新聞のスポーツ面に出ていた写真を1枚切り抜きました。
白黒写真のそこに写る人の視線は鋭く、白球をしっかり捉えています。右手のラケットが今まさに、その白球を打ち抜こうとしている瞬間の写真です。
顎を引いて、白球を捉えた上目遣いの表情に迷いはありません。左腕は体のバランスを保つために肘を曲げ、拳を握っています。
2つの瞳に見事にピントが合わされ、白黒の世界で、いっそう鋭く、その迫力は際立っています。
上体をひねる瞬間に振り払われる前髪の乱れの鮮明さが、その人の身体と精神が作り出す一瞬のスピードの尋常ではない速さを想像させます。
その時、それらの迫力に圧倒される思いで写真を見ていた私は、被写体となっているその人が今や白球を打ち抜かんとする、その一瞬を捉えた写真の中に思わぬものを見つけました。
それは、その人のユニフォームの胸辺りに描かれていたある企業のロゴマークの下に、少し小さ目に
「WASURENAI 3.11」と描かれた白抜きの文字でした。
今まさに白球を打ち抜こうとするその人の表情と身体の構えから伝わる強い意志と、「WASURENAI 3.11」の文字。
白球を見定めた鋭い視線と打ち抜こうとする明確な意志が交差する一瞬を捉えたその写真。写した人の撮影の技量に驚くばかりです。
「WASURENAI 3.11」の文字がはっきりと読み取れることが、なおさらにこの写真を迫力あるものにしています。
写真には2つの意志が明確に示されています。「勝つ」という意志と、「忘れない」という意志。
新聞に載った1枚の写真ですが、久々に見た迫力のある写真です。
【その写真は、平野美宇(17歳 卓球選手)のドイツのデュッセルドルフでの卓球世界選手権個人戦女子シングルス準決勝(6月3日)での対戦を写したもので、2017年6月4日(日曜日)付の読売新聞スポーツ面に掲載されていました】
その写真の彼女は、普段はまだ幼さの残る仕草や受け答えをする彼女からは想像し難い、鋭い目をしています。人はたとえどんなに幼くても、その強い意志を貫こうとして身体と精神を交差させる瞬間には、それまで誰にも見せてこなかった鋭い目をするのだと思い知らされました。
皆さんにも是非ご覧いただきたいと思うばかりです。
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