せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

2019年4月1日(月)15時~内装木質化店舗の一般公開

2019年03月29日 | 森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト


お花見シーズン到来ですね。
横浜でも、熊本でも桜咲き、嬉しい限りです。

春のお出かけに、ピッタリのイベントをご紹介します。
柿本美樹枝が設計、木材コーディネートをさせていただいた

くまもとの木の空間支援事業の
店舗内装木質化、一般公開を行います。

2019年4月1日(月)15時〜

熊本県宇土市の店舗
美容室「パンタレイ」(万物は流転する)にて

春休みイベント
腹話術による「木育のお話し」
が開催されます。

参加費は無料です。
小さなお子さんもどうぞ。

初めての方には、カットの割引券も配られます。
春の気分一新、髪型を変えたいなぁと考えていた方にも
チャンスです。

普段はお客様しか入ることのできない、
木の癒し空間をぜひ体験してください!

旧吉田邸に日本建築の粋をみる、建主の器が、建築の器

2019年03月25日 | 日本民家再生協会・伝統建築・造園


建築家 故吉田五十八による近代数寄屋と
言われる大磯の旧吉田茂邸。迎賓館としても使われた私邸。

有名な建築であるにもかかわらず、
神奈川に越してきてから拝見せずじまい。

そのうちに、なんと火災に遭い、
再建後、平成29年に一般公開されました。
(すでに、来訪者は、昨年、10万人を突破したそうです。)

この度、神奈川県建築士会の中支部の皆さんが
見学会を、ガイド付きで企画してくださり
やっと、重い腰を上げて、伺うことができました。

昨日は、小雨も降り、肌寒い1日でしたが、
建築士の皆さんの、建築に対する情熱は熱く、
見学会は大幅に時間オーバー、笑。



ベテランのガイドさんは、建築の造詣が深く
建築士相手ということもあり、建築素材の材質からお値段、
ディテールまで、解説が及び、学びの多かった1日です。

一般公開で建物以外は無料とあり、
ここの庭園の素晴らしさは、
多くの方がブログにアップされているので、省きます。

ここでは、マニアックな話を綴ります。
全体像も写真、撮ってません、笑。

まず、目を引くのが兜門。トップの写真

消失を逃れたとだけあって、趣もそのまま。
お値段は一般住宅が10棟建つ程だそう。

その檜皮葺(ひわだぶき、ひはだぶき)が美しくて。
木材フェチには堪りません!



中のカーブに切り取られた形は、
大きな傘をかけて、要人を迎えるためであるとか、

杉の一枚板戸であるなど、
ガイドさんの解説が、建築心をくすぐります。



ロータリーの樹種や花の意味まで
詳しく解説してくださいました。

木部も、細かく面取りされていて、
感嘆の声が漏れます。



建築マニアでなくとも、建築美や、こだわりの部分などは
少なからず、心打たれると思います。



ガイドさんが付いていてくださったのが良かったのは
復元前もご存知だったこと。

なんとなく、アプローチに違和感を覚えていたら
実は玄関はもう一つあったが、復元されなかったそう。
それを聞いて、合点がいきました。

それから、日本建築の究極である兜門の目線の先にある
洋風のヤシの木。不思議な感じがしていたのですが
これにも理由がありました。

ここに配置するかは、庭師も最初は躊躇したようです。

しかし、この木が、吉田茂が、
外交官時代に海外から贈られたものであり、
大切な樹木であることから、堂々と植えたのだそうです。

彼の生き様を、表す庭園なのですね。
鯉が泳いでいない池も、華美になるのを控えたのだとか。

まぁ、ガイドさんのネタは、尽きないので
この辺にしておきます。

大きな収穫は、建主の哲学、思想、生き様は
建築や庭の造りに現れるということ。

建主の器の大きさが、そのまま建築の器の大きさになるのだなぁ。。。

実現に向けて、建築家は苦労するというよりも、
ちゃんと翻訳できるかどうか。。。

庭にこだわった建主の建築から見える景色も建築の一部


ダイニングからは、人工の滝も見える


吉田五十八の前にも多くの建築家が関わり
吉田茂のわがままには、
うまく行かなかったエピソードも残されているようです。

やはり、ちゃんと要望、志向を把握して
ちゃんとディテールを考えて、
ちゃんと建主の満足の行くものを創らなくてはねぇ、と肝に銘じます。

ステンレス製の細い御簾


真珠の粉を混ぜた襖紙。文様が薄く浮かび上がって。


いつも、依頼主の大事な費用を使う先の建築であり、
内装であり、外構であるのですから、

そのことは心がけて来たつもりです。

それでも、もっと、もっと、
その方の奥深くにある希望や未来
そういったものも、引き出せたら良いなぁ。。。。

と、大御所建築家の、大物政治家の建築に触れて
改まった気持ちです。

自分自身は、足元を見据えたい気持ちが強く
浮ついたつくりは出来ないけれど
広く、長く、万人に愛される建築づくり、が目標です。

この旧吉田邸が再建できたのも、
市民に広く愛されてきたからこそだなぁと、
再建の経緯を伺ったりことと、
ガイドさんの熱の入り方にも感じます。
(ガイド仲間での建築解説談義も大いにされるそうです)

歴史的な建物を見学すると、残る建築、残らない建築、
生かされる建築、生かされない建築の差

いつも考えてしまいます。

お城にしても、個人の邸宅にしても。

その建築の社会性、公共性みたいなものが、、、
備わっているかどうか

その辺りも、もしかしたらポイントではないのか?

と、先日の個人の邸宅を文化財まで引き上げる修復工事と
今回の再建を拝見して、考えました。

見学会の後は、残った有志で、
海水浴場発祥の地と言われる大磯の歴史や
切り通しの道路を隔て、旧吉田邸と反対の敷地にある

三井家の別荘地であった、今は解体されて立っていない建物の
木組みを、資料館で拝見したりして、
大磯の建築のことが、少しは分かったような気になりました。

久米式耐震木造のモデル。


駅近の洋館は、レストランとして、活かされています。


こちらも次回ぜひ、中に入りたいものです。

また、季節を変えて訪れたいですね。

やっぱり、ステンレスフェチです。

2019年03月22日 | ものづくり


自宅のガスコンロ取り換えました!

ショールームとカタログで、
いろいろと検討した結果、
やっぱり、ハーマン(現ノーリツ)のステンレスにしちゃいました。

外して、再ビルトイン。1時間ほどで完成。


うん、やっぱり、ステンで良かったかも。

パートナーも、前からあったみたいだねって。
確かに、馴染んでますね。

がしかし、
五徳も、ダッチオーブンも鋳物製で、重いです。
数キロあります。



箸より重いものを持ったことがない女子には
お勧めできません、笑。

取り換えてくれたのは、新築時の設備屋さん。
あの時は、丁稚で来てましたって、立派になられて!

休日の中、昨日、設置してくださいました。
ありがとうございます。

この「ステンのパンチング蓋を覚えてます。」
だそう。

ステンレスに穴あけした
パンチングメタルのコンロ蓋。



かなり、マニアックな設計になっています、笑。
ガスコンロが、車の後ろの荷台のダンパーで開くイメージ。

多分、この先にも後にもないデザインかと(実験だから)

職人さんも神業でしたからね。
ステン加工の最高峰と付き合いがある
工務店さんだから出来たことかもしれません。

このコンロにしたのは、

「今の省エネ基準では高火力新商品を作れないので
廃盤にしない!」とメーカーが宣言してくれたから。

これだって、もうすでに、ロングセラー商品。

部品取り換えで、今度こそ、一生使える!?
丁寧に、しっかりと使っていきます。

どうして、そんなにステンにこだわるかって!?

重曹で(←中性洗剤ではなく環境に良い)で汚れが落とせる
ぶつけても、傷が入りにくい。もちろん熱に強い。
錆びにくい。そして、抗菌性でしょうか。

その抗菌性で「医者はステンレスのキッチンを選ぶ」って、本で読んだことがあります。
決まっているわけではないです。傾向にあるってことでしょうね。

天板に落とした食材だって、拾って、
鍋に入れちゃいますもんね〜ハハハ。

新アイテム、ダッチオーブンを使いこなせるかどうかは、
私次第ですね。



ダッチオーブン、一時期流行りました。
その味の美味しさは、アウトドアで食べて知ってます。

子どもは、新アイテムにワクワクしてます。
私は慄いてます。

ちょいっと、レシピの勉強しましょうか。
慣れれば簡単なはず。
勝手にガスが調理してくれるから、笑。

お試しは、まずは、お菓子か、パンかなぁ。。。
また、ご報告します。

これからどうなる!?、森林環境税と、日本の山

2019年03月21日 | 森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト


「地域のおける民間部門主導の木造公共建築物など整備推進」

先日、残念ながら体調を崩して、伺えなかった表題の「成果報告会」。」
主催者が当日の配布資料を郵送してくださいました。
ありがとうございます。感謝です。

資料を拝見してのレポートをまとめます。
ですので、今日は写真が報告書の一部です。

林野庁の助成事業で、
地域の公共建築物を木造、木質化するための
企画、設計段階からの
技術支援が行われています。

その全国の事例紹介とともに、成果を報告するという会でした。

審査や支援体制の委員長は、建築士会の会長でもある三井所先生、
委員には東大名誉教授の安藤先生など、木造といえばこの方!
という専門の大先生が名前を連ねていらっしゃいます。

支援を必要とする団体と、技術アドバイスできる支援団体と
その両方の成果のようですね。

私自身は、現在公共施設は手がけていないので
具体的に補助事業を活用はできませんが、

熊本の五木村で、五木材を活用を事業化するときに、
補助事業を受けたと聞きました。

地元の設計事務所がコンサルタントが入ったおられたので
多分、この制度の支援を受ける側が前者が、五木村。
コンサルの方が後者、専門的技術者、に該当するのでしょう。

そして、その両方から呼びかけられた当事務所は、
会費を払って、五木村を活用する協定者という形になっています。

会費を払いつつ、活動をボランティアで行い、
自腹でアピール活動もするという立場ですけどね。

少しでも、熊本の山の環境が良くなればの想いで関わっています。

ですので、補助事業が、
概ねどのような制度なのかは、理解できます。

報告会の中身はというと、
広島、高知、埼玉の事例紹介だったようです。



広島も積極的に活動されているのは、
建築のニュースにも流れてきました。

高知は、木造、木質化の
最先端をいく県と建築業界でも認識されてきています。

埼玉は、映画「飛んで埼玉」の大ヒットで、
自虐ネタをモノともしない、その県民性がおおらかである
ということが、話題になっていますね。

(建築ネタではありませんが、映画の原作者の漫画パタリロは、
花とゆめで、子どもの時に読んでいましたので想像できます、笑)

地域性を生かした様々な木の活動が広がっていることが
よく分かります。

公開ワークショップも埼玉の杉戸町の事例。
埼玉が熱いですね!



報告会の最後の締めは、
これから導入される「森林環境贈与税」の活用に向けて
林野庁からの説明。

以前、熊本県からの説明は伺ったので、国の方針を聞きたいと
思っていたところだったので、詳しく見てみますと、

日本の森の課題、小規模・零細な林業家が9割。
経営管理の集積、集約化が最大の課題。とあります。

オーストリアは、日本の地形や小規模なところが酷似、
ところが、製材業の技術革新で
木材の需要が増え、丸太販売の共同化が進み、生産性が向上した。

というモデルが引き合いに出されています。

小規模林業家や山主がタッグを組むイメージでしょうか。

海外のモデルを真似るだけではなく
日本の良き、協調性、協働性が、
発揮されることを願ってやみません。

これから、税金が、本当の意味で山に還元され、
わたしたちの水源を守っていくように、注視しながら

各自治体の政策や考え方、
活かし方に参画したいと思っています。

税金の活かし方のヒントとして、
各県の取り組みを紹介されている資料もありました。

神奈川県は、川崎の事例、
熊本県は「木造設計アドバイザー派遣事業」が出ていました。

アドバイザーといっても、多分この方しかおられないのではないかな。

他に知らないし、熊本の公的木質化の施設は、
ほとんど関わっておられるようです。

西日本建設新聞社の記事にリンクを貼っておきます。
http://www.wjc-news.co.jp/pickup/150420.htm

全国的な動向と事例を把握しながら、
私やお仲間とできることの検討、
そして、今続けている活動の発展も視野に入れながら
方向性を探りたいと思うのでした。

温めているアイデァは、
ぼちぼちと本業と並行して進めてまいります!

都市の中の茅葺屋根、残す価値は建築文化と生活暮らしの文化

2019年03月18日 | 日本民家再生協会・伝統建築・造園


昨日は日本建築家協会の修復塾の講座に、参加して来ました。

講師、企画、事務方の方々には、お世話になり、
大変有意義な時間でした。ありがとうございました。

修復現場見学後は、横浜市の文化財として
指定された第1号の横溝屋敷を皆で散策。

トップの写真は、その養蚕用に明治に建替えられた横溝屋敷です。

最初に、横浜市の市民の寄付による「馬場花木園」内の
伝統的民家修復現場を見学し、設計監理者から話を伺いました。
(写真は、まだ非公開です。現況の風景をアップしますね)

こちらは、現在の新築の茶室鉄骨造


こちらは、公園からの見える茅葺屋根


調査、設計、監理の苦労。
そして、街中で茅葺き屋根を残すため、
法的除外を受けるための審査
を通す代替措置の工夫や、調査資料をまとめる労力を伺い、
実務レベルの講義に大変勉強になりました。

調査から完成まで、7年間だそうです。
揚屋や曳家のVTRも見せていただき、
まさに臨場感あふれる体験でした。

茅葺屋根は燃えるため、用途地域により、
屋根を不燃材で吹かなくてはならない建築の基準を、満たしません。

では、どうして、それを残すことが出来るのか?

それは、放水銃(初期消火)の設置や、自動通報装置などで
火災予防を行っているから、可能なのです。

代替措置を、消防署や審査会で有識者、
行政と議論の積み重ねの結果なのです。

建築士が修復方針を設計して終わりというのではありません。
建物の耐震、火災予防策、地域でのこれからの活用のあり方
建物の地域での歴史的位置付け、などなど、
まさに、総合プロデュースが求められるのでした。

職人さんも、熟練の技が要される現場。
手間暇がかかっています。技の継承の意味もある修復現場です。
日本人のきめ細やかさ、
建築に対する美意識などを、感じとりたいですね。

完成の暁には、小さな茅葺屋根の茶室、そして主屋を、
ぜひ、ここに残す意味、価値を考えながら、
一般の方にも見学して欲しいと願います。

次の見学先、横溝屋敷は、
地域の名主の住まい兼、采配を振るった
場所であり、養蚕を営んでき建物。

敷地内には、主屋の他に、
兜作りの茅葺屋根の浮き屋根を持つ穀物蔵、文庫蔵、
突き上げ屋根のある蚕小屋があります。






まるで、伝統的建物群の見本市です。

裏には水路、せせらぎ、山神社などもあり、
暮らしと共にあった建築の役割を、よく伝えています。

主屋内で、修復工事の記録と、
四季の行事のビデオがそれぞれ観れるので、
合わせて学ぶと、この地域の特徴と歴史、
そして保存されてきた経緯がよく分かります。

地域の役場的存在、名主の屋敷、横溝邸。
そこには、ここで暮らしてきた人々の想いと歴史が詰まっています。
地域の方々が、是非残したいと活動されたようです。

建築を残すことは、当時の人々の支え合った暮らしをも
伝えていくのだなぁと、感慨深くなります。

古い建物、という見た目だけではなく、
その背景や奥にあるもの、、、
暮らしと歴史、地域性、そういった時間軸を持って
見学すると、民家は俄然と面白くなります。

どうぞ、ご興味のある方は、見学してみてくださいね。

馬場花木園のサイト
http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/park/babakabokuen/
みその園、横溝屋敷のサイト
https://qq2h4dy9n.wixsite.com/yokomizoyashiki

かく言う私も、横浜の拠点から近所ながら、
横浜に越してきて、すぐの出産、子育て、
仕事と家庭に追われるようにして、
ゆっくりと近くの建築をめぐるチャンスを逃してきました。

本当は、もっと子どもとお出かけすべきだったかなぁ。。。
と思いつつも、いえいえこれからと、
少しづつ、実現していきます。

今週末、今度は建築士会主催の、旧吉田邸の修復後の見学会です。
有名すぎるのに、そこもまだ行けていないのです。
企画していただけることが、本当にありがたいですね。

昨日の横浜の昭和最後の大修復工事だった横溝屋敷と、
平成最後の馬場花木園の現場と合わせ見ることで、
変わらないもの、建築文化の真髄を感じられ、春の学びに感謝しました。