せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

先達の知恵と労役に、今の無事な暮らしあり

2019年10月28日 | 熊本便り

↑高瀬船着場跡の石積みは今でも残っています。

先週金曜日に、熊本に戻りました。

羽田空港の天気は、荒れ模様。
フライトもかなり揺れましたが、
熊本空港に着く頃は晴れており、ホッとしました。

関東を離れ、移動したその後に入ってくるニュースでは
成田空港がまた孤立したとか、千葉の電車は運休など
大雨による被害がまた広がっている様子。

台風15,19号の被害に遭われた方は、
さらに追い討ちをかけられ、とても痛ましいです。

亡くなられた方には、ご冥福をお祈りするとともに
避難生活や片付けに追われている皆様には、
お見舞い申し上げます。

先のブログで、他人事ではない、と書きました。
熊本も過去には洪水県でした。

もちろん、今も川の氾濫ギリギリの時もあり
工事は、まだ一部で続いています。

川が多い=水が豊か=洪水も多い

その地形や、気候風土の歴史の中で、土木の神様と言われる
熊本城築城した加藤清正公のドキュメンタリー風ドラマが
ちょうど、昨日の日曜日に九州で、放映されました。

個人的には、治水の神様とでもお呼びしたい気持ちですね。
水を田に引くことと同時に、
洪水対策も行う知恵と実行力、
民の力の活かし方などが描かれておりました。

現代で言えば、城主は、県知事に相当します。
さて、現在の関東圏の知事の方はいかがでしょう。

どれだけ現代の工法で洪水対策を行っていても、
自然の猛威には逆らえません。

避難や防災の観点からも対策が求められます。
まだまだ備えが、万全とは、言えないのではないか。。。
そう映ります。

加藤清正の偉業は
自然利用の仕組み、堰や井手、
水田による地下水利用など
県下各地にその痕跡が残され、現役で活躍しています。

この土曜日に、
大河ドラマ韋駄天に関する施設や場所巡りをしたいと
東京から来た友人を案内する中、ここでも加藤清正の
堀替工事の跡に出会いました。



↑ドラマ「俵ころがし」の撮影場所は「高瀬船着場跡」

脈々と受け継がれてきた治水。

日頃は、遺跡の一つ程度にしか感じない自分を恥じつつ
有事の時には、本当に有難いことだと感じ入ります。

先達の知恵と労役に、今の無事な暮らしあり

と、感謝して日頃過ごしたいものです。



そして、微力ながら、
将来の山や川、海の美しさも損なわないよう
日本の木のものづくりに取り組んでいこうと、
改めて思うのでした。

来年の手帳に成長をイメージして 〜志とは自分の代だけで完成しないもの〜

2019年10月21日 | ワークライフハッピー


今日は、プライベートの話題3つから、
ワークライフハッピーについて綴ります。

1)手帳にみる自分の成長

この時期は、来年の予定もそろそろ決まり始め、
手帳を2冊持ちの時期です。

毎年、10月には、同じシリーズのレフィルを購入します。

最後のページの樹木が、大きくなっているのを比較して
自分の成長は、どうだろうか?
と、考えるきっかけになるのもありがたいですね。

↓左2020年


来年のパッケージには、15周年とあります。

使い始めて、10年以上経過しているので、
そうか、出た頃から使っているのだなぁと、
感慨深くもなりました。

使い方の講座にも参加し、メールでのフォローもあるので
なかなか、楽しいものです。

当初は戸惑ったバーチカルタイプも
すっかり慣れて
今では、コレでなくては、予定が組めません!

時間の見える化は、本当に私を助けてくれています。

使いこなせている=人生を自分で決めている!
という自信にもつながります。

欲張りワークライフハッピーでいられるのも
この手帳のおかげです。

まだ、バーチカルタイプを使ったことがない
という経営者やワーキングマザーがいらしたら
ぜひ、お試しください。

使いこなすには発想の転換も必要なので
書籍や、講座受講がよりオススメです。

一緒に仕事をする、付き合いあるの女性にも勧めてきました。
楽しく仕事も遊びもしたいですしね!

2)ワーク、ライフ、社会活動、どう時間をつかうか迷う時

週末は、みなさんいかが過ごされたでしょうか。
台風被害の被災地へのボランティアへ
行かれた方もおられると思います。私も募集状況を調べました。

熊本地震の時は、子どもを横浜の夫と義理両親に
預けた後は、飛び回れました。
腰も痛めてなかったので肉体労働も可でした。

被災地が、関東東北の今回、
社会活動としては、親子で行きたいところです。

はやる気持ちと、天候の悪さに、体調を考え、
かなり迷いました。
結局、ボランティア活動は、控えることにしました。

週末は、子どもが風邪の病み上がりだったのと、
週明けに、私自身の健康診断、
胃カメラの検診予定が入っていたからです。

次回、別の方法を考えようと、気持ちを切り替えました。

これまで、優先順位は、
子ども(家族)、仕事(経営)、社会貢献(ボランティア)
の順番で予定を組んできました。

最後に、自分の趣味活動です。自分だけの時間もないと
心に余裕がなくなります。

一日で言えば、仕事を終えて、夕食を作り片付けをして、
洗濯物を畳んだら、入浴し、寝る前に自分の読書の時間。
といった具合です。

その前に、仕事をし直すこともあります。
その時は、読書が10分くらいになりますが、
このルーティンを壊さないよう心がけています。

どんなに眠くても、
ご先祖供養(一日一人の鎮魂を行っています)と
その後の気分転換読書(建築ではない分野)を、
コックリ、コックリしながら、笑
(ちょっと前は、子どもへの読み聞かせでコックリしてました)

これで、脳からその日一日のいろいろなものが払拭され、
ぐっすり眠れるからです。

以前は、自分の時間を作らず、がむしゃらに仕事して
ボランティアも多くやっていました。

それだけでは、自分は何のために生きているのかな〜
と、はっとした時があり、

自分のためだけの時間
というものの貴重さに気がついたのです。
不思議と、心に余裕が生まれます。

週末は、こどもの体調と自分の健康優先と決めたからには、
そこに向かって楽しみました。

にわかファンとして、テレビで
ラグビー日本戦を観戦。

桜ジャージは持っていないので、
赤縞シャツをお揃いにして、笑。



モニターに映る観客の中にも、赤縞シャツ観戦の方が映り
同じこと考えてる方がおられるわ〜と
ちょっと嬉しかったですね。

3)ラグビー観戦に学んだもの

ラグビー観戦、ベスト8入りという日本初の快挙に、
当事者ならぬ、多くの国民の皆さんが喜ばれたと思います。
感動だけではなく、様々なことを学びました。

これまでも、ラグビーに全く、縁がなかったわけではないです。

学生時代知り合った背の高い彼は、爽やかなラガーマンでした。
前歯が欠けてしまうということも、その時に知りました。

今のパートナーと、彼の後輩の
大学対抗試合の応援に行ったこともあります。

でも、やはり、体のぶつかり合いが痛々しくて、
どうも好きになれず
今回、やっと、その奥深さを知りました。

初のアジア大会や負け続けてきた日本の歴史などから、
志とは自分の代だけで完成しないものを言う
という言葉を思い出しました。

これまでの歴代のラガーマンとその関係者の努力と礎により
今の日本代表が、この舞台に立てているのだな〜と、
しみじみ感じ入りました。

女性の社会活躍は、差別という見えない壁との戦いでした。
それを、自分自身も感じる為、先達たちをありがたいと思ってきました。

女子スポーツに差別があったことは
NHKの大河「いだてん」で歴史を取り上げてくれましたね。

一方で、スポーツの国同士の大きな大会は、
現代の戦争とまでいかないでも
国力の戦い(特にオリンピック)と思っているので、
スポーツ観戦には、ちょっと冷めている自分がいました。

しかし、今回、様々な国出身の選手の
ミックスチームも良かったですし
歴史をつくることは、人々の見えない努力である
ということが、はっきりと示され、とても感じ入りました。

紛争が絶えない国際社会ですが
一つの方向性を示してくれているようにも思えました。

民族の違いや考え方の違いを乗り切るには、
ルール(国際的な規律)が必要で
互いに、讃えあい、尊重し合うということが大切であるということ。

移民問題にしても、多国籍の人々に活躍してもらうと同時に
その国の精神、ポリシーをきちんと引き継いでもらうことが
大切であるということ。

そんなことを、考えました。

一緒に観戦した子どもは
学生時代の私と同じような感想でしたが、笑。

時には、スポーツ観戦も良いものですね。

志、、、自分だけでは成し遂げられないけれど、
馬鹿にされても、諦めてはいけない。
次世代に必ず、つながると信じて。

そんな風に、桜のラガーマン達から学びました。

次の世代に、バトンはしっかりと渡りましたね。
これまでの、競技人生にありがとう!
そして、お疲れさまでした。

台風災害を乗り越えて、残る民家、残る建築。

2019年10月14日 | 日本民家再生協会・伝統建築・造園


台風19号の被害に遭われた方、
今まさに遭遇されておられる方には
心より、お見舞い申し上げます。

日本の自然災害は、多くの洪水に
古代の時から悩まされて参りました。
(古事記の神話に出てくるヤマタノオロチなど)

ダムの建設や、堤防の造成など、
風景や自然の破壊と引き換えの治水の努力も行われてきました。

それでも、こうして、台風被害による川の氾濫の
現実には、言葉もありません。

私たちは、『自然との共生』とは、
簡単には言えないのです。

自然には、災害も含むからです。

こうした災害には、共助と備えを持って、
対処していくしかないでしょうか。。。。

その土地から離れられない農業さんや
または台風15号で浸水被害を受けた
横浜のように工業地帯など、

土地が「働く場」の場合は、
移動すれば良いという問題でもありません。

被害を最小限に抑えつつ、
皆で助けあいながら再建し、
そしてまた、次に備える。

この繰り返しなのかもしれません。

偶然にも台風の待機時に読んだ書籍に
日本人のリスク回避の知恵は、
神話にありと(先のブログ参照)書かれてありました。
そのための神社、祭祀であったと。

先代の知恵に学びつつ、自然災害と共存
しながら、生きながらえてきた日本人の
我慢強さなのかもしれません。

その中で、建築屋としての自分自身の役割は
何だろうかと考えていました。

ちょうど、この3連休に触れた建物で、
その考えがはっきりとして参りました。

災害に耐えつつ、
復旧しやすさの住まいを創っていくということです。

これまで、雨戸というものは、
建主さんからの要求がなければ
設計してきていません。火事などの避難時には、
障害になるかもしれないからです。
(出られるシャッターも、もちろんありますが)

それから、見た目と素材が、、、美しいと思えないからです。

それでも、こうして台風被害を目の当たりにすると
ガラスの強度を上げる、フィルムを貼るだけでは
対処できない気候変動期に入ったのかもしれないと思うのです。

台風通過後に訪ねた建築は、江戸期に建てられたそうです。
昭和の増築部分も合わせて、
古民家レストランに生まれ変わっていました。
オープンして、10ヶ月。



家族の記念日に、伺わせてもらいました。
私の再生現場の勉強も兼ねています、笑。

先の15号台風では、瓦も飛んだそうです。
修復し、営業再開。

そう、日本家屋は修復可能なのが良いところなのです。

被害はどうしても起きます。

これがコンクリート建築だと、雨漏れの原因はよく分からず
壊す方向に行ってしまうのがほとんどです。

案内くださった方の話では、雨戸が付いているので
大正時代のガラスも守られたとのこと。(トップの写真)

雨戸のないところは、
自分たちで、ベニヤで覆ったそうです。

場所は、古都鎌倉なので、武家屋敷?
と想像しそうですが
ここは、地元の地主さんの民家。

↓杉丸太が4間とばす広縁、こういう部分につい目がいきます。

代々が、手入れされながら住み継いで来られたそう。

蔵は、宿泊施設にもリニューアル。
メゾネット空間がラグジュアリーです。
(最近はそういう表現みたいです)

↓お蔵から出てきた棚を家具に再利用だそう。


こちらに伺って、
雨戸、もしくは防風対策をちゃんと取り入れていかねばと
心に決めました。

これまで、私たちの設計基準は、
500年に一度の大型台風に備えるのは、
建築基準法よりとても高い性能です。

それが、私が生きている間に、
すでに、そのクラスの台風が、日本列島を度々、襲っています。

もう、当たり前に災害が来るという時代感覚で
備えなくてはならない時だと、はっきりと感じました。

もう、迷いはありません。
命を守るのが建築の使命でもありますから。

格好悪いとか、費用がもったいないとか、言ってられません。
そして、単純に雨戸があれば良いというものでもないと考えます。

雨戸だって、飛んでいくかもしれないのですから、
既製品は、軽い、アルミですから。

予算の範囲で、できるだけの備えをしていく
住まいづくり、、、そこですね。

蓄電池も当たり前に、住まいに欲しいです。
今、私のオススメのセットは200万円くらいです。
ちょっと、まだ手が出にくい価格です。

開発と普及を望みます。

ユーザーさんには、今あるベストをお伝えし、
一緒に対策をチョイスしていけたらと思います。

これからも、ユーザーのみなさん、施工者のみなさん
同じ方向に向いて、意匠よりもまずは、機能優先の
住まいづくり建築づくりをして参ります!

専門外ではありますが、
生活に直結るので、補足で書きますと

治水対策の土木部分に関しては、
コンクリートで固めるだけの時代も
もう終わったと思っています。

建築の分野で木の住まいの完成形が、
確立できたら、その後は、
まちづくりや自然との共存共栄の方法も
ライフワークとしていきたい所存です。

目の前のできるところから取り組むことが
最終的には、世の全体の力になると信じて!

追伸:
古くからの由緒ある神社は、
災害時の避難場所に適しているところが多いそうです。

近くの神社も訪ねました。

奥の権現様の祀られている洞穴は、、、ちょうど人の高さ。
もしかしたら、災害時の逃げ場所だった!?
とまで想像してしまいました。(写真は撮りそびれました)



これからは、神社をそんな視点でも観察していきたいと思います。



日本神話と自然災害〜生命と風景の哲学〜を読む

2019年10月13日 | まちづくり

↑いつもは、ぼんやりとした横浜みなとみらいのビル群の姿が、
くっきりと浮かぶ台風明け、夕方の空

台風19号が関東を通り過ぎ、一夜明けてのまっさらな晴天。

その後、夕方には、遠方のランドマークタワーの周りが
よく見通せるほどに、空のチリが飛びさった模様。

一方で、今はまだ、東北の方に移動し、川の氾濫など、
大変なことになっている状況がニュースで流れ、
他人事ではないと身震いいたします。

子どもの時に報道されていた故郷の風景が蘇ります。
熊本も洪水は本当に多い地域でした。

治水に関しては
熊本城築城の、加藤清正公の時代からの課題、
一部はその時代からの対策で、防がれている地域もあります。

今回、被害に遭われている方、救助を待っておられる方には
お手伝いできないことが、心苦しいです。

私自身は、自分の家族や身の回りを、守るということに
徹しました。

家の周りの飛びそうなものを取り入れたり、停電対策など、
台風による停電と、断水を熊本で経験している身にとっては
当たり前のことが、関東の義理両親は、経験がないらしく、

驚くかな、台風=停電というのが、
ついこの前まで、結びついていないのでした。

鉢植えなど、外に出しておいたら危ない、ということを伝えたり
「大丈夫だよ、お店は閉まらないよ〜」と宣うところに、ぴしゃりと
「備えあれば憂いなしだから、買い物を済ませておくように」
と、口うるさい鬼嫁とかしておりました。

実際に、スーパーの棚から、水、カンズメ、パンは
ほとんどなくなったようです。危ない、危ない。

お隣さんの物干しの屋根が吹き飛んでしまったのは
気の毒なことでした。早速、ウチに破片を取りに来られました。

おかげさまで、我が家は庭の方の植木の多少の被害はありましたが
大事には至らず、ホッとしています。

台風にじっとしておく間は、読書の時間と決めていたのですが
まさに、暴風、大雨の中、読んだのがこちらです。

先のブログでご紹介した「空間の履歴」という概念を打ち立てた
哲学者の本を、図書館で借りたり、購入したりしておりました。

まさに、テーマが、自然災害。
『生命と風景の哲学』の本は、東日本大震災後に書かれ
そこには、
日本神話こそ、危機管理と自然災害への備えを含ませる思想がある
と書かれていました。


ここで、あっ!と気づきがありました。

森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクトをはじめて
山に入っていき、環境の課題を少しは勉強し、

目に見えないものを考えさせられるようになり、
日本の神の存在や古事記などにも興味が出てきて、

そして、建築とは関係ない分野だけど、
と神話や神道も調べるようになり

ここで、日本神話が自然対策、まちづくりに活かせると知り、

興味の延長に、やはり私の生業の分野に
戻ってくるというところで、
腑に落ちたのでした!

建築→木→山川海→神社→神道→古事記→日本の神
→神話→自然災害対策→まちづくり→建築

一周したのでした!!(笑)

なぜ、興味がわいたのか、その赴くままに
図書館で本を借りての隙間勉強や、人との意見交換が、
この地点に降りてくるためだったとは!?

遠回りだったかもしれないけれど、
この哲学者の考えに納得するのには、きっとこの道筋が
必要だったのでしょう。

お導きに感謝です。

いつも、何かしらモヤモヤとしたものがあると
手当たり次第に、興味の幅を広げてしまう癖があるのですが

学びが一周することで、自分の血=知となり、肉=体験
となるように感じます。

書籍によると、
災害対策は、日本の神、スサノオを辿ると見えてくるそうです。
伊勢系のアマテラスが祀られている神社は軒並みやられているけれど、
スサノオを祀った神社は災害を逃れたなど。。。

神話や神社に祀られている神の名を知らないと
ピンと来ないですよね。

神様の名前が多すぎますからね、日本は。

読書術で習った、「本の中心点をとる」から
読み始めたところなので

まだ、読み途中のため、書籍の内容はどこかで、
感想をまとめたいなと思います。

遅ればせながらの哲学デビューとも言えますが
少しは自分の考えに深みが出るかしら?
と期待しています。

そして、今、関わっている
「熊本県五木村の木を使ったまちおこし」
もダム問題と切り離せないので、
この学びが、実践に活かせると信じています。


本物のバリアフリーとは何だろう?必要なのは、自立と尊厳。 〜調査と研修で検証する02〜

2019年10月08日 | ユニバーサルデザイン


本日は、二十四節気の「寒露」。
朝晩の涼しさが増してくる頃です。

横浜では、日中は、日差しも強く暑さもある中、
早晩は静かに、冷えてきました。

早朝お弁当を作るときは、冷えるので着込み、
日中仕事で出かけるときは暑いので、
少し薄着になるといったように、調整しないと、
すぐに風邪をひいてしまいそうです。

皆様の地域での気候は、いかがでしょうか。
用心が必要な季節柄です。

今日は、先日のブログの続きになります。

バリアフリーについて、
今後私たち設計者は、どうしていったらいいのか、
検証の必要あり、の話です。

建築士会の研修で、海外の事例紹介がありました。

一級建築士であり、大学で教鞭も取られている
アクセスコンサルタントの方が、講師です。
車椅子利用46年とのこと、当事者でもあられます。

これまでのご自身の体験を踏まえ
ご自身の研究、世界の制度や事例のお話も伺いました。

『バリアフリーは国際的には通用しない言葉、
アクセシビリティと言うべき』であると。

ちょっと、ショックでもありました。

私たちは、心のバリアも含めて、
バリアフリーを目指しています。
そこにある壁をとり払うイメージです。

しかし、国際的には、いかに目的地に自立してたどり着けるか、、
施設だけではなく、交通事情も含めて。
利用できるかに焦点が当たっています。

バリアが存在するということ自体が
ナンセンスということでしょう。

もちろん、諸外国では、まだ様々な制度の整わないところもありますが
日本がお手本にするのは、欧米の先進国と言われる、
アメリカやイギリス。

例えば、野球観戦のスタジアムの
車椅子利用者への席の多さと、選択肢の多さは、アメリカの事例。

交通に関しては、イギリスの事例が紹介されました。

民間の施設でも、それだけの配慮があるということを示されました。
日本では、公的な推進義務はあっても、
民間までは大きな縛りはありません。

その整い方の差は、歴然でした。

福祉部会主催の研修会なので
日頃、バリアフリーの意識の高い建築士が集ったのですが
それでも、会場からは、ため息が漏れました。

ここで、私が20代でバックパッカーで、
ヨーロッパを旅した時のことを挿話します。

街の中に高齢の杖をついた方、
車椅子利用の方の
一人での外出を多く目にして、とても驚きました。

日本人も長生きなのだから、
とうぜん高齢者や車椅子の方は多くおられるはず、
でも、外出しているのを見るのは本当に稀でした。

たまに見かけても、介助者も同伴でした。

その旅で、日本のバリアフリーの遅れを
目の当たりにしたものです。

それから、20年以上経って、どうでしょうか。
以前よりは、少し、見かけるようになりました。

しかし、道路事情を考えると、それはとても危なっかしく
最近でも、電車ホームからの落下など痛ましい事故も起きています。

ハードの側面でカバーしきれない部分は、
ソフト対応も考えられます。

目の見えない方には、声をかけて欲しいとのことでした。

日本人の美徳、遠慮といった
声かけのなさがあると、当事者研修で伺ったこともあります。

人としては、声かけと誘導(横断歩道など)
建築士としては、当事者の目線の設計、
このことを常に意識して行動していきたいですね。

今回の研修の話に戻ります。

講師から、特に強調されたことは、
障害者権利条約を日本は国連総会で採択したからには、
きちんと、「障害者の尊厳と権利を守ること」でした。

そうです。スタイルだけではなく、実務で実践ですね。

オリンピック誘致決定後は、
日本の障害者関係の法律も改正されたことが紹介されました。

昨年には、やっと、バリアフリー法も改正されました。
(不足部分もまだまだありますが)

誘致が、バリアフリーを、国際的な水準に上げていく
きっかけになっているのは、喜ばしいことです。

一方で、日本の法律も、
建築主の気持ち次第というところが大きく
施しのような整備にとどまっているというのが、
大きな課題ということでした。

悲しいかな現実は、まだそうなのです。

法を整備し、基準を整えておいて、あとは建主(設計や施工も含めて)にお任せ〜
では、「なんちゃってバリアフリー」が増えるだけです。

この指摘には、集まった建築士も、
気が引き締まったのではないでしょうか。

今回の研修で学んだ、今後のバリアフリーを整える方向性を
私なりにまとめると

1)施設及び交通環境などあらゆる社会環境で
自立した生活と行動ができるように、
使う、利用するという視点で、しっかりと見ていく。

2)法的な整備では、カバーしきれない部分も
専門家として、ハード面の整備をしっかりとフォローしていく。

3)この程度であれば良いだろうという施しの考えを捨て
世界の良き事例を参考に、建主への啓発も行っていく。

このことが、人の尊厳を守れる環境づくり
つながっていくのではないかと考えます。

しっかり、と強調したのは、時として、
少数派への対応はないがしろにされがちなので、
そこは、対等に、平等にあつかう、という意味がこもっています。

綴ることで、私自身の覚悟にもなりました。

研修会を開催くださった建築士会の仲間と講師の方々には
感謝いたします。

<補足>
現時点での、国や横浜の制度が気になる方は、
こちらを参考にしてください。
制度を整えつつあることが分かると思います。

建築士は、網羅しなくてはならないので、大変でしょう?(笑)
ここにとどまらず、実質に見合ったものにしていきたいですね。

国土交通省のバリアフリー、ユニバーサルデザインのHP

横浜市福祉のまちづくり条例

整備マニュアル