先日の続きです。
この春、受け持つことになった
大学での、設計製図の授業での気づきや想いのその2です。
(もちろん、個人情報は開示しないで)
学生さんに、設計の思考の方法を話そうとした時に
避けて通れないのが、「エスキス」という言葉です。
設計をあれこれと考える手法の事なのですが、、、、
実は、広辞苑にも載っていない言葉です。
表記には、エスキスとエスキースと両方あって。
久しぶりに、アレっ?と思ってしまいました。
特に、誰からも教わった記憶がない。。。
自由設計の際に、筆記具を持った手を動かして、
ゾーニングや間取りを考える行為を、
言っていることは、確かなのですが
一体何時習ったのか?はて、記憶になし。
「エスキス、できた?」
「エスキス、まだ?」
「エスキス、終わった?」
のように、友人や仲間や先生とは声をかけていた
記憶は残っている。
ということは、やはり、学生時代から、
使っていた言葉なのだろうなぁ。
この概念は、確実に建築の設計行為に、
特化してしまっていると思います。
なぜなら、元々の エスキスとは、
フランス語の下絵のことで、
英語なら、スケッチだからです。
私たちの世代は、
スケッチというと、絵を描く行為になってしまう。
画用紙という言葉が、
やがてスケッチブックになったからでしょうか。
そこで、スケッチというと、絵を描く行為で、
図面を描く行為とは、差別化を図るために、
使われてのでは、ないかしらん?と思えてくるのです。
うむむ。。。
スケッチも使うのですが、、、
建築で言うところの、スケッチは、どちらかというと
立面図や外観に用いて、スケッチ終わった?
とは、あまり言わない。
スケッチ描けた?とは使う。
つまり、一連の作業がエスキスで、
スケッチは、下絵や下図そのものを指すって感じで
使い分けしています。
日頃、何気なく、当たり前に、使っている言葉も
人に教えるとなると、
ちゃんと本質を伝えられるようにならないと
いかんなぁ。。。
と、思った次第です。
「建築の事典」や「新しい製図の教科書」には、
「エスキスとは、かくかくしかじか、、、」
と、やや長い文章で解説がありました。
しかし、これを読んで、学生さんが、実行できるとは思えない。
意味はわかっても。
そこで、私自身のやり方やコツの一部を
極意としてお伝えすることに。。。
まぁ、エスキスの手法などというものは、
各自で、編み出すものだと思っているのですけれどね。
道具もいろいろです。
鉛筆を使う人もいれば、
色サインペンを使う人もいるし、
学生時や勤務時には、ホルダーを使っていましたね。
専用の芯削り機もあります。
手描き時代では、なくなってからは、
ノック式を愛用。画材屋さんで見つけたのかなぁ。
上から、ノック式エスキス用筆記具
中、ホルダー(2mmの芯を押し出して使う。削ると細い線も描ける)
下、ペン先の長い製図用シャープペン。
鉛筆のキャップはいらないし、かなり便利。
もっぱら、エスキス用に使っています。
依頼主さんとの打ち合わせ時にも。
ここで、エスキスと、エスキースの
両方呼び方がある話に戻ります。
先日、販売になったばかりの
本屋大賞2位という書籍のタイトルに
「エスキース」という言葉が入っていました。
本といえば、校閲が入るわけですから
この表記は、間違いないはずです。
小説の内容は絵画にまつわるもののようです。
建築的には、エスキス。
絵画的には、エスキースが、
一般的な呼び方ではないのかと。
今のところの、私の結論です。
リフォームのように完全に英語には無いカタカナ表記も
一般的な言葉としてしまう日本。
エスキスの意味も、和製英語ならぬ、和製フランス語。
なのでしょう。
ちなみに、日本の建築家で
すでにこの世におられない巨匠と呼ばれる方々は、
多くの方が、フランスの建築家ル・コルビジェに師事されています。
ということは、エスキスの言葉も、
この頃から輸入されたのではないのかと、私は勘ぐっております。
奈良時代以降の、社寺仏閣は、中国からの建築様式。
明治以降のコンクリート建築は欧米諸国から。
それまで、日本の木造の設計図は、大工さんの板書きでしたから
設計図面の描き方や手法も、西洋に習ったわけですね。
カタカナ言葉は他にも
・ゾーニング=各機能のエリア分け
(最近は感染症対策で、人のエリア分けることにも使われます)
・ブランニング グリッド= ます目(方眼)を使ったプランニング
・ブロック プラン= ゾーニングにほぼ同じ。動線なども含む
などなど。
きっと、これからも英語のような日本語、
もはや日本的な概念になったフランス語などを、
駆使しながら、授業を進めることになるでしょう。
一つ一つ、紐解きながら
分かりやすく伝えていく所存です。
気づきについては、まだまだあります。