隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0897.わが心臓の痛み

2008年06月28日 | 警察小説
わが心臓の痛み
Blood Work
読了日 2008/06/28
著者 マイケル・コナリー
Michael Conelly
訳者 古沢嘉通
出版社 扶桑社
形態 単行本
ページ数 490
発行日 2000/4/30
ISBN 4-594-02902-7

 

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っと前にどこかの雑誌か何かで、石上三登志氏(もしかしたら、香山二三郎だったかもしれない?)がメディカルサスペンスの1冊として本書を紹介していたのを読んで(という記憶は、あまり当てにはならないが・・・)、ネットで探して買い求めた。例によってしばらく読まずにおいたものだから、それとは知らずに、うっかり映画の方を先に見てしまった。といっても、クリント・イーストウッド監督・主演の映画は、同じ頃見た「トゥルー・クライム(1999 米WB)」の方が印象に残っており、本書が原作の「ブラッド・ワーク(原作のタイトルと同じ。2002 米WB)」の方の内容は、幸いにして?全くと言っていいほど記憶の彼方だ。

 


米ワーナー映画「ブラッド・ワーク」より

心臓疾患のために事件捜査の半ばに倒れて、退官を余儀なくされた元FBI捜査官のテリー・マッケイレブが本編の主人公である。
運良く血液型の一致したドナーが見つかり、心臓移植を受けることが出来たマッケイレブは術後の病院通いをしながら、亡くなった父親から受け継いだボートで一人暮らしをしていた、が、ある日そこへ、見知らぬ女性が訪ねてきて、一枚の写真を彼に見せる。写っているのは彼女の妹だという女性と、その息子の幼い男の子だった。写真の妹がコンビニで、押し入ってきた強盗に店主と共に銃で殺害されたということだった。
マッケイレブは、FBIを引退して、手術を受けたばかりで、探偵の免許もないので、調査事は出来ない、と女性の頼みを断ると、彼女は彼の胸を触って、ここにある心臓は死んだ妹のものだった、という。

アルコール類はだめ、車の運転さえ禁じられている手術後のマッケイレブは、毎日の定時にバイタルサインや体温測定をしながら、何十種類の薬を欠かせない状態ながら、自分の心臓は犯罪者の悪意によってもたらされたものだということに衝撃を受け、女性の頼みである事件の調査を、引き受けることにする、のだが・・・。

原題の”Blood Work”とは、テリー・マッケイレブがFBI捜査官時代に、凶悪な殺人犯を追う仕事を呼ぶ時に使った呼び名で、「血の任務」なのだが、ここでは、事件の謎を解く重要なキーワードともなっている。ある意味では、メディカルサスペンスに違いないが、やはりこのストーリーはハードボイルドと呼ぶべきなのかもしれない。しかもなお、犯人探しのミステリーとしての体裁も整えているという、まさにエンタテインメントの大作である。中盤から終盤にかけてのストーリーは、息をもつかせぬ緊迫感とスピーディな展開で、圧倒される。2段組の500ページ弱も長さを感じさせない面白さだ。
クリント・イーストウッド氏もそうして読んだのだろうか?本作の映画化権の獲得に、100万ドルも投じたのだから!

 

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0896.昏睡 かくされた癌

2008年06月25日 | メディカル
昏睡 かくされた癌
読了日 2008/6/25
著者 霧村悠康
出版社 新風舎
形態 単行本
ページ数 384
発行日 2006/9/25
ISBN 4-289-00811-9

 

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「摘出 つくられた癌」(757.参照)で強烈な印象を植えつけられたことで、つい最近読んだような気がしていたが、確認したらもう2年近くも前のことだとわかって驚く。その続編となる今作は同じO大学医学部を舞台として、登場人物も再登場である。

今回は、完璧に行われた筈の胆嚢摘出手術で、たった一つの注意を怠ったがために若い男性を死に至らしめる、という事件を皮切りに、展開される。前作で、副題となっている-つくられた癌-の首謀者である助教授の教授への選考会の模様や、大学を去った医師の、若い女性患者との出会いなどがきめ細かに描かれ、物語に引き込まれる。

 

 

現役の医師である著者の手術場面は、文字通り手に汗握る描写で、迫ってくる。前作の時と同様、遥か昔に読んだ山崎豊子氏の「白い巨塔」が思い浮かぶ。医療過誤に関連する裁判の模様がここでも取り上げられて、未熟な医師の傲慢さにストーリー中の被害者と一緒に胸を痛める。こうした物語を読んでいると、医師とはなんと厳しい職業かと思うと同時に、心得のない医師もいるのだという事も考えずにいられない。

不幸にして、医療事故で亡くなった患者の遺族が起こす裁判に、患者側の証人として法廷に立った医師が、裁判終了後弁護士との話し合いの中で、判決が下されるのが半年後ということに関して、「どうして悪い方の権利ばかり取り沙汰されるんでしょう。被害者の権利はどうなるんです?死んだ者には権利など必要ないということでしょうか!」という疑問を投げかけるところがある。
それに対して弁護士は「まあ、そういうことです。だって、もう生存しないのに、いない人に権利など発生するわけないじゃないですか。権利とは、生きている人に付随するんですよ」と答える。新聞やテレビで事件が報道されるたびに、加害者側の弁護に立つ弁護士の主張する「加害者の人権・・・」に理不尽の念を抱くことに対する答えともなっているが、法律というものの難しい一面を表した箇所に思いが残る。

幸いにして、来年には古希を迎える年となる僕だが、病気とは縁がなく、従って病院や医師とも今のところ関わりを持たずに済んでいるのだが・・・。これほどリアリティに溢れたストーリーに接すると、病院選びに苦労するのではないか?などと心配になる。

ところで、今作でも多岐に亘るエピソードの全てが収束しているわけではないので、多分この後再度続編が書かれるのではないかと推測される。アメリカのロングランを続けている人気テレビドラマ「ER・緊急救命室」を思わせるような一面も持ったドラマチックな本作が続いていくことを期待したい。

 

 

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0895.音のない部屋の死

2008年06月23日 | 本格
音のない部屋の死
THE DEAD ROOM
読了日 2008/6/23
著者 ハーバート・レズニコウ
Herbert Resnicow
出版社 早川書房
形態 文庫
ページ数 279
発行日 1990/2
ISBN 4-15-100020-8

 

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月に読んだ「ゴールド2/死線」(883.参照)の鮮やかな安楽椅子探偵ストーリーに魅せられて、木更津市立図書館にあった本書を借りてきた。ゴールドシリーズではないが、アメリカの「新本格の雄」などとも云われているらしい著者の作にふさわしい本格パズラー小説だ。
投資会社ナッソー・ヴェンチャー・キャピタル・コーポレーションの社長・エドワード・バイアと、その息子で哲学博士の称号を持ちながらも、職にありつけずにいるウォーレンを主人公としたミステリー。

エドワードが出資している音響メーカー、ハミルカー・ハイファイの無響室(音響実験室)で、ウォルター・カッセルが刺殺されるという事件が起こった。ハミルカー・ハイファイは、社長のカーター・ハミルトンが設立したヴェンチャー企業で、従来のスピーカーより小型で、価格を抑えたスピーカーの開発で、急成長を遂げたのだが、第2弾の失敗で会社は、風前のともし火状態だった。そこへ、画期的なスピーカーを持って売り込みに現れたのが、ウォルター・カッセルという老人だった。
ハミルカー・ハイファイにとって、救世主とも思える老人が何故、殺されねばならなかったのか?
また、一見不可能とも思える無響室での殺人はどのような方法で行われたのか?
多額の出資をしているエドワードは息子のウォーレンと共に、その謎を解明すべく知恵を絞ることに・・・。

若い頃と違って、最近は翻訳ものを読むのに視力・気力ともども衰えを感じる始末だ。さらに記憶力の減退がそれに追い討ちをかけて読むスピードを落とす。しかし、こうした作品を読むとそういったハンデもなんのそのと、いう気になる。海外の作品-特に英米の作品(僕が読むのは殆どそれだが)には、たくまざるユーモアが織り込まれており、洒落た会話も多い。
本作では、妻を亡くして、息子と二人暮しのエドワードが、友人のアイリスと交わす会話にも大人同士の洒脱なセリフが行き来して、心地よい。

 

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0894.無痛

2008年06月20日 | メディカル
無痛
読了日 2008/6/21
著者 久坂部羊
出版社 幻冬舎
形態 単行本
ページ数 508
発行日 2006/4/25
ISBN 4-344-01158-9

 

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役医師である著者のメディカルサスペンスも3冊目となった。アメリカの作家で云えば、マイケル・パーマー派とでも云おうか、本作では、特にサスペンスの様々な要素が入り混じって、面白さを際立たせている感じだ。
こういう著者のような人物には、天は二物も三物も与えているようだ。

ストーリーは、神戸港を一望できる高台の住宅地の一軒で、夫婦と幼い姉弟が殺害されるという事件現場を描写した序章からスタートする。

事件の捜査を担当する灘署の主任・早瀬は、あまりにも凄惨を極める状況から犯人が、精神障害を持つ異常者ではないかと危惧する。彼は刑法39条への疑念とこだわりを持っているからだった。捜査に進展がないまま八ヶ月が経った時、精神障害者施設に収容されている十四歳の少女・南サトミが臨床心理士の高島菜見子に携帯のメールで、一家四人殺しの事件について、「自分がやった・・」と知らせてきたのだ。菜見子は為頼医師に相談して、サトミが事件に関わりがあるのか診てもらおうとした。
為頼がタクシーに財布を忘れたのを菜見子が拾って返してくれたことから知り合った経緯があった。その時、思いもかけず通り魔事件に遭遇して、菜見子と息子の祐輔は為頼の通り魔を見抜く目によって助けられたことがあったのだ。

為頼医師は、犯罪も病気だという。そして患者の顔や外観から病気の症状が見えるのだ。そこいらあたりは、ずっと以前に読んだF・ポール・ウイルソンの「触手(タッチ)」(23.参照)をちょっと連想するが、本作は、ストーカーから、通り魔、障害者問題、あるいは医療問題、そして、刑法39条への様々な思いが重なり、サイコサスペンス、メディカルスリラー、ホラーの要素を含んだ大長編ミステリーだ。

 

 

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0893.ミステリオーソ

2008年06月16日 | エッセイ
ミステリオーソ
読了日 2008/6/17
著者 原尞
出版社 早川書房
形態 単行本
ページ数 340
発行日 1995/6/30
ISBN 4-15-207928-2

 

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入して、読んでしまってから云うのもおかしいが、僕は、特別な人以外の作家のエッセイにそれほど興味があるわけではない。この本もエッセイの他に私立探偵”沢崎”の短編が収録されているということで読み始めたのだが・・・。
初めての著者の作品「私が殺した少女」(474.参照)を読んで、読む前に漠然と感じていた著者への印象が改められ、惹きつけられるものを感じて、読み継いできた。が、正直言って、本書は読まないほうが良かったかもしれないと思っている。

まあ、エッセイと言っても、事実を交えた作品だと思えば言いのだろうが・・。作家業の前は、ジャズピアニストだったという著者自身の話は、膨大な量を誇る読書について、自身の生業だったジャズについて、映画について、ハードボイルドについてと、いろいろな話題が探偵”沢崎”を思わせるような辛口の語り口で書かれている。
独特の感性を持った著者の視点は、僕などにはちょっと付いていけないようなところもあるが、人それぞれだから、反感を持つほどのことはない。それでも中には、なるほど最もだと感じる部分も少なくない。

人気作家と比べても意味はないが、僕も多少天邪鬼なところがあるから、こうしたエッセイを読んで、作家の考え方や、ものの見方が判ったところで、その作品を読む姿勢になんら替わることはないのだが・・・。要するに作家は、その作品で勝負だから、作品が面白ければ言うことはないのだ。

 

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0892.扉は閉ざされたまま

2008年06月12日 | 本格
扉は閉ざされたまま
読了日 2008/06/14
著 者 石持浅海
出版社 祥伝社
形 態 新書
ページ数 350
発行日 2006/01/05
ISBN 4-396-20797-2

 

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に読んだ著者の本が「月の扉」(701.参照)だったので、共通のモチーフか?などと思いながら見かけた古書店で買い求めた。 密室殺人を予想して読み始めると、なんと冒頭で倒叙形式であることが判明、ちょっと肩透かしをされた感じだが・・・。

さて、序章で描かれるのは、伏見亮輔が、後輩の新山和弘を殺害する場面である。念入りに計画されていたような伏見の行動や、部屋の状態が細かく描写されていくが、何故彼が殺害に至ったかということについては、記述されない。

 

 

古い洋館を出来るだけ損なわずに、使われている高価な建具などをそのままの状態で、ペンションにしたという、成城の広大な敷地に立つ威容を誇る二階建てが物語の舞台だ。
オーナーでフランス料理のシェフが身体を壊して、休業中のペンションを利用して学生時代の仲間の同窓会を開催しようとしたのは、オーナーの弟の安東だった。大学の軽音楽部の中で、「アル中分科会」と呼ばれていた気の合った酒好きの男女、伏見亮輔、新山和弘、石丸孝平、上田五月、大倉礼子、安東章吾の六人と、大倉礼子の妹、碓氷優佳、合わせて七人が登場人物の総てだ。
大学を卒業して社会人となり、各地に散らばった者や、大学に残って研究者となった者が、再び集って始まった同窓会は、軽口を言い合って、楽しい雰囲気で始まるのだが・・・。
全員で建物内を掃除した後、夕食までの間各自部屋で一休みしようと言うことになった。夕食の準備を始める時間になっても一人、新山だけが現れなかったが、疲れて寝ているのだろうということになって気にしなかった。が、いつまでたってもおきてこない彼に六人は心配し始める。

 

 

のストーリーの面白いところは、刑事コロンボでお馴染みの、倒叙形式(初めに犯人がわかっている形式)で、いかにその犯罪が暴かれていくか、というところにあるのだが、もうひとつ本書では、事件の解明が安楽椅子探偵の、実に論理的な推理によって、隠されていた殺人の動機までもが、明かされていくところである。
倒叙推理と、安楽椅子探偵の二つが楽しめるストーリーだ。

 

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0891.ママに捧げる殺人

2008年06月10日 | サスペンス
ママに捧げる殺人
読了日 2008/06/10
著 者 和田はつ子
出版社 河出書房新社
形 態 単行本
ページ数 259
発行日 1994/04/25
ISBN 4-309-00904-2

 

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心理分析官」(156.参照)の加山知子シリーズだと思って読んだのだが、本作は彼女が登場する最初の作品のようで、心理分析官になる前の?物語だった。そういえば、心理分析官では冒頭で、彼女はFBIでプロファイリングの研修を受けた後、帰国して心理分析官になったと紹介されていた。
本作では、恋人の警視庁刑事・松井と連続猟奇殺人について、考える精神科医ということになっている。

 

 

ストーリーは、若い女性のダイエットに伴う拒食症が主題として、扱われており、以前読んだ北川歩実氏の硝子のドレス」(468.参照)の時もそうであったように、理解に苦しむ女性心理である。

ここでは、ダイエットや、拒食症が招く女性の狂気がもたらす事件と、犯罪に至る心理描写が克明に描写されるが、理解できないことから、多少辟易気味で読み進んだ。終わり近くになって、警察の捜査と、精神科医・加山知子の推理が真相に近づいて、ミステリーの様相を表すが、このストーリーのエンディングは真相が解明して、めでたしめでたし、ということでなく余韻をもたせているところに面白さを感じる。

 

 

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0890.黒いリボン

2008年06月06日 | 本格
黒いリボン
読了日 2008/02/16
著 者 仁木悦子
出版社 角川書店
形 態 文庫
ページ数 220
発行日 198/01/20
書肆番号 0193-145411-00946(0)

 

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木雄太郎・悦子兄妹のシリーズ長編。この文庫は1983年=昭和58年の発行だが、作品としては昭和37年に書かれた長編第5作目で、かなり初期の作品だ。
僕は、古書店で手に入ったものから読んでおり、年代にはこだわっていないのだが、本書の末尾で中島河太郎氏の解説によれば“仁木兄妹シリーズの棹尾を飾るに云々”とあるので、兄妹シリーズは早々と終了してしまったのか?それとも長編では、という意味なのか?残念ながら判らない。

今まで、結構著者の作品を読み継いできたつもりだが(本書で17冊目)、読むそばから忘れてしまうから、話にならない。読んできた本の、著者のインデックスや、著者別作品リストなど、やりたいことは沢山あるのだが、HTML&スタイルシートの勉強も捗らず、思うに任せない。そのうち何とか??

 

 

さて本作は、幼児誘拐の話だ。このところちょくちょくこうした話題の本を読んでいる気がするが、先に書いたように本作は昭和37年というから、45年も前に書かれたストーリーで、まさにその先駆けともいえるのではないか。

音大で学んでいる仁木悦子は、かつて出入りしていたピアノの先輩の妹がバイオリンのリサイタルを開くので、その切符の売り捌きを手伝っていた。そうしたことの出先で、昔の知り合いに出会う。ソプラノ歌手で、ある歌劇団で少しは名の売れた歌手だったが、陶器会社の社長と結婚して既に二人の子どもの母となっていた。その国近絵美子夫人に田園調布の自宅に招かれて一緒に行くことになったのだが、そこで、庭のプールで遊んでいた2歳の長男が、ちょっとした隙に誘拐されるという事件に遭遇したのである。訳あって長男を少しも可愛がらない夫の国近氏や、その妹で閨秀作家の青谷伊佐代、弟で高校教師の泰二郎、夫人の姉・有田登美子など個性豊か人物たちが登場して、ストーリーは展開する。

誘拐犯が要求する身代金300万円は時代を感じさせるが、その金も全額そろわず250万円を持って、運び人に指名された社長の国近氏が届けるのだが、金額が不足だという理由で彼までもが拉致されてしまうという、事態に陥るところが興味深い。妹の悦子の話に乗らなかった雄太郎も事の展開で、手を貸すことになるのだが・・・。

 

 

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0889.女子大生会計士の事件簿2

2008年06月04日 | 経済
女子大生会計士の事件簿2
読 了 日 2008/06/04
著  者 山田真哉
出 版 社 英治出版
形  態 新書
ページ数 192
発 行 日 2004/05/17
ISBN 4-901234-28-5

 

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の本の第1巻を木更津市立図書館で見つけて読んだのは2004年だから、もう4年も前のこととなる。
その後BOOKOFF袖ヶ浦店で偶然第2巻、第3巻を見つけて、続きがあったことを知ったのだが、まだ価格が高く、他に読みたい本も沢山あったから、買わずにいた。
しばらくしてから、同じ店に行ってみると幸い売れずにあったので、2冊とも買うことにした。
新人の会計士補と、女子大生ながら会計士の二人が企業の監査に際して、遭遇した事件の顛末を描いた連作作品で、短い中に企業会計の仕組みや、財務諸表の見方等、財務・経理全般の知識がわかり易く織り込まれており、エンタテインメントとしても楽しめる小品である。

 

 

昨年か、1昨年に著者の著した「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」という本が話題となって、テレビやラジオに出演したから、知っている人も多いだろう。

前作同様、本書でも会計士補の柿本一麻が女子大生会計士の藤原萌実と共に企業の監査を行いながら、傍若無人とも思えるような萌実の言動に振り回されながら、いろいろと覚えていくというストーリーで、会計に疎い人でも興味を持てるような物語の構成をとっており、楽しく読める工夫がなされている。
幸い?僕は1年に1度だが、社会福祉法人の内部監査を業務としており、興味深く読んでいる。

 

 

収録作
# タイトル サブタイトル
1 《競艇場から生まれた》事件 -領収書の話-
2 《不器用なエンゲージ・リング》事件 -売上金と借入金・貸付金の話-
3 「綺麗だね」と僕が言った!? -商品の評価の話-
4 《騒がしい探偵や怪盗たち》事件 -インターネットとインサイダー取引の話-
5 12月の祝祭 -数字の話-

 

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