節分の豆まき 鬼は園長じゃ

2017年01月30日 | 日記・エッセイ・コラム

 先週の土曜日(1月28日)のことです。余暇活動担当職員が園長室に顔を出します。
「園長、今日は忙しいですか?」
「まあ、忙しいっちゃあ忙しいが。どうした?」
「午後に、豆まきをするんですが、園長、鬼をやってもらえませんか?」
「鬼? あー、そういえばもうすぐ節分じゃのー。豆まきかー。鬼かー。むー、うん分かった。じゃー、その時になったら知らせてくれよ」
 さつき園は月に1~2回、土曜通所日を設けています。
 その日は土曜通所日でした。来週はもう節分なので、余暇活動として利用者みんなで鬼のお面を作って、そのあと豆まきをしようという計画でした。鬼は、例年、赤と青の2匹の鬼が登場します。2匹とも男性職員が扮していますが、今年は1人の男性職員の都合が悪く、私が青鬼のようです。
 ところが、簡単に「あー、ええよ。時間があればやるよ」と請け負ったのはよかったのですが、青鬼の着ぐるみを着て、鬼のお面をつけてみてびっくりです。2つの目の穴が小さくて、お面から見える視界の狭いこと。しかも両目の穴の間隔が少し狭くて、物を両目で見ることが難しいのです。
出番を待っている間に、鬼が室内履きを履いていてはおかしいだろうと思い、脱いだのですが、まあー廊下の冷たいこと。私は足踏みしながら、余暇活動の会場になっている作業室の手前で赤鬼の職員と2人で豆まきの時間が来るのを待っていました。何とも情けない青鬼です。
 すると、どうしたことか廊下に出てきた○○さん。鬼を見つけて、こちらに近づいて来ます。
「誰? ねぇー、誰かね?」とお面に顔を近づけながら聞いてきます。
 返事をどうしようかと思いましたが、小さい声で、
「園長じゃ」と応えました。すると、○○さん、
「うひゃー! 園長さんかー」と、大きな声。
「おい、声が大きいよ。みんなに聞こえるじゃないか」と、私。
 ややあって、ドアが開きます。一斉に歓声が上がります。
 だけどこちらは視界が狭すぎて、早くもドアまでの距離や方向がうまく測れません。入り口近くでモタモタしていると、豆に見立てた硬球ぐらいの大きさに丸めた新聞紙が容赦なく、いくつもあちらこちらから飛んできます。利用者はわー、わー、きゃーきゃーと盛り上がっているようです。
 何とか鬼らしく強そうに荒々しく歩こうとしても、怖くてどうしてもすり足になってしまいます。鬼の必需品の金棒に見立てた棒状の綿入れは持っていますが、やみくもに振り回して当たり所が悪くてもいけないので、ただちょこちょこと前に突き出すだけです。
 しばらくすると、何人かの利用者の顔が見えてきます。小さな穴から見ていますので、顔しか分かりません。慎重に金棒をその利用者の顔の前辺りに突き出します。すると、一斉にいろんな方向から、新聞紙の豆が飛んできます。中には、鬼の背中に豆を強引にねじ込んでくる利用者もいます。
「わあー、やめてくれー」自分がどの辺にいるのかもよく分からないし、利用者がどう散らばっているのかも分からないのです。そんなところに、いきなり背中に豆をねじ込まれたりして、もうたいへんです。
 そんな中、新聞紙の豆を掴んだ□□さんがいつもにも増して真剣な表情で、豆を鬼にぶつける機会をうかがっているのがみえました。日ごろ見せない□□さんの表情です。あとで聞いたら、赤鬼の職員も□□さんの真剣な顔つきには驚きました、と言っていました。
 大興奮の豆まきは、みんなで記念写真を撮って終わりです。その時、お面を取ったら、そこに園長の顔があったのを見て、びっくりした表情を見せる利用者もいました。
 古くから伝わる日本の季節の伝統行事の1つです。さつき園でもいつまでも続けていきたいものです。
 あとで気がついたことですが、利用者はみんな鬼に豆をぶつけるのに必死だったようで、誰も「鬼は外、福は内」とは言わなかったのです。それは、「鬼は園長じゃ」と分かって、ここぞとばかりに日ごろの恨みを晴らそうとしたからでしょうか!?
 

 このたび社会福祉法人さつき会のホームページを開設しました。皆様に親しまれるホームページ作りに努力いたしますので、是非、ご意見ご感想をお寄せください。ホームページへのアクセスは下記へお願いいたします。
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アメリカ ファースト!?

2017年01月24日 | 日記・エッセイ・コラム

 政治は数。経済は欲。
 欲が数を制して、思わぬ価値観が世界を席捲しようとしています。
 これからどうなるの? 誰も確かな答えを持ち合わせてはおらず、明確に示すことが出来ずにいます。「しばらくは様子見でしょう」とか、あるいは「今、あわててはいけません」という、いわゆる専門家や識者といわれる人たちの言葉がうっとうしい。それくらいなら私にも言えます。
 『アメリカ ファースト(アメリカ第一)』が、今のグローバル化したこの地球世界で、どこまで通用するというのでしょうか。どこまで押し通せると思っているのでしょうか。
 移民拒否? 自分たちも移民の末裔だというのに。
 国境に壁? 敵に備える万里の長城への憧れでしょうか。 
 マスコミと対峙? それは社会の目を政治や経済の本筋から逸らそうとする猫だましでしょうか。
 格差社会。富の片寄り。上から見下ろす社会と下から見上げる社会。同じ社会がそれぞれにはどう見えているのでしょうか。
 たった8人で所有しているという、世界の富の大半。
 数で押し通す時、いったい人は何を失うのでしょうか。欲で押し通す時、いったい人は何を失うのでしょうか。
 アメリカのことしか語らい新大統領に、拍手喝さいを送り、拳をかざして涙する人たち。彼に自分たちの夢と希望を託すのですか。
 『アメリカ ファースト(アメリカ第一)』
 そう唱える者がアメリカの大統領に就いた。しかし彼では、政治は数、経済は欲、を制御できまい。
 時代はどう転ぼうとしているのか、もちろん私なんかに分かるはずもないのです。
 でも、諸君、ブレずに行こう!
 いや。だからこそ、諸君、ブレずに行こう!
 案外、世界の明日は明るいのかも知れないぜ!?


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日々繰り返すあいさつの中で

2017年01月16日 | 日記・エッセイ・コラム

 朝。
さつき園の利用者の中には、まるで自分にノルマを課しているかのように、毎朝、必ず園長室に顔を出して同じ言い回しであいさつをし、同じような話題を話していく人が10人ほどいます。しかも、園長室にやって来るその順番も毎朝同じようです。
「おはようございます。よろしくお願いします」「園長さん、おはよう」「園長おはよう。寒いねー」……。
 それに応えて、私。
「おはよう。今日も頑張ってなー」「おはよう。風邪引いてないかいのー」「荷物をロッカーに置いてきんさい」……。

 お昼。昼食の時間です。
 正午を過ぎると、7、8人の利用者が「園長さん、お昼ですよ」とか「園長、お昼です」とか、「園長さん、お昼食べようや」など必ず声をかけてくれながら、園長室前の廊下を通って食堂へ向かいます。私もそれぞれの声かけに「おー、ありがとう」とか、「もうちょっと仕事してから行くけぇー」などと応えます。

 終礼。
 作業が終わって利用者がそれぞれに帰宅の準備を始める頃。この時も何人かの利用者が園長室にあいさつにやってきます。「終わったよー」とか「園長、終礼よ」とか、作業を終えた満足気な、笑みを浮かべた表情を見せてくれながら。

 皆さんにも私と一緒に1日さつき園にいてもらうとよくお分かりになると思いますが、園長室の1日は、日々、こうした利用者とのあいさつの繰り返しの連続です。もちろんあいさつ以外にも、利用者はうれしかったことや悩みごと、家の様子など、いろいろな話をします。中には、園長と園長室で話をすることで上手に作業をさぼる利用者もいます。園長は知らぬ間にさぼりに利用されているのです。
「こりゃ。今は作業時間じゃないかね。ここで何しよるんかいの。はよー、作業に戻りんさい」
憎めません。

 こうした日々繰り返す、あいさつや会話の中で、私たちは利用者との信頼関係を育むのです。毎日の習慣化しているあいさつや何気ない会話の中で、その日の利用者の微妙な心身の状態の変化を感じ取りながら、支援に努力します。
 殊更の支援計画も大事ですが、日々繰り返す利用者とのあいさつや他愛もない会話や習慣化していると思える行動にもっと注意を払い、それらを大事にしたいものです。それが生活支援というものだと思います。
『毎日、同じことの繰り返しじゃないか』といって、飽いてるようでは障害者支援は出来ません。


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私たちの事実と利用者の真実

2017年01月06日 | 日記・エッセイ・コラム

   
あけまして おめでとうございます
 といっても、早や正月も6日。御多分に漏れず、すでにさつき園もすっかり仕事モードに入っています。
 私のこの年末年始は、自宅のテレビで各方面での帰省ラッシュのニュースなどを見聞きしたり、正月恒例の駅伝などを、そのコースとなっている沿道の風景や遠景とともに楽しんだりなどしての、まったくの寝正月でした。
 そんなぜいたくとも思われる時間を過ごす折々に思ったことです。
 例えば、利用者の○○さんが私とおしゃべりする時の言葉遣いや表情、おしゃべりの内容は、私にとっては事実です。しかし、○○さんが私以外の人(職員や他の利用者、あるいは親、兄弟姉妹など)と話すときに、同じような言葉遣いや表情や話題になるかといえば、そうはならないでしょう。それは私以外のその人にとっての事実ではあるけれど、私の事実ではありません。
 私が利用者支援で大事にしていることは、利用者についての私の事実や職員の事実、あるいは親の事実など、出来るだけたくさんの事実を共有することです。それは利用者に関するお互いの事実をどれだけ多く共有することが出来るかが、支援の質を左右する一つと思うからです。
 とはいっても、私たちがどんなに多くの事実を集めても、そしてそれらをしっかり共有することが出来たとしても、私たちが○○さんの真実に届くことは出来ませんが……。
 そうした人間存在の不可避な関係性を私たちが自覚し、畏れ、謙虚に控え、○○さんや他の利用者の真実に迫り、真実に触れようとする努力を日々怠らないことが、障害者支援現場において、利用者と私たちのお互いの信頼感を育み、気持ちを通わせることの契機となるものと思います。

 寝正月 しても思いは さつき園 (お粗末!)

 本年もどうぞよろしくお願いいたします。


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