「おい、元気かい!」「学校、楽しいかい!」「友だち、いるんかい!」

2023年05月17日 | 日記・エッセイ・コラム

 仕事柄、当山口県の県庁所在地の山口市に出向くことが少なからずある。コロナも5類になったので、これからは時期によっては月に4、5回くらいの時もあるかもしれない。

 行きも帰りも山陽道や国道などを車で移動している。その折、役目を終えて帰路に就く中、時間が合うと、下校中の小学生の三々五々の下校風景に出会う。

 その時間帯はたぶん低学年の下校時間なのか、国道沿いの、縁石で区別された歩道を小さな背丈の少年少女たちが、時に黄色いカバーを付けたランドセルを揺らしながら小走りして、私の車とすれ違い、遠ざかって行く。帰路、私は毎回そうした光景に出会う訳ではないが、そうした下校していく彼らに出会うと、私には決まったように必ず同じ感情が湧いてくる。

 特に、集団から離れ、1人で下校していく少年や少女らを見ると、私はちょっとしかめ顔になり、胸の内が苦しくなるのが分かる。

 2人や3人、あるいは4人や5人で何かを話しながら楽しそうに帰っていく姿は微笑ましい。目にする私もうれしくなる。しかし、1人でとぼとぼとうつむき加減に帰っていく小さな背丈の彼や彼女を運転席から目にすると、その背中の大きなランドセルや帽子の黄色がやけに淋しそうに見えて、思わず車を止めて声をかけたくなるのだ。 

「おい、元気かい!」「学校、楽しいかい!」「友だち、いるんかい!」

 これからの人生、たくさんの人に出会って、たくさんのことに出合って、いろいろな思いが胸に湧いて、泣いて、笑って、傷つけ傷つけられ、助け助けられ、慰め慰められ、励まし励まされ、学び、教えられ……。

 そうして生きていく君たちの人生。どんな時代を君たちは生きるのか。

 与えられた命をていねいに生きて行こう。

 君たちに私が声をかけたとしても、どうなるものではないけれど、君たちの知らない一人の高齢者は我が身を振り返って、やがて来る君たちの時代を心底心配しているんだよ。 

「おい、元気かい!」「学校、楽しいかい!」「友だち、いるんかい!」

 

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語り継ぎ、歩き続けること

2023年05月03日 | 日記・エッセイ・コラム

 大学を卒業して、ある大学の専攻科を中退し、昭和50年4月、いろいろな経緯を経て私は「社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会」という社会福祉団体の事務局職員として、社会に出た。

 以来、48年。重症心身障害児者福祉に通算17年(東京)、小中学生向けの学習塾に3年(広島)、知的障害者福祉に25年半(山口)。そこを退職して2年。今また古巣での仕事の手伝いもするようになった。

 若い頃、教師になりたかった私はあっさりその思いを捨てて、幸運か悪運かに導かれるようにして、今も障害者福祉の世界から社会を見るような人生を歩いている。

 しかし、そんな今、時が経ち過ぎたのか。30年前、重症心身障害児者福祉の世界にいた頃に見知っていた人たちの訃報を耳にすることが増えてきた。大恩人とも言うべき人も、享年101歳で今年亡くなられてしまった。

 私は「『障害』は『類』としての私たちの命題」と、以前に出版した本に書いた。その命題に向かってなお、「語り継ぎ、歩き続けること」と思い、そうありたいと意志する。

 

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