なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

食道癌

2018年02月01日 | Weblog

 昨日、地域の基幹病院の腫瘍内科医から連絡が来た。昨年11月に当院に紹介された74歳男性が、救急搬入されたという。ベットがないので当院で診てほしいということだった。

 6年前に食道癌と診断されて、大学病院で手術を勧められた。手術は拒否して内視鏡治療になったが、SM癌だった。その後、食道局所再発・肺転移・縦隔リンパ節転移をきたして、放射線化学療法を勧められた。化学療法はことわって、姑息的な放射線治療のみを受けた。その後緩和ケアのみという方針になったそうだ。

 昨年の紹介状には、終末期の緩和ケア病棟入院は希望されず、貴院(当院)での終末期までの治療を希望されたのでよろしく、ということだった。緩和ケア病棟は2週間以内の入院で、オピオイドの調整をするだけとも聞いている。終末期数か月の入院は避けたいという事情もあったようだ。

 詳しくは聞いていないが、妻子は東京に住んでいて、15年会っていないそうだ。癌治療の選択からも何となくわかるが、どうも何でも自分の思った通りにしないと気が済まない方のようだ。語り方も変にエネルギッシュな印象を受けた。聞いていないことも、次々に喋ってくる。個性的な方だった。外来で経過をみて、病状が悪化した時は入院する方針で同意された。家族は来ませんということで、DNRの書類にはご自分でサインされた。

 今回は紹介時からあった胸水が増量して、呼吸困難になっていた。家族は電話での連絡だけはしていたらしく、その日たまたま電話をしたら出ないかった。民生委員などに連絡がいって、係りの人が自宅に様子を見に行った。呼吸困難で苦しそうにしていたので、あわてて救急要請をしたのだった。

 後で確認すると、救急隊から最初当院に連絡がきていた。「全身の浮腫で呼吸困難、酸素飽和度を保つのに酸素投与10L/分を要する」という報告だったので、救急当番の先生が「重症心不全なら循環器内科のある基幹病院に搬送するように」と指示していた。

 「症状は癌性胸膜炎の悪化で、すでにそちらに紹介したはずですが」という雰囲気も伝わってくるので、そのまま当院に送ってもらうことにした(長い入院は当院にお任せください・ベットも空いています)。当院搬入時、座位になると酸素投与6L/分で酸素飽和度は95%だった。

 今日東京から家族が病院に来た。「急変時に連絡されてもすぐには来れません」ということで、連絡はするものの、夜間などは当院の方で死亡確認して翌日の家族の到着を待つことになった。ずっと別居している事情は訊けなかった。

 緩和ケアは大津秀一先生流で行っている。最近大津先生の「間違いだらけの緩和薬選びVer.3」を購入したばかり。

間違いだらけの緩和薬選び Ver.3 費用対緩和を考える

 

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