外科東病棟 | ||
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読 了 日 | 2013/01/24 | |
著 者 | 江川晴 | |
出 版 社 | 小学館 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 283 | |
発 行 日 | 1998/08/01 | |
I S B N | 4-09-715455-4 |
日いすみ市大原の古書店で目にして、タイトルに惹かれて買ってきた。いや、タイトルだけではなく特別価格105円ということにも惹かれたのかもしれない。
裕福とは決して言えない僕の懐具合から、安いということは買う動機の大きな要因となるのだ。貧乏自慢は置いといて、最近医学・医療ミステリーに少しご無沙汰しているから、目についたのか、カバー折り返しの著者紹介を見ると、元看護婦(現在は看護師だが、著者のころはまだ看護婦だった)さんだったようだ。ただ作品中では、ナースで通しているから、こうした場合は英語の方が便利だ。
体験を生かした医療小説を多く著しているようで、高名な作家のようだが、僕にとっては初めて知る作家だ。こうしてみると、まだまだ知らない医療小説を書いている作家は多くいるのだろうと思われる。
本書は著者のナースとしての活動体験から得た、知識と経験が活かされたドキュメンタリー小説だ。というのはおかしな言い方だが、登場人物は著者の創作ではあるが、そこで語られる一つ一つのエピソードは、事実に基づいたものらしい。
僕は今まで読んできた医療ミステリー、医療小説をメディカルという一つのカテゴリーに収めてきたが、今回読んだ本書は、それらの小説とは一味違った感じを受けた。確かに病院の中での出来事や、医師やナースの活動が描かれているのだが、そうしたことは二次的なことで、つまるところは人間同士の信頼や絆を描くことが目的で作られた作品だということなのだ。
そうした意味からすれば、ミステリーとは言えないかもしれないが、いろいろな出来事にぶつかりながら成長していく様は、感動的だ。新人ナースの体験は先輩、上司、医師そして患者との接触から、様々なドラマを生み出していく。時には思わぬ失敗に落ち込んだり、患者の死に遭遇してトラウマを抱えたり、あるいは重病の患者によって逆に励まされたりと、病院内のドラマはミステリアスでエキサイティングで、サスペンスにも満ち溢れている。そこには作り物ではない人間の生き様が描かれているから、自然に感情移入をして泣いたり笑ったり・・・・。
ステリーを読むことを目的とした僕の読書生活の上では、こうした感動的な話は必要不可欠ではないのだが、決して長くはない人生の先行きを考えるとき、やはりいろいろと異なるジャンルの話も加えていくべきか?などといろんなことを考えさせられる。
僕だって、近い将来死に立ち向かうことになるだろう。そんな状況からもこうした作品を読むと、軽く読み飛ばすことが出来い。
暗いエピソードには身につまされ、明るいエピソードには励まされ、作中のナースと同様の心境に陥るのだ。
しかし、どちらかといえば楽天的で、能天気な僕はしばらくすればまたわ捨ててしまうだろうが。そこが僕の良いところか、などと馬鹿な僕は自賛する。
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