せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

都市木造の魅力03 〜まち・ひとへのメリット〜

2021年05月31日 | 森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト

月食前日に撮影した満月。感動の美しさでした。

先週は、スーパームーンの月食、
今週は日本各地域で宇宙ステーション「きぼう」が
夜空に見えるなど、天空の話題に事欠かきません。

日頃、重力と向き合う仕事だけに、
無重力空間の宇宙には憧れます。

夜空を眺めながらも、
地上の話にお付き合いください。

今月は、都市木造の魅力をテーマに
綴ってきました。

5月最終日、都市木造の締めを綴ります。

予告では、目次_3)「街でのメリット」でしたね。
主に、まち、ひとへの効能、効果について、綴ります。

その前に、
皆さんから、寄せられる疑問の声に応える形で

木造の特性について
まず、おさらいしておきましょう。

1)耐震性は大丈夫?

木造で、一番心配されるのが
「耐震性はあるのですか?」の声。

これは、地震で崩れるイメージがマスコミ等によって
広く報道されてしまったから心配されるのですね。

熊本地震の倒壊した例も、木造が弱いのではなく、
シロアリによる木の腐れが原因のものや
金物が適正に使われていなかったものなどの倒壊が、
多くありました。

専門家には、そういう情報も入ってきますが
一般には伝わらないので、ここでお伝えしますね。

昨今の耐震性がきちんと確保されていた木造は
倒壊していませんでした。

そこで、くまもと型復興住宅は
性能の最高値「耐震等級3相当」
求められることになった経緯があります。

木は適正に使えば、山で生きた分の長さ、
伐採後も生きると言われます。
(日本最後の棟梁と言われる西岡常一談)

ヒノキ無垢材などは、育ってから
100年くらいが強度がピークに達するとも言われています。
(科学的に)

つまり、伐採後もまるで生きているみたいに、
進化するのが木です。

進化は、乾燥と呼吸です。木は水を含んでいるため、
乾燥したほうが、強度が増すためです。

その後緩やかにカーブを描いて
強度が下がっていくと予想されています。

話が逸れましたが、木の凄さを理解しつつも、
その使い方次第で、弱くもなり、強くもなるのが、
木造と思っていただければ、幸いです。

2)火災には強いの?

木の天敵は、シロアリ(腐朽菌なども)、水、火です。

火に関しては、木は燃えても炭化するという特性があり、
内部での火災時は、プラスチック製品や、カーテン等、
インテリアが燃える煙で人体がやられてしまうのが先だ、
と消防の方から教わりました。

外部からの火災からは、燃え代設計や防火構造、耐火構造など
骨組みが木造でも、守る方法があります。

火災に関しても、杉板で1mm/1分=1センチ/10分
という火災の進行が実験で確かめられています。

防火構造は30分ですから、3センチあれば、
内部まで火災は進行しないということになります(理論上)
(隙間など実際には、別要因も働く)

無垢の木だけなら厚みを確保。
実際には、ボードとの組み合わせなどで、認定されています。

3)腐ったりしないの?

水に当たっても、木はすぐには腐りません。
そこに腐朽菌がいなければ。

昔の時代劇など、
川べりに木材が水につけられたまま
置いてあるシーンをご覧になった方もおられるのでは?

山から切り出された木材は、
川の水ででまちに運びましたし、水中で養生していました。

もともと山に立っているときは、
雨水にさらされてきたわけですから
水には強いのです。
(木の皮に撥水効果あり、
杉皮などは屋根防水に重宝されました)

しかしながら、皮を剥かれた後の丸太は外側が白太と、
根からの水の通り道なので、その部分は、そのままですと、
シロアリが大好きな部分です。
(水があるとヤマトシロアリは土中から登ってこれる)

ですから、水に当たっても、
乾くようなディテールが必要になってきます。

外壁に杉板を貼っても大丈夫なのは、そんな理由からです。


外壁が杉板張りの事例

4)適正に使えば、木は丈夫で長持ち

以上のことから
本来、木は適正に使えば、長持ちします。

世界に誇る日本の伝統的な木造が長寿命なのは、
先代の知恵と技の結晶だからです。

もちろん、木材も良いものが使われています。

それに対して、都市木造

実は、これまでと少し話が変わってきます。
なぜなら、木をそのままで使うには、
限界があるからです。

多くの社寺仏閣が、天然の大木を利用した
大断面の木造です。

しかし、大木は日本には、そう多くは残っていません。

まして建材となると、流通材でせいぜい360mm~410mmの梁成。
これでは、大きな建物が建ちません。
(製材の組み合わせでトラスなどは構築可能)

そこで、集成材利用や、ボード状のもの、
CLT(クロスラミナーティンバー)などが、用いられます。

5)今は、耐火木造もできる時代

耐火木造となると、主に
  • 被覆型(木を退化被覆材で覆う)
  • 鋼材内蔵型(鉄骨などを木で覆う)
  • 燃え止まり型(燃え止まり層で覆う)

といった方法が確立されてきました。

研究者、施工者、など専門家による実験、検証の結果、
仕様規定など法律も揃った次第です。

それらは、伝統的な造りの建築とは、大きく違います。
その代わり、中層階が可能となってきました。

では、そこまでしてなぜ木造にこだわるのか。。。

山問題の解決、環境負荷への軽減という視点で
前回まで、述べてきました。

しかし、そこばかりでは、
私には関係ないわ。
と感じてしまう方が大半ではないでしょうか。

そこで、柿本がおすすめする
まち人へのメリットをお伝えします。

<都市木造のまちへのメリット>

1)工事中の騒音、車両通行止めが軽減される。

これは、実際の現場を見て、感じたことです。

もし、このビルがコンクリート造だったら?
と仮定してみましょう。

各階ごとに、コンクリートを打設しますから、
ゴー、ゴー、という騒音が響きます。

また、道路も通行止になる時間が長くでなるしょう。
ミキサー車も、順番を待たなくてはなりません。

今回の木造ビルの場合、木造の柱はレッカー車で運び込まれ
順番に、積まれていきました。



ちょうど隣のビルに知人がおり、まさに現場を覗き込むように
見せてもらいました。特に、不快な音はしなかった様子でした。

2)軽いため、地盤改良がRC造に比べて、少なくて済む可能性が高い

都市部で大きなビルを建てる時、
最初に地面の中に、鉄の棒状のものや
コンクリート製の棒状のものを
埋め込んでいくのを、
見たことがある方もおられるのではないでしょうか?

マンションや、団地などでもそうですね。
必ずと言っていいほど、地盤改良や補強がつきものです。

上に乗る建物の荷重によっても左右されるため
(重いと補強も大きくなる)
軽い構造は、事業主さんにとっては、
工期短縮や、金銭的なメリットがあります。

3)固定資産税が安い。減価償却が早い。

コンクリート建築や、鉄骨造に比べて、減価償却が早いため
事業主にもメリットが大。これは経済的なメリットですね。

次に、木造全般に言えることですが、
木が表しになっている部分があれば、

4)木の香り、匂いに癒される

木というものは、いつまでも芳香します。

もちろん、塗装で覆ってしまっては、
塗装の匂いになってしまいますが
呼吸する自然塗装系で仕上げた場合には、持続します。

5)木目には、揺らぎがあり癒される

本当に、人間って、木目が好きなんだなぁと思う瞬間は
偽物の木目調シートが張られた内装を見かける時です。

トイレブースの扉。テーブルの天板。フローリングシート。
など、どこかで必ず目にしたことがあるでしょう。
最近は、タイルの模様にまで、ヒノキが出てきました、笑。

実際、科学的には、木目というのは、不規則性があり
その「ゆらぎ」が、人の視界を疲れさせないのだそうです。


内装木質化の事例、階段を登る際に目に入る腰板の木目。
癒し効果が大。

これは、体感している方は、良く分かりますよね。
お客様などは「落ち着く」
「気持ちが良い」などの感想をおっしゃいます。

6)土に還る。

木は、天敵と思われる、腐朽菌やシロアリのおかげで
土に還ることができます。ゴミにはならないのです。

ただし、接着剤や塗料など有害物質を除きます。

私がこれまで都市木造に疑問があったのは、
実はこの部分です。

接着剤は、燃えた時に有害物質を出さないのか、
シックハウスになる材料で固められていないか、、、
などなどは、都度メーカーに問い合わせています。

今後、目にかなう材料があれば、
積極的に採用していく所存です。

長くなりました。
本日のところは、以上になります。

まだ、私自身は都市木造へのチャレンジは
これからなので、実体験として、
メリットが増えていった場合には、
またお知らせしていきます。

木のことになると、筆が止まらない!?ので、
随分と、長くなりました。

適正に使えば、木は最高の材料ではないか?!

と思っていただけたら、嬉しいです。

それから、最新情報です。

スギがコロナウィルスを死滅させる!?
というような研究も行われていると
木のものづくりの仲間から、聞きました。

これは自分自身で研究論文を入手し、
検証結果を知ったのちに
きちんとお伝えしていければと存じます。

本日は、最後までおつきあい頂き、
ありがとうございました。

茅の復活は、究極の循環型社会につながる!

2021年05月25日 | 森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト

横浜のマイパワースポットの一つ
茅葺き屋根の西方寺。いつ見ても美しいです。

今月は、都市木造の魅力をテーマに
綴ってきました。

本来なら、03「街にとってのメリット」のご紹介の予定でした。
しかし、本日は、森のネタが書きたくなり、
ちょっと山の話にそれます。

昨日の感動が冷めやらぬうちに。。。

ブログ月曜日更新が、1日遅れとなってしまいました。
実は、昨日は、月1回の日本民家再生協会のズームミーティング。

3時間にも及ぶ長丁場となり、
ブログを綴る時間切れ〜となってしまいました。

事前の日曜日に、書いておけば良いのでは?
そうですよね〜。自分でもそう思います。

がしかし、今回は、なんと実家より梅が届くという
嬉しいハプニングが。

6月初めの予定ではなかったっけ!?
知らせを受けたのは「もう送った」あと。

梅雨が早まり、晴れ間を見て、急ぎ父が採ったのだとか。
小梅は数も多く、それなりの苦労があったはず。
せっかくの好意を無下にはできません。



予定もあった週末+梅干し作りに精を出しておりました。

ヘタ取り。量は少なくても、数は多いので、
普通サイズの梅の方が、やりやすいのだと実感。

こどものお弁当用に、小梅がいいなぁー
と、言ってしまったばっかりに、笑。

お家時間も、充実しすぎでしょ!(=家事のやりすぎでしょ)
ってな感じで過ごしております。

(コロナ禍のおかげで、梅干しは、初挑戦)

それに、ミーティングが長引いたのも、
議題が古民家などの災害支援のことであったことと、

今、私が、最もエコで環境に貢献するとして注目している材料
「茅」(ヨシやアシのこと)を研究しているという東大の方の
どんな研究を進めているかの話があったからです。

私の中では、密かに『風の谷のナウシカ計画』と呼んでいる
草原の黄金の風景。(阿蘇に近いものが、実際に風景としてあります)

密かにと言いながら、書いちゃいますが、
土砂災害防止に、スギの代わりに、
草原の山を復活してはどうか!
という想いがあります。

以前から、「植えない森」=植林だけではない森
を提唱していますが、

やはり、自然に帰すだけでは、里山復活論にはなりません。

建材として、肥料として、
使われるものがある山であれば

循環する人の営みの一つの手段として、
検討の余地があると思うのです。

それにスギは、活かすのに何十年もかかりますが
茅類は、、、1年更新ですものね。早い!

ただ、茅葺き屋根も、この世から消えさりそうな勢い。

屋根だけではない、古来からの活かし方や、
新しい使い道がないと、、、と、思っていたところ

昨日の方の研究では、それも模索中とのこと。

ネタバレはいけませんが、
民家再生協会の講義の中で、
電波に乗った情報を少しだけ、

なかなかに良い菌がいるらしいとのこと。

ウィルス対策とまでは、行かないにしても
ウィルスとの共存の世界突入の時代には、
非常に有用なものではないかと、期待大です。

これからが、楽しみですね〜。

SDGsと旗振りだけが上手な大人たち(戦略家?)
と違って、地に足がついた若手がいることに
まずは、感激しました。

何が本質か気がついている人がいて、
手探りの中、行動している人がいて、
私にも励みになりました。

今は、家族の安心安全を守る(熊本も横浜も両方の家族)
クライアントさんの利益を守ることに、
精一杯ですが、介護も子育ても、いずれ終わります。

その時は〜、弾けたいですね。

今は、その時のための学びの時と、
想いもじっくりと熟成中です。

「そうはいっても、行動すればいいじゃない!」
との声も聞こえてきそうです。

そう、今回のこの気持ちを忘れないためにも、
ブログに綴りました。

一般社団法人日本茅葺き文化協会のHPはこちら

日本民家再生協会でお世話になっている
安藤邦廣先生が理事を務めておられます。

そこで、思い出したのです。

今春、熊本で行われた茅葺きフォーラムの
記事を書いてなかったですね。



個人fbにアップして、安心し、
すっかり、お披露目するのを
怠っておりました。

茅葺きの写真はその時のものです。

熊本は山都町の八朔祭の山車は、自然素材のみで作られたもの。
造形的にも素晴らしい出来で、大迫力。



木造は、製材に制約があり、
コンクリートのように形の自由設計は難しいです。

しかし、茅葺きなら、曲線が描ける!
ということに、とても魅力を感じています。

メンテナンスの課題はありますが、
雨仕舞いに問題はありません。

それに、世界ではいろいろな建築が作られている様子。
刺激を受けました。

使ってみたいです!

都市木造の魅力01 〜森林環境にとってのメリットは?〜

2021年05月17日 | 森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト


毎度ながら、前談も長いブログとなっていおります。

これからの森林環境への提言も含めて、綴っています。
最後までお読みいただけたら幸いです。

1)梅雨入りと土砂災害

今年は「梅雨入りが早い」と、ニュースで見聞きします。

昨日16日(日)は、近畿地方で,1951年の統計開始以来、
最も早い梅雨入りだったそうです。

昨年との差は25日。( 日本気象協会のHPより)
ほぼ1月違いますね。

今年の神社暦では「入梅」は6月11日。
(昨年の関東甲信越がその日が、梅雨入りでした。)

まぁ「入梅」は、梅雨入りというよりも、
梅の熟す時期というところから来ているらしい
雑節ですから、

正確に「梅雨入り」を示してはいないようですが
これまでは、概ねの参考にしてきました。

しかし、こうずれてくると、暦で心積もりする
ということが、難しくなってきますね。

今年の早い梅雨入りの原因は、
偏西風と太平洋高気圧の位置が影響と
NHKニュース。

気象予報には、注視していかねばと、思います。

そして、今日の大雨。
熊本には、土砂災害警報が発生

川の多い、故郷は、
大雨のたびに洪水の恐怖に見舞われます。

熊本城主だった加藤清正公が、
治水に尽力されたおかげで、
熊本市内は、随分と安全な場所へと
変貌を遂げた歴史があります。

しかしながら、県下は山も多く、
市内から少し離れた上益城郡では、
御船町や、益城町、そして山都町と、
大雨のニュースが、今日は全国版で流れるほど。
生まれ育った、天草までも!
(海のイメージがありますが、ココも植林地は多いのです)

昨年の水害の傷もままならない
人吉球磨地方では、何とか大丈夫の知らせ。

本当に気が休まりません。
全国的にも、警戒が必要ですね。 

なぜ、大雨の話題かというと
今朝、気象予報士を目指す女性が主人公の
朝ドラが始まったから、、、

では、もちろんありません。

今日のテーマ「都市木造」の「森林環境へのメリット」
土砂災害とも大きく関係してくるからです。

2)土砂災害の被害拡大は、植林にも一因がある。

私が2013年に『森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクト』を
始めたきっかけの一つが、2012年の九州北部豪雨でした。

阿蘇方面の植林地の土砂災害被害を目の当りにし
その問題が植林にあり、
その手入れがなされていないことだと
知ったからです。

川幅は50センチほどだった沢が、5Mほどに広がり、
周囲の植林スギを巻き込んで、
流木被害が甚大に広がっておりました。



スギが、根を張るために、必死に掴んでいる
沢沿いの石や岩と一緒に、土も流れた結果です。

まさに、えぐられた沢沿い。

自衛隊が片付けた後に、森の持ち主に
入らせてもらいましたが、本当に痛々しく
涙が出そうでした。



学者の説でスギは、水分を好むからと、
沢沿いに植えられたらしいのですが

実際は、クローンなので、
根っこが、10Mの高さに対して
2Mほどしかありません。

つまり、スギは立っていられないのです。

下記の写真は、苗木が育ったところ、簡単に根が抜けてしまう。


植物の時間で習いましたよね?

木は、上に伸びているのと同じ高さ、下に根を貼るから
雨風に耐えられるって。小学生でも分かります。

しかし、植林は、実生(みしょう)ではなく、挿し木なので、
根が張らない。つまり、、、、

危うく立っているわけです。

下記の写真は、流木被害のあった場所の雑木の根っこ。
殆ど草のような植物の根の方が、植林のスギの根よりも
たくましい事実に、ショックを受けました。



そんな山だらけの日本!!!

土砂災害の被害拡大を防ぐには、
山の手入れをするしかないのです!!!

と、言い続けてきました。

昨今は、林野庁も認めるこの事実。
本当に、あまりにも被害が増えてきているので、
植林の問題を伏せておくわけには、行かなくなったようです。

3)山の問題の根本はどこにある?

では、国の政策が間違っていたのでしょうか?

そうとも限りません。戦後、復興を願って
先代達が暑い中、未来の子ども達のために
危険な場所まで植えて、一時期は手入れをしてきた植林地。

おかげで、私も木のものづくりが出来ているわけです。

では、問題の根本は何なのか?

それは、日本の植林の木が
『循環されていない』ということにあるのです。

植林、育林、伐採、再植林というサイクル
うまくいっている山主さんもおられます。

しかし、多くの山が、後継者不足、伐り出せば赤字。
伐採しても、出道がない。(交通の便も、販路も)

そして、育つのを待つ間に、大きく変わった社会情勢。
資本主義のマネーゲームに乗らない、時間のかかる林業。

つまり、スピード重視の現代では、時代遅れになってしまった。
魅力的な産業で無くなってしまったのです。

でも、よく考えてみてください。

美味しい飲み水は、どこから来るのか?

山ですよね。
雨が濾過されて、美味しくなる。

時に、私たちの都市生活を脅かす川も、
それは、山の恵みの一部。

2013年に活動を始めた時は、
伐採されて生かされる木にたいして
育つ木が4倍も多いという数字でした。

だから、常に山は便秘状態で不健全。
土砂災害は、山の下痢にあたります!
と、説明してきました。

その後、山の手入れは進んだでしょうか。。。
9年経って、正直全然というのが、この現状ですね。

その救世主かもしれないと、言われているのが、
木材を多く使う「都市木造」
 (=都市部にも、木造のビルを建てよう!)
なのです!



山に、お金が多く落ちれば、循環できるからです。

森林へのメリットとしてお伝えしてきましたが、

実は、私たちの命の源である水と
暮らしを守るもの

だということが
お分かり頂けたでしょうか。

注意:
海外の違法伐採によるものはダメです。
適正に国産木材を使うことが大事です。

4)お国(林野庁)の対策はどうなっている?木材自給率とは?

では、国はどう対応しているのかって?
公表されている政策と、その結果の数字を見てみましょう。

私が、森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクトを始めるより前、
林野庁は、平成21(2009)年12月に、
森林・林業を再生する指針となる
森林・林業再 生プラン」を策定しています。

森林の多面的機能の確保を図りつつ、
「10年後の木材自給率50%以上」
目指すべき姿 として掲げているのです。

つまり、より多く国産木材を使っていこうではないかと。

では、その結果、
10年後の、令和元年(2019年)の木材自給率は
いくつだったのか?

それは、37.8%です。(林野庁発表)

「木材自給率は9年連続で上昇!」
と、林野庁は、大きくアピールしています。

が、これには、少々カラクリがあるのですねぇ。

下記が林野庁発表資料です。
赤字は注目して欲しい数字のこちらでの書入れです。




全体をご覧になりたい方はこちら

用材としては、33.4%、
バイオマスエネルギーとして66.7%となっており、

生きた使い方(CO2を閉じ込めたまま)の
自給率は3割ちょっと、ということになります。

しかも、バイオマスエネルギーは、
もともと輸入してまで、
燃やすという需要自体があるのかどうか
という疑問も湧いてきますよね。

輸入してまで燃やすことはないと思います。
 (先のブログ、ウッドマイレージの話より)

むしろ、SDGs的には、バイオマスは100%でも良さそうなのに。
(実際、燃やされているのは、
外材の端材なども含まれるのでしょう。)

つまり、適正に使っているのか?
という点で疑問が残ります。

一方で、手入れが行き届かず、
小径木にしか育っていないものは、
用材にならない、集成材にしかならない
という課題も抱えているので、燃やされても
仕方がないこと、と諦めそうにもなります。

しかしながら、実は、

「自給率を上げる目標のために、
スギを国はどんどん燃やしている。
嘆かわしい。せっかく育てたのに。。」

という、現場の声も耳に入ってきているからです。

目撃証拠がある訳ではないので、
この発表資料から、読み取っている次第です。

端材や、剥いだ皮など、
不要部分がエネルギーになっていると
信じたいものです。

5)森林環境を健全化するには、どうしたら良い?

ここからは、柿本の大胆な提言になります。

継続的な山にお金と人的エネルギーを投入したい訳ですが
これには、仕組みが絶対に必要です。

循環するお金の「森林通貨」や「森林くじ引き」については、
すでに発表済みなので、本日は省略し

本日は林野庁さんにオフレコで話したことがある内容を
綴ります。(もう良いでしょう、時勢的に、笑)

提案その1)徴兵制ならぬ、徴林業制を創設する

自分の住んでいる地域の飲み水を育む山
(水源涵養保安林)の手入れを
森林組合さんだけに頼らず、
必ず市民、住民がやる。若いうちに体験する。

植樹、育樹、伐採の全工程に、ボランティア経験あるから
言えることです。
女子どもだって出来ます。安全管理さえすれば!

それに、自分ごととして考えることができます。
知恵も集まります。

提案その2)最初から燃やさないで、使い切ってから燃やす。
木材のゴミ収集車を走らせる。(紙ゴミだけではなく)

   木で作れないものって、殆どないのですよ〜。
   いろいろなものに復刻しようではありませんか!

お国には、ダムを推し進める前に、
ぜひ、検討して欲しいですね!

昨年の熊本地元の新聞記事、民意はダムありきではない


最後に、次回に続くお話を少し、、、

私自身の関わる建築の仕事の側面でみますと

国産木材が使いやすくなる建築基準法の法改正は、
本当によくやっていると、思います。

実験、検証、そして、実用化。。。

木のものづくりを推進したい!という志のある
研究者の皆さんの頑張りの賜物。

林野庁の言葉を借りれば、

『平成12年に建築基準法を改正し、
建築基準の性能規定化を行った結果、
現在では、 必要な耐火性能の確保により安全性が確認されれば、
様々な建築物について木造とすることを可能とするなど、
規制の合理化に努めてきました。』(平成23年)なのです。

その後も、様々な改正が続き
最近も、基準は新しくなりました。

今、まさに、私たち建築士が、
いかに活用するかという時代になって来ている訳です。

様々な活用方法は、いよいよ、次回、

目次_3)「街でのメリット」で、綴りたいと存じます。
ちょっと専門的になる予定です。

それでは、災害列島日本のみなさま、
降雨量の増えるこの時期、
水害には、十分注意してお過ごし下さい。

本日も長文、お付き合いありがとうございました。

都市木造の魅力01 〜地球にとってのメリットは?〜

2021年05月10日 | ものづくり


新緑がまぶしい季節となって参りました。
皆様の地域での、自然の様子は、いかがでしょう。

GWに、こどもと行った
長野の望月キャンプ場では、
夜の気温1度と寒さもありました。

それでも、木々の新芽は伸び伸びとしておりました。

その美しさには、目を奪われます。
写真は、その時のものです。
(そんな訳で、1週目はブログお休みしました)

明後日の新月は、旧暦の4月朔日。
いわゆる「孟暑」の始まりです。

木々の美しい季節にちなんで、
今月は「都市木造」をテーマに綴ります。



横浜の関内で見かけた都市木造の現場。
横浜では、初めてでは?
(大手ゼネコンの特殊工法で11階建てと工事看板)

『都市木造』という言葉を、
みなさんお聞きになったことがあるでしょうか?
(ここ数年の言葉なので、私のPCでは、変換してくれません、涙。)

都市部にも、木造のビルを建てよう!
という考えのことです。

木造って、燃えないの?
木造って、地震に弱くないの?

そんな、疑問の声が、沢山聞こえてきそうです。

今月は、そんな疑問にお答えしながら
都市木造の魅力と価値について、お伝えしていきます。

目次
1)    地球にとってのメリット
2)    森の環境にとってのメリット
3)    街の人々にとってのメリット

本日は、
1)    地球にとってのメリットを本日は、綴ってみます。

まず、日本国が世界3位に入る森林国であるということは
もう、周知のことでしょうか。

戦後、一部禿山になった日本が、
国内では、住宅用のスギ、ヒノキの植林を推し進めつつ、

輸入木材の関税を緩和したことにより、
大量の輸入木材が、日本に入ってきました。

今の国産木材の価格が安定しなかったのは、
輸入木材の影響というのが、
 大きな原因の一つとされています。

今でも、ハウスメーカーの木材はそのほとんどが
安価な外材です。

2020年はコロナ禍の影響で、外材が従来通りのように
調達できない「ウッドショック」と言われる事態が起きました。

慌てたメーカー数社が、国産木材に切り替えることが
ニュースになっておりました。(今更という感じがいたしますが)

しかし、ここで、矛盾にみなさん気がつかれたでしょうか。

スギは30年、ヒノキで40年で製材が可能です。
(柿本の場合は、50年製以上を推奨)

戦後はもはや75年を過ぎました。
日本は、スギ余り時代なんですね。

また、植林は、日本は戦前から行ってきたことなので
植林でも樹齢100年越えも多いにあります。

仏教伝来(奈良、平安時代)とともに、
修験道の山伏が栄え、彼らが植えたスギ植林地も神社仏閣
周辺にあります。

お城や御殿築造用の藩木林、
校舎建て替えの用の、学校林もあります。

昔から、木がなくなるということはない我が国でした。

それから、『ウッドマイレージ』という言葉があります。

大量の木材を海外から輸入するときの、
石油エネルギーの消費(輸送コスト)を考えると
明らかに、国産木材を使わない方が、
エコではありませんよね。

そして、こんな話も聞きました。

日本がその多くを輸入してきた北欧から
木材関係者が、輸入する商社と共に、日本を訪れた時、

「飛行機の上空から見た、日本の景色に驚いた」
というエピソードがあります。

「緑豊かな国ではないか!」と。

日本が、あまりに大量に木材を輸入するので、
日本には、木材がないのだと思い込んでいたとか。

きっと、砂漠のような風景を
想像していたのかもしれませんね。

日本にあるのに、日本の木を使わない日本人。
大いに矛盾に満ちて、その目に映ったことでしょう。

そして、もう一つ。

私が、日本人の大罪と思っていることが、
違法伐採のことです。

木材認証制度を、きちんとクリアしていない材は
森林を破壊しているのです。

特に、合板系は、
発展途上国から、大量に輸入してきました。
(ラワンは、今は輸出規制あり)

大量に日本の木材を使う、都市木造のメリットは、
地球にとっては、

0)    輸送にかかるエネルギー消費量が、少なくて済む
1)    他国の違法伐採を、推し進めないで済む

この2柱だと考えます。

もちろん、集成材にする製作エネルギーを考えたら
製材を使うに越したことはありません。

そういった観点から、都市木造の矛盾も感じており、
これまであまり大きくは、取り上げて来ませんでした。

だからと言って
コンクリートでのビルは、解体時に大量にゴミを出します。

技術力がアップした昨今。

いよいよ、都市木造の可能性が高まり、
環境的な側面だけではなく

コスト的な側面も、クリアしつつあり、
当事務所でも、ユーザーの皆さんに
提案できる時代になってきた訳です。

補助制度なども、大いに活用していただきたいですね。

それでは、みなさまにも都市木造に賛同いただけるよう、
次回の続きで、詳しく説明していきます。

本日は、この辺で。
お付き合いありがとうございました。