素直な気遣い

2018年11月26日 | 日記・エッセイ・コラム

 瀬戸内海に浮かぶ山口県周防大島(屋代島)の、本土との唯一の連絡橋である大島大橋の通行規制は何とか一両日中には全面解除になりそうだ、というところまで来ました。しかし、全島の断水は依然続いています。皆様にはご心配をおかけしておりますが、島もさつき園ももう少し頑張らねばなりません。
 そんな日々でのことです。
 その日もいつものように、利用者終礼で、週当番の利用者の「気をつけ! 礼!」の号令を合図に、みんなで「さようなら」と言い合って、作業室から下駄箱に向かっていました。すると、その中を○○さんが少し恥ずかしそうに、それでも笑みを浮かべながら、私に近づいてくるのです。
 すぐ近くまで来た○○さんに、
「何? どうしたん?」と私。
 でも、○○さんは少し笑っているままで、何も言いません。
 すると、おもむろに右手を伸ばして、私の胸元を指差します。顎を引いて、その指の先を見ると、私のボタンダウンのシャツの上から3番目のボタンが外れているのに気がつきました。
「おっ、ボタンが外れちょるじゃー」と私。「ありがとう!」言いながら、ボタンを留める私。
 それを見て、うれしそうに笑う○○さん。そして、ホッとした表情で、でもやはり少し恥ずかしそうにしながら、みんなのあとについて下駄箱に向かいます。
 きっと、朝から、そのボタンは私が留め忘れていたものと思います。私はもとより、私と会った人、私と話をした人も、だれもその留め忘れたボタンに気がつかなかったのでしょうか。それとも気がついたけれども、遠慮して(?)「外れてますよ」って言えなかったのでしょうか。

『あっ、ボタンが外れてる。園長、おかしいよ。教えてあげなくちゃー …… 』

 その○○さんの素直な心に触れたお陰で、このところ続く、日々の心身の緊張と疲労が少し和らぐのをうれしく感じたことでした。



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第56回全国知的障害福祉関係職員研究大会 山口大会 開催

2018年11月20日 | 日記・エッセイ・コラム

 一般財団法人山口県知的障害者福祉協会は主催する3団体の中の1つとして、参加者およそ1700人の全国大会を先週の3日間、山口市で開催しました。大会役員、委員、スタッフ総勢286人。参加者と合わせると約2000人規模の大会となりました。これほどの規模の大会は山口市では稀なこととのことです。この大会が山口市で開催されるのは45年振りの2回目です。
 全体会、分科会の会場の確保。ホテルの確保。夜の情報交換会の会場。各ホテルや分散した各分科会会場間のスムーズな参加者の移送。結果的に厚さ2㎝にもなったA4版の大会の資料作り。来賓の誘導、参加者の流れ、会場ロビー内の受付やクローク、商品販売、書籍販売の場所。舞台上での段取り、司会者の原稿内容。リハーサル。空港、新幹線の駅から会場までの道案内。駐車場の確保。分科会の助言者、講師、コーディネーターの人選。事例発表、講演、シンポジウムの流れ。会場の参加者からの意見、質問の引き出し。昼弁当の手配などなど……。思いつくままでもこんなことに苦労、苦心してきました。
 この2年間、主だった者が前々年と前年の大会の下見に出かけ、そこでのご意見や反省点もお聞きし、参考にしながら準備に取り組んできました。が、何とまあ、遅々として進まない印象の実行委員会だったことでしょう。それでも幾度となく開いて、あれこれ、あれこれ、進めてきたのです。
 全国大会を無事に終えた今、山口県知的障害者福祉協会はその総力を挙げて、みんなの力を結集して、「よく頑張ったぜ!!」と自画自賛します。
 実行委員長を務めた私は、第1日目の夜の情報交換会での歓迎の挨拶と、最終日の閉会式での最後の最後の「閉会の言葉」を仰せつかりました。
 その最後の最後に私は、「みなさん、もう帰るんですか? もう少し山口にいませんか? もっと話しをしませんか?」と会場の参加者に向かって言ってしまいました。だって、私たちは2年間もみんなで頑張って準備してきたのに、参加者が3日間でもう全国各地に帰って行くなんて、それはあまりにもったいないと思ったからです。

 十分なおもてなしはできなかったかもしれません。けれど、今回の山口大会で知り合った障害者福祉現場を支える参加者同士がネットワークを組んで、それぞれの地域や持ち場で、この3日間で得た何かをきっかけにして障害者福祉にさらに意志して取り組み、その旗を社会に向けて大きく振り続けて欲しいと思います。社会の関心と理解を促すことは私たちの事業活動の目的の1つなのですから。

 みなさん、3日間、そして2年間、お世話になりました。ありがとうございました。


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島の闘い

2018年11月08日 | 日記・エッセイ・コラム

 今も周防大島の断水は続いています。加えて、船のマストがぶつかったという大島大橋の損傷は思いのほか厳しく、そのため車両の通行規制も続いています。総重量が2トン以下の車両の通行しか認められていません。但し午後11時~午前5時の間は8トン以下の車両の通行が認められました。しかし、日中はスクールバスと緊急車両以外は8トン以下の車両の通行は禁止されています。
 さつき園には島内からはもちろん、島外からも利用者が通所して来ています(利用者50名、その内島内から25名、島外から25名が通所しています)ので、何とかスクールバス同様に、送迎用マイクロバス等の8トン以下の車両の日中の通行を認めていただけるよう町や県にお願いしました。2週間経って、お陰様で、関係の方々のご理解を得て、何とか3台の送迎用車両の通行がスクールバス同様に認められました。
 ところが、橋の通行規制は車両の重さだけではなく、風速についても制限が設けられています。風速5メートル以上で、橋は全面通行止めとなります。(風速5メートルとはどの程度の風なのでしょうか)
 こうしたいろいろな制約がある中で、通所を再開するにはどうすればいいのか……。
 支援現場を預かる職員を中心に考えました。
 考えた末、島内は島内で完結し、島外は島外で完結するしかない……。島内の利用者の通所は島内にあるさつき園で行い、島外の利用者の通所はさつき園を経営する同じ法人が経営する、島外にある障害者支援施設柳井ひまわり園の部屋を借りて行うこととしました。
 断水が始まった10月22日(月)から2週間の休園を余儀なくされたのち、今週からどうにか再開させた通所ですが、利用者も職員も、そして水も食事も何もかもを島内で完結させることの何と困難なことか。走り出しながら考え、2ヵ所でのそれぞれの通所環境を整えていかねばなりません。
 強風で橋が通行止めになったら、当然ですが、人も物も行き来が出来なくなるのです。島内から橋を渡って出ていった人は島には戻れず、島に入ってきた人は島外には戻れないのです。いずれもいつ戻れるのかは風次第です。辛うじて、島外の柳井港と島内の椋野(むくの)港の間を船が日に4便往復しています。しかし、船の定員は61名。しかも車両は載れません。
 今、島は闘っています。島外からの支援を受けながら、島内は島内で一人ひとり、お互い様の気持ちを寄せ合いながら、支え合っています。
 橋が出来ておよそ40年が経ちました。その間、船による橋への衝突事故は一度もなかったとのことです。今回の人為事故、いったい誰が予想し得たでしょうか。送水管の復旧は12月中旬。しかし橋の復旧は4月にもなると言われています。これから冬に向かい、瀬戸を渡る風は一層激しくなるものと心配します。
 今、島は闘っています。島の置かれた宿命と闘っています。島の歴史と将来のために闘っています。
 おこがましいかも知れませんが、さつき園もともに頑張ります。


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