巡査の休日 | ||
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読 了 日 | 2011/06/23 | |
著 者 | 佐々木譲 | |
出 版 社 | 角川春樹事務所 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 370 | |
発 行 :日 | 2011/05/18 | |
ISBN | 978-4-7584-3554-3 |
リーズ4作目が文庫になった。特に警察小説に思い入れがあるわけではないが、最近魅力的な警察小説に多く出会って、ちょっとした幸せ感を味わっている。
「笑う警官」に始まった北海道警シリーズにはまって、次々と讀んできたが、今回は趣が少し変わって、いつものメインキャラクターたちは、それぞれ別の事件への関わりを見せていく。
巻末の解説で、西上心太氏は、「エド・マクベインの87分署シリーズに見られる、モジュラー型の警察小説に挑んで…」というようなことを書いているが、僕はこのラストで、同様のことを連想したので、ちょっと驚いた。
もう大分昔のことだから(1961年)、ほとんど忘れてしまったのだが、本書で連想したのはスティーブ・キャレラ刑事が留守の間に起こった事件を描いたエピソードで、彼の奥さん(聾唖者―この言葉は今では差別用語になるのか?)が事件に巻き込まれるのだが、キャレラ刑事が返ってきたときは事件が解決していたという設定だった。
このシリーズのファンならタイトルを知っているかもしれない。ドラマに出てくる刑事たちを演ずるロバート・ランシングを始め、ノーマン・フェル、ロン・ハーパー、グレゴリー・ウォルコットなどなどの顔は今でも目に浮かぶ。
我が国での刑事ドラマの原点とも言われる、「七人の刑事」同様、87分署シリーズは刑事ドラマの名作として多くのファンを獲得していた。できればもう一度見たい気もする。
書では、いつものレギュラーメンバーである、佐伯警部補、小島百合巡査、津久井巡査長がそれぞれ別の事件に関わる。
小島巡査が拳銃を発砲しながら逮捕した、強姦殺人魔・鎌田光也が、怪我の手当てのため入院していた病院から脱走するというのが、今回のストーリーの幕開けである。厳重な捜査網にもかからずに、鎌田の行方はつかめなかった。そして、神奈川県で現金輸送車の襲撃事件が発生し、容疑者の一人に鎌田の名前が挙がった。
さらに、未遂に終わったものの、ストーカー行為の末最後に鎌田に襲われた村瀬香里の許に、脅迫メールが届く。小島巡査は間近に迫ったよさこいソーラン祭りに出るという村瀬を警護するために張り付く。
その一方で、津久井は渡辺英明巡査とともに鎌田の捜査で神奈川まで出向く。片や、佐伯は続発するバイクによるひったくり事件を、部下の新宮とともに追う。
なんといってもよさこいソーラン祭りの進行と、村瀬香里の携帯に届く不気味なメールとの対比が、時間の経過とともに映画的なクライマックスを感じさせる。だが、僕は緊張感が解けたその後の場面にこのストーリーの真髄を味わう。
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