せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

春の授業に想うこと、その2 〜設計用語はカタカナばかり!?〜

2022年04月26日 | 設計製図演習2022


先日の続きです。

この春、受け持つことになった
大学での、設計製図の授業での気づきや想いのその2です。
(もちろん、個人情報は開示しないで)

学生さんに、設計の思考の方法を話そうとした時に
避けて通れないのが、「エスキス」という言葉です。

設計をあれこれと考える手法の事なのですが、、、、

実は、広辞苑にも載っていない言葉です。

表記には、エスキスエスキースと両方あって。
久しぶりに、アレっ?と思ってしまいました。

特に、誰からも教わった記憶がない。。。
自由設計の際に、筆記具を持った手を動かして、
ゾーニングや間取りを考える行為を、
言っていることは、確かなのですが

一体何時習ったのか?はて、記憶になし。

「エスキス、できた?」
「エスキス、まだ?」
「エスキス、終わった?」

のように、友人や仲間や先生とは声をかけていた
記憶は残っている。

ということは、やはり、学生時代から、
使っていた言葉なのだろうなぁ。

この概念は、確実に建築の設計行為に、
特化してしまっていると思います。

なぜなら、元々の エスキスとは、
フランス語の下絵のことで、
英語なら、スケッチだからです。

私たちの世代は、
スケッチというと、絵を描く行為になってしまう。

画用紙という言葉が、
やがてスケッチブックになったからでしょうか。

そこで、スケッチというと、絵を描く行為で、
図面を描く行為とは、差別化を図るために、
使われてのでは、ないかしらん?と思えてくるのです。

うむむ。。。

スケッチも使うのですが、、、

建築で言うところの、スケッチは、どちらかというと
立面図や外観に用いて、スケッチ終わった?

とは、あまり言わない。
スケッチ描けた?とは使う。

つまり、一連の作業がエスキスで、
スケッチは、下絵や下図そのものを指すって感じで
使い分けしています。

日頃、何気なく、当たり前に、使っている言葉も
人に教えるとなると、
ちゃんと本質を伝えられるようにならないと
いかんなぁ。。。

と、思った次第です。

「建築の事典」や「新しい製図の教科書」には、
「エスキスとは、かくかくしかじか、、、」
と、やや長い文章で解説がありました。

しかし、これを読んで、学生さんが、実行できるとは思えない。
意味はわかっても。

そこで、私自身のやり方やコツの一部を
極意としてお伝えすることに。。。

まぁ、エスキスの手法などというものは、
各自で、編み出すものだと思っているのですけれどね。

道具もいろいろです。

鉛筆を使う人もいれば、
色サインペンを使う人もいるし、
学生時や勤務時には、ホルダーを使っていましたね。

専用の芯削り機もあります。


手描き時代では、なくなってからは、
ノック式を愛用。画材屋さんで見つけたのかなぁ。



上から、ノック式エスキス用筆記具
中、ホルダー(2mmの芯を押し出して使う。削ると細い線も描ける)
下、ペン先の長い製図用シャープペン。

鉛筆のキャップはいらないし、かなり便利。
もっぱら、エスキス用に使っています。
依頼主さんとの打ち合わせ時にも。

ここで、エスキスと、エスキースの
両方呼び方がある話に戻ります。

先日、販売になったばかりの
本屋大賞2位という書籍のタイトルに
「エスキース」という言葉が入っていました。

本といえば、校閲が入るわけですから
この表記は、間違いないはずです。
小説の内容は絵画にまつわるもののようです。

建築的には、エスキス。
絵画的には、エスキースが、
一般的な呼び方ではないのかと。

今のところの、私の結論です。

リフォームのように完全に英語には無いカタカナ表記も
一般的な言葉としてしまう日本。

エスキスの意味も、和製英語ならぬ、和製フランス語。
なのでしょう。

ちなみに、日本の建築家で
すでにこの世におられない巨匠と呼ばれる方々は、

多くの方が、フランスの建築家ル・コルビジェに師事されています。
ということは、エスキスの言葉も、
この頃から輸入されたのではないのかと、私は勘ぐっております。

奈良時代以降の、社寺仏閣は、中国からの建築様式。
明治以降のコンクリート建築は欧米諸国から。

それまで、日本の木造の設計図は、大工さんの板書きでしたから
設計図面の描き方や手法も、西洋に習ったわけですね。

カタカナ言葉は他にも

・ゾーニング=各機能のエリア分け
(最近は感染症対策で、人のエリア分けることにも使われます)

・ブランニング グリッド= ます目(方眼)を使ったプランニング

・ブロック プラン= ゾーニングにほぼ同じ。動線なども含む

などなど。

きっと、これからも英語のような日本語、
もはや日本的な概念になったフランス語などを、
駆使しながら、授業を進めることになるでしょう。

一つ一つ、紐解きながら
分かりやすく伝えていく所存です。

気づきについては、まだまだあります。

春の授業に想うこと、その1〜設計演習は山登りに似て〜

2022年04月25日 | 設計製図演習2022

八重桜が最後の饗宴

新年度、皆様いかがお過ごしでしょうか。

4月の最終週を迎えて、新しい環境にも
そろそろ、慣れてこられた頃でしょうか。

この春、受け持つことになった
大学での、設計製図の授業での気づきや想いを綴ります。
(もちろん、個人情報は開示しないで)

「財を遺すは下、仕事を遺すは中、人を遺すは上」

教えることが決まった時、
偶然にも、かかりつけ医で診察待ちをしていた時に、

廊下に貼ってあった
医師で政治家の「後藤新平」の言葉です。

明治から昭和にかけて活躍したこの方の言葉を
この医院では、大切にしているのか。。。

と思うと同時に、まるで天の方から
私にも伝えようとしているのかもしれない
と、ハッとしました。

最初のふたこと目までは、
設計事務所の経営にも当てはなります。
最後の言葉は、スタッフ育成にも当てはまります。

そして、今回の、授業担当のお仕事には、まさに
「人を遺すつもりで、取り組みなさいよ!」

との教示のように感じました。

設計監理をしている建築士は、有資格者の
全体の2割ほどという中、

さて、私は、どう、人を遺していけばいいのでしょうか。。。

全員ともが、資格試験を受験するとは限りません。
それでも、無事に単位をとって卒業すれば、
受験資格を得られる学生さんたち。

建築や住まいの学びは、実は、人生の学びでもあると
私は思っています。人生全般に必ず関わってくるからです。
避けて通れない。

どの学問もそうかもしれませんが、
自分で学んだことを通じて、社会に出て、
社会人として、生活者として、活躍していくわけです。

もちろん、情報や知識は、他の授業でも得られます。

製図は、それに加えて、思考力技術力の2本立てです。
さらに、プレゼンするという伝達力も養う必要があります。

ワオ、盛りだくさん!

そこで、授業構成を緩やかに
3部構成にすることにしました。

最初の導入は、アイスブレイク
難しすぎない話から、徐々に専門的な知識へ。

次に本題と演習

最後に、ミニプレゼンの時間。

何事もそうですが、急に難しいことはできません。
少しづつ、少しづつ、、高い山に挑戦する登山のような
感じでしょうか。



製図道具が、登山道具。

最初はハイキングのような小山に。
(靴は本格的でなくても可、笑。)

次に、少し息切れするくらいの日帰り登山に。
(ちゃんとした靴を履かないと、疲労や怪我の元)

さらに、本格的な、泊まりキャンプの登山。
(足首までちゃんとある登山靴を履きますね)
道に迷わないよう、下調べも万全に!

最終目標は、今は絶壁か?と思えるほどの
製図の試験の山へ。

思考の時間も、作図の時間も、相当に短いのが
本番の試験です。

そのためには、スピードも身につけないとなりません。
(この辺りは、社会人になって、経験を積んでからかなぁ。
学生時代は、まずは、思考力。)

現在は、Zoom授業併用なので、
学生さんが、人前で話さないで
授業が一方的に終わることもあり得ます。
それがないように、毎回、
参加型でいきたいと思います。

そして、この設計脳を鍛える演習課題を通じて、
今後、社会に出て行く学生さん方が

自分の課題を見つけ
自分自身で答えを見つけ出し、
解決していく力を

身につけられるように、
微力ながら、精一杯取り組んでまいります。

余談、、、

先日講義を終え、大学の建物から出たら、
新入生と思われる学生さんが数人でウロウロ。

大学の施設の場所が分からない様子。
「◯◯って、どこにありますか?」

あ〜、ごめんなさい。私も新入りで、分からないのよ〜。
と、事務局をご案内。

初々しさに、私がノックアウトされそうでした。

春の季節の花々、新緑の眩しさが、
輝く学生さんに、重なるのでした。

続きます。。。