せっけい日和

MKデザインスタジオ一級建築士事務所柿本美樹枝のブログです。設計者として、生活者として、多用な視点で綴っています。

UIFA JAPONのWEB交流会に参加して

2021年11月29日 | 模型・実験・見学・講習・イベント


先週末、UIFA JAPON (国際女性建築家会議、日本支部)
のWEB交流会に参加しました。

その中で、熊本県建築士会の女性2人の建築士の方と共に
熊本で起きている自然災害からの復興について
発表をさせていただきました。

話題提供は、熊本の森林木材活用から
H28年の熊本地震からの復興について
R2年7月の豪雨災害の状況までに及びます。

この会議自体には、私自身所属していません。
会員の方々が、熊本地震の際に、被災した方々への励まし
そして住宅相談に、現地に来てくださったのが
交流の始まりでした。

世界で活躍する方、
女性建築家としての大先輩を前に、

こんな私が講師で良いものかと、緊張も走りつつ
私自身も地震に遭い、当初は戸惑いながらも、
復興に関わった事例を、ご紹介させてもらいました。

どれも持ち時間では、詳しく話せませんので
事前に、それぞれの建物の特徴や、抱えていた課題を整理し、
どう乗り越えていったかの資料をお配りしていました。
(個人情報や特定できる情報は除く)

気候変動や、地震国日本で、自然災害は続くと思われます。
今後、復興に関わってくださる建築家の方々の
参考になれば幸いと思っています。

また、後半のオンライン懇親会(乾杯して飲みながら)
では、この発表が終わるまでと、取っておいた今年の
ボジュレヌーボーを開けました。(小さな小瓶ですが)

UIFAが始まったのは、
フランスの女性建築家の方の声かけだそうです。

だから、JAPAN(ジャパン)ではなく、
日本支部は、JAPON(ジャポン)と呼びます。

そこでワインは、フランスにちなんでみました、笑。



この機会を頂いたことで
思いがけず、良かったこともございます。

依頼主さまには、設計監理契約時に
学会やセミナーなどでの、発表事例紹介が「OK」かどうか
お尋ねして書面を交わしているのですが

念のため、発表しても良いかどうか
今回も、UIFAのご紹介と共に、お尋ねしました。

皆様快く了承していただき、有難いことでした。
その際に、皆様の近況が伺えたことです。

中には、単身赴任となってしまい、自宅を離れての生活で
再建した家の良さを実感しているところ
というご返事も頂いたりして、嬉しく思いました。

皆様のご健在も確認できて良かったです。

このような機会を与えていただいたUIFAの皆様に
感謝しつつ、依頼してくださった皆様にも感謝の念と
大変な状況を、一緒に乗り越えた記憶が蘇り
私自身も、感無量でした。

人吉球磨地方の洪水の復興に関しては
まだ、これからですので、
終わった感じではございませんが、

県や自治体の補助制度や、手法が整い、
どう再建するか、地区ごとでみなさま
迷われている方も多いと、現女性委員長からの発表。

こういったことは、熊本だけにとどまらず
全国にも及ぶ課題であり、建築関係者の良きネットワークで
少しでも、望まれる形での再建や復興が叶い、

そして、何より予防策、、、
自然との共存がどうあるべきか
議論されて実行されることを願ってやみません。

私自身も、甚大な被害を目にする度、
無気力になりそうにながらも、微々たる力でも
諦めてはいけないと、発表しながらも、
改めて気が引き締まる思いでした。

交流会の様子は英字版ニュースレターで、世界へ。
英語翻訳は、お願いしました(笑)

タイトルが長いとのことで、修正中。


この度は、このような機会をいただき、
誠に感謝いたします。

ありがとうございました!!

北海道と北東北を巡る〜日本の住まいの源流を訪ねる旅02〜

2021年11月15日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

松葉を利用した狩小屋(クチュ)ウポポイ内にて

本日は研修旅行の続きとして、
アイヌ文化から学んだことを綴ります。

建築というよりは暮らし寄りの内容です。

1)アイヌ文化に見る縄文の暮らしの名残

そもそも、なぜアイヌ文化や、縄文文化に興味があるのか?
ですよね。現代の建築をつくっているのに。。。

森と樹と暮らしを繋ぐプロジェクトを始めて以来、
建築が破壊行為にならないよう
森との共生を探ってきました。

人々だけではなく、
生き物や植物含め、あらゆる命のとの
共想の社会をつくっていくこと
を、理想と掲げているわけですが

その中で、古来からの神道(八百万の神信仰=自然信仰)に
ヒントがあるのではないか?と、たどり着きました。

日本人のルーツや、古(いにしえ)の人々の
生き方や、考え方などを学ぶことも重要と考え、

遅ればせながら、民族の歴史や
伝統的な家屋より以前の竪穴式住居とか
茅葺とか、、、
そういったことを研究対象にされている方から
学んだりしてきたわけです。

コロナ禍で、より一層、社会や環境問題+暮らし方も
見直す時代にもなってきています。

そんな背景とともに、縄文文化の豊かな暮らし、
争いのなかった暮らしが見直されていて、

考古学の検証技術も進み、
ますます、注目されている縄文文化。

その名残や原点を垣間見れるのが、
実はアイヌ文化なのだと
知識として頭の中に入ってきて、それが実際にはどうなのか
どう、現代社会に生かせるのか?
ということを考える旅でもあった訳です。

2)アイヌ文化は奥が深すぎて

アイヌ文化については、予習もしていきました。
(ほとんど知識がなかったもので)

そうでなければ、ウポポイ(民族共生象徴空間)の
博物館等でみたアイヌ文化の内容は、
深く入ってこなかったと思います。

熊送りの際の男女を表す木


小熊を飼っていた小屋の模型

中でも、予習で役立った書籍をご紹介します。


アイヌの神話です。
伝承による言い伝えなので、民話とも言えるかもしれません。

ギリシャ神話や北欧神話のような争いはないものの、
やはり神の存在が出てきて、世界で共通する
人類が自然とともに生きて行く、知恵や教訓
人としてのあり方が詰まっています。アイヌの世界観が分かります。

 アイヌの方で、初めての国会議員である 
作家でもある萱野 茂氏の著書

B)チセ・ア・カラ(われらいえをつくる)



書籍はすでに売ってはおらず、図書館で借りました。
昔ながらのやり方でチセを実際に再現した写真集です。

木の皮を剥いで縄を編むところから
掘立柱を共同で立てるところも。
土地の選び方も描かれています。
建築的知識はこの本で学びました。


昨年2020年の出版。
外国の日本人女性研究者が調査した英文(1974年出版)
の和訳本。今、このタイミングでの出版に驚き。
調査は、実に1960年代なのです。

著者に色々と教えてくれるアイヌのフシコさんが魅力的。
当時の暮らしが克明に記されていて、
日本人にとってもお宝な内容。

  ・ ・ ・ ・ ・

そして、実際に触れてみてどうだったか。。。
ですが、とにかく素晴らしかった!!!

アイヌ刺繍の芸術の緻密さとその意味。
薬草などの活用。自然との共生の暮らし。
神聖な行事、熊送り。

アイヌ刺繍の小物(展示はウポポイのチセ内)
刀掛けは製作に3ヶ月くらいと二風谷で実演方に教えもらう


背景を知るのと知らないのとでは、あきらかに
感動が違ったと思います。

モノや情報が溢れる昨今。
古臭いものとしての理解しか得られないのではないか?
と思いました。

修学旅行生(高校生)と出くわしたウポポイ。

私たちが3時間はかかるかな〜と、
じっくり見ている横で、博物館では
実に約15分程で出て行きました。

驚きです。北海道まできて、それだけ!?
何しに来たのかなぁ。。。

「あの頃は、学びよりも友達とはしゃいだり恋愛が目的だったよねー」
と、ご一緒した、かつて乙女だった方と顔を見合わせました、笑。

北海道発の国立博物館ですが

前日に訪ねた

前日に拝観した身としては
少々物足りなかったです。

施設の規模の割に、展示スペースは少なかった。
綺麗な展示で見やすかったですけれど。。。

「擦文文化」さつもんという言葉も初めて知りました。
飛鳥時代の頃だそうです。

*擦文とは、土器の表面に付けられた「木のへらで擦ったあと」

トイチセの模型

土の家(冬の家)

アイヌの楽器 トンコリ(漆塗りタイプ)


木でできていて、自由に誰でも奏でられる。
二風谷では、引かせていただきました。
素敵な音色と身体への響きで本当に癒されます。


3)アイヌ文化は家族愛のある暮らし

それよりも、アイヌ文化を引き次ぐ地元の方々による
ウポポイ内の交流ホールでのアイヌの踊りの披露や
チセ内での、神事や唄が

まさに、茅葺屋根の囲炉裏のある空間での体験となり
大きな感動を覚えました。

聴いているとまるでため息のような、
「ハァァァァ。。。。」が聞こえてきたのですが

アイヌの方の歌い方というのは、
『最後まで息を吐き切ることにある』そうです。

呼吸法!?

踊りは、激しく腰を折り曲げて髪を振り上げるもの。
どちらも撮影禁止のため、写真はお見せできませんが
身体能力を最大限に生かした内容。(鍛える内容)

こちらを拝見できただけでも、足を運んで良かったと
思えるほどでした。

アイヌ文化を拝見しながら、、、
一番感じたのは、ご一緒した講師の先生もおっしゃるように
『家族愛』でした。

家族のために時間をかけて作る女性たちによる刺繍入りの民族衣装や
男性による木彫りの数々。精密で美しい文様。

暮らしって、やっぱり家族愛なのかなぁ。。。
誰かのために時間を割くこと。

現代の暮らしは、一人でも便利で生きられるけれど
強さや余裕がなくては、
あっという間にゴミ屋敷化とする(昨今の社会問題)

分け合う家族がいるからこそ、
人として頑張れるのかなぁ。。。
と、改めて考えさせられた旅でした。

さらに、暮らしの中に息づく
『自然愛』

大きな視点での
『地域愛』

そういったものが、結局は豊かな暮らしを
生み出していくのかもしれない。。。

そんな風に考えさせられました。

長くなっていますが、、もう一つ発見が。

4)神事にみる八百万の神への感謝

チセ内で神事を拝見しました。

現代で言えば、新嘗祭(お米の収穫を祝う)ような神事。
豊かさを祝って、お酒を分け合って、
最後に囲炉裏に酒をかけるのですが、
4隅に撒いていました。

これって、地鎮祭で縄張りの四周や
上棟式で、建物の四周に御神酒を振る舞うのと
同じではないですか!

やはりそうか、、、、
神道的な要素の原点を見ました。

木を削ったフサフサを棒に巻きつけたものイナウ(神事に使う道具)
チセ(家)内では、神棚として、祀られている。

船の先にも


まさに、今の神社で使う「幣(ぬさ)」
幣帛(へいはく)とも言います。お祓いをするときに使う
木の棒に紙を巻いたものです。

の原型とみました。

共通項が多くて、縄文文化のプリミティブな発想が
現代の私たちの生活にも引き継がれている。。。と思うと
やっぱり、興味が湧いてきます。

言葉については、全てに「カムイ」=魂が宿る、アイヌの考え方が
「カムイ」が「カミ」の呼び名になった説もあります。

まだまだ、興味は尽きませんが、長くなりました。

3日目の縄文遺跡に、、、話は続きます。
興味のある方は、次回もお読みくださいませ。

おまけ
ウポポイ内でのレストランにて、ホウバ炭火焼(5人前)
周りのコショウみたいなものは、「縄文パウダー」
玉ねぎの炭焼きと、キハダ(香辛料として)を用いているそう。




北海道と北東北を巡る〜日本の住まいの源流を訪ねる旅01〜

2021年11月08日 | 模型・実験・見学・講習・イベント

北海道は、すっかり紅葉しておりました。

11月になりました。昨日の7日は「立冬」。
いよいよ冬を迎えますね。

珍しく旅紀行をアップします。
(写真が多いです)

コロナ禍の中で延期になっていた研修旅行が
やっと実現しました!

昨年、日本民家再生協会の技術部会(勉強会グループ)メンバーで
筑波大学名誉教授の安藤邦廣先生を講師にお迎えして
「日本の住まいの成り立ち」という連続講座を主催しました。

日本のアジアの歴史から、民族、暮らし、住まい
伝統構法、茅葺の効能、などなど多岐にわたる内容で
大変大きな学びがあり、
主催したメンバーも受講された方も大満足の講義でした。

その中で、縄文時代の竪穴式住居の原型が、
アイヌのチセに残るということから、
復元された村(コタン)を訪ねてみたいということになり、
今回の自主勉強企画が実現しました。

その企画を練る間、今年、北海道・東北の縄文遺跡群が
ユネスコの世界遺産に登録されるという運びとなり、

縄文の特別史跡「三内丸山」から、
岩手の御所野遺跡まで足を伸ばそうということになり、、。

講義の際、現地スタッフとしてお手伝いができなかった分
今年は、幹事を引き受けま〜す。と名乗り出たものの、
最後まで、実現できるのか、ハラハラでした。

(2週間ブログをアップできる余裕がなかったのは
参加人数の調整、宿手配など、
旅の段取りのブラッシュアップで、
あたふたとしておった次第です。)


飛行機の車窓にすでに感激!本州とはまるで風景が違う!!


こんな感じで、ゾロゾロと総勢12名での移動。
ブーツ姿の私を写してくれた写真。
思ったより暖かくてラッキーでした。

実際、私自身は前半で帰りました。
移動の多い、長旅を続ける体力不安に加え、
家庭の事情などもあり。。。
あまり、欲張らないことに。

後半参加のメンバーからは、
写真報告を受けて個人的には満足しています。
遺跡群は、逃げていかないので、(笑)
改めてまた訪ねたいと思います。

・・・・・・・・・・

本日は、まずは1日目の
北海道二風谷チセ群を訪れた写真から報告します。


チセの基本形。左側の入り口は、風除室。必ずある。壁、屋根とも
全て茅葺き。

柱、梁、小屋組に至るまで全て丸太を組んだだけ。

土間に囲炉裏が基本形。

床のゴザや腰部分の模様入りゴザは、暖を取るため。


必ず、隅に神棚。
木の棒に括られた、縮れ毛のような形状の束は、木肌を削り出したもの。
(神社で使われる幣帛の原型と見た!)


水力を利用した杵つき。臼が屋根の下にある。

そのほかにも、屋外トイレや(TOPの写真)
こぐまを飼う小屋などもあり。村の暮らしが再現されていました。

チセの中では、伝統的なアイヌ文様の木彫りの実演も。


博物館には、丸太をくり抜いた縄文時代からあると言われる
丸木舟。

先頭には、やはり神を祀って。

建築やとしては、やはり、空間を肌で感じること
本当に大切だなと改めて思った旅でした。

その場に立って、

観ること。
嗅ぐこと。
聴くこと。
味わうこと。
感じること。

それらを通じて、太古の人々の
知恵、想い、祈りが、より身体に刻まれていくことを
実感しました。

アイヌ文化から学んだことは、
2日目のウポポイを訪ねた感想とともに、
次回に綴ります。