エンプティ・チェア The Empty Chair |
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読 了 日 | 2017/09/29 |
著 者 | ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver |
訳 者 | 池田真紀子 |
出 版 社 | 文藝春秋 |
形 態 | 文庫2巻組 |
ページ数 | 430/392 |
発 行 日 | 2010/11/10 |
ISBN | 上巻978-4-16-440588-6 下巻978-4-16-440589-3 |
ニューヨーク市警の科学捜査部長のリンカーン・ライムシリーズは、現在何作くらい刊行されているのだろう。と、思って文春のサイトを見たら、最新刊「スキン・コレクター」で11作目ということだった。
まだ僕がBOOKOFFなどで100円の文庫棚を見て歩き、シリーズ作品が100円になるのを待っていた時は、遥か遠くに感じるが、それほど前のことではない。だが、最近は本を買うことをやめて、まあ、それは僕の経済的な面がその大半の理由なのだが、専ら図書館を利用することになって、頻繁に通っていたBOOKOFFにも足が遠のいた。
そして、文庫が100円になるのを待つこともなくなったのはちょっぴり寂しいような気もする。 手元には、本書の他にその頃買っておいた、「ウォッチメイカー」と「石の猿」の2巻組4冊がある。僕は何か勘違いをして、「石の猿」は4作目だが、5作目と思っていた「ウォッチメイカー」は、文春のサイトで7作目だと分かった。
シリーズは一話完結だから、無理して順を追うことはないのだろうが、やはり主人公の環境の変化とか、時代背景の移り変わりなど発表順に読んだ方が、よりストーリーを面白く読めるのではないかと思い、多少読むのが遅くなっても順番に揃えておこうと思って3作を買ったのだが、どうやらどこかで間違っていたらしい。
このシリーズを追おうと思ったのは、一つには安楽椅子探偵の面白さと、ひょんなことからリンカーン・ライムの助手となったアメリア・サックスの関係が、名コンビともいうべき間柄になったことだった。
映画にもなった第1作「ボーン・コレクター」の、主人公を演じたデンゼル・ワシントン並びにアンジェリーナ・ジョリー両氏の名演も、僕をひきつけてやまない要因の一つだ。映画館で見た後、レンタルDVDやテレビ放送と、少なくとも数回は見返している。だから、本を読んでいても映画の主人公たちの顔が浮かんでくる。
今回は、リンカーン・ライムが脊椎手術を受けるため訪れた、ノースカロライナ州で地元の警察からの捜査依頼に応えるといった設定だ。
男一人を殺害し、二人の女性を誘拐したという少年を追う事件で、例によってライムは集められた証拠から、少年の行方を推理するのだが、地元の保安官補たちと行動を共にするアメリア・サックスは、ライムの指示に従いながら、少年を確保する。
だが、彼女はその少年が殺人や誘拐を繰り返した犯人とは思えなかった。そして、少年の刑が確定して収監された場合、リンチによる死に至る場合もあるという、保安官補たちの話を聞いたアメリアは、こともあろうに拘置所から少年をさらって逃走するのだった。
鎖的な南部の小さな町の事件から、とんでもない状況へと発展して、手術を控えたライムをどん底の心境に追い込むことになる。大事なパートナーのアメリアが、なぜ犯罪者への道をたどったのか? しかも、少年とアメリアの逃走劇はさらに過酷な展開を見せて、どう転んでも彼女の収監は免れない状況を示し、少年とアメリアは重罪犯罪人として確保されるという終盤へともつれ込む。
リンカーン・ライムの証拠の分析をもってしても、ニューヨークの一流弁護士と検察との司法取引を持ってしても、アメリアを収監から救い出す手立ては、全くなく絶体絶命の状況が背筋をゾクゾクさせる。
本書の準主役ともいえる、ギャレット・ハンロンという16歳の少年は、昆虫少年と呼ばれるほどの昆虫博士で、その昆虫に関する膨大な知識が随所に示されて、自身の行く道の判断にも生かされるところが面白い。 リンカーン・ライムと、アメリアの心理的な食い違いが引き起こしたといってもいい、終盤のいきさつがどんな週末を迎えるのか、ページを繰るのももどかしくなるほどだ。
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