Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

自句自解(20) 再入院

2010年03月22日 09時35分00秒 | 俳句・短歌・詩等関連
 再入院
木枯し吹く入院前の夜を徹し
治癒遠く落葉寄せ来る再入院
救急の受付ひそと息白し
時雨来る山茶花の葉を鳴らしつつ

 2003年末、下痢が再発し4度目の投薬入院と宣告され、12月の中ごろから大晦日まで入院した。4度目の「またか」という先の見えない暗澹たる思いが続いた二週間、もっともつらい気持ちの入院であった。半ば「もうどうにでもしてほしい」というも投げやりな気分も強くなった。
 病院へ向かう途中、風がつよく落ち葉が足元に寄って来たが、それに埋もれてしまいそうな、あるいはその枯れ葉に押しつぶされてしまいそうな幻覚を覚えた。
 しかし病棟では幾人もの入院手続きに訪れた高齢者たちが、もくもくと白い息を吐きながら玄関をくぐっていた。無言の行き交いの中に冷気と緊迫感がありつつも、それを日常性の中にひそやかに収めている淡々とした表情であった。不思議と暗い沈んだ気分から、海の底の底流のように静かであっても確かに流れているものに身を任せる気分になった。
 四句目、時雨と山茶花の季重なりのくだが、時雨が主ということで、俳句誌の主宰は「気にならない」と評価してくれた。時雨の音、山茶花の硬い葉に響いてくれないと、この句は成り立たない。病棟のガラス越しに見つめる大粒の時雨の音は微かな音だが、はっきりと聞こえた。