隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0614.凛冽の宙(そら)

2005年06月28日 | 経済

 

凛冽の宙そら
読 了 日 2005/06/28
著  者 幸田真音
出 版 社 小学館
形  態 単行本
ページ数 452
発 行 :日 2002/03/10
ISBN 4-09-379154-6

 

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いぶんとしばらく振りに著者の本を手にする。買ったのはかなり前なのだが、なんとなくそのままになっていた。実は、この本はBOOKOFFの105円コーナーで手に入れたのだ。それほど古くなくしかも単行本なのに、といぶかしく思いながら購入した。
幸田真音女史については、以前読んだ本のところでも書いたのだが、NHKのTVドラマで知りそれまでに読んだことのなかった金融ミステリーという新しいジャンルに魅力を感じて、間をおかずに数冊読んだ。
金融ミステリーといえば、乱歩賞受賞作家の池井戸潤氏も、受賞作「果つる底なき」を初め、元銀行マンの経歴を活かして銀行を舞台にしたミステリーを書いているが、幸田氏の作品はそれとは違って、国際的な証券取引を題材にしたものが多く、スケールの大きな、スリリングなストーリー展開に読む都度、胸が躍る。

本書は、わが国のバブル経済崩壊後の、金融機関における多大な不良債権処理に付け入る、金融犯罪が描かれる。登場人物の台詞を通して、不良債権処理の実態を判りやすく説明する等の工夫もあり、著者の実体験に基づいた豊富な知識や、主張が盛り込まれており、そうした面からも楽しめた作品だ。

 

 

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0613.夏の口紅

2005年06月25日 | 青春ミステリー
夏の口紅
読了日 2005/06/25
著 者 樋口有介
出版社 角川書店
形 態 文庫
ページ数 280
発行日 1999/09/25
ISBN 4-04-349401-7

 

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家は、タイトルをつける時どういうことで決めるのだろうかと、時々考える。中身が面白ければタイトルなんかどうでも良いと思うときもあるが、読み終わってから、改めてタイトルの持つ意味も重要な要素だと気づくときもある。作家も人によってそれぞれタイトルにこだわる人も、そうでない人も居るのかもしれない。
で、本書の場合はどうなんだろう?と読み終わってから、つらつらとそんなことを考えていた。

 

 

大学3年の「僕」笹生礼司は、ある日突然、父の死を知らされる。
父の周郎は母の婿養子だったが、十五年前に家を出て消息は判らなかった。その父が死んだと聞かされても実感が湧かなかった。父は、僕と、まだ見ぬ異母姉に”ゴクラクトリバネアゲハ”という蝶の標本を一つずつ残していた。
また、父の再婚相手に連れ子が居て、季里子という名の18歳の女の子だ。「僕」とは血のつながりのない妹だった。

 

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0612.模像殺人事件

2005年06月23日 | 本格
模像殺人事件
読 了 日 2005/06/23
著  者 佐々木俊介
出 版 社 東京創元社
形  態 単行本
ページ数 248
発 行 日 2004/12/10
ISBN 4-488-01203-5

 

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者の第6回鮎川哲也賞佳作「繭の夏」(236.参照)を読んで、他の作品も読んでみたいと思っていたところ、東京創元社のMM(メールマガジン)で、著者サイン本のネット販売の案内があり、購入した。

ある地方都市の郊外、人里離れた山中に木乃家があった。長年、行方知れずだった長男の秋人が帰ってきた。大怪我を負ったという顔は一面包帯で覆われている。そして、その二日後に、全く同じ包帯男が秋人と名乗って現われた。横溝正史氏の「犬神家の一族」を思わせるような、発端で始まる物語は、大川戸孝平により手記として綴られるのだが・・・。
公道から屋敷に通じる唯一の手段である、吊り橋が破壊され、電話線も切られて、携帯電話も圏外という孤島のような屋敷で、何が起こったのか?
前作では、スリーピング・マーダー形式のストーリーで、僕の好みのタイプであったが、今回は、ある部分では、過去の事件というモチーフが使われるが、全体として、作者の目指したのは、ひと昔前の時代の舞台設定だったのかとも思った。

 

 

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0611.痕跡

2005年06月21日 | サイコ・サスペンス

 

痕跡
TRACE
読 了 日 2005/06/19
著  者 パトシリシア・コーンウェル
Ptricia Cornwell
訳  者 相原真理子
出 版 社 講談社
形  態 文庫
ページ数 360/368
発 行 日 2004/12/15
ISBN 4-06-274947-5
4-06-274948-3

 

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の読書目標の原点ともいえるシリーズなのだが、初期の頃に比べてストーリーの組み立て方が、変わってきたようだ。
もちろん、このシリーズは、巻を重ねるごとに登場人物も加齢されて、環境の変化や、時代の移り変わりに対応しているということもあるのだが、ダイナミックさという点から見ると、少しおとなしくなった様な気がする。

以前この作者は、インタビューに応えて「私は架空のことは書きません」といったことが伝えられたが、著作の為に、スキューバダイビングを習得したり、更には、ヘリコプターの操縦免許まで取ったらしい(噂によれば、ヘリコプターまで購入したとか?!)。
その体験は、第9作「業火」で活かされた、ようだ。それはともかくとして、スカーペッタにかかった1本の電話が、古巣のリッチモンドへと赴かせる今作は、従来のダイナミックな展開から、スタティックな、人間心理の解明へと流れを変えたようだ。

 

 

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0610.ともだち

2005年06月17日 | 青春ミステリー
ともだち
読了日 2005/06/17
著 者 樋口有介
出版社 中央公論社
形 態 文庫
ページ数 273
発行日 2002/08/25
ISBN 4-12-204066-3

 

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ういう本を読むと、カタルシスを多いに感じる、というのは少しオーバーか。メインキャラクターが女子高生で、舞台が高校でも、ちょっとハードなミステリーだ。
幼少より祖父から剣術を叩き込まれた神子上さやか。彼女が通う高校の女子生徒(コギャル)が何者かに相次いで襲われ、校内に様々な憶測が飛び交う。そしてついに、殺人事件が。
被害者は校内一の美女で、さやかと同じ美術部員であった。さやかはどこかひねくれた転校生間宮とともに、犯人探しを始める。

 

 

このところ著者の本を立て続けに読んできたが、ハードボイルドでも、スーパーヒーローは登場しなかった。ところが、本作はスーパーヒーローならぬスーパーヒロインの登場である。新一年生となった神子上さやかが剣道部の練習風景を見学しているうちに、コーチに誤解されて、部員と竹刀を交えることになるシーンから、後にそのコーチと仕合い、打ちのめすまでの展開が、そのスーパーヒロイン振りを見せる場面だ。
元警官で殉職したさやかの父・公介の同僚で、事件の捜査に当たる渋谷中央署の捜査係長・小山内敏夫が、さやかを姫先生と呼ぶほどなのだ。女子高生の乱れた性意識や、教師との関係が事件の成り行きを一層複雑にするが、そうした中で孤立するスーパーヒロインも、ともだちを見つける。

 

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0609.プラスチック・ラブ

2005年06月15日 | 青春ミステリー
プラスチック・ラブ
読 了 日 2005/06/13
著  者 樋口有介
出 版 社 実業之日本社
形  態 単行本
ページ数 273
発 行 日 1997/02/25
ISBN 4-408-53305-X

 

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に「週刊小説」に'91年から'96年にかけて発表された、高校生・木村時郎を主人公とした青春グラフィティ・連作短編集。
表題作にワンシーンだけ柚木草平が登場する。
会員登録をしている、ネットの古書店EasySeek(イージーシーク)にオートシークという仕組みがあって、新しく販売登録をされた中の、例えば樋口有介氏の作品を知りたいとしておくと、メールで案内されるのだ。そこで最近樋口氏の作品が数冊紹介されていたので、まとめて購入して、まとめて読んでいる。
なんというか、おかしな話だが、僕はこの人の小説を読むと、癒されるような気がするのである。文体や、メインキャラクターの台詞回しが心地よいのだ。

 

 

キャプション
# タイトル 紙誌名
1 雪のふる前の日には 週刊小説
2 春はいつも 週刊小説
3 川トンボ 週刊小説
4 ヴォーカル 小説現代
5 夏色流し 週刊小説
6 団子坂 海燕
7 プラスチック・ラブ 週刊小説
8 クリスマスの前の日には 週刊小説

 

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0608.林檎の木の道

2005年06月13日 | 青春ミステリー
林檎の木の道
読了日 2005/06/13
著 者 樋口有介
出版社 中央公論社
形 態 単行本
ページ数 311
発行日 1996/04/07
ISBN 4-12-002554-3

 

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ントリーミステリー大賞を受賞した「ぼくと、ぼくらの夏」(539.参照)を初め樋口氏の青春ミステリーには夏が多い。そしてその夏の描写が実にストーリーとマッチしている。
巻頭で「ぼく」の部屋にクーラーがないことの説明が母親の口説として出てくる。実は、ぼくの部屋にもクーラーはない。我が家でエアコンがあるのは、カミサンの部屋と居間だけだ。だから、どうしようもなく暑いときなどは、車で図書館やスーパーに行って暑さを凌ぐ。居間はカミサンが煙草を吸うから、イヤなのだ。樋口氏の作品に登場する男は概して女性に弱い。そこも僕と共通しているので、共感を覚えるのか

 

 

さて、本書は帯の惹句にあるように「会心の青春ミステリー」だ。「ぼく」の元恋人が千葉・御宿の海で自殺した。しかし、自殺するようなタイプではないと信ずる「ぼく」は自殺の真相を解明しようと、動き始める。

 

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0607.木野塚探偵事務所だ

2005年06月11日 | ユーモア
木野塚探偵事務所だ
読 了 日 2005/06/11
著  者 樋口有介
出 版 社 実業之日本社
形  態 単行本
ページ数 242
発 行 日 1995/05/25
ISBN 4-408-53256-8

 

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のタイトルは、昔テレビで放送されていた、「シャボン玉ホリデー」を思い出させる。当時人気絶頂だった双子のデュオ、ザ・ピーナッツとコミックバンド、ハナ肇とクレイジー・キャッツをメインキャラクターとした音楽バラエティーでかなりの長期間にわたって人気を保ち続けた番組だった。
前都知事の青島幸男氏も番組のライターとして係わり、時には番組にも顔を出して色を添えていた。その青島氏や、クレイジーの谷啓氏のギャグに「青島ダァ!」、「谷ダァ」というのがあり、植木等氏の「お呼びでない」とともに一世を風靡していた。「木野塚探偵事務所だ」というのが当時のそれを思い出させておかしくなる。

 

 

妻に虐げられた熟年男・木野塚佐平の切なくもおかしい探偵物語である。ひょんなことから木野塚所長の秘書兼助手となった女子高生にも見えるようなヘンな女の子・梅谷桃世を引き連れて事件解決へと乗り出すつもりが、待てど暮らせど依頼人は来ない・・・・。

 

初出(週刊小説)
タイトル 発行月・号
Ⅰ「名探偵誕生」改題 1992年10月9日号
Ⅱ「木野塚氏、誘拐事件を解決」改題 1993年1月22日号
Ⅲ「男はみんな恋をする」改題 1993年10月29日号
Ⅳ「菊花刺殺事件」改題 1994年
Ⅴ単行本に書き下ろし  

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0606.飛蝗の農場

2005年06月09日 | サスペンス
飛蝗(ばった)の農場
THE LOCUST FARM
読 了 日 2005/06/09
著  者 ジェレミー・ドロンフィールド
Jeremy Dronfield
訳  者 越前敏弥
出 版 社 東京創元社
形  態 文庫
ページ数 272
発 行 日 2002/03/22
ISBN 4-488-23506-9

 

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002年度「このミス」海外編のベスト1に選ばれた作品だ。宝島社で発行しているミステリー批評誌「このミステリーがすごい!」は、年を重ねるごとに重みを増して、ついに「このミステリーがすごい!」大賞なるミステリー文学賞を設け、新しい作品の公募を始めるまでに至った。
僕は新しく台頭してきた勢力にいささか懐疑的だったが、いつの間にか「このミス」大賞に選ばれたミステリーを読書の指針の一つにしていた。というより、他の理由で読んできた作品が、後になって「このミス」に選ばれていることを知って、次第に「このミス」に対する考え方を改めるに至る。
だが、本書を手に入れたのは何のことはない、多少は「このミス」のことも頭にあったのだろうが、たまたま古書店の100円の文庫棚で見かけたというだけのことだ。最近は主として経済的な理由から以前ほど頻繁に古書店を訪れることはなくなったが、行けば100円コーナー以外はあまり見ないことにしている。聞き分けのない子供同様で、見ればほしくなるからだ。

 

 

ヨークシャーの荒れ野で農場をいとなむキャロルの前に謎めいた男が現われた。一夜の宿を請われ断るの段を経て、不幸な経緯から、ショットガンで男に傷を負わせたキャロル。看護の心得のある彼女は応急処置を施したが、意識を取り戻した男は、以前のことは何も覚えていないと言う。

そんなスタートで幕を開ける物語は、文章は読みやすく、興味を引く題材ではあったのだが、何か感動を覚えるというのでもなく、読み終えた満足感というのでもなく、といった感じで・・・・。一気に読むことは読んだのだが、僕の理解力が優れないのか?その良さも、すごいところもよく判らなかった、というのが本音だ。ランク付けが上位でも、出版元が東京創元社でも、たまにはこういうこともあるのだ。

 

 

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0605.ポワロの事件簿1

2005年06月07日 | 短編集

 

ポワロの事件簿1
POIROT INVESTIGATES
読了日 2005/6/7
著 者 アガサ・クリスティ
Agatha Christie
訳 者 厚木淳
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 272
発行日 1992/05/29
ISBN 4-488-10506-8

 

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灰色の脳細胞を駆使するエルキュール・ポワロ推理譚の第1集だ。僕はこの第2集の方を先に読んでおり、前にも書いたが、短編については殆どドラマ化されており、今までに最も原作のイメージに近いと各方面から絶賛されている、名優デビッド・スーシェ扮するポワロと、ヒュー・フレイザー扮するヘイスティングス大尉の活躍するドラマは、どれも一級品のミステリードラマに仕上がっている。わが国ではNHKが熊倉一雄氏の吹き替えで放送して、多くの視聴者に愛されてきた。
聞く所によれば、英本国では、まだ新作の制作が続けられているらしい。主演のD・スーシェ氏は「すべての作品を演じてみたい」と言っているという。
そういったことでドラマで筋書きはわかっているのだが、改めて原作を読んでみると、得意気なポワロに扮したスーシェ氏の顔が浮かんで二重に楽しい。

 

収録作と原題
# タイトル 原題
1 西洋の星の事件 The Adventure of the Western Star
2 マースドン荘園の悲劇 The Tragedy of Marsdon Manor
3 安いマンションの事件 The Adventure of the Cheap Flat
4 ハンター荘の謎 The Mystery of the Hunter's Lodge
5 百万ドル公債の盗難 The Million Dollar Bond Robbery
6 エジプト王の墳墓の事件 The Adventure of the Egyptian Tomb
7 グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件 Jewel Robbery at the Grand Metropolitan
8 誘拐された総理大臣 The Kidnapped Prime Minister
9 ダヴェンハイム氏の失踪 The Disappearance of Mr.Davenheim
10 イタリア貴族の事件 The Adventure of the Italian Nobleman
11 遺言書の謎 The Case of the Missing Will

 


0602.ベッド・ディティクティヴ

2005年06月02日 | 安楽椅子探偵
ベッド・ディテクティヴ
読 了 日 2005/05/29
著  者 都筑道夫
出 版 社 光文社
形  態 文庫
ページ数 285
発 行 日 1998/07/20
ISBN 4-334-72654-2

 

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月読んだ「泡姫シルビアの華麗な推理」(595.参照)に続くシリーズ第2弾である。
僕は、この著者について名前だけは知っていたが、詳しいことは何も知らずにいた。
昔―昭和48年ごろ―「死体を無事に消すまで」という著者のミステリー論集を買って積ン読のままになっている。60歳を過ぎたらじっくりと読もうと思いながら今日に至っている。
ネットで、退職刑事シリーズが安楽椅子探偵譚ということを知り古書店やネットで数冊手に入れたもののこれもまだ第1巻だけしか読んでいない。本書も先月読んだ第1作よりかなり前に買っておいたものだ。いろいろとあっちこっちつまみ食いのような形で読んでいるから、こういうことになるのだ。
それはともかくとして、この本は、タイトルからして、安楽椅子探偵の一つの形だろうと思って買ったものである。
ベッド・ディテクティヴとは言いえて妙だが、主人公の職業からきているもので、実際には客や同僚が持ち込む謎をベッドに入らずに解決するのである。噂を聞いてシルビアを指名してくる客は、大金を払ってベッドインを目的とせずに、事件解決を依頼するというのが面白い。
ところで、このシリーズを読んで僕が一番感心したのは、ソープランドなるところの仕組みや、慣習、仕来たり等等が、事細かに書かれていることだ。取材だけでは、これほど細かくは書けないだろうと思うのだが、それとも通いつめたのか?

 

 

収録作品
# タイトル
1 ふたりいたシルビア
2 服をぬがないシルビア
3 涙ぐむシルビア
4 怒るシルビア
5 化けてでるシルビア
6 殴られるシルビア
7 のぞき見するシルビア

 

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0604.トルーマン・レター

2005年06月02日 | サスペンス

 

トルーマン・レター
読 了 日 2005/06/02
著  者 高嶋哲夫
出 版 社 集英社
形  態 文庫
ページ数 432
発 行 :日 2004/07/25
ISBN 4-08-747718-5

 

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更津駅近くの古書店・ブックハウスの店頭に文庫の安いものが陳列されており、たまに掘り出し物があるので覗いたら本書があった。読んでみたいと思う本がこのように安く手に入ることを喜ぶと同時に、こんなに安く売られて良いものだろうかという、相反した思いにとらわれる。
サントリーミステリー大賞の大賞と読者賞をダブル受賞した「イントゥルーダー」(295.参照)を読んでから、機会があったら他の著作も読んでみたいと思っていた作家だったので、本の方が僕を呼んだのかもしれない。

トルーマンとは第33代アメリカ大統領ハリー・トルーマン、といってもかなり年配の人でないとぴんと来ないだろう。
1945年から53年にかけて即ち、第2次大戦の終戦になる年から8年間大統領だった人だ。
元新聞記者だった峰先が、7月上旬の土曜の夜、公園で外国人同士の争いに巻き込まれたが、片方の男が落としていった雑誌の間に挟まっていた手紙を手に入れたことから、尚一層大きなトラブルへと足を踏み込むことになる。
というストーリーで、問題の手紙は雨にぬれ所々滲んでいるが、知り合いに頼んで解読してもらうと、なんと、トルーマンが愛人に当てたラブ・レターらしいが、とんでもない内容だった。一方、沖縄で米兵に乱暴された女性のアメリカ大国に立ち向かう市民運動が続けられていた。二つのエピソードが、まもなく来日する予定の米大統領の日程を追うように進行する。
2001年の著作だが、今年2005年はちょうど戦後60年を迎えいろいろとイベントが予定されているようだし、一部の人たちにとっては、まだまだ戦後は終っていないようだ。そんなときに本書を読み、そのリアル感にちょっと背筋が寒くなるような感じに襲われる。

 

 

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