隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1775.過ぎ去りし王国の城

2017年09月11日 | ファンタジー
過ぎ去りし王国の城
読了日 2017/09/11
著 者 宮部みゆき
出版社 KADOKAWA
形 態 単行本
ページ数 397
発行日 2015/04/30
ISBN 978-4-04-102836-0

 

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年7月の「悲嘆の門」以来だから、著者の作品を読むのは1年2カ月ぶりか。
アンソロジーの短編などを抜かして、純粋な著作だけを数えても、宮部作品は本書で45冊目となる。僕にとっては、特別な作家ともいうべき宮部みゆき氏だ。これから先どのくらいの本を読めるかわからないが、一人の作家の作品が宮部作品の数を超えることはないだろう。
因みに今僕が全作品を読もうと思っている、中山七里氏の作品だって、まだ30冊だ。いやしかし、中山氏のようにこう矢継ぎ早に新作を発表していくとなると、数年先には宮部氏の作品数を追い抜くかもしれないな。
何しろ中山氏は2011年のデビューから今年2017年までの6年間で、31冊もの作品をものにしているのだから。いやはや、恐るべき執筆力ではないか。
またまた、話が違う方向にそれてしまった。宮部みゆき氏の作品は、僕に改めて国内ミステリーの面白さを教えてくれて、ストーリー展開やファンタスティックな物語にも、誘い込んでくれた。
印象の残る作品の一つに「火車」という、カード破産に関した一人の女性の数奇な運命を描いた作品がある。

 

 

作品はテレビドラマになって、それなりに完成度の高い映像にはなったが、いかんせん原作の狙いからは外れて、その点だけを考えれば、ぶち壊しと言ってもいい映像になった。というのも、宮部氏の狙いはラストの場面にあった。(それについては物語の肝心かなめの部分だから、未読の方には読んでもらうしかないが)元々、原作はある意味映像化不能だったのだ。
ミステリーには文字だからこそできるストーリー展開や、パターンが幾つもあって、それによって読者をミスリードすることが出来るから成り立つトリックもある。
「火車」の場合はトリックではないのだが、物語の重要な要素であったからこそ、映像化に際しては脚本や演出に一工夫も二工夫も欲しかったと思う。それについては、不確かな僕の頭でさえ考え着く方法はあったのだが、まあ、人それぞれで思いや考えは違うのが当たり前で、素人が何を分かったようなことを言ってる、と言われてしまえばお終いだ。
話がそれた。

 

 

ァンタジーと呼ばれる物語や、映像作品はたくさんあって中でも、英国の「ハリー・ポッター」シリーズは、世界中の読者や視聴者の絶大な人気を誇っている。わが国でも国際アンデルセン賞を受賞したことで、一躍時の人ともなった上橋菜穂子氏の作品が人気を集めており、NHKで「精霊の守り人」シリーズがドラマ化された。
宮部氏の作品にも冒険物語あり、ファンタスティックなストーリーは、同様に多くの読者の支持を得ている。
本書もファンタスティックなストーリーであるものの、過去の未解決のままになっている、少女の失踪事件が深くかかわる内容で、中学生の男女ともう一度人生をやり直したい思いを抱く中年男性の、冒険物語だ。 だが、宮部作品の特徴の一つに、若しかしたらそんな世界がどこかに存在するのでは、と思わせるような内容なのだ。
子供のころ読んだ手塚治虫氏のSF漫画の一つに、同様の思いを抱いた僕は、こんな歳(77歳)になりながら、今でも時にはパラレルワールドの存在を信じたくなる時があるほどだ。
そんな夢を持たせるのも、ファンタジーの役割なのかもしれない。ひと時を夢の世界にいざなえるなんて、物語はなんと素晴らしい世界なのか。

 

 

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