ピース | ||
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読 了 日 | 2009/11/21 | |
著 者 | 樋口有介 | |
出 版 社 | 文藝春秋 | |
形 態 | 文庫 | |
ページ数 | 331 | |
発 行 日 | 2009/2/25 | |
ISBN | 978-4-12-205120-1 |
年ぶりくらいで読む著者の作品は今年(平成21年)2月の発行だから、僕にすれば新刊だ。
まだ何冊か未読の作品があると思っていたが、著者の作品はこれで25冊目となる。かなり多いほうだろう。
前にもどこかで書いたのだが、僕は殊勝にも出来るだけ広く浅くを目指しているので、というか多くの作家の作品を読みたいと思っているから、気に入った作家の作品を続けて読み漁らないよう気をつけてはいるのだが・・・。それでも好きな作家の作品が多くなるのは、やはり必然か?
表紙のイラストから、タイトルがカメラの前で子供たちばかりか大人までもが、よくやるポーズだとわかるが。
さて、どんな内容かと読み進めれば、いつもの青春ミステリーほどの明るさはない。
埼玉県は北西部、山梨、長野、群馬と県境を接する秩父地方が舞台だ。今の時代はどんな山奥であろうと電気は通じており、電話もテレビもあるのだが、それでも田舎の舞台はなにやら郷愁を誘うのは太古のDNAが僕の中にも残っているせいだろうか?(今度逢ったとき、磯野博士に聴いてみようか?磯野氏は僕の高校のクラスメイトで、理学博士、かずさDNA研究所の常務理事だ。)
ところで、ネタばれすれすれだが、初っ端から言ってしまえば、このミステリーの伏線は本文だけではないのだ。全部読み終わってこの文を書き始めて、思わず「やるじゃないか!」と、胸の内でつぶやいた。
この地方の片田舎の町で、スナック「ラザロ」を開いているのは、元警官だった八田芳蔵。半白の顎鬚を蓄え、パイプを手にする姿はいかにもマスターという感じだ。そして、バーテン兼調理人はまだ若い平島逍路(しょうじ)、八田の甥だという。今の時代に似合わず無口な若者で、変に老成したような感じを持つ青年。
従業員はほかにアルバイトで、ピアノを弾いたり、たまには客の相手をしたりの清水成子。東京から出てきて、ラザロの募集広告を見て勤め始めた変り種だ。
舎町のバーやスナックによくある定番のように、ここにも数人の常連客がいて、和気藹々の雰囲気だが、そんな田舎町にも事件は起きる。山中で発見されたバラバラ死体はラザロのピアニスト・清水成子だった。
死体の状況から事件は、それより以前に寄居町で発生した事件と同じ手口であることから、連続バラバラ殺人事件ということになった。
だが、寄居町で殺害された歯科医と、清水成子の繋がりはまったく浮かんでこない。
県警本部から現場の捜査に当たるのは定年間近の、ヘビースモーカー・坂森巡査部長。近隣の皆野町の出身である坂森は、現場に来てから忘れていた秩父弁が飛び出して、周囲の人間を煙に巻くが・・・。鈍重な印象からは想像もつかない時折鋭いところも垣間見せる、秩父のコロンボといったところだ。
息子も父と同様警察官だが、そちらは大学出のキャリア組みだから、息子の手前もあって頑張るコロンボだ。
そして事件はさらに続く。
柚木草平シリーズに見られるハードボイルド調とは違って、ソフトボイルド?
否、どちらかといえば本格ミステリーといっても良いかもしれない。適度にミスディレクションも配置して、読者の推理を誤った方向に導く作用もしている。定年間近とは言うものの、坂森刑事のシリーズ化も良いんじゃないかと感じられる。著者の新境地か?
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