隅の老人のミステリー読書雑感

ミステリーの読後感や、関連のドラマ・映画など。

0409.卍の殺人

2003年07月24日 | 本格
卍の殺人
読了日 2003/7/24
著 者 今邑彩
出版社 東京創元社
形 態 単行本
ページ数 268
発行日 1989/11/20
ISBN 4-488-02323-1

 

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2月に読んだ「金雀枝荘の殺人」(338.参照)が面白く読めたので、著者のデビュー作を読もうと思った。
東京創元社の「鮎川哲也と13の謎」という企画で、一般公募の13番目の椅子を獲得した作品である。12人の既成作家の作品と一般から公募して13編目を選ぶという方式は、その昔、講談社で刊行された「書き下ろし探偵小説全集」で行われた方式と同じで、そのとき一般公募に応募して選ばれたのが鮎川哲也氏の「黒いトランク」(307.参照)である。
小遣いに不自由する高校生だったその当時の僕にとって、この講談社の「書き下ろし探偵小説全集」は思い出深く、全巻揃えるのは到底無理だったが、何とか小遣いをやりくりしながら高木彬光氏の「人形はなぜ殺される」(200.参照)とか、島田一男氏の「上を見るな」(80.参照)、江戸川乱歩氏の「十字路」(221.参照)などを買ったことを思い出す。勿論「黒いトランク」も手に入れた。金ぴかの装丁に、黒い箱入りの全集を手にするだけで、胸が躍ったものだ。

話が横道にそれたが、本書の内容は、語り手の「私」こと脚本家の萩原亮子が、恋人のイラストレーター・安東匠の故郷、山梨県の実家へ同行することになるのだが、彼女を迎えたのは殺人事件だった。
匠の実家は、ワインの醸造も手がける資産家で、彼は安東家の当主・安東いつの長女・祝子の養子だった。家を出て東京でイラストレーターとして暮らしている匠に、最近になって当主のいつから、家に帰り従妹の布施宵子と結婚し、家業を手伝わないなら養子縁組を解消する、と言ってきたのだ。
「私」と匠が屋敷に着いたその晩、従姉の布施品子とその夫隆広が殺されるという事件が起きた。屋敷は卍の形で建てられており、安東家と、布施家-当主いつの二人の娘の家族-の二家族が住んでいた。館物独特のトリックが仕掛けられているが、人物像が良く描かれており、デビュー作らしい力作という感じだ。




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