隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1039.ピース

2009年11月28日 | 社会
ピース
読 了 日 2009/11/21
著    者 樋口有介
出 版 社 文藝春秋
形    態 文庫
ページ数 331
発 行 日 2009/2/25
ISBN 978-4-12-205120-1

 

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年ぶりくらいで読む著者の作品は今年(平成21年)2月の発行だから、僕にすれば新刊だ。
まだ何冊か未読の作品があると思っていたが、著者の作品はこれで25冊目となる。かなり多いほうだろう。
前にもどこかで書いたのだが、僕は殊勝にも出来るだけ広く浅くを目指しているので、というか多くの作家の作品を読みたいと思っているから、気に入った作家の作品を続けて読み漁らないよう気をつけてはいるのだが・・・。それでも好きな作家の作品が多くなるのは、やはり必然か?

 

 

表紙のイラストから、タイトルがカメラの前で子供たちばかりか大人までもが、よくやるポーズだとわかるが。
さて、どんな内容かと読み進めれば、いつもの青春ミステリーほどの明るさはない。
埼玉県は北西部、山梨、長野、群馬と県境を接する秩父地方が舞台だ。今の時代はどんな山奥であろうと電気は通じており、電話もテレビもあるのだが、それでも田舎の舞台はなにやら郷愁を誘うのは太古のDNAが僕の中にも残っているせいだろうか?(今度逢ったとき、磯野博士に聴いてみようか?磯野氏は僕の高校のクラスメイトで、理学博士、かずさDNA研究所の常務理事だ。)
ところで、ネタばれすれすれだが、初っ端から言ってしまえば、このミステリーの伏線は本文だけではないのだ。全部読み終わってこの文を書き始めて、思わず「やるじゃないか!」と、胸の内でつぶやいた。
この地方の片田舎の町で、スナック「ラザロ」を開いているのは、元警官だった八田芳蔵。半白の顎鬚を蓄え、パイプを手にする姿はいかにもマスターという感じだ。そして、バーテン兼調理人はまだ若い平島逍路(しょうじ)、八田の甥だという。今の時代に似合わず無口な若者で、変に老成したような感じを持つ青年。
従業員はほかにアルバイトで、ピアノを弾いたり、たまには客の相手をしたりの清水成子。東京から出てきて、ラザロの募集広告を見て勤め始めた変り種だ。

 

 

舎町のバーやスナックによくある定番のように、ここにも数人の常連客がいて、和気藹々の雰囲気だが、そんな田舎町にも事件は起きる。山中で発見されたバラバラ死体はラザロのピアニスト・清水成子だった。
死体の状況から事件は、それより以前に寄居町で発生した事件と同じ手口であることから、連続バラバラ殺人事件ということになった。
だが、寄居町で殺害された歯科医と、清水成子の繋がりはまったく浮かんでこない。
県警本部から現場の捜査に当たるのは定年間近の、ヘビースモーカー・坂森巡査部長。近隣の皆野町の出身である坂森は、現場に来てから忘れていた秩父弁が飛び出して、周囲の人間を煙に巻くが・・・。鈍重な印象からは想像もつかない時折鋭いところも垣間見せる、秩父のコロンボといったところだ。
息子も父と同様警察官だが、そちらは大学出のキャリア組みだから、息子の手前もあって頑張るコロンボだ。
そして事件はさらに続く。

柚木草平シリーズに見られるハードボイルド調とは違って、ソフトボイルド?
否、どちらかといえば本格ミステリーといっても良いかもしれない。適度にミスディレクションも配置して、読者の推理を誤った方向に導く作用もしている。定年間近とは言うものの、坂森刑事のシリーズ化も良いんじゃないかと感じられる。著者の新境地か?

 

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1038.探偵ガリレオ

2009年11月24日 | 本格
探偵ガリレオ
読 了 日 2009/11/17
著    者 東野圭吾
出 版 社 文藝春秋
形    態 文庫
ページ数 359
発 行 日 2009/10/16
ISBN 978-4-488-49301-1

 

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い最近読んだ「容疑者Xの献身」で、物理学者の探偵が魅力的なキャラクターとして描かれていることで、前の作品も読んでみようと思い、「シャドウ」、「BG、あるいは死せるカイニス」と共に買った文庫3冊の最後の1冊である。
人気を得たのはこちらの短編集のほうが先立ったようだが、僕はドラマ化されたものも見ておらず、どちらかといえば無関心だった。
今回本書を読んで、いずれレンタル店で、ドラマ化されたDVDも借りてみようと思っているが、なかなかそこまで手が回らない状態だ。
毎日が日曜日の身分でありながら、なにやら雑用も多く、自身の身辺整理もままならぬ状態だ。まあ、毎日が暇よりは良いのだろうが。

 

 

ところで、本書には、以下の初出一覧のごとく5編の短編が収録されているが、それぞれのタイトルをカッコ内のように読ませるという、いわば連作だ。
最初の「燃える」は深夜に街中を徘徊して辺りかまわず大声で話すことから、近所の住人たちから嫌われ者となっている若者グループの一人が、突如頭から火を噴いたかと思われる状態で火達磨となって燃え尽きるという話だ。似たような状況のスタートを切る話に、宮部みゆき氏の「クロスファイヤー」とか、乃南アサ氏の「凍える牙」などを思い浮かべるが、こちらは物理学者の名探偵登場ということで、少しばかり趣が異なる。
幼い少女の言葉がヒントとなって、東都大学物理学研究室の助教授・湯川が事件を解決するというストーリーだ。

 

 

理学者ゆえ名探偵ガリレオなるあだ名がつく湯川のところへ、事件を持ち込むのは警視庁捜査1課の刑事・草薙俊平。同じ帝都大学出身という間柄から、科学的な知識が必要と思われる不可思議な事件は、ベテラン刑事の手に負えず、湯川学の頭脳を借りるというストーリーだから、すべてそうした事件が描かれるのだが、2作目の「転写る」は、ちょっと現実離れした印象を与えるストーリー、というより事件だ。
同級生の中学生二人が鯉を釣りに行った池で、鯉ならぬ奇妙なものを拾っていった。それはなんとアルミで出来たデスマスク様のものだったのだが・・・。
デスマスクで再生された顔が行方不明の男の顔にそっくりだということから、事件に発展する。
とまあ、こんな話もあるが、短編の切れのよさがあって、最後まで飽きさせずに不可思議な事件を連続させて、続けて読みたくさせる。

 

初出誌(オール讀物)
# タイトル 発行月・号
1 燃える(もえる) 96年11月号
2 転写る(うつる) 97年3月号
3 壊死る(くさる) 97年6月号
4 爆ぜる(はぜる) 97年10月号
5 離脱る(ぬける) 98年3月号

 

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1037.BG、あるいは死せるカイニス

2009年11月03日 | 本格
BG、あるいは死せるカイニス
読了日 2009/11/13
著 者 石持浅海
出版社 東京創元社
形 態 文庫
ページ数 359
発行日 2009/10/16
ISBN 4-488-49301-1

 

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いぶ長いこと読書記録が途絶えた。
「他人のホームページを立ち上げるために、自分のブログを休むのはいかがなものか?」と、もう一人の僕が言うのだが、「まあ、人の喜ぶ顔を見るのも良いじゃないか。」と、僕は答える。
実は、昨日11月18日にも僕は富津市の湊ひかり学園に行ってきた。施設長岡田氏の代わりに、アクセスカウンターに関する質問を、OCNに投げかけるためだ。リニューアルしたサイトでは、Topページの他に、サブページをいくつか設定しているが、Topページからサブページに行って帰ると、アクセス数が一つ増えるというのだ。試してみるとなるほどその通りだ。

僕もこのブログでBroachのカウンターに慣れているから、ちょっと不思議な感じがしたのだが、岡田氏はこうした事態にまったく慣れていないから、僕に調べてほしいというのである。
施設からOCNに電話で問い合わせると、OCNのホームページのアクセスカウンターは、いくつページを見たかということで、カウントする仕組みなのだと言われた。それではいたし方がない。そういうシステムだということで岡田氏にも納得してもらうしかない。
それにしても、当初開設してから5年を経たいまでも5000未満のアクセス数だから、ましてアクセス数など目安でしかないのだから、正確性など云々しても始まらないじゃないか、と岡田氏には言ったのだが、どうも納得しがたいようだった。

せっかく行ったので、立ち上げ後1週間ほどで、Topページのデザインの一部を変更したり、過去のデータからサブページを新たにいくつか作っておいたので、更新をアップロードしておいた。
今までは、Topページに何もかも載せていたから、新しいデータを加える都度、古いデータは削って新しいサイトとして更新するという方式をとっていたのだ。
だから、更新すると古いデータは見ることが出来なくなるというわけだ。しかも、Topページの印象も変わってしまうので、一貫性も何もあったものではない。今後は更新の都度アドバイスを求められたり、HTMLなどについての学習もお手伝いすることになるだろう。「それもまた、楽しいことではないか!?」と、僕はもう一人の僕に言う。・・・・・?

 

 

さて、前にも書いたが2009年11月2日が僕の70歳の誕生日で、この読書記録を始めてから目標の丸10年となった。
当初の読書目標は10年で500冊だったのが、以外と順調に進んだので、途中から1000冊となった。幸いにして、今年6月で1000冊の目標は達成できたが、10年は長いようで短く、短いようで長い。
60歳の僕は今考えると若かった。だが、70歳となった今でも当時と同じく気だけは若い、つもりだ。ということで、これからもあせらずマイペースで読書や、ミステリードラマや映画の鑑賞を楽しんでいくつもりだ。

本書は前の「シャドウ」と一緒に買った文庫3冊のうちの1冊。
好きな作者の本だからと、ついうっかり内容も確認せずに買ってしまった。と書けば判るように残念ながら、余り好みの作品ではなかった。好きな作家の本でも、まして東京創元社の推理文庫でもこういうことはあるのだ。(前に同じようなことをどこかで書いたナ)
このところ、あまりお呼びでない(ちょっとばかり古い表現だったか?)本にぶつかることが多いのは、日ごろの行いが悪いのか?

 

 

これはある種のSFといって良いのか?登場人物も日本人で?、舞台も日本?のようだが、これはどこか遠いほかの星の日本か?異世界の物語である。
人は生まれるときは全て女性という世界での出来事が描かれる。では子供はどうして生まれるのか?キリストの母マリアのように処女懐胎?いやいや、そうではない。ある種の女性が男性へと性転換するのだという。
それがすなわちBGなのだが、(BGの意味は終盤になって判明する)身体機能も頭脳も優秀な女性が、条件が整った段階で男性化するのだという。
この本を読んでいる途中で、聞くともなしに聞いていたNHKラジオの第一放送の番組で、人は母親の胎内にいる時、始めは全部女性として形作られて、ある時点で男性と女性とに別れるのだという話をしていた。何かそういった医学の番組だったのだろうか?
そういう話を聞いて、偶然さに驚いたが、本の内容はそれとは関係ない。

 

性化した女性は、何人かの女性と結婚して、たくさんの子供をつくることが義務付けられているという、どこかで聞いたような話だが、そうした世界で、高校生の西野優子が殺害されるという事件が発生する。
ストーリーの語り手である船津遥は、被害者西野優子の異母妹だが、これが少しややこしい。
西野優子の母親が優子を生んだ後、男性化して遥の母親と結婚して遥が生まれたというのだ。
西野優子は頭脳明晰、容姿端麗だけでなく、スポーツもこなして後輩たちからも慕われていた。男性化のナンバーワン候補といわれていた。そうした彼女が身につけていたマフラーで絞め殺された上、衣服の状態からレイプされかかっていたことがわかった。

とまあ、ストーリーはこのような状態のスタートを切るわけだが、本格派の雄といわれる著者の作品らしく、ミステリーそのものはそれほど奇異ではないが、何しろ異世界の出来事だから、その動機や犯行のいきさつやらが結末で、アンフェアではないかと思われるようなこともあって、他の作品のようになるほど一件落着とはいかなかったのだ・・・。いやはや。

 

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