隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

1001.首挽村の殺人

2009年06月29日 | 本格
首挽村の殺人
読了日 2009/06/30
著 者 大村友貴美
出版社 角川書店
形 態 単行本
ページ数 420
発行日 2007/06/30
ISBN 978-4-04-873784-5

 

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ばらくぶりで横溝正史賞受賞作品を読む。
スカパーのミステリードラマ専門のミステリチャンネルで、Mysteryゲストルームという番組を見て 、ゲストに招かれていた大村友貴美氏とこの作品を知った。
ミステリー文学賞の中では、割と古くからある横溝正史賞だが、いろいろと選考委員の変遷もあっ てか、選ばれた作品の評価もまちまちで、一時期僕も疑問視していたこともあった。
僕は評論家ではないから、ミステリー論をかざすつもりは毛頭なく、面白ければそれでよいと思っ ている。もう一つ、僕は先達の真似でも一向に気にしない。それどころか、僕は横溝正史氏の世界 を髣髴とさせる作品が好きだ。だから、岩崎正吾氏の、いかにもと言う感じの「風よ、緑よ、故郷よ」とか 、「探偵の夏あるいは悪魔の子 守唄」なども、面白く読んだ。
横溝正史賞-今は横溝正史ミステリ大賞-では、第1回の受賞作、斉藤澪氏の「この子の七つのお祝いに」 などは、タイトルからして、横溝正史氏の世界だと思って読んだ。単なる読み手としてはもっとこ ういった世界を書いて欲しいと思うのだが、そう思う選考委員はなかなか居ないようで、残念。

 

 

さて、と言うような事を長 々書いたのは、本書が久しぶりに横溝正史氏の世界を再現したかと思われるようなものだったから だ。前述のインタビューで著者による物語の出来た経緯や、梗概なども語られたような気もするが 、そんなことはすっかり忘れており、新鮮な気持ちでストーリーを楽しんだ。
岩手県の雪深い山村が舞台。鷲尻村という無医村の状態が続いていた村に、東京から杉聡一郎が赴 任して、無私の境地で村の医療に従事する杉の態度は、村人の篤い信頼を集める。しかし、そうし た状態は長く続かず、杉は熊に襲われたのか、崖下に転落死しているのが発見された。わずか半年 後のことだった。
気落ちした村人たちの前に現れたのは、滝本志門医師だった。短期間の契約とはいえ、後任の医師 を迎えることができたことを村中で歓迎した。だが、滝本医師が着任後謎の死が起こり始める。し かも、事故死や自殺と見えていた事件は連続殺人事件と判明する。古い歴史を遡り、貧しかった山 村の忌まわしい過去が見え隠れするような事件に、村人たちは戸惑うが・・・。

 

 

挽村という不気味な名前で呼ばれた鷲尻村の過去と重なるような事件の発生と、滝 本医師やその妹などがどう関わっていくのか、という興味と、事故死としか見えない杉聡一郎の死 は殺人だったのか?という謎等々が胸躍る展開を見せていき、探偵小説の面白さを実感する。
この小説の面白さは、終盤になって判明するもう一つの謎?にもあって、そこが古い探偵小説とは 異なるところだが、しかしこれは正に推理小説やミステリーではなく、探偵小説の面白さだ。

 

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