隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0479.クイーンの色紙

2004年02月20日 | 連作短編集

 

クイーンの色紙
読 了 日 2004/02/20
著  者 鮎川哲也
出 版 社 東京創元社
形    態 文庫
ページ数 296
発 行 日 2003/10/17
ISBN 4-488-40312-3

 

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番館シリーズも第5集となった。今回のタイトルとなっているクイーンはもちろんエラリイ・クイーン氏である。
昭和52年にエラリイ・クイーンのフレデリック・ダネイ氏(もう一人のマンフレッド・リー氏は1971年に亡くなっている)が来日して、そのレセプションに著者も列席して、ダネイ夫妻と親しく歓談した。
そして、この「クイーンの色紙」が生まれたのだが、それでもこの作品がミステリマガジンに発表されたのは、クイーン氏来日から9年も後のことだった。

 

 

ここでは、著者自身も登場する。戦前にクイーン氏が発刊していたミステリ専門誌「ミステリ・リーグ」を翻訳復刻しようとする話が、何人かの翻訳家やミステリ評論家、ミステリの想定などを手がける画家たちによって持ち上がった。
その中で鮎川氏の知っているただ一人のメンバーである益子田蟇(ますこだがま:ヴァスコ・ダ・ガマのもじり)氏が開くパーティに、編集者の武井氏から誘われて、マンションへと赴いた。
そこで、益子田氏のコレクションである額入りのクイーンの色紙が紛失すると言う事件に遭遇する、というストーリなのである。

そこでは、著者・鮎川哲也氏の色紙も登場したりして、虚実入り混じったような話となっており面白い。もちろん、最後は三番館のバーテン氏の登場となることは言うまでもない。

 

 

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 秋色軽井沢 別冊小説宝石 1983年9月爽秋特別号
2 X・X 週刊小説 1976年9月30日号
3 クイーンの色紙 ミステリマガジン 1986年7月号
4 タウン・ドレスは赤い色 別冊小説宝石 1980年12月初冬特別号
5 鎌倉ミステリーガイド 別冊小説宝石 1987年5月初夏特別号

 

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0478.「死霊」殺人事件

2004年02月17日 | 本格

 

「死霊」殺人事件
読了日 2004/2/17
著 者 今邑彩
出版社 光文社
形 態 文庫
ページ数 430
発行日 1998/11/20
ISBN 4-334-72713-1

この著者の作品には惹かれるものがあり、古書店で未読の安い本があると自然に手が出てしまう。
本書もこの前に読んだ「裏窓」殺人事件(471.参照)と同様「」付きのタイトルだが、オカルトめいた事件が起こる発端で、謎解きの興味を一層そそるプロットが展開される。また、「裏窓」で活躍した警視庁の貴島柊志刑事がここでも登場し、所轄の若手刑事と組んで事件の捜査に当たるのだが、今回のパートナーとなるのは、飯塚ひろみと言う若い女性刑事だ。

さて、今回の事件に限らず、著者の独特のスタイルともいえるのか?冒頭でその後に起こる事件を予測させるかのような、エピグラムが語られて、一読、倒叙形式のミステリーかと思わせるような筋立てがなされる。これもストーリーによっては、ミスディレクションを誘発する伏線とも思われるのだが、それが僕にとっては、ストーリーに誘いこませる有効な手段となっている。
僕がこの著者の作品に惹かれる要素の一つは物語としての面白さが第一なのだが、それが今回のストーリーではことさらにその点が強調されるような展開で、先へと進むにつれて、さほど重要だと思われていなかった人物に次々とスポットが当てられて、新たに謎が深まっていくような様相を呈し、興味を増す。
前半にストーリー以外で興味を引かれるのは、今回貴島刑事とコンビを組む飯塚ひろみ刑事が、亡くなった父親の影響が大きく作用してきた自分の過去を振り返り、人生観を語るところがあり、多分に著者の考え方が反映されているのではないかと、推測されるところだ。(違うかな?)




0477.演じられた白い夜

2004年02月15日 | 本格

演じられた白い夜
読了日 2004/2/15
著 者 近藤史恵
出版社 実業之日本社
形 態 単行本
ページ数 225
発行日 1998/10/26
ISBN 4-408-53345-9

探しても見つからなかったので、先月木更津市立図書館にリクエストしてようやく読めることになった。成田市立図書館の蔵書だった。県内の図書館のネットワークで、取り寄せてもらえるようだ。

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学生時代に歌舞伎フリークだったという著者の演劇に題材をとった作品の面白さには定評がある。僕も先に読んだ「ねむりねずみ」(313.参照)「散りしかたみに」(331.参照)「桜姫」(435.参照)などですっかり魅せられてしまった。そこで著者の原点とも言えるというこの本をぜひとも読まなくてはと思ったわけである。

ある様式に沿って事件が起きていくというのは、海外では有名なマザー・グースに題材をとった作品が数多く発表されている。その他にも、エラリー・クイーンの「Yの悲劇」なども代表的な作品だ。わが国でも横溝正史氏の金田一探偵の活躍する「獄門島」(73.参照)や、「悪魔の手毬唄」に代表されるような作品がこれまた多くある。
本作も白く雪に閉ざされたペンションで、演劇の稽古合宿のために集まった仲間内で、芝居の台本どおりに起きていく連続殺人が描かれている。

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劇団ガソリンボーイズの主宰者・神内匠が企画する推理劇「マウス」の稽古合宿のために借りたペンションは、奥深い雪の降る山中にあった。集められた8人のメンバーたちは彼の劇団員たちではなく、観客に俳優のランクによって犯人を推理できないように、全く新しいメンバーを要請したのだった。
中には演劇は初めてというメンバーももじっていた。神内の台本は通し台本でなく、その日稽古される部分しか渡されず、演ずる者達に先入観を持たせずに稽古をさせたのだが、劇中で最初の犠牲者が出た後、それに扮した俳優が殺された。そして、電話が不通となり、雪のため車での通行も不可能となり、警察への連絡も出来ないペンションは陸の孤島状態となる。
そうした状況の中で仕方なく続けられる稽古と同時進行で第2、第3の犠牲者が・・・。
大部分が始めての顔合わせとなるメンバーたちが何故殺されるのか?誰が犯人なのか?という謎と、神内の妻で唯一彼の劇団メンバーである麻子がストーリーの語り手となって、彼女とメンバーの一人との恋愛感情なども織り込まれていく・・・。

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先にあげた歌舞伎ミステリーとは一味違った趣で、どちらかといえば舞台設定としては処女作の凍える島に近いと思った。神内麻子の語りと、芝居の台本が交互に現れて、演出効果?を挙げている。

 


0476.十二の意外な結末

2004年02月13日 | 短編集
十二の意外な結末
A TWIST IN THE TALE
読了日 2004/02/13
著 者 ジェフリー・アーチャー
JEFFREY ARCHER
訳 者 永井淳
出版社 新潮社
形 態 文庫
ページ数 272
発行日 1988/09/25
ISBN 4-10-216111-2

 

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イトルに引かれて、というより千葉中央鑑定団という店で50円均一の文庫棚から他の4冊と一緒にただ安いという理由で買ったものだ。今まで知らなかった作家だ。読み始めると入り込み安い文体でO・ヘンリーを思い起こさせるストーリー展開である。
巻末の解説を読むと著者の話はI・アシモフを髣髴させる。
面白い作品を生み出す作家はまだまだたくさにるのだと認識を新たにする。

本書は、タイトルからも推測できるように、下記の収録作の通り12の短編が収録されている。最初の「完全殺人」だけが他に比べて若干長くなっており、状況証拠から間違って逮捕された殺人の容疑者の公判廷の模様が、詳しく描かれている。この作品の中で注目すべき事柄として?(太字のゴシック体で書かれている)ストーリーの語り手である“わたし”が読むザ・タイムスの見出しに、「ブッシュ、大統領候補に指名さる」と言う記述があり、時代背景が判る。
続く、「清掃屋イグナチウス」は短いながら、緊迫感あふれるストーリーで、本書のタイトルにふさわしい好編と言える。
読後、著者について調べたら、映像化もされた有名なコンゲームを描いた「100万ドルを取りかえせ!」の作者だった。

 

 

収録作と原題
# タイトル 原題
1 完全殺人 The Perfect Murder
2 清掃屋イグナチウス Clean Sweep Ignatius
3 ア・ラ・カルト A La Carte
4 本物じゃない Not The Real Thing
5 気のおけない友達 Just Good Friends
6 掘出しもの The Steal
7 ブルフロッグ大佐 Colonel Bullfrog
8 チェックメイト Checkmate
9 泥棒たちの名誉 Honour Among Thieves
10 うちつづく事故 A Chapter Of Acidents
11 抜け穴 The Loophole
12 クリスティーナ・ローゼンタール Christina Rosenthal

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0475.体内凶器

2004年02月10日 | メディカル
体内凶器
IMPLANT
読了日 2002/01/16
著 者 F・ポール・ウイルスン
F.PAUL WILSON
訳 者 猪俣美江子
出版社 早川書房
形 態 単行本
ページ数 402
発行日 1997/09/30
ISBN 4-15-208105-8

 

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者の本を読むのは久し振りである。
ロビン・クック、マイケル・クライトンやマイケル・パーマー各氏、現役の医師や、医学を修得した作家の中でクック氏についで多作家の著者を知ったのは>「密閉教室」を読んだときだ。
その後この作家は医学サスペンスより、ホラー作家として名を知られていることを知った。僕はその頃とにかく医学ミステリーに夢中だったので、著者のもう一つの作品である本書を読みたくて随分そっちこっち探して歩いた。
この本はネットでようやく見つけたものだ。原題のIMPLANT(インプラント)は治療の為に体内(組織内)に埋め込むラジウム管などの事だそうだが、最近見たアメリカの人気TVドラマ「ダーク・エンジェル」や「エイリアス」などにも出ていた。
この作品が書かれたのは1995年だから、こうしたエンタテインメントで扱われた先駆けかもしれない。4日から読み始めたので1週間もかかってしまったが、1月半ばからしばらく振りに再開した手帳作りのWORDの作業が佳境に入り、一度出来上がった物を再三再四修正をしていたので読書の方がすっかりおろそかになってしまった。

 

 

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0474.私が殺した少女

2004年02月03日 | ハードボイルド
私が殺した少女
読 了 日 2004/02/03
著  者 原
出 版 社 早川書房
形  態 文庫
ページ数 307
発 行 日 2001/04/15
ISBN 4-15-030546-3

 

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書店の棚を見ながら歩いていると、決まってよく目に付く本が何冊かある。この本もその1冊で、あまり目にするものだから、文庫で安いこともあって買ってみた。
沢崎という私立探偵が主人公のハードボイルドだ。著者の長編2作目のようだ。
僕はあまり好んでハードボイルドは読まないと言いながら、この読書計画では結構ハードボイルド・ミステリーを読んできたことに、いまさらながら気付かされた。それほど期待せずに読み始めたら、とても読みやすくぐんぐん物語りに引きずり込まれるような感じで読み終えた。私立探偵もこうした形なら、日本においてもそれほど違和感がなく受け入れられるだろうと言う思いがする。

 

 

渡辺探偵事務所に男か女かわからないような声で、家族の行方が判らなくなった件で、真壁修の目白の自宅まで来てほしい、という電話が入り、沢崎が出向くと真壁修は6千万円の入ったスーツケースを用意したから娘を返してくれと言う。
わけが分からずに居ると玄関で数人の刑事たちに囲まれて、誘拐の共犯容疑で、目白署に連行された。目白署の取調室で判った事は、誘拐犯に嵌められたらしい、ということと、まだ、役目が終わってないということだった。改めて真壁修に誘拐犯から入った連絡は、身代金の運び屋に沢崎を指名してきたというのであった。このようなスタートから、事件は妙な展開を見せ始めるのだが・・・。

ストーリーは、沢崎の1人称の語りで進められ、一ひねりしたようなものの形容が、翻訳物のストーリーを追っているような気にさせる。多岐にわたる登場人物も、それぞれ個性的で、ストーリーを面白くしている要素だ。

 

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