん(71)から、写真と動画を見せてもらった。
ヤギは近くの高齢者施設で飼われている2歳の雄。
つながれている空き地で、小型のイノシシと30分ほど“交流”を続けたという。
お互い尻尾を振り合ったり、一緒に跳ねたり楽しそうに遊んでいるように見えたという。
イノシシは集まった人たちが5メートルほどの距離に近づいても逃げず、住民がちぎったパンを投げると逃げ出したらしい。
「みんな『かわいか、かわいか』と写真を撮っていましたよ」と前田さん。
種類が異なる動物の交流という一見、心温まる風景。


ヤギと“交流”するイノシシ=9月15日、宇土市(前田寛さん提供)

だが翌日、市農林水産課で写真を見せると、鳥獣害担当者は「ついにここまで…」と頭を抱えた。
同じ日には、近くの住宅街の公園でもイノシシが目撃されていた。
「住宅地なので猟銃や猟犬を使うわけにはいかず、現状ではイノシシを追い払うことしかできない」
今回はイノシシがヤギと戯れていただけ。
しかし、一住民として冷静に考えると「散歩中に出くわしたらどうしよう」「そもそもイノシシはいつ活動するのか」と不安になった。
市の担当者に重ねて尋ねてみたところ、市内でのイノシシの捕獲数は昨年度で646頭と、ここ10年で約30倍になったという。
知らなかったとはいえ、すさまじい増加ぶりに驚いた。
市は、田畑を荒らす有害鳥獣とみなしたイノシシの成獣を駆除した場合、国の鳥獣被害防止総合対策交付金に市単独分を加えて、1頭につき1万2千円を支払う。
ただ、市内に猟友会員は50人ほどいるが、実際に活動しているのは30人に満たないという。
市の担当者は「目撃情報はすぐに寄せられるが、イノシシは賢くてわなを仕掛ければすぐに捕らえられるわけではない」と困惑の表情を浮かべた。
ヤギと交流したとみられるイノシシは、1カ月近く周辺で目撃され続けた。
10月中旬、住宅街で市職員と猟友会員が数人で網を使ってイノシシを捕まえたと聞いて、少しほっとした。

【動画】住宅街にイノシシ ヤギと〝交流〟

(西國祥太)


猫を飼う前に知っておきたい! 猫アレルギー

2020-11-23 05:44:51 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

【獣医師監修】
猫を飼う前に知っておきたい! 猫アレルギーの判定方法、症状、治療法について

監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

2020年11月12日(木)



念願の猫との生活を始めたのに、咳もくしゃみも止まらない!
そんな悲劇が起こる前に確認しておきたい、自分や家族の猫アレルギー。

◆猫アレルギーの判定方法

現代病とも言われている、アレルギー疾患。アレルギーの原因(アレルゲン)は食品、花粉、ホコリやダニといった様々なものですが、その一つのアレルゲンが猫によるものです。
アレルギーの程度は個人によって違いますが、猫アレルギーを抱えて、猫と同じ空間に10数年もの長い間暮らすことは非常に困難です。
飼ってしまった後、手放さざるを得ないなんてことが起きないよう、まずは自分や家族の猫アレルギーをチェックしましょう。
アレルギー検査は、アレルギー科や内科、皮膚科などの医療機関で受けることができます。
血液検査やパッチテストが行われ、費用は症状があれば保険適用となり、それ以外は保険適用外となります。
また、病院で検査をして数値には問題がなかったのに、猫に触れるとアレルギー症状が出るということもあります。
その場合は、医師に相談して適切なケアを行いましょう。
できれば猫カフェなどを利用して、複数回猫と触れ合う時間を持つと安心でしょう。

◆猫アレルギーってどんな症状?

猫アレルギーの症状は、その他のアレルギー症状と似ていて、目の充血、かゆみ、涙、鼻水、咳、くしゃみ、息苦しさ、皮膚のかゆみや腫れなどです。
喘息を慢性化させたり、呼吸困難を引き起こす重度なものもあります。
同じ空間に猫がいて、突然このような症状が出たら、アレルギーを疑ってみてください。
またそのような症状が出た時は、目や顔を触らず、よく手を洗ってから医療機関に相談しましょう。

◆猫アレルギーの治療法は? 治るの?

猫アレルギーが発覚した場合、どうしたらいいのでしょうか? アレルギー治療としては、
◯原因となるアレルゲンを避ける
◯薬物による対症療法
◯アレルゲン物質を少しずつ摂取する減感作療法
があります。
薬物療法は今出ている症状を和らげるので、症状は軽くなりますが、根本的にアレルギー体質を改善できるわけではありません。
また、減感作療法は数年単位で少しずつ行わなければならず、効果にも大きな個人差があります。
そうなると、アレルゲンを避けるのが一番の対処法になるでしょう。
それでは、猫アレルギーを持っていたら、猫を飼わないという選択肢しか選べないのでしょうか。

◆アレルギーを予防して、猫との楽しい暮らしを!

アレルギーの程度にもよりますが、軽度のアレルギーならば、医療機関にきちんと相談した上で、猫と過ごすことも夢ではありません。
猫アレルギーのアレルゲンは数種類ありますが、中でも問題になるのが猫の脂腺、肛門腺、唾液腺から分泌されるアレルゲンです。
これらが猫の毛やフケに付着し、部屋中に飛び散ることでアレルギーを引き起こします。
よって、頻繁に掃除を行うことでアレルゲンを吸い込まずに済みます。
猫は高いところや狭い隙間など、広範囲を移動します。
床だけでなく、カーテンや棚の上、壁など、あらゆるところを丁寧に掃除しましょう。
猫自身を清潔にするのも有効な手段です。
月に1~2度シャンプーをして、こまめにブラッシングすると毛が飛び散ることを防げます。
また家に置いてあるラグやカーテン、ソファーカバーなども洗濯しやすいものを選ぶといいでしょう。
アレルギーは突然起こることもあります。
ストレスを溜めずに、健康的な生活を送ることも重要です。
猫がいる毎日。
自分と家族そして猫のため、アレルギーをきちんと把握して、幸せで特別な日々を送りましょう。

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付添犬、被害少女ケアのため「刑事裁判に初出廷」

2020-11-22 05:44:59 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

付添犬、被害少女ケアのため「刑事裁判に初出廷」
…弁護士ら実現に奮闘、日本にまだ4頭

2020年11月1日(日) 弁護士ドットコム

虐待を受けた子どもが刑事裁判で証言する際に、精神的負担をやわらげるため、「付添犬」の法廷への同伴が許されたーー。
こんな異例のケースが報道で紹介されると、大きな話題になった。
子どものために、犬を裁判手続きに入れる。アメリカでは珍しくなくなっている対応を日本で実現するためには、医師や獣医師、そこに加わった女性弁護士らが積み重ねた6年越しの努力が必要だった。
(構成=編集部・塚田賢慎)


インタビューが終わってねぼけまなこの付添犬ハッシュ。法廷でもこんな感じだったそうだ(2020年9月、日本介助犬協会、弁護士ドットコムニュース撮影)

◆日本初の快挙

キリッとした表情のなかに愛らしさも感じさせる付添犬ハッシュ

被害者が証人として裁判に出廷する。
必要な手続きではあるが、事件を振り返ることは、大人であってもつらく、それが幼い子どもであれば、ことさら緊張をしいられる場面だ。
そんな負担を少しでも緩和するべく、画期的な取り組みがなされた。
8月、関東地方の地裁の法廷で、10代女性の本人尋問がなされた。
男性から虐待を受けたとされる児童福祉法違反の刑事裁判だ。
落ち着いて証言した女性の足元には、1頭のゴールデンレトリバーが寝息を立てて眠っていたという。
この6歳のオス「ハッシュ」こそが、おそらく日本初の「法廷に入った付添犬」だ。
尋問期日、被害女性には、ハッシュ、付添人である弁護士、ハッシュのハンドラー(犬の管理者)、医師、支援者らが付き添っていた。
付添医師、付添人、付添犬を派遣したのは、NPO法人神奈川子ども支援センターつなっぐだ。
代表理事の飛田桂弁護士は「付添犬を刑事裁判手続きに入れるには、5年以上かかりました」と話す。
「つなっぐ」が最高裁に確認したところ、「最高裁としても把握していない」との回答を得たという。
日本で初めてのケースとみられる。

◆付添犬とは
「付添犬」とは、付添犬認証委員会が2020年7月に作った新しい言葉だ。
日本ではハッシュを含め、4頭が活動している。
アメリカでは、虐待や事件の被害者になった子どもの負担を軽減するため、司法面接や裁判所での証人尋問で、「コートハウス・ファシリティ・ドッグ(CFドッグ)」という犬が子どもに寄り添う役割を果たしている。
このモデルを日本にも取り入れようと、多くの人や団体が手弁当で尽力してきた。


フランとハンドラーの田野裕子さんと飛田弁護士(捜査機関の事情聴取付添前の様子)

2014年に、児童精神科病棟での犬セラピーの経験から犬の力を実感していた新井康祥医師と吉田尚子獣医師が、家裁の調査官調査にセラピードッグを導入できないかと検討を始めた。
その後、丸山洋子医師と山本真理子講師が加わり、彼らはアメリカに渡り、CFドッグ育成の基準を定める機関「コートハウスドッグズ・ファウンデーション」と連携を図りながら、日本の司法制度に適応できる体制をととのえるため、勉強会を始めた。
アメリカのいくつかの州では、裁判所に導入するためには、この基準をクリアしたCFドッグでなければならないとする条例が制定され、制度が厳格に運用されているという。
2016年になって、丸山洋子医師に声をかけられて、子どもの虐待に取り組む飛田弁護士が、この取り組みに参加し、司法との大きな架け橋となった。
日本全国で、医師、刑事裁判の裁判官や、家裁の調査官、児相の職員、弁護士らを呼び、CFドッグの実践例と、地裁に犬を入れることを目標として議論・検討を進めた。
「アメリカの裁判所に行くと、子どもが参加する法廷にスヌーピーの絵が飾られているし、裁判官も飲み物をストローで飲みながら、和やかな雰囲気です。日本の地裁ではそのようにチャイルドフレンドリーではありません」(飛田弁護士)

◆付添犬のあゆみ
2020年9月現在、付添犬は10回以上、児童相談所などに派遣されているが、裁判手続きに付添犬を入れるには高いハードルを越えなければならなかった。
活動当初、東海地方の女児が、面前DVによる被害の影響で家庭裁判所の調査官調査を受けられない事態になった。
調査官調査を受けられないまま、ただ家裁の手続きが進み、女児の気持ちとは異なる審判が下る可能性が高まった。
そこで、新井医師及び吉田獣医師が、セラピー犬の付き添いを提案した。
調査官調査そのものへの付き添いは認められなかったが、調査官調査の前後で、日本動物病院協会のセラピー犬の派遣が認められた。


フラン(左)と、手紙をくれた女児の心を癒したブランシェ

病院の一室に入ったセラピー犬は、多くの大人がいるなかで、女児にかけよったという。
「部屋で誰が一番緊張していて、助けてほしいか、わかっているかのようでした」(吉田獣医師)
そして、女児は調査官調査を初めて受けることができた。
「結果はまさに奇跡のようなものでした。正直、直前の診察でも話すことはできなかったため、今回の調査も失敗するだろうと予測していました。それがこれまで見たことのない明るい表情で、堂々と自分の意見を伝え、面接を終えてきました」(新井医師)
後日、吉田獣医師のもとに、女児本人から手紙が届いたという。
「めんせつに来たときと、する前、気持ちがぜんぜんちがいました。する前は心が痛くて痛みだけではきそうだった…でも犬にあったら、世界がかわるようにそんな心が変化しました。(中略)めんせつが終わって、犬に会えたとき。がんばってよかったと思いました。先生、これからもがんばってください!」

◆一進一退

飛田弁護士、ハッシュ、桑原さん

その数年後、刑事裁判手続きへの付き添いとして、被告人質問を遮蔽の中から傍聴したい、という別の女児からの依頼があった。
傍聴による二次被害も懸念されたが、女児の気持ちも大切にしてあげたい。
どうか女児と一緒に犬も入れてくれないだろうかーー。
地裁に、犬の履歴書や、アメリカのCFドッグの資料を提出し、要請した。すると地裁の総務部は「OK」を出して、残るは裁判体の判断となった。
法廷参加の準備のため、女児は、会議室で、日本動物病院協会のセラピードッグであるフランとハンドラーの田野裕子さんと対面した。
「フランと会って、ホッとしたお子さんの顔を見たときは、安堵の気持ちでいっぱいでした」(田野さん)
しかし、残念ながら、結局は傍聴の機会そのものがなくなってしまった。
目の前に見えた機会は失われたが、それでも新井医師、丸山医師、吉田獣医師、山本講師と飛田弁護士は、全国で勉強会を開催し続け、そのときまで万全の準備を進めた。


撮影中のNGシーン

◆ワンストップセンターの設立
2019年4月、前述の、弁護士や医師、社会福祉士による、虐待児童支援のNPO法人「神奈川子ども支援センターつなっぐ」(代表理事:田上幸治医師、飛田弁護士)が設立された。
事件・トラブルに巻き込まれた子どもが、病院・警察・裁判所など関係各所で同じことを何度も尋ねられることは、精神的な二次被害となりえる。
また、各機関が入手した情報は子どもに原則として還元されない。
そのため、「ワンストップ」で捜査手続きや身体的・精神的ケアを受けられるようにし、情報を子どもの手元におくことが目的だ。
警察・検察、医療機関、行政、児童相談所、弁護士が、子どもと子どもを支援する「つなっぐ」を基点として、円滑に連携することを目指している。
現在、子どもの継続的な支援まで行うワンストップセンターがないため、依頼があれば、できる範囲で全国の事案を取り扱っている。
主な活動は関東及び東海地方である。
2019年、「つなっぐ」設立と同時に、法人の中に「コートハウスドッグ準備委員会(付添犬認証委員会の前身)」を設置した。
2020年6月には、日本動物病院協会に加え、新たに日本介助犬協会とも提携を果たし、より安定した犬とハンドラーの供給が可能となった。

◆付添犬によるふれあいの拡大 児童相談所の取り組み
2019年に名古屋市中央児童相談所の常勤弁護士である橋本佳子弁護士が架け橋となって、児童相談所における勉強会が実施された。
2020年からは、丸山医師が同児相に常勤医師として勤務するようになったことにより、捜査機関に対して一時保護された子どもが供述をする協同面接の前後において、付添犬が派遣されるようになった。
「不安や緊張感でいっぱいだった子どもが、犬と触れ合うことで柔らかい表情に変化していきました。精神的に安定して、子どもが事実について話をすることができれば、児相のみならず、法曹三者にとっても良いことではないでしょうか」(橋本弁護士)
「理不尽で不条理な体験を積み、無力感に打ちひしがれた子どもに、一頭の犬が計り知れない力を与えてくれます。子どもたちと犬が触れ合う時間を取り、この機会が子どもにとって少しでも楽しい記憶と結びつくよう、児童相談所で試験的な取り組みを始めています。司法関係者には、ぜひこのような活動を知っていただき、ご支援いただきたいと思っています」(丸山医師)

◆寝ていることが安心につながる
冒頭の裁判の事件に話は戻る。


遊んでくれると思って駆け寄ってくるハッシュ

刑事手続きに入ることを地裁から許可された「付添犬ハッシュ」に会いに、日本介助犬協会を訪れた。
案内してくれたのは、ハンドラーを務めた協会の桑原亜矢子さんだ。
ハッシュの首輪にはリードが2本つながっている。
1本はハンドラーの桑原さんが握り、もう1本は女性が握った。
開廷前後にハッシュを触って心を落ち着かせる。
いざ、証言が始まると、リードがハッシュとのつながりだ。
それが心の安定になる。
また、犬のぬいぐるみも女性は膝に置いていた。
「ぬいぐるみはもともと持ち込みOKと判断されることが多いと聞いています。裁判所による負担軽減は始まっていたんですね」(飛田弁護士)
実は、裁判所に入った犬は、ハッシュの他にもう1頭いる。
開廷前に、グラディスという別の付添犬が待合室で女性の相手をした。
法廷に入ることをもともと許可されていた犬は、前述したフランだった。
あいにくフランは体調不良のため、補欠として登録していたハッシュが代打を務めることになり、見事その役目を果たした。
だから、厳密には「法廷(刑事手続き)に入った付添犬」は1頭で、「裁判所に入った付添犬」は2頭で、「裁判所に許可された付添犬」は3頭になる。


グラディス

◆付添犬は「野比のび太」が求められる世界
ハッシュは当初、介助犬として育成されていたが、適性をみて、途中から病院での活動や、介助犬のPR活動で活躍するようになった。
付添犬は介助犬を目指した犬のセカンドキャリアにもなる。
「人が大好きで、撫でてもらいたいんです」(桑原さん)。
人なつこい性格で、初対面の記者が相手でも、ヨシヨシとさわることを許してくれた。
写真のリクエストにも自在に応じ、人間たちが頭上でインタビューをしていても、かたわらで飽きずにジッと眠っている。利口で穏やかな犬だ。
「介助犬のなかには、温和で寝ちゃうのが得意なワンちゃんもいて、それは介助犬としてはおそらく適切ではないんですけど、付添犬としては、どこでもグーグー眠ってくれるのが大切な素質なんです」(桑原さん)
取材中も寝息をたてていたが、実は裁判のときも被害女性のかたわらで1時間半以上眠っていたという。
それが被害者の安心につながるのだ。


取材が終わって、「ん? もう終わったの」という眠そうな顔のハッシュ

たとえば、介助犬は全国に約62頭(2020年4月1日現在)しかいない。
育成費は、1頭につき240万円かかると言われている。
付添犬の数はいま、4頭。
生き物ゆえに、体調次第では、助けが必要なときに出動できないことだってある。
安定した活動のためには、付添犬の数が必要だ。
そこで、日本介助犬協会では、クラウドファンディングも実施(10月30日まで)。
426万円もの支援金が集まった。
「当初の目標は達成しましたが、安定的にたやさずやるには、適性のある子を常にキープしないといけません」(桑原さん)
取材をした9月8日、ツイッターで「付添犬」と検索してみると、わずか4件の投稿しか確認できなかった。
それがどうだ。
共同通信が10月6日に成果を記事にすると、付添犬は見事トレンド入りした。
11月3日には、日本動物病院協会の年次総会において、付添犬のオンライン講座も予定されており、社会的反響を後押しとして、このまま導入を全国的に広めていきたいと考えている

◆全国へ広がってほしい
飛田弁護士は、付添犬がひとつの地方裁判所だけでなく、全国レベルで広がってほしいと話す。
付添犬の基準を審査するのは、付添犬認証委員会になる。
しかし、最終的に法廷に入れるかどうかは、裁判所が判断するところだ。


伏せてほしいというリクエストに、ちゃんと応えてくれるフォトジェニックなハッシュ

「これは法制度が必要ではないかと思います。国としてやるべきでないかと。 裁判所に必ずいる存在になってほしい。そして、将来的には、警察署にも付添犬を入れたい。捜査の初動の部分は、被害者、子どもにとってハードルが高い。なにより、警察にはすでに警察犬がいます。先の話かもしれませんが、そのような展開を願っています」

取材協力弁護士
飛田 桂(ひだ・けい)弁護士
神奈川県弁護士会所属
事務所名:ベイアヴェニュー法律事務所
事務所URL:https://bay-ave.jp/staff


虐待を受けた子どもの被害証言に付添犬同伴

2020-11-21 05:42:46 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

子ども被害証言に付き添い犬同伴
 虐待事件公判で異例許可

2020年10月6日(火) KYODO

虐待を受けた子どもの刑事裁判を巡り、関東地方の地方裁判所が、被害を証言する子どもの精神的負担を減らすため、公判への付き添い犬の同伴を許可していたことが6日、関係者への取材で分かった。


虐待を受けた子どもの刑事裁判を巡り、公判への同伴が許可された「付添犬」のゴールデンレトリバー=9月

裁判関係者によると、精神的負担の軽減を目的とした動物の同伴許可は異例という。
子どもが被害者となった事件では、司法手続きでつらい体験を話すことへのストレスが指摘され、負担軽減の取り組みとして注目される。
入廷したのは訓練を受け、「付添犬」として認定を受けた犬。
国内では4頭が活動している。
許可されたのは10代の女児に虐待行為をしたとして、男が児童福祉法違反の罪で起訴された事件。

【付添犬が活躍しています】
◆付添犬とは
被害を受けた子どもが、安心して自分の受けた出来事について、他者(司法関係者/医療従事者など)に伝えられるよう手助けをする犬です。
虐待などでトラウマを受けた子どもが、事情聴取などでさらなるトラウマを受けないように精神的にサポートします。
アメリカで始まったこの活動は、2012年にCourthouse Dog® Foundation(CDF)が設立されて以来、厳格な基準のもと、アメリカ国内だけでも241もの犬たちが活躍しています。(2020年6月時点)
私たち 「つなっぐ」の付添犬認証委員会(前コートハウスドッグ準備委員会)は2014年より、CDFと緊密な連携を取り、日本への安全かつ効果的な付添犬導入のための情報共有を行っています。
獣医学的に健康であることや攻撃性がないことはもちろん、包容力のある穏やかな犬で、一般の犬が入ることのできない施設でも落ち着いて行動ができ、指示に適切に従う、などの十分な行動学的な安全性がすべての犬に求められます。
その特殊な活動内容と日本の現状に適応した、犬への厳正なスクリーニングとハンドラーに対する研修教育などを経た上で、子ども達やご家族の笑顔のための優しい活動を目指しています。
現在、「つなっぐ」と連携を結んだ2つの団体、社会福祉法人 日本介助犬協会と公益社団法人 日本動物病院協会(JAHA)からそれぞれの専門機関で認定を受けた犬とハンドラーが、さらに付添犬認証委員会の認証を受けて、毎回依頼活動内容やニーズに合わせて活躍しています。(2020年7月時点)

◆付添犬とハンドラー・団体の選定について
日本で付添犬を認証しているのは、付添犬認証委員会(前コートハウスドッグ準備委員会)のみです。
当法人は、米国Courthouse Dog® Foundationの制度に則って、付添犬を認証しております。
コートハウスドッグの商標権登録の申請中です。
類似の活動については認められていません。

◆付添犬チームの活動
〜子どもが刑事手続きを受ける際の負担を減らすための支援〜

「つなっぐ」では、子どもが刑事手続きを受ける際の負担を減らすための支援をしています。
子どもが、刑事事件の被害者や証人となる際の支援です。
子ども達は被害者や証人として、時につらい体験を法廷で話さなければなりません。
慣れた環境で話す場合ですら二次被害になると言われますが、大人でも緊張する法廷で、加害者の近くで話すとなれば、子ども達には不可逆的な影響が残ってしまう場合があります。
私たちは、早期から支援を開始し、子どもの生活上の支援や適切な医療へのつなぎを行い、支援者として子どもの状態を把握し、医療の手を借りながら子どもの状態を見極めます。
そして、子どもの尋問が決まると、法曹関係者、医療者、支援者などで、子どもの福祉に合致する証言方法を協議します。
その上で、裁判所に子どもの状態を「上申書」として提出したり、医師の「診断書」や「意見書」を提出したりして、裁判官に子どもへの負担を軽減するように上申します。
子どもの状態が悪い事案では、期日外尋問とビデオリンクを利用してもらい、子どもは加害者から離れた場所で、ビデオの前で証言できるようにします。
子どもと同じ部屋には、以前から生活支援をしている付添人や付添犬のほか、付添医師がいる環境になり、安心して証言をすることができます。
神奈川県からの助成金や皆さまからのご寄付により、基本的に無料でご利用いただけます。

子どもたちの「話す」をサポートそしてケア
公益社団法人日本動物病院協会所属 ハンドラー たのさん

初めて付添犬の活動をしたのは2年程前でしょうか。
今年に入り4回活動させて頂きました。
フランなら大丈夫と彼女を信じ、お子さん達とのふれあいや実際の調書の場での参加を致しました。
フランはお子さんと遊んだり、調書の際は横に伏せて寝ているだけで特に何をするわけではありませんが、きっとお子さんの心の支えにはなっている事と感じます。
何も喋らない犬ですが、だからこそ心にグッと「ついてるから、大丈夫!」と無言の応援をしているのだと思います。
時々フランに目を落としたりして、きっと姿を確認する事で少し落ち着いてお話ができるのかも知れません。
犬の底知れぬ深い愛情で、少しでも心に寄り添うことができたらと私は、毎回後方から応援しています。

◆活躍中の付添犬たち


公益社団法人日本動物病院協会に所属しているゴールデンレトリーバーのワンちゃんです。
いつも子どもたちのそばで、優しく子どもを見守っています。
社会福祉法人日本介助犬協会所属のワンちゃんたちです。
人が大好き!子どもの表情を読み取り、子どもたちが癒されています。

◆付添犬認証委員会(前コートハウスドッグ準備委員会)とは


付添犬認証委員会は、付添犬の質の確保、適正な運用、日本における付添犬の普及啓発を行う組織です。
Courthouse Dogs Foundation®と密に連携を取りながら、日本の現状に即した切れ目のない支援を実現するために、セラピードッグとファシリティドッグの2種類の付添犬を場面に応じて派遣しています。

◆委員会メンバー
新井 康祥(楓の丘こどもと女性のクリニック院長 児童精神科医)
高柳 友子(社会福祉法人日本介助犬協会 専務理事 医師)
丸山 洋子(名古屋市中央児童相談所 児童精神科医)
水上 言 (社会福祉法人日本介助犬協会 センター長)
山本 真理子(帝京科学大学 講師)
吉田 尚子(日本動物病院協会 理事 NPO法人CANBE 理事 獣医師)
飛田 桂 (ベイアヴェニュー法律事務所 弁護士)


「付添犬」について詳細の記事がありますので明日のブログに掲載します。
長いですが最後まで御覧ください。
欧米先進国に比べ遅れている日本の動物福祉社会を向上させるために、まずは多くの国民が認識することが必須です。
よろしくお願いいたします。
(byぬくもり)


犬多頭飼育崩壊一家の顛末

2020-11-20 05:48:16 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

「糞を食べようと肛門に口を寄せる子犬も」
 8畳2間に174匹、多頭飼育一家の顛末

2020年11月12日(木) 週刊女性PRIME

犬の散歩中、ほかの犬と出くわし、牽制して吠える光景は、日常でもよく目にするものだ。
ただ、その家の前を通るとはるかに超越したレベルの騒ぎが巻き起こるという。


室内には犬がひしめき合い、想像を絶する光景が(画像提供:「どうぶつ基金」)

「室内で1匹が吠え始めるとほかの犬も連鎖反応して、ワンワンワンワンとウェーブのような大合唱になるんです」(地元住民)
8畳2間の平屋建て住宅内に雑種の中型犬などが174匹。
想像を絶する大音量の鳴き声が外まで響き渡るという。
島根県出雲市の民家でおよそ前例のない規模の多頭飼育崩壊が明るみに出た。
飼い主は高齢夫婦と娘の3人家族。
元々は自宅敷地内にある古びた2階建て住宅で暮らしていたが、犬の室内飼育で傷んだのか、のちに増築した平屋建て住宅で犬と同居するようになった。
さらに不妊・去勢手術が追いつかず繁殖が繰り返され、世話が行き届かない状況に陥った。
県からの支援要請を受け10月に室内に立ち入った公益財団法人『どうぶつ基金』の佐上邦久理事長が室内の様子を語る。
「棚や台所の流し台、ベッド、コンロの上やテレビ台などありとあらゆる隙間にびっしり犬がいて、満員電車のようでした。犬の排せつ物が散乱し、一部の床は糞がペタペタ踏み固められて土間みたいになっていました」
家族は長年、犬に囲まれながら3度の食事や風呂を済ませ、身支度を整え出勤していたというから驚く。
犬の大合唱をやめさせるのは主に母親の役割だった。
「母親は一斗缶のようなものをガンガン叩きながら“うるさい! 黙れ!”などと大声で叫ぶんです。すると見事にピタッと一匹残らず鳴き止むんですよ」(前出の地元住民)
別の男性住民は、 「犬の鳴き声よりも、むしろ母親の怒鳴り声のほうがうるさかった」  と打ち明けるほど。
なぜここまで頭数が増えたのか。話は約40年前にさかのぼる。

◆エサを食べに勝手に来ちゃう
「まだ野良犬が路上をウロウロしていた時代で、あの夫婦は1匹にエサを与え始めた。やがて、面倒をみる犬は増え、自宅の庭で飼うようになり、しっかりとした犬小屋を建てた。それでも足りず室内でも飼育するようになり、約30年前の時点で室内外合わせて30匹以上は飼っていた」(近所の住民)
この頃すでに鳴き声はうるさく、雨が降ると周辺に獣臭が漂った。
庭で弱い犬をほかの犬たちが取り囲み、咬み殺すという残酷なシーンも目撃されている。
「さすがに飼いすぎじゃないか」 と直接諌める近隣住民に対し、 この一家は「うちで飼っているのはコレとコレとコレで、ほかはエサを食べに勝手に来ちゃうだけなんです」などと言い訳したという。
約20年前には近くの公園まで悪臭が広がり、学区の小学校で「あの公園で遊ぶと身体にダニがつくから行ってはダメ」と指導するほどに。
最終的に“大きな犬小屋”と化す木造平屋建て住宅を新築したのは16年前のことだから、一家なりに周辺環境に配慮したのかもしれない。
しかし、完全に犬を室内に閉じ込めたわけではないようだ。
関係者によると、平屋建て住宅から裏庭には自由に出入りできるようになっていたという。
それでも、犬にとっては狭い室内で居場所を探すのもたいへんな状況に置かれていたことに変わりなく、ストレスはたまったようだ。
7年前、室内から犬が逃げ出す騒動が起こっている。
別の近隣男性は言う。
「玄関を開けていたら逃げちゃったみたい。あれだけ頭数が多いのに犬を散歩させているのは見たことがないから運動不足だったんでしょう。ちゃんと狂犬病の予防注射をしているかわからないし、噛まれたら怖いなと思ったことを覚えている」
狂犬病予防法は、飼い主に対し、生後91日以上のすべての犬について所有してから30日以内に市町村に登録することと、狂犬病の予防注射を受けさせることを義務付けている。
違反者は20万円以下の罰金対象だ。

◆行政指導の限界
県によると、出雲保健所はこのとき保護した犬を返す際に初めて一家と接触。
飼い主がわかる首輪をつけて登録し、予防注射をするよう指導したという。
「最初は頭数を教えてもらっていませんが、2年後にちゃんとやっているか訪問調査したときに“十数匹飼っている”と言うので不妊・去勢手術をするよう言いました。昨年、近所から“臭いがする”と苦情を受け、再訪問したところ“20匹近くいる”と言うので登録・注射のほか周辺環境への配慮を加えて再指導しました」 と担当の県薬事衛生課・食品衛生グループの中村祥人グループリーダー。
一家は頭数を約10分の1に抑える過少申告をしたわけだが、今年6月に動物愛護法が改正されるまでは室内に立ち入って実態を把握することは難しかったという。
前出の佐上理事長は、視察時にこんな光景を見ている。
「栄養不足であばら骨が浮き出ている犬もいました。エサが足りず、成犬の肛門に鼻先を近づけている子犬もいました。ウンチが地面に落ちる前に直接食べようとしているんです」
それが多頭飼育崩壊の現実だった。
行政の指導は効果がなかった。
立ち入り調査権限が強化された法改正後の7月下旬、再び苦情が来ていたこともあって県と市の職員計4人で室内に入っている。
しかし、このときは「明らかな虐待とは言い切れない」と判断している。
「犬たちは落ち着いていて、噛み付くといった攻撃性もありませんでした。若干痩せている犬はいるものの、標準的な体型の犬が多かったんです。正確な頭数は数えられませんでしたが、室内に80匹以上いることを確認しています」(前出の中村リーダー)
タライには飲み水が張ってあり、エサの空き缶がゴミ袋にまとめて捨ててあるなど給餌をうかがわせる物証があったという。
しかし、狭い室内に詰め込まれ、ひもじくて糞を食べるような状態が、虐待に当たらないという判断は間違っていたのではないか。
「立ち入り時には糞尿は片付けられていて、犬のからだにウンチがこびりついていることもありませんでした。痛めつけるような虐待はなく、世話を放置してもいません。スペースがいちばんの問題で、明らかに不適切な飼育ではあるけれども、告発するまでには至らないと判断しました」(前出の中村リーダー)
県によると、7~8月に何度か訪問指導して飼育実態を確認したところ、登録済みの犬は2匹だけで、予防注射を受けた犬は1匹もいなかったという。
事態を見かねた地元の動物愛護団体が動いた。
飼い主一家と話し合い、不妊・去勢手術について『どうぶつ基金』に支援要請してはどうかと県にアドバイスした。
県薬事衛生課の田原研司課長は言う。
「飼い主はその後、指導に従って順次登録を進め、自費で注射を受けさせています。地元の動物保護団体の大きな協力を得て、状況改善に全力を挙げているところです」

◆174匹との同居生活について家族は
それにしても、飼い主一家は生活しにくくなかったのか。
現場宅に近寄ると、マスク越しに悪臭が鼻をつく。
事情を知る住民によると、この秋に地元の動物愛護団体が排せつ物の掃除などを行い、ずいぶん臭いは抑えられたという。
近所の女性はこう話す。
「母親は特に犬好きみたいで、夫に向かって“あんた、犬を蹴るということは私を蹴っているのと同じなんだからね!”と怒鳴り声が聞こえたこともある。
父親も基本的には犬が好きで、片付けた糞を手押し車に乗せて親戚が所有する畑までよく埋めに行っていた。
ところが母親も父親もこの夏に倒れてしまい、娘さんひとりでは手が回らなくなったようです。
臭いも鳴き声もないに越したことはないが、あの家族はやれることはやっていたと思いますよ」
娘はこの家から毎日出勤しており、留守中の犬を世話する働き手はほかにいなかったようだ。
約40年、どこが飼育崩壊につながるターニングポイントだったのか。
174匹との同居生活はつらくなかったか──。
自宅を訪ねると、娘が玄関先に出てきて「動物愛護団体にすべて任せているので私の口からは話せません」と言うばかり。
代わりに『島根動物愛護ネットワーク』の西原範正代表が答える。
「急に頭数が増えた時期は記憶が曖昧らしく、ターニングポイントは明確ではないそうです。一家では犬を世話しながら暮らすのが何十年も続く日常だったので、不便に感じることはあっても、つらいと思ったことはないそうです」

◆犬たちの今後はどうなる?
西原代表によると、一家は毎日8~10キログラムの袋入りのエサを2袋与え、ほかに炊いたご飯や煮た野菜も与えていたという。
「コントロールできない頭数まで増えてしまったが、犬たちの穏やかな表情をみるとそれなりに愛情をもって育てられたことがうかがえます。病気になれば動物病院に連れて行っていたため、病院には莫大な量のカルテがあるらしい。飼い主一家も正確な頭数は把握できていませんでしたが、140匹ぐらいには名前をつけてかわいがっていました」(前出の西原代表)
例えば、寄り目ならば「よりちゃん」といった具合に。近親交配のため顔つきがよく似ているにもかかわらず、名前を聞き返しても間違えることはなかったという。
「新しい飼い主さんにも割とすぐ懐くのではないかと思っています」と西原代表。
現在、『どうぶつ基金』が費用負担して全頭の不妊・去勢手術を行っている最中だ。
一家は犬の譲渡にも理解を示しているという。
地元のNPO法人『アニマルレスキュー・ドリームロード』の原ゆかり代表は言う。
「うちで預かっている犬はみな元気です。妊娠していた2匹は10月末と11月頭にそれぞれ無事出産し、子犬につきっきりで面倒をみるなどいいお母さんをしています。飼い主さんなりに犬をかわいがり、1匹も捨てていないし、保健所に連れていくこともしなかった。精神的に参っているのでもう誹謗中傷はやめてあげてほしい」
一家は周辺住民に対し、迷惑をかけたことを詫びる反省文を配布している。
迷惑をこうむっていたのは犬たちも同じ。たとえ愛情をもって接していたとしても、エサが足りずに飢えたり、窮屈な生活をおくるようでは幸せだったとは言い難い。
スムーズに再出発できることを祈りたい。
地元の動物愛護団体はさきごろ、今回の多頭飼育犬に新たな飼い主を見つけるためのWebサイト(下記参照)を立ち上げた。
「まだ犬の情報は掲載しておりませんが、準備を整えて随時掲載し、犬たちに新たな家を見つけてあげたい」(島根動物愛護ネットワークの西原代表)という。

◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
※この犬たちが幸せに暮らせるよう、里親になりたい読者は以下まで問い合わせを。
島根県出雲市・犬多頭飼育崩壊レスキューWebサイト(問い合わせフォームあり)  https://www.dog-rescue-izumo.info/index.html
NPO法人「アニマルレスキュー・ドリームロード」(原代表)  TEL 090・3742・7334 (もしくは団体フェイスブック https://www.facebook.com/izumo.animal へアクセスを)
「島根動物愛護ネットワーク」(西原代表)  TEL 080・5478・6522(もしくは nori@s-apn.org へメールを)

【実際の動画あり】8畳2間にひしめき合う犬、犬、犬