隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

2079.聖母

2022年05月26日 | メディカル
聖母
読了日 2016/04/15
著 者 仙川環
出版社 徳間書店
形 態 文庫
ページ数  
発行日 2010/12/15
ISBN 978-4-19-893272-5

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

のところ、テレビを見ることに集中して、読書がおろそかになっている。元来僕はテレビを見ることに、それほど熱意を持つことはなかった。いや、スポーツ観戦などに熱を入れることはあったが、いつでもその場限りで、熱心になることはめったになかったのが、最近は新型コロナウィルスの為でもないだろうに、テレビ番組を夢中で観るようになっているのはどうしたことか?
すっかり年寄りになって、いささかすべての事に面倒さが付きまとい、出来るだけ手間のかからないことをし ようとしているのかもしれない。いらぬ自己分析をしても仕方がないが、それでも寝てばかりいてもしょうがない。
最近夜更けまでテレビを見るから、昼間眠くなってわずかな時間ではあるが、寝ることが多くなっている。
いずれテレビにも飽きて、読書を開始すればそんなこともなくなるだろうと、気楽に構えているが、つい先頃から、この読書記録を出来るだけ体裁の良いものにしておこうと、見直している。
ブログに投稿しているのとまったく同じ体裁で、ワードのファイルに保存しているのだが、中には不完全なものもあり、たまに振り返って直したり追加したりしているが、何しろ数が多いから少しずつ手を加えると言っても、大変な作業になる。
1週間ほどその作業に集中したお蔭で、どうやら一応の体裁が整ったところだ。

 

 

 

ところで、その夜遅いテレビ番組を観ていてその番組が終わると、今まで知らなかった面白そうな番組が続いて放送されることに気づいて、寝るのを少し遅らせることになるのが今の状況だ。
「何でこんな遅い時間に、僕が面白そうだと思う番組を流しているんだ?」そう思いながらも引きづられるように,僕は見続けるのだ。そして翌日の昼間に眠くなって、時々横になって寝てしまうことが多くなる。
ということで読書も思うように進まなく、このブログも半分休止状態なのはそういう訳だ。
新年度の番組編成で始まったと思われる“ヒューマニエンス(HUMANIENCE)”という、番組に嵌っている。HUMANとSCIENCEを組み合わせた和製英語がタイトルの、人間科学ともいうべき番組が、毎回テーマが示されて、その道の専門家や著名人をゲストに迎えて、MCを務める俳優の織田裕二氏とNHKのアナウンサー藤井彩子氏、井上あさひ氏と共に討論や推論を重ねてテーマの意味するところや、真実を引き出すことを目的?としている。
僕が見始めてからは、観ているこちらにも関連するテーマだから、“死”、“がん”、“ウイルス”、“皮膚”、“自由な意思”、“天才”などがテーマに選ばれている。

 

 

えば、“自由な意思”の時には「それは幻想なのか?」という副題がついていた。我々が何かするときに、自分の意志で行っているように思えることが実は、そうではないことが専門家の研究により分かったというのだ。そんな驚きに満ちたテーマと付随する理論に、ただただあっけにとられるような気分にさせられる毎回の事だ。

本書は表紙カバーの裏側の解説には、代理出産を巡る話のようだ。
僕の“代理出産”への理解は、単純に子供のできない夫婦の思いをかなえるために、代理の母を迎えるくらいにしか思っていなかったのだが、いろいろと難しい問題もはらんでおり。僕のように単純に考えることは出来ないようだ。

初めて著者の作品に出合ったのは2006年だから、早くも15年が過ぎ去った。当時は医学、医療関連の作品に心を寄せていた、と言うこともあって光文社文庫でシリーズ作品のような形で刊行されていた『感染』を始め続けて、『転生』、『再発』、『繁殖』と続けて読んでいた。
著者は特に医療関係の人ではないが、大阪大学大学院の医学系研究科の修士課程を修了しているにもかかわらず、医療関連に進まなかったのはなぜだろうと思うが、彼女の考えについては不明だ。
まあ、人にはそれぞれの人生哲学がある。一読者の僕があれこれと思い煩うことではない。
本書はホスト・マザーと言う副題が付けられているが、タイトルからその真意をくみ取ることはできない。内容も類推できないまま僕は著者の作品の面白さに賭けて買ったのだ。第1章の途中までは子供を欲する女の我儘がこれでもかと思えるほどに表に出ており、これは僕の好みと違うかな、そんな思いを持ちながら読み進めると、次第にそのテーマが僕の読書欲につながるように、先へ先へと急がせる。

 

第三章制母

収録作
# タイトル
第1章 生母
第2章 凄母
第4章 清母
第5章 聖母

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


2078.家族

2022年04月25日 | リーガル

 

家族
読了日 2021/11/27
著 者 小杉健治
出版社 双葉社
形 態 単行本
ページ数 280
発行日 2009/05/17
ISBN 978-4-575-23658-3

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

ばらくぶりの小杉健治氏の作品だ。好きなジャンルの一つであるリーガルサスペンスを多く手掛ける著者の作品が、僕を魅了して結構たくさん読んでいる。本書で25冊目となるから、一人の作家の作品を20冊以上読んでいるのは、それほど多くはないはずだ。
僕は惚れこむとその作家の作品を追求することが多く、続けて読むことはそれほどでもないが、機会があるたびにあるいは思い出す都度、読むことが多い。今はため込んだ本、大部分が積ン読になっている本の消化に夢中になっているから、続けて読むことはないが、出来るだけそんな中でも同じ作家の本を探しては読むことにしている。
読むつもりで買ったのに、読まずに積ン読になっているのはどういう訳か、確たる理由があるわけではない。自分の手許に有ればいつでも読めるということなのだが、目に余るほどの情報が絶えず身近にあって、買ってきた本より面白そうな本のタイトルが目に入り、思わずそっちの方に気を取られて買ってきた本は、忘れ去られる。
大部分はそんな所で積ン読本になってしまうのだ。

 

 

最近は小杉健治氏の作品は時代物が多く、リーガル作品は少なくなっているようで、なんとなく淋しい思いでいるが、考えてみれば(リーガル作品が)出てくるたびに読んでいるわけではないから、僕の我儘な考えかも知れない。
さて、本書はホームレスの男が盗みの目的で住宅に侵入し、老女を殺害した疑いで逮捕された、そんな所からスタートする。男は容疑を認め、裁判員裁判が始まるが、裁判員の一人である谷口みな子は殺害された老女の息子がホームレスに依頼した、嘱託殺人ではないかと言う疑いを持っていた。
ここで、裁判員制度について少し。この制度が実施されたのは平成21年5月からだ。一般市民が不当な扱いや自由や権利を奪われることを防止するために制定された制度で、選ばれた裁判員は裁判官とともに、有罪、無罪を決定し、有罪の場合はその量刑を考えるという仕組みだ。
無差別に選ばれる裁判員だが、仕事に不都合があったり家庭の事情により、裁判に参加することが難しい場合もあり、裁判員の選定も一筋縄ではいかないこともある。本書ではそのあたりも描かれて興味深い。

 

 

杉氏の作品だけでは無いのだが、公判の進み具合により次第に明らかになる、複雑な人間関係に胸が躍るほどの面白さを感じさせる。リーガルサスペンス―裁判劇の真骨頂がそこにあるのだ。本書では最初から事件の容疑者が犯行を自白しており、それが事実ではなく真犯人がほかにいるのではないかという疑いを持つのだが、話が進むにつれてその辺がどうも本当らしく思われてくる。
だが、事件の真相がもっと他の部分に有ることが・・・・。

話は違うが最近僕はテレビ番組を観ることが多くなり、夜更かしが多少多くなった。前にも少し触れたことがあるが、ビデオレコーダーが壊れたために、録画して翌日昼間に見る、ということが出来なくなったからだ。
その代わりリアルタイムでテレビを見ることが多くなって、録画しても観ることのないことが少なくなったのだ。そのうえ見ることに熱心になったことも確かで、気づくと夢中で観てることが多くなった。
そんな中でつい近頃始まったNHKの連続ドラマに嵌っている。辻堂ゆめ氏の『卒業タイムリミット』だ。1回15分という短いドラマだが、タイトルの如くタイムリミットに迫るストーリーだから、毎回ワクワクさせられながら観ている。
ドラマは予定では24回まであるそうなので、じっくりと観賞するつもりだ。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


2077.復讐の時間割り

2022年04月01日 | 警察小説
復讐の時間割
読了日 2021/12/14
著 者 和久峻三
出版社 角川書店
形 態 文庫
ページ数 244
発行日 1987/11/10
ISBN 978-4-04-142175-6

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

がこの本を買ったのは平成になってからだと思うが定かではない。だが、昭和62年(1987年)の発行と言う文庫は420円の定価の印刷があり時代を感じさせる。藤田まこと氏の当たり役で20作以上のドラマにもなった「京都殺人案内」と言うシリーズ作品の1冊で、僕はドラマの藤田まこと氏の演技に惹かれて原作を読む気になったのだ。と言うのはかなり前の事で、最初に読んだのは2005年の『死体の指にダイヤ』、続いて2009年の『妖星のいけにえ』だった。
ドラマは全作見ているが、残念ながら原作のドラマ化は少なく、ほとんどはキャラクターを借りたオリジナル脚本だったが、藤田氏の当たり役と書いたように、彼の演技は独特のキャラクターと醸し出される雰囲気が、ドラマをリアルに見せていた。
が、例によって僕はまだ原作の一部しか読んでなくて、シリーズは新シリーズになっているが、旧シリーズにも未読作品がいくつか残っているはずだ。いつ来るか分からない“いつかその内”読もうと思っている。
本書は表題作と、“夕顔の女”との2編が収録されており、1篇が半分くらいだから中編集と言えるか。確か表題作の方がドラマになっていたと記憶しているが、僕の記憶はあてにならない。

 

 

 

先述のようにドラマは大部分がオリジナル脚本によるものだから、本編のドラマ化はどれかあまり明確ではない。ドラマのエンドロールを詳細に観れば、分かるのだろうがそこまで確かめたこともないから、まあ、分からなくても何の支障もない。
昭和のスターたちは次々と姿を消しており、藤田まこと氏もその例外ではなく、2010年2月大動脈瘤破裂でこの世を去った、享年77歳。今の時代だからまだシリーズの新作が期待できたのに残念だった。
“てなもんや三度笠”に出ていた頃の、ひょうきんな演技からは想像できなかった刑事役は、リアリティに溢れる適役と思われた。

読んだ順にブログに登録できていない。本の内容を忘れたり、うろ覚えだったりして、中にはもう一度図書館に資料の貸し出しを求めたりするから、順不同になってデータの管理が難しくなっている。本書も昨年末に読み終っていたのだが、遅くなったのはただ単に文章が書けなかっただけに過ぎない。
もうしばらくは順不同の状態が続く。それでも順不同は僕だけの問題で、ブログの読者には関わりのないことだから、気にせずに読むだろう。

 

 

し雲が広がっているが、当地方木更津方面は少し晴れ間もあって、穏やかな日差しが降りそそいでいる。(昨日3月31日の事だ)春本番と言った陽気はなんとも言えず、心穏やかにしてくれる。今年の女子プロゴルフのテレビ中継は、今までと異なり時間が長くとられて、観戦者を喜ばせている、例えば今回3月31日に開催されるヤマハレディースオープン葛城は、4月3日までの4日間行われるが、3月31日の13時55分からテレビ朝日で放映されて、全4日間の競技が放映されるのだ。
こうした試みは従来日本女子オープンゴルフ選手権のみ、NHKで行われていたと記憶している。今期3月3日に始まったヤマハレディースオープンは初日のファーストラウンドは放送されなかったが、セカンドラウンドから最終ラウンドまでの3日間は放送された。
別に視聴者優遇のための方針に変更したわけではないだろうが、一観戦者としては誠にありがたい。特に贔屓の選手のみならず、成績の上位選手の活躍の行方を観ることが出来るのは嬉しいことだと、こうした番組編成を歓迎する。

 

収録作
# タイトル
1 復讐の時間割り
2 夕顔の女

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


2076.流浪の月

2022年03月30日 | サスペンス

 

流浪の月
読了日 2021/11/10
著 者 凪良ゆう
出版社 東京創元社
形 態 単行本
ページ数 313
発行日 2019/08/30
ISBN 978-4-488-02802-2

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

れる春場所と言われる大相撲が3月27日に千秋楽を終えて、新関脇の若隆景が優勝の栄誉に輝いた。
過去何度も優勝直前までのチャンスを逃していた、好敵手の平幕高安は今回も若隆景のしぶとく、相撲攻守ともいえる戦術に惜しくも優勝を逃した格好だ。
これで来場所は好むと好まざる(ことは無いだろうが)とを問わず、若隆景は上位である大関を目指すチャンスの場所となり、今場所休場中の横綱・照ノ富士も登場?するから、新たな魅力に満ちた大相撲夏場所となるに違いない。楽しみに待つとしよう。

時々寒の戻りかと思う肌寒い日があるが、スポーツの世界はいよいよ春本番という時期が来ている。僕の好きな女子プロゴルフは、先週第4週を終えて早くも西郷真央プロが開幕戦に続いて、2勝目の栄冠に輝いた。
アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI 2022は天候不良のため、2日目が中止となり、36ホールの戦いとなり、ファーストラウンド7アンダーで首位だった鈴木愛選手は、最終日イーブン72でトータル137と3位タイに終わった。
前期は上位に姿を見せることが少なく、資生堂 レディスオープンの1勝に終わっていたから、今期の活躍を期待していたのだが・・・・。勝負は時の運(もある)仕方がない。

 

 

センバツ高校野球が終盤戦になって、ベスト4が次々と決まっている。我が木更津総合は残念だが、25日大阪金光に4—3で敗れた。その大阪金光は準々決勝で滋賀の近江に9―1で敗れ、ベスト8にとどまった。関東勢では、国学院久我山が星陵を4-2で下し準決勝に臨む。

新聞や雑誌その他で何度も目にするタイトルは、次第に気に合って読んでみようかという気になる。僕は書評などはそれほど気にしないたちだと思っていたが、読書好きにとってはやはり世間の評判は、気になるものだ。
ということで何回か図書館の貸し出し状況を見たが、人気が高くその都度貸出中の表示が出ており、借りることが出来なかった。地方の小さな図書館は蔵書の数量も少ないから、順番が回ってくるまで時間が掛かるのが難点だ。
以前は発売前にAmazonなどで図書データを確認して、予約カードを自分で印刷して提出するなどしたこともあったが、最近はそうした準備も面倒になり、予約の順番が来るまでゆっくりと待つことが多くなっている。
この本もようやく順番が回ってきたが、僕の後にもまだよやくを待つ人は少なくない所を見ると、人気の高さが分かる。
本当は、僕の理解力が少し高いようなら、新聞雑誌等の書評や読者の感想などで、内容を類推出来て読もうかどうしようかを判断するのだが、特に最近は何しろ読んだとしても、理解できないことも多いくらいだから、そうしたことで判断することはしていない。

 

 

容を忘れて、主人公の名前もどんな人物かももちろん分からなくなっているから、もう一度図書館にオンラインで予約をして借りてきた。自分では認知症予備軍などと思っており、ここにも同様の事を何度か書いているが、いよいよ予備軍から本物になって来たのかと、半分恐れる気持ちが湧いてきている。
しかし、本物になればそうしたことは自分では分からないのだから、まだ本物ではないのだろう。と、少し安心する、が、終わりの方を少し読んだら、何とか思い出してきた。そんなことは珍しい。普通読み返したりするときは、前に読んだ内容を思い出せないことが多く、1冊の本で2度楽しんだ、などと負け惜しみを言ったりすることが多いのに。

少し思い出したことに従って書くと、世の中は分からないことが多くて、分からないままいろいろと分かったようなことを言ったりする人が多いのだということが、今頃わかってきた。
いや、それで内容を思い出したと言えるのか?と、言われそうだが、その内容をここで書くことは、ネタバレになってしまうから、詳しくは書けないのだ。この本を読んだ人はそういえばわかるだろう。
事件の犯人と目されている青年と、被害者とされている少女の詳細は、なかなか世間一般には理解されることが無いだろうが、そもそも事件そのものが事件として成り立っていないことが、理解されないということに、やるせない気持ちを引き起こすのだ。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

 


2075.暗闇の囁き

2022年03月28日 | サスペンス

 

暗闇の囁き
読了日 2021/11/24
著 者 綾辻行人
出版社 祥伝社
形 態 文庫
ページ数 361
発行日 1994/07/20
ISBN 978-4-396-32384-0

 

上の著者名をクリックすると、今まで読んだ著者の作品一覧へ移動します。

 

月20日に弟といすみ市大原に行ってきた。我が家の墓は、かつて父が達者な頃建てたもので、まだ夷隅郡大原町だったころ、大原町貝須賀の瀧泉寺境内は田舎の寺らしく、閑静な場所なのだが、木更津からは何しろ遠くて、ちょっと墓参りとはなかなかいかなくて、無沙汰になりやすい。
それに親が在命の頃は行くことも多かったのだが、亡くなってからは借家も返したから、めったに行くこともなくなってしまっている。まして僕の身体の具合や、車もなくなったことから、余計に足が遠くなっている。
そんな僕の心配をして、弟が様子見方々墓参りを計画したのだ。
しばらくぶりに会っての話は、お互いの加齢による身体の不都合が主な内容だったが、僕と4つ違いの彼は個人タクシーの営業をしており、今年9月の誕生日で79歳になる。
「タクシーの営業もあと1年か2年だな」というが、まだ運転の腕前は長年の経験から落ちてはいないようだ。行き返りの道中はお互い歳をとって、体の不調や物忘れの不便さなどの話題が多かったが、たまにしか会えないことから、顔を見るだけでも癒されるような気がして、兄弟も良いものだと感じたのだった。

 

 

いつの事だったかは忘れたが、この本は僕の娘が処分するためにひもで縛った中から取り出した1冊だ。タイトルに惹かれる響きを感じての事だ。オーストラリアの作家・パトリシア・カーロン氏の『ささやく壁』が安楽椅子探偵譚の傑作として、頭に有るから僕は“囁く”という単語に単純に敏感になっているのだろう。
だが、そうした僕の思いとは全く関わりなく、本書は著者の囁きシリーズ全3巻(緋色の囁き、暗闇の囁き、黄昏の囁き)の内の1冊だった。
僕の本に関する知識はまことにお粗末で、いや白状すれば本に関してのみならず、一般的な事柄に関しても世間知らずだともいえるだろう。毎日テレビでニュースは欠かさず見ているが、僕の場合はただ見ているだけで、しいて理解しようとはしていないから、どんなことが起きているかと言う位で、実際には世の中の動向を理解している訳ではないのだ。
というようなことだから、読書も余り役にたっていないようだ。何しろ忘れることが多いから、2冊前の本の内容が思い出せないくらいで、主人公の名前さえ覚えていない。
さて、本書の著者・綾辻行人氏は本格ミステリーの著者として知られており、僕はそのつもりで読み始めたのだが、僕が思っていた本格ミステリーとは少々趣が違っており、ちょっと戸惑いを感じたのだ。

 

 

っていたのと違っていようと何だろうと、どうせ金を出して買ったものではないから、誰に文句の言いようもなく、僕の好みに合ってなくても読み続けようとページを繰る。
第1章誘いの園から始まって第9章祈りの朝へと向かい、終章で終わりを告げる物語は、先述のように僕の好みから外れているので、僕の理解力は働かず、つまりはあまり面白さも感じなかったのだ。と言って、客観的にこのストーリーが面白くなかったということではない。
僕はしばしばこうした面白さを感じられない本を読んできたが、たまたま僕の体調不良により、じっくりと味わうことが出来なかったのかもしれない。今までにそういった経験がないわけではなく、時間が経って再度読み返して、味わえなかった面白さを発見したことも、一度ではない。
だから好みに合わなく、面白さを感じられない本も機会があればもう一度読み返すチャンスを得ようとするのだ。しかし、面白さを感じなかった本が、全てそうして読み返した時、面白さを再発見するとは限らないから、難しい。

 

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村