隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

2070.血霧

2022年03月07日 | サスペンス

 

 

血霧
RED MIST
読 了 日 2022/03/03
著  者 Patricia Cornwell
訳  者 池田真紀子
出 版 社 講談社
形  態 文庫2巻組
ページ数 364/374
発 行 日 2012/12/14
ISBN 978-4-06-277435-2/277436-9

 

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にとってはシリーズ最新刊だが、発行日を見れば10年近くも前だ。積ン読本の消化はまあまあ順調に進んでいると言え未読の蔵書の数を考えれば左程順調とも言えなくなる。この読書記録を始めた切っ掛けともなった『検屍官』シリーズだ。その当時、今となっては信じられないほどの入れ込み様だったのに、月日の経過は僕をシリーズへの思いから解き放ってしまった。
それともう一つの要因は、ストーリーの進行やキャラクターの変わり身ともいえる変化の具合が、僕の興味を衰えさせたのだ。

だが、作者が僕の好みを察してストーリーを変化させるなどといったことは、全くの話あり得ないから、読者としては何をさておき、その変化をも飲みこんでいかなければならないのだ。
しかし、作者とは言え読者の好みを全く考えずにストーリーを考えているわけではないことが、キャラクターの動きなどに現れていることを知るのだ。例えば現在Dr.ケイ・スカーペッタの夫であるベントン・ウェズリーは、一度死んだにもかかわらず、途中で生き返っていることなどで、それと知れるのである。
世界的に翻訳されて、多くのファンを持つシリーズであれば、読者の望みも叶えられないわけではない、と言うことなのだろう。と、分かった様なこと言ったが、実際は僕は何も知らない。多分そうではないかと想像するだけだ。このシリーズが全世界(翻訳出版された国々の事だ)の多くのファンが、読んでいることは作者なら承知しているだろうし、そのファンに応えて物語を一層面白く、且つリアリスティックに進めていくことを目指すのではないか。

 

 

まだ上巻の半分ほどの所で、読みやすく感じたのは語り手が、ケイ・スカーペッタの一人称であることだと気づいた。確かどこかで、何巻目かは覚えてないが、三人称の語りになって、その辺から僕は面白さが半減したような感じがして、左程入れ込まなくなったのだ。
だが、ピート・マリーノとの会話で、彼に対する接し方を始めとする、ケイの独善的な態度と話し方は相変わらずだ、と感じる。随分と暫くぶりで読むシリーズ作品なので、前の巻のデータを振り返ってみたら、第14作目の『黒蝿』の所で、三人称の語り手になったり、ベントン・ウェズリーが生き返ったりしたのだ。 そんな古いデータを見たりしている内に、しばらくぶりで読んだにもかかわらず、何か懐かしい思いが浮かんできて、シリーズに夢中になっていたころの自分を思い返した。
読書の楽しみの一つはそうしたことにもある。いや、それこそが僕の読書なのだ。 ジェイミー・バーガーの企みにより、受刑者キャスリーン・ローラーとの面会で、彼女からメモを渡され、公衆電話でバーガーに電話するよう指示される。そんなことがあった後キャスリーン・バーガーが死亡するが、不審な点がいくつも重なって、スカーペッタを始めベントン、ルーシー、マリーノ達は一体となって謎に挑むのだった。

 

 

メリカの翻訳作品を読んでいると、店舗の名称が実在の名称を使っていることが多い。昔僕は2度アメリカ西部(カリフォルニア州)へチェーンストア研究のため訪れている。そこでディスカウントストア(D.S)のKマートやシアーズ、JCペニー、あるはウォルマートなど、またコンビニエンスストアのセブンイレブン、ファーストフードのマクドナルド、ファミリーレストランのビッグボーイその他いろいろとチェーンストアを見学して歩いた。
そんなことからたまに読んでいる作品の中で、知っている店舗が出てくると、親しみを感じたりするのだ。本書ではスカーペッタやべントン、マリーノ、ルーシーたちが日用品などを買い求めに出かける店舗に、ウォルマート(ディスカウントストア)が出てきて、僕はおやおやこのチェーンストアはまだ健在だったか、となんとなく嬉しさを感じたのだ。
先述のごとく僕が訪米したころには、ディスカウントストアの大手はKマートだったことなどを、思い浮かべて出来ることなら現在のアメリカ・カリフォルニアのチェーンストア群の発展具合を見たいなどと思ったりする。

ケイ・スカーペッタの僅かな違和感から、サバンナの監察医コリンを動かし、ルーシーにはコンピュータ能力を駆使させ、事に当たって意外な結末に至るのだ。僕がこの作品に惚れこんだのはケイ・スカーペッタを中心とした、あたかもワンチームともいえる集団が悪に立ち向かい、事件の謎を解決に導く過程だったのだと、ここに至って思い出したのだ。

 

 

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