隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0401.桜宵

2003年06月30日 | 短編集
桜宵
読 了 日 2003/06/30
著  者 北森鴻
出 版 社 講談社
形  態 単行本
ページ数 224
発 行 日 2003/04/15
ISBN 4-06-544785-1

 

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書館の本と北森氏が続いた。今月は北森氏の本がこれで4冊目だ。ここ3~4ヶ月、図書館に通うことが多くなっている。大体が2階のリファレンスルームを利用することが多いのだが、行った折は1階の書棚を覗いて、読みたい本を探す。本書は本年4月に出たばかりの新刊だ。なによりも「花の下にて春死なむ」(196.参照)と同じ、“香菜里屋”シリーズだったので、飛びついた。
三軒茶屋にあるビアバー“香菜里屋”は決して地の利を得ているとは言えないが、狭い店内はいつでも客でいっぱい。度数の違う4種のビールを、ビアサーバーからグラスに注ぎ、客の状態によって選り分けて出し、店主・工藤の創作料理も絶品であることなど、この店を憩いの場とする常連が多いのだ。
今宵も、花巻から東京に出てタクシーの運転手をしている日浦が、故郷のなじみの店から15周年の記念パーティに招待された話をしている。彼は懐かしさに出席したものの、自分の周りの客たちが知らない人間ばかりなので、場違いな感じを持って帰ってきたというのだが・・・(十五周年)。

 

 

初出誌(IN☆POCKET)
# タイトル 発行月・号
1 十五周年 2002年1月号
2 桜宵 2002年4月号
3 犬のお告げ 2002年7月号
4 旅人の真実 2002年11月号
5 約束 2003年1月号

 

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0400.孔雀狂想曲

2003年06月28日 | 短編集
孔雀狂想曲
読 了 日 2003/06/28
著  者 北森鴻
出 版 社 集英社
形  態 単行本
ページ数 272
発 行 日 2001/10/30
ISBN 4-06-774544-9

 

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者の本が図書館に割りと良く揃っているので、楽しみである。ということで、本書も図書館で借りてきた。骨董商の話だが、こちらは、「雅蘭堂(がらんどう)」という店を持つ越名集治を主人公とした連作短編集。 居眠りをしている隙にウインドウケースからジッポのライターを万引きするかに見えた少女は、腰名が目を覚ますと、それを買いたいという。見ると、以前祖父と一緒に店に来たことのある少女だった(ベトナム・ジッポー・1967)。
この少女・安積が第2話以降「雅蘭堂」でアルバイトをすることになるのだが、腰名とあまり息が合っているとは言えず、もどかしい思いのするところだ。
しかし、一つの素材を基にストーリーを構築する上手さはさすがで、「根付け供養」や、「古九谷焼幻化」では、謎解きの面白さが倍加され、いっそう面白さを引き立てている。

 

 

初出誌(小説すばる)
# タイトル 発行月・号
1 ベトナム・ジッポー・1967 1999年5月号
2 ジャンクカメラ・キッズ 1999年9月号
3 古九谷焼幻化 2000年2月号
4 孔雀狂想曲 2000年5月号
5 キリコ・キリコ 2000年9月号
6 幻・風景 2001年2月号
7 根付け供養 2001年5月号
8 人形転生 2001年8月号

 

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0399.サムソンの犯罪

2003年06月27日 | 連作短編集
サムソンの犯罪
読 了 日 2003/05/13
著    者 鮎川哲也
出 版 社 東京創元社
形    態 文庫
ページ数 391
発 行 日 2003/05/23
ISBN 4-488-40309-3

 

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鼓叩きはなぜ笑う」(383.参照)に続く“三番館シリーズ”第2集である。
このシリーズの主役3人、すなわち探偵で語り手の“わたし”、“わたし”のところへ事件を持ち込む肥った弁護士、そして本当の名探偵、バー三番館のバーテン氏、これらの3人には名前がない。
ストーリーの語り手などで名前がないというのは結構見かけるが、3人も名前がないというのは極めて珍しいことだ。著者の鮎川氏に言わせれば、作中人物の名前を考えるのは人が思うほど楽ではないようだ。
ある作家は、分厚い電話帳を繰って、決めるという話を聞いてやってはみたが上手くいかないということだ。そんなこんなで名無しの3人が生まれたというのである。

 

 

ある部分については説明を省いて読者の想像にゆだねるというのも、いい方法かもしれない。ちょっと例えが違うかもしれないが、アメリカのテレビドラマ「刑事コロンボ」のファーストネームとか、彼の奥さんとかは、視聴者の想像に任せている、といった感じですかね?しかし、このシリーズは、この3人の役割分担が単純でわかりやすく、謎を呈示する弁護士、情報を収集する探偵、情報に基づいて真相を究明するバーテンと、3者3様の働きで事件が解明されるという様式が、踏襲されているから安心して次々と読めるのだろう。 鮎川氏の言うように、気楽な気持ちで、ウイスキーでも片手に、酒のだめな人はコーヒーでも片手に楽しめる、というわけだ。

 

 

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 中国屏風 別冊小説宝石 1973年7月盛夏特別号
2 割れた電球 問題小説 1975年5月号
3 菊香る 問題小説 1975年11月号
4 屍衣を着たドンホァン 野生時代 1975年7月号
5 走れ俊平 小説サンデー毎日 1975年8月号
6 分身 小説推理 1976年2月号
7 サムソンの犯罪 問題小説 1974年11月号

 

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0398.池袋ウエストゲートパークⅢ 骨音

2003年06月21日 | 連作短編集
骨音 池袋ウェストゲートパークⅢ
読 了 日 2003/06/21
著  者 石田衣良
出 版 社 文藝春秋
形  態 単行本
ページ数 318
発 行 日 2002/10/30
ISBN 4-16-321350-3

 

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書館の本が続いた。
マコトこと真島誠が活躍する池袋ウエストゲートパーク第3集。ホームレス連続襲撃事件を追うことになったマコトが、あるバンドのライブで異常な速さの不気味な音と出会う。やがて二つの事柄が交錯する(表題作)。
夜のショッピングセンターで知り合った少女を介抱したことから、その母親の勤めているクラブのトラブルに巻き込まれることになるが、マコトの母親が・・・・(西一番テイクアウト)。
池袋に出回り始めた地域通貨に偽札が・・・(キミドリの神様)

 

 

この第3集ではバラエティ豊かにマコトの母親の活躍 (西一番テイクアウト) や、マコトの恋愛模様まで描かれる(西口ミッドサマー狂乱)が、第1集を読んだ時のような新鮮な感覚は薄れてきたような感じだ。 本書を読んだ後、表題作「骨音」を基にしたTVドラマの再放送を見たが、なぜドラマがあれ程の(新聞のテレビ欄、テレビ番組誌等々)人気があるのか理解できない。例によって、小説は小説、ドラマはドラマと別物であるということと、ジェネレーションギャップ?(てこともないか!小説が楽しめるのだから)

 

 

初出誌「オール讀物」
# タイトル 発行月・号
1 骨音 2001年11月号
2 西一番テイクアウト 2002年2月号
3 キミドリの神様 2002年5月号
4 西口ミッドサマー狂乱 書き下ろし

 

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0397.緋友禅

2003年06月19日 | 骨董
緋友禅
読 了 日 2003/06/19
著  者 北森鴻
出 版 社 文藝春秋
形  態 単行本
ページ数 235
発 行 日 2003/01/30
ISBN 4-16-321580-8

 

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れは、木更津市立図書館の本だ。著者を一躍有名にした「狐罠」(212.参照)と同じシリーズの連作短編四話。 店を持たない骨董商、旗師・冬狐堂こと宇佐美陶子の活躍、と言いたいところだが、冒頭で彼女が古物商の資格を剥奪されたらしいことが記述されており、なおかつ、車の免許まで公安委員会に返却したとなっている。どうやら前作(狐闇)でそのような状況になったようだが、あいにく僕は順序よく読んでいないから、そちらは未読なので、詳しくはわからない。

 

 

東銀座の裏通りを歩いていた宇佐美陶子は、「久美廉次郎作品展~糊染めタペストリーの世界」という看板を目にして、雑居ビルの画廊に入る。そこで作品と作者本人に出会い、作品に用いられた緋色に心を奪われる。それがやがて事件に巻き込まれる原因になろうとは知る由もなく、陶子はその場で現金を渡し全作品を買い取る約束をする(表題作)。
宇佐美陶子は、暑い夏の日の市で、同業者から“ツルさん”の氏を知らされた。“ツルさん”こと弦海礼次郎は同じ古物商で、九州・湯布院で開かれた骨董市で、陶子が価格交渉をしていた品物を横からさらう様に買い叩いた男だった。それ以来、彼とは市で度々顔を合わせるようになり、目利きの確かさと、駆け引きの上手さに次第に惹かれていったのだ。陶子は“ツルさん”の死んだ山口県萩市へと飛んだ(陶鬼)。

 

 

者の作品は、この骨董の他に、絵画、民俗学、医学とさまざまな専門知識を要する題材がいくつもあり、更には、よく作品に登場する料理に関しては、調理師の免許も持っているようだ。相当の取材や、研究も怠らないのであろうが、それらの題材が、作中に良くこなされて、テンションを高めていることに感心する。
収録作は上記の他に、「永久笑み」の少女、奇縁円空。

 

収録作
# タイトル
1 緋友禅
2 「永久笑み」の少女
3 奇縁円空

 

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0396.視線

2003年06月17日 | 短編集
視線
読 了 日 2003/06/17
著    者 石沢英太郎
出 版 社 文藝春秋
形    態 単行本
ページ数 260
発 行 日 1977/09/25
書籍ID 0093-304500-7384

 

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和52年第30回に本推理作家協会賞の短編部門を受賞した表題作「視線」を読みたいと思っていたところ、ネットの古書店から送られてくる新着案内にあったので申し込んで購入。数あるミステリー文学賞受賞作リストをネットで検索しては、古書店で探すのだが、近隣の古書店では入手できないものも多い。いきおいネットで買うことが多くなる。
さて、期待して読んだ「視線」は、聞き込みが終わっての帰り道、梶原刑事と若い柴田刑事が神社に差し掛かると、神前結婚を済ませたばかりの男女が、車寄せに近づいてきた。そして、梶原刑事は男のほうに、柴田刑事は女のほうにそれぞれ見覚えがあった。男のほうは、梶原の担当した銀行強盗事件の際に犯人に銃を向けられた男で、隣の同じ出納係の行員が犯人に銃で撃たれ死亡した。
取調べの際、捕らえられた犯人の男は、銃を向けた行員が隣の男の手許を見たので、咄嗟に撃ってしまったと供述した。

 

 

この短編は、「視線の殺人」というタイトルで、TVドラマ化されている。
’89年にテレビ東京で放送された。大地康雄氏、岡本舞氏らの主演で、ドラマは人物設定が原作と男女が入れ替わっていたが、1時間ドラマ(正味45分)として良くまとまっていた。
また、ドラマの話になるが、テレビでよくやる、2時間ドラマ(これも正味は殆ど90分)は、原作ものは短編を取り上げたほうがいいと思うのだが。長編だと、仮に正味2時間をかけたとしても、どうしても無理が出ると思うからである。優れた短編も、長編に劣らずたくさんあると思うのだが、何より短い中で起承転結のはっきりとした、メリハリのあるドラマが出来るのではないか、と思うのは僕だけだろうか?

 

 

収録タイトル
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 視線 小説宝石 昭和51年4月号
2 その犬の名はリリー 小説宝石 昭和51年9月号
3 五十五歳の生理 小説宝石 昭和52年7月号
4 アドニスの花 小説推理 昭和48年12月号(「凶悪の花」改題)
5 ガラスの家 小説宝石 昭和49年12月号
6 一本の藁 別冊問題小説 昭和52年夏季特別号
7 ある完全犯罪 カッパまがじん 昭和51年9月号

 

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0395.日曜探偵

2003年06月15日 | 短編集
日曜探偵
読 了 日 2003/06/15
著    者 天藤真
出 版 社 出版芸術者
形    態 単行本
ページ数 235
発 行 日 1993/05/20
ISBN 4-885293-041-2

 

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和58年に著者が亡くなって、その後に編纂された本書は、中篇2編の間に掌編とも言うべき短編を挟んだ全3篇の犯人当ての形式をとったミステリー。
その昔、探偵小説を読み始めた頃、エラリイ・クイーンや、ディクスン・カー、国内では高木彬光氏の作品に、終盤近くになるとそれまでに出揃ったデータによって犯人を推理させる、“読者への挑戦”が挿入されるという試みがなされた。僕はこうした作品を好んで読んだが、犯人当ては苦手で、一度も当てたことはなかった。というより、データの分析が出来なかった。
それは今でも不得手であることに変わりはないが、好きなことにも変わりはない、僕がミステリー、特に意外な手口による犯行や、意外な犯人により、「アッ!」と驚かされるのが好きなのである。だから負け惜しみでなく、途中で犯人が判らなくても良いのである。
 異常心理学者・関茂博士と助手の戸間弘は福島県白河市で、塔の家と呼ばれる自宅の、25mの塔から墜落して死んだ斯波(しば)吾郎の事件を調べに、吾郎が乗った時刻と同じ時刻の列車で、白河に向かった(塔の家の三人の女)。

 

 

真ん中の「誰が為に鐘は鳴る」には、前の作品に出ている助手の戸間くんや、著者の天藤氏も登場する盗難事件である。同じ敷地内にある大家の屋敷から風呂敷包みの金が盗まれるという事件だ。
最後は、千葉市に住んでいた著者らしく舞台は千葉県は房総半島のほぼ真ん中あたりに位置する養老渓谷である。料亭の女中が見ている前でカーブを曲がりきれずに車が崖下に転落した。大破炎上した車の運転手は黒焦げになって死亡、その上運の悪いことに崖下のくぼ地でデート中だったらしい男女のうち男が車にはねられて死亡、女も気絶して倒れていた。こうした事件が描かれる。
いずれも、データが出揃ったところで事件の犯人は誰でしょう?という質問が待っている

 

 

初出一覧
# タイトル 紙誌名 発行月・号
1 塔の家の三人の女 宝石増刊 62.6
2 誰が為に鐘は鳴る 「新トリックゲーム」
(山前譲編)に書下ろし
 
3 日曜日は殺しの日 月刊けんぽ 73.1~12

 

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0394.ハート・オブ・スティール

2003年06月14日 | 連作短編集
ハート・オブ・スティール
読 了 日 2003/06/14
著  者 芦原すなお
出 版 社 小学館
形  態 単行本
ページ数 237
発 行 日 2000/07/10
ISBN 4-09-379184-8

 

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回か書いたような気がするが、もうだいぶ古い言葉になった3Fということが言われ出したのは、アメリカの女流ハードボイルド作家スー・グラフトンや、サラ・パレツキーがその作品の中で、登場させた女私立探偵の活躍が、主として女性読者の人気を集めたということが発端といわれている。すなわち、作者、主人公、読者の3者が女性(Femail)であることから3Fというわけだ。
わが国ではそうした作品が女性翻訳者によって紹介されると4Fとも言われた。
その後わが国でも3F作品は、桐野夏生氏の村野ミロ(230.参照)や、柴田よしき氏の村上緑子(りこ)(251.参照)乃南アサ氏の音道貴子らの活躍で、一般的になった。
本作は、3Fではないが、主人公にハードな女性私立探偵が登場するので、つい3Fを連想してしまった。ここに登場する笹野里子は「ミミズクとオリーブ」や「嫁洗い池」のイメージからはちょっと想像もつかないようなハードな探偵である。

 

 

二年前、交通事故で夫を失ったわたし(里子)は、一年ほど保母の仕事を辞めてボーっとしていたが、夫の仕事を継いでやろうかと思った。そしてろくでもない仕事も沢山こなして名も売れた。そんなわたしの笹野探偵事務所に依頼の電話が入った。そして私は、運転手つきのドイツ製高級車で依頼人の屋敷に連れて行かれた。依頼人は新興財閥の総帥で「最近様子のおかしい高校2年の孫娘・咲をまっとうな道に引き戻してほしい」というのが依頼の内容だった。(雪のマズルカ)
わたしは仕事を選ぶ探偵だが、ときに仕事に選ばれたと感じることがある。(氷の炎より)
というようにほとんど仕事に選ばれたような案件が続く。
図書館の棚で見かけて、芦原氏がこんな話しも書くのかとちょっと驚いて、借りてきた。肩のこらないエンタテインメント。

 

 

初出誌(文藝ポスト)
# タイトル 発行月・号
1 雪のマズルカ 3号
1 氷の炎 4号
1 アウト・オブ・ノーウェア 5号
1 ショウダウン 7号

 

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0393.あやし

2003年06月13日 | 時代ミステリー
あやし
読了日 2003/6/13
著 者 宮部みゆき
   
出版社 角川書店
形 態 文庫
ページ数 303
発行日 2003/4/25
ISBN 4-04-361104-8

 

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時代物の怪談・奇談集である。「本所深川ふしぎ草紙」(262.参照)「かまいたち」(264.参照)に通じるような江戸の怖い話、不思議な話を集めた短編集。
こうした作品を読むと、著者の幼い頃の環境や、祖母や母親から聞かされた話が、作家としての原点となっているのではないかと、推測されるが、いかがなものだろう?
また、そういったものを下に物語を構築するのは天性の才能か?相変わらずの語り口のうまさで、物語に引き込まれる。

銀次が、奉公に上がった木綿問屋「大黒屋」の跡取り、藤一郎に縁談が持ち上がり、話しは順調にまとまるかに見えた。が、女中・おはるのお腹に藤一郎の子どもが出来ていた。おはるはそれ相応のものを貰い店を出される。ある時、銀次は藤一郎からおはるの所へ内緒で使いを頼まれる。おはるの家へ行き、そこで銀次が見たものは・・・(居眠り心中)
深川六間掘町の蝋問屋・岡田屋の一番番頭だった松五郎が身を寄せている弟の家に、八丁堀組屋敷の与力・磯辺が訪ねてきた。松五郎の一人称で語られる、七人の死者を出して衰退した岡田屋の話(影牢)
怖くて、ちょっと切ないような、極上の江戸の話。

収録作
# タイトル
1 居眠り心中
2 影牢
3 布団部屋
4 梅の雨降る
5 安達家の鬼
6 女の首
7 時雨鬼
8 灰神楽
9 蜆塚

 

 

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0392.共犯マジック

2003年06月10日 | 短編集
共犯マジック
読 了 日 2003/06/10
著  者 北森鴻
出 版 社 徳間書店
形  態 文庫
ページ数 278
発 行 日 2001/07/31
ISBN 4-19-861382-6

 

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の凶兆のみを教示する占い本「フォーチュンブック」が発売され、占ったものは最悪の事態を回避するために自ら死を選ぶ。これを読んで、自殺するものが伝染病のごとく全国的に広まっていったために、全国の書店は販売を自粛した。だが、蜷川哲治の勤務する松本市のM書店では、倉庫の隅に在庫としてあった5冊を店頭に出して販売してしまった(プロローグ)
こうしたプロローグは、後に続く物語の予見を示すものなのだが、第一話はその2年後から始まる。
ここでは、プロローグに登場する蜷川哲治が隠し持っていた、もう1冊の「フォーチュンブック」と、彼の大学仲間が話の中心となる。時は、大学紛争真っ只中で、ノンポリの彼らはキャンパスに機動隊が突入というような紛争騒ぎを尻目に、ジャズ喫茶に入り浸り、無為な毎日を過ごしていた。そんな中、仲間の一人が首吊り自殺をした。
僕は、こうした本で自殺に追い込まれるというような現象が起こることについて、あまり信じたくは無いが、ネットでの呼びかけで、自殺志願者が集まって、集団自殺をするという現実があることを思うと、あながち、有り得ないことでもないかとも思う。しかし、著者はこうした素材を実にうまく使ってストーリーを組み立てている。

 

 

初出誌(問題小説)
# タイトル 発行月・号
プロローグ   99年1月号
第一話 原点 99年1月号
第二話 それからの貌 99年7月号
第三話 羽化の季節 99年10月号
第四話 封印迷宮 00年1月号
第五話 さよなら神様 00年6月号
第六話 六人の謡える乙子 00年10月号
最終話 共犯マジック(ナイトメアを大幅加筆・改題 01年2月号

 

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0391.ユニオン・クラブ綺談

2003年06月04日 | 連作短編集
ユニオン・クラブ綺談
THE UNION CLUB MYSTERIES
読了日 2003/06/04
著 者 アイザック・アシモフ
Isaac Asimov
訳 者 池央耿
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 340
発行日 1989/07/21
ISBN 4-488-16707-1

 

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後家蜘蛛の会4(374.参照)のところで本書について少し書いたが、著者のまえがきに興味を持ち、読んだ。 「ギャラリー」とうお色気雑誌に連載された短編は「黒後家・・」のエピソードより短く、ショート・ショートのようだが、フーダニット(Who had Done It)、あるいはハウダニット(How had Done It)の形を取った本格ミステリーだ。ユニオンクラブの談話室に4人が集うと、そのうちの一人グリズウォルドはいつも酒を飲みながらの転寝(うたたね)となるが、3人はいろいろな話題で沸騰する。すると、まどろみながらも3人の話を聞いていたグリズウォルドが関連した自分の体験談を語りだす。そして頃合のところで話を打ち切り、3人に結末を問うのである。著者のアシモフ氏が自信を持って毎回雑誌に発表していったエピソードは、全部で30篇。「黒後家・・」同様、氏の博識振りには驚嘆させられる。

 

収録作と原題
# タイトル 原題
1 逃げ場なし No Refuge Could Save
2 電話番号 The Telephone Number
3 物言わぬ男たち The Man Who Wouldn’t Talk
4 狙撃 A Clear Shot
5 艶福家 Irresistible to Woman
6 架空の人物 He Wasn’t There
7 一筋の糸 The Thin Line
8 殺しのメロディー Mystery Tune
9 宝さがし Hide and Seek
10 ギフト Gift
11 高温 低温 Hot and Cold
12 十三ページ The Thirteenth Page
13 1から999まで 1 to 999
14 十二歳 Twelve Years Old
15 知能テスト Testing,Testing!
16 アプルビーの漫談 The Appleby Story
17 ドルとセント Dollars and Cents
18 友好国 同盟国 Frends and Allies
19 どっちがどっち? Which is Which?
20 十二宮 The Sign
21 キツネ狩り Catching the Fox
22 組み合わせ錠 Getting the Combination
23 図書館の本 The Library Book
24 三つのゴブレット The Three Goblets
25 どう書きますか? Spell It
26 二人の女 Two Women
27 信号発信 Sending A Signal
28 音痴だけれど The Favorite Piece
29 半分幽霊 Half A Ghost
30 ダラスのアリス There Was A Young Lady