月食前日に撮影した満月。感動の美しさでした。
先週は、スーパームーンの月食、
今週は日本各地域で宇宙ステーション「きぼう」が
夜空に見えるなど、天空の話題に事欠かきません。
日頃、重力と向き合う仕事だけに、
無重力空間の宇宙には憧れます。
夜空を眺めながらも、
地上の話にお付き合いください。
今月は、都市木造の魅力をテーマに
綴ってきました。
5月最終日、都市木造の締めを綴ります。
予告では、目次_3)「街でのメリット」でしたね。
主に、まち、ひとへの効能、効果について、綴ります。
その前に、
皆さんから、寄せられる疑問の声に応える形で
木造の特性について
まず、おさらいしておきましょう。
1)耐震性は大丈夫?
木造で、一番心配されるのが
「耐震性はあるのですか?」の声。
これは、地震で崩れるイメージがマスコミ等によって
広く報道されてしまったから心配されるのですね。
熊本地震の倒壊した例も、木造が弱いのではなく、
シロアリによる木の腐れが原因のものや
金物が適正に使われていなかったものなどの倒壊が、
多くありました。
専門家には、そういう情報も入ってきますが
一般には伝わらないので、ここでお伝えしますね。
昨今の耐震性がきちんと確保されていた木造は
倒壊していませんでした。
そこで、くまもと型復興住宅は
性能の最高値「耐震等級3相当」が
求められることになった経緯があります。
木は適正に使えば、山で生きた分の長さ、
伐採後も生きると言われます。
(日本最後の棟梁と言われる西岡常一談)
ヒノキ無垢材などは、育ってから
100年くらいが強度がピークに達するとも言われています。
(科学的に)
つまり、伐採後もまるで生きているみたいに、
進化するのが木です。
進化は、乾燥と呼吸です。木は水を含んでいるため、
乾燥したほうが、強度が増すためです。
その後緩やかにカーブを描いて
強度が下がっていくと予想されています。
話が逸れましたが、木の凄さを理解しつつも、
その使い方次第で、弱くもなり、強くもなるのが、
木造と思っていただければ、幸いです。
2)火災には強いの?
木の天敵は、シロアリ(腐朽菌なども)、水、火です。
火に関しては、木は燃えても炭化するという特性があり、
内部での火災時は、プラスチック製品や、カーテン等、
インテリアが燃える煙で人体がやられてしまうのが先だ、
と消防の方から教わりました。
外部からの火災からは、燃え代設計や防火構造、耐火構造など
骨組みが木造でも、守る方法があります。
火災に関しても、杉板で1mm/1分=1センチ/10分
という火災の進行が実験で確かめられています。
防火構造は30分ですから、3センチあれば、
内部まで火災は進行しないということになります(理論上)
(隙間など実際には、別要因も働く)
無垢の木だけなら厚みを確保。
実際には、ボードとの組み合わせなどで、認定されています。
3)腐ったりしないの?
水に当たっても、木はすぐには腐りません。
そこに腐朽菌がいなければ。
昔の時代劇など、
川べりに木材が水につけられたまま
置いてあるシーンをご覧になった方もおられるのでは?
山から切り出された木材は、
川の水ででまちに運びましたし、水中で養生していました。
もともと山に立っているときは、
雨水にさらされてきたわけですから
水には強いのです。
(木の皮に撥水効果あり、
杉皮などは屋根防水に重宝されました)
しかしながら、皮を剥かれた後の丸太は外側が白太と、
根からの水の通り道なので、その部分は、そのままですと、
シロアリが大好きな部分です。
(水があるとヤマトシロアリは土中から登ってこれる)
ですから、水に当たっても、
乾くようなディテールが必要になってきます。
外壁に杉板を貼っても大丈夫なのは、そんな理由からです。
外壁が杉板張りの事例
4)適正に使えば、木は丈夫で長持ち
以上のことから
本来、木は適正に使えば、長持ちします。
世界に誇る日本の伝統的な木造が長寿命なのは、
先代の知恵と技の結晶だからです。
もちろん、木材も良いものが使われています。
それに対して、都市木造。
実は、これまでと少し話が変わってきます。
なぜなら、木をそのままで使うには、
限界があるからです。
多くの社寺仏閣が、天然の大木を利用した
大断面の木造です。
しかし、大木は日本には、そう多くは残っていません。
まして建材となると、流通材でせいぜい360mm~410mmの梁成。
これでは、大きな建物が建ちません。
(製材の組み合わせでトラスなどは構築可能)
そこで、集成材利用や、ボード状のもの、
CLT(クロスラミナーティンバー)などが、用いられます。
5)今は、耐火木造もできる時代
耐火木造となると、主に
- 被覆型(木を退化被覆材で覆う)
- 鋼材内蔵型(鉄骨などを木で覆う)
- 燃え止まり型(燃え止まり層で覆う)
といった方法が確立されてきました。
研究者、施工者、など専門家による実験、検証の結果、
仕様規定など法律も揃った次第です。
それらは、伝統的な造りの建築とは、大きく違います。
その代わり、中層階が可能となってきました。
では、そこまでしてなぜ木造にこだわるのか。。。
山問題の解決、環境負荷への軽減という視点で
前回まで、述べてきました。
しかし、そこばかりでは、
私には関係ないわ。
と感じてしまう方が大半ではないでしょうか。
そこで、柿本がおすすめする
まち人へのメリットをお伝えします。
<都市木造のまちへのメリット>
1)工事中の騒音、車両通行止めが軽減される。
これは、実際の現場を見て、感じたことです。
もし、このビルがコンクリート造だったら?
と仮定してみましょう。
各階ごとに、コンクリートを打設しますから、
ゴー、ゴー、という騒音が響きます。
また、道路も通行止になる時間が長くでなるしょう。
ミキサー車も、順番を待たなくてはなりません。
今回の木造ビルの場合、木造の柱はレッカー車で運び込まれ
順番に、積まれていきました。
ちょうど隣のビルに知人がおり、まさに現場を覗き込むように
見せてもらいました。特に、不快な音はしなかった様子でした。
2)軽いため、地盤改良がRC造に比べて、少なくて済む可能性が高い
都市部で大きなビルを建てる時、
最初に地面の中に、鉄の棒状のものや
コンクリート製の棒状のものを
埋め込んでいくのを、
見たことがある方もおられるのではないでしょうか?
マンションや、団地などでもそうですね。
必ずと言っていいほど、地盤改良や補強がつきものです。
上に乗る建物の荷重によっても左右されるため
(重いと補強も大きくなる)
軽い構造は、事業主さんにとっては、
工期短縮や、金銭的なメリットがあります。
3)固定資産税が安い。減価償却が早い。
コンクリート建築や、鉄骨造に比べて、減価償却が早いため
事業主にもメリットが大。これは経済的なメリットですね。
次に、木造全般に言えることですが、
木が表しになっている部分があれば、
4)木の香り、匂いに癒される
木というものは、いつまでも芳香します。
もちろん、塗装で覆ってしまっては、
塗装の匂いになってしまいますが
呼吸する自然塗装系で仕上げた場合には、持続します。
5)木目には、揺らぎがあり癒される
本当に、人間って、木目が好きなんだなぁと思う瞬間は
偽物の木目調シートが張られた内装を見かける時です。
トイレブースの扉。テーブルの天板。フローリングシート。
など、どこかで必ず目にしたことがあるでしょう。
最近は、タイルの模様にまで、ヒノキが出てきました、笑。
実際、科学的には、木目というのは、不規則性があり
その「ゆらぎ」が、人の視界を疲れさせないのだそうです。
内装木質化の事例、階段を登る際に目に入る腰板の木目。
癒し効果が大。
これは、体感している方は、良く分かりますよね。
お客様などは「落ち着く」
「気持ちが良い」などの感想をおっしゃいます。
6)土に還る。
木は、天敵と思われる、腐朽菌やシロアリのおかげで
土に還ることができます。ゴミにはならないのです。
ただし、接着剤や塗料など有害物質を除きます。
私がこれまで都市木造に疑問があったのは、
実はこの部分です。
接着剤は、燃えた時に有害物質を出さないのか、
シックハウスになる材料で固められていないか、、、
などなどは、都度メーカーに問い合わせています。
今後、目にかなう材料があれば、
積極的に採用していく所存です。
長くなりました。
本日のところは、以上になります。
まだ、私自身は都市木造へのチャレンジは
これからなので、実体験として、
メリットが増えていった場合には、
またお知らせしていきます。
木のことになると、筆が止まらない!?ので、
随分と、長くなりました。
適正に使えば、木は最高の材料ではないか?!
と思っていただけたら、嬉しいです。
それから、最新情報です。
スギがコロナウィルスを死滅させる!?
というような研究も行われていると
木のものづくりの仲間から、聞きました。
これは自分自身で研究論文を入手し、
検証結果を知ったのちに
きちんとお伝えしていければと存じます。
本日は、最後までおつきあい頂き、
ありがとうございました。