朝のこだわり

2020年01月30日 | 日記・エッセイ・コラム

 ○○さんは髭を剃ってきた朝は、必ず園長室にやって来て、あいさつもそこそこに、
「園長さん、これ見て」と顎を突き出して、髭を剃ってきたことを得意気に見せてくれます。
「髭は毎日剃らんにゃー」と言っても、毎日見せに来ることはないのです。でも、見せに来た時のその得意顔を目にするのが、何ともうれしいのです。

 毎朝、元気に通所して来る□□さん。
 園長室のドアが開いているとわざわざいったん閉めてから、ドアをノックして、私の返事を聞いてドアを開けて、
「園長さん、お早うございます」とあいさつをしながら入ってきます。そして、「今日はだれだれの命日ですよ。もう何年になりますよ」と亡くなった芸能人の話しをしてくれます。話をする時のその表情が何とも得意気なこと。私が感心して聞くので、余計にそうなるのかもしれません。ただし、途中で止めないと、□□さんの話は終わりがありません。

 毎朝、園長室の壁に掲げてある額に入った私の前任の園長さんの写真を見上げては、憎まれ口をたたく△△さん。でも、本当はそうして語りかけるのが、楽しいようなのです。だって、必ず毎朝、
「園長さん、お早うございます」とあいさつをして、そして必ず写真を見上げて、同じ憎まれ口を言うのですから。

 残念ですが、△△さんがどんなことを話すのか。その憎まれ口の内容はご容赦ください。

 ◇◇さんはぬり絵が好きです。
 毎朝、ぬってきたぬり絵ノートを私に見せに来てくれます。
 もう何年も続けていて、以前から比べると形をかたどる線からのはみだしが全くと言っていいほどなくなりました。
 毎朝、恥ずかしそうに見せに来て、
「裏に絵が写るけぇ、よう描けん時があるんよ」と言いながら、ちょっと眉間にしわを寄せることもあります。でも、私は見せてもらうのが楽しみなのです。
 ピカチュウやらドラえもんやらのキャラクターのぬり絵ノートは◇◇さんの努力の結晶で、宝物なのです。

 世間が様々なことで、すこぶるうるさかったり、どんなにざわついていたりしても、さつき園には利用者の大きな声のあいさつと、利用者一人ひとりが彼や彼女のこだわりを私たちに見せてくれる朝が来て、そうした日々の繰り返しがさつき園の時を刻んでくれているのです。
 もう1月も終わります。


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時代と世界

2020年01月18日 | 日記・エッセイ・コラム

 ある自動車会社のトップはこっそり日本を脱出して、自国に帰っていた。
 巨大とはいえ、たった2つの国家の代表者の牽制合戦か威嚇合戦かで、世界経済の先行きに不安が広がっている。人間を人間とも思わない国家に対しては、きちんしたことも言えず、ただただ遠巻きにして見ているだけ。
 大きな大陸の森林火災が年を越してもまだ消えそうにない。あるところでは火山が噴火し、またあるところでは海面が上昇し、そこでは国がなくなろうかとしている。
 地球温暖化へ歯止めをかけるべく世界が協議を重ねるも、ちっとも足並みはそろわない。現れた少女の各地での発言や行動が伝えられるが、世界の国の政治や経済は微動だにしない。少女のこの先の人生が気がかりだ。
 携帯電話からスマホの時代へ。人と人が、それも見も知らない人間同士がいとも簡単に出会い、いとも簡単に事件が起こる時代。
 それは先の平成の時代から始まり、人と人の関係が手軽に、しかも一気に広がってきた。技術の革新は、これまで私たちが長い歴史の中で培ってきた対面して成り立たせる人間関係をさらりと否定している。技術の担い手の腹の中が知りたい。
 ラグビーが話題だ。「ワンチーム」という言葉が広まった。人間と人間が生身でぶつかり合う団体スポーツだ。そこではチーム力が問われる。ジャッカルなるプレーがあることも分かった。
 ここでは、人間の持つ能力のすべてを鍛え上げ、研ぎ澄まして、戦う。それも決められたルールの下で。試合が終われば「ノーサイド」だ。試合が終われば敵も味方もなく、お互いに健闘をたたえ合うのだ。
 技術力ではなく、生身で戦うということに迫力と敬意を抱く。生身は鍛えられなければならない。そしてチームとしてのコミュニケーションも格段に鍛え上げられなければならないのだ。
 今の時代は、夥しい技術力だけが先行し、生身の人間は茫然と見送るだけのようだ。
 だから見送るだけの私たちは、ラグビーというスポーツに、これまでの長い歴史の中で生身の人間同士がつくり上げてきた関係性の結晶をみているのだ。
 時代は個々バラバラに好き勝手なことを先のことなど考えもせずに、時間と資源を費やしている。
「果たして、この世界をたった数人の思いや感情にこのまま任せていてもいいのか」と、呟いてみる。
 転じれば、阪神・淡路大震災から25年が経った。どんな試練があろうと、市民大衆である私たちの日々の営みは悲しみや痛みや苦しみ、楽しみや安らぎや喜びの中で続く。そしてその記憶は心に深く刻まれて、薄れることはない。


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相模原障害者殺傷事件初公判に思う

2020年01月08日 | 日記・エッセイ・コラム

 2016年7月に起こった相模原障害者殺傷事件の初公判が始まった。ところが被告が暴れて、午後からは被告が不在のまま公判が行われたとの報道。何があったのか。
 この事件は世間を震撼させた。社会の役に立たないとする障害者の存在を真っ向から否定する考えを持ち、何とそれを現実世界で行動に移した人間が現れたのだ。事件現場の知的障害者入所施設は予期せぬ凶悪な暴力に未だに振り回されてしまっている。事件からおよそ3年半経って、世間では薄らいできたかと思われる事件への関心だが、私たちの関心は薄れることはない。
 しかし、世間とは言わないが、折々に見聞きする障害者福祉関係者のこの事件へのコメントは惨憺たるものだ。正鵠を射る発言はもとより、「なるほど」と思わせる意見や論評や見解に出合うことがない。
 どうして社会の役に立たないとする障害者の存在を否定することは許されないのか。どうして、社会の役に立たないとする障害者の存在を否定し、殺傷してはならないのか。誰も答えられないでいる。

「障害者の人権を尊重せよ」「基本的人権は誰にでも与えられているものだ」……!?

日本国憲法〔基本的人権〕
第11条 国民は,すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利として,現在及び将来の国民に与へられる。

 日本という国家が保障するから私たち日本国民には基本的人権があるのか。だから侵すことのできない永久の権利として与えられている、ということなのか……?

 私たちの、障害者の命や人権に関する発言の質は、発言する人間、その人のこれまでの人生での障害者との関わり方の質が反映してくるものと思う。これまでの人生で、いったいあなたは口には出さずとも、腹の底で障害者のことをどう思い、どう考え、そしてどう接してきたのか、と。そうした問いに耐え得るだけの生き方をしてきたのか、と。そこを頬かむりしてはならない、と思う。
 しかし、だから、私たちは障害者の命や人生や人権についての発言に逡巡してしまい、曖昧模糊とした言い回しで胡麻化さざるを得ないのでないのだろうか。
 私はこれまで、それらに関する腑に落ちる発言や見解や論評に出合ったことがない。
 事件からまだ3年半しか経ってはいないのだ。この相模原障害者殺傷事件の検証が私たちの腑に落ちるまでには、まだまだ多くの人手と時間を要すると思う。
 とはいえ、私は、事件の当事者である被害者・保護者・家族と、私を含めた私たち障害者福祉の関係者と、そして我が国のマスコミ各社各人の事件検証への地道な取り組みに期待している。


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新年を迎えて

2020年01月04日 | 日記・エッセイ・コラム

あけましておめでとうございます

 今、令和としての初めての年明けを新たな思いで迎えます。

 事業体としてのさつき園と運動体としてのさつき園。

 今年も常にこの2つを意識し、障害者福祉に携わる事業所としての役目を果たし、社会に障害者福祉への理解を求め、先入観に囚われた社会の差別や偏見から解放される障害者の命と生活と人生を目指し、汗と心を費やします。

 そして、何より次代を担う若い世代に向けて、この2つの思いを笑顔とユーモアとともに発信し続けたいと思います。

 どうぞ皆様、今年もよろしくお願いいたします。

 

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