「今日も頑張りましょう!」

2013年03月30日 | 日記・エッセイ・コラム

 

山口県岩国市黒磯町にあった独立行政法人国立病院機構岩国医療センターが先日の平成25年3月24日(日)、新築移転先である岩国市愛宕町で開院し、その業務を開始しました。<o:p></o:p>

 

さつき園は医療センターがまだその名称を国立岩国病院といっていたころから、病院の玄関前のバス停を岩国市内から通所してくる利用者の、さつき園通所送迎車両(岩国便)の待ち合せ場所としていました。それをこのたびの移転に伴いどこに変更するかについて、慎重にご家庭との協議や職員による試走等を重ねた結果、さつき園からの距離も遠くなり、渋滞も予想されるものの、やはり移転した医療センターを待ち合わせ場所にすることとしました。医療センターにも快く理解していただきました。<o:p></o:p>

 

3月25日(月)から新しく設定した医療センター玄関前での朝の待ち合わせを開始しました。どうなることかと心配でしたので、その週は毎朝職員を1名派遣し、状況を確認することにしました。保護者の皆様もご心配だったようで、みなさん初日、二日目、三日目と利用者と一緒に出かけてこられていたようです。<o:p></o:p>

 

ところが、どうにも職員のやり繰りがつかない状況が生じ、後半の2日間を私が担当することになりました。<o:p></o:p>

 

その2日目のことです。<o:p></o:p>

 

朝の9時近く。岩国市営バスが各方面からやってきては、医療センターのバス停で発着していきます。すでに3人の利用者がそれぞれにバスで到着しており、さつき園からの岩国便の到着を待っていた時のことです。一台の市営バスがバス専用路を入ってきました。私はだれかさつき園の利用者が乗ってはいないかと、じっと遠目ながら車内に視線を送ります。が、そのバスに利用者は乗っていないようでした。ところが、そばで待っていた利用者の○○さんと□□さんがそのバスに向かって手を振り始めたのです。<o:p></o:p>

 

『えー、だれが乗っとるんかいな?』と、私はもう一度バスに視線を送ります。<o:p></o:p>

 

よく見ると、何とバスの運転手さんがこちらに向かって手を振っているのです。『何で?』と思う間もなく、そのバスから運転手さんのこんなアナウンスが聞こえてきました。<o:p></o:p>

 

「○○君、お早う!」「□□君、お早う!」<o:p></o:p>

 

すると、その言葉に「お早う!」「お早う!」と○○さんと□□さんがうれしそうに応えたのです。私は驚いて思わず二人の顔を見やりました。二人は『いつものことじゃん』といった顔をしています。  <o:p></o:p>

 

ところが、そこでまた私がびっくりすることが起こったのです。<o:p></o:p>

 

なんとその運転手さんは続けてこうアナウンスしたのです。<o:p></o:p>

 

「○○君、□□君、今日も頑張りましょう!」<o:p></o:p>

 

二人がそれに「頑張りましょう」と応えたのはもちろんです。そして二人は、方向転換して出発していくバスに一生懸命に手を振って、見送ったのです。<o:p></o:p>

 

もう、感激でした。<o:p></o:p>

 

彼らは彼らなりに、自分たちの力でこの社会の中の一員としてたくましく生きているのです。岩国市営バスのその運転手さんがどなたかは分からずじまいですが、感謝、感謝のできごとでした。<o:p></o:p>

 

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仰げば尊し

2013年03月19日 | 日記・エッセイ・コラム

 

年度末です。毎年のことながら、季節が冬から春へ移ろうとするこの時期はなんとも忙しいものです。そして、それは今年も然り、です。<o:p></o:p>

 

そんな3月。卒業式の季節ということもあり、また忙しい中にある自分を落ち着かせる意図もあって、私は意識して『仰げば尊し』を歌います。<o:p></o:p>

 

歌詞は三番までありますが、特に三番の歌詞は苛立つ私の気持ちを静かに落ち着かせてくれるものです。<o:p></o:p>

 

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朝夕 馴(なれ)にし 学びの窓<o:p></o:p>

 

蛍の灯(ともしび) 積む白雪<o:p></o:p>

 

忘るる 間(ま)ぞなき ゆく年月(としつき)<o:p></o:p>

 

今こそ 別れめ いざさらば<o:p></o:p>

 

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「蛍の灯 積む白雪 ……」<o:p></o:p>

 

この歌詞がいいのです。<o:p></o:p>

 

静かに、しかし芯は強く、どんな環境にあっても学ぶことにおいて真摯であり、だたひたすら自分と向き合い、その信ずる道を歩いていこうとする意志が感じられて、好きなのです。<o:p></o:p>

 

そして友に対して、これまでの厚情への感謝とこれからのお互いの人生で遭遇するであろう苦難や試練に立ち向かうべく、お互いへの激励を愛情込めて「今こそ 別れめ いざさらば」と、短く、かつ清々しく告げているのがいい。<o:p></o:p>

 

忙しさが続き心身ともに疲労してくると、ついつい気が立って、言動が雑になりがちです。感情や動作が直線的、鋭角的になります。例えば、さつき園の利用者のような人たちに対して、私(たち)は無意識のうちにそういう態度をとってはいないだろうか。彼らから学ぶことはたくさんあるのです。<o:p></o:p>

 

だから、自分の中にそんな兆しを感じた時、私は心の中でこの『仰げば尊し』を歌うのです。<o:p></o:p>

 

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津波避難訓練

2013年03月15日 | 日記・エッセイ・コラム

  

山口県が大きな影響を受けると思われる地震は、高知県沖で発生するプレート型地震の南海トラフ巨大地震です。私の手元にある資料によると、それが起こったら山口県東部では岩国市で震度6強、その他の地域で6弱。津波は周南市・柳井市で5m。津波到達時間は周南市などで130分。被害想定は死者100人、全壊棟数4700棟などと想定されているようです。ですから、ここ周防大島にも地震発生後、おそらく130分から140分後くらいには津波が押し寄せてくるものと思います。<o:p></o:p>

 

東日本大震災から2年が経とうとする先日、さつき園では初めての津波発生時の避難訓練を通常の火災避難訓練と併せて実施しました。<o:p></o:p>

 

避難先はさつき園のグループホームである第2やしろホームです。さつき園から700~800メートルほどの距離にあり、山に至る途中の丘状の土地に建てられています。<o:p></o:p>

 

利用者と職員の全員が避難を完了するのにどのくらいの時間がかかるのか。利用者のうち、だれが途中で歩くのが難しくなるのか。避難する際に思わぬ行動をとる人はいないか、などなどに注意しながらの避難訓練でした。<o:p></o:p>

 

利用者全員が第2やしろホームに歩き着くのに約20分かかりました。そして、帰り道、何人かは車で戻りました。<o:p></o:p>

 

そんな避難訓練を実施した日の利用者終礼で、私は利用者にこう伝えました。<o:p></o:p>

 

「今日はお疲れさんでした。津波が来たらとにかく逃げるんでー。さつき園は第2やしろホームまで逃げます」<o:p></o:p>

 

「また近いうちに避難訓練をするから、頑張って歩いてよー」<o:p></o:p>

 

「ええかね。障害があろうがなかろうが、そんなことは関係ないんじゃ。津波が来たら逃げなさい。君らも自分の命は自分で守らんにゃいけんのじゃ! ええか! 誰も助けちゃーくれんのんでー」<o:p></o:p>

 

彼らの置かれているわが国の社会の現実は、彼らにとって生きやすい社会とはとても言えません。<o:p></o:p>

 

『津波てんでんこ』という言葉があるそうですが、「障害があろうがなかろうが、そんなことは関係ない。津波が来たら逃げなさい。君らも自分の命は自分で守らんにゃいけんのじゃ! ええか! 誰も助けちゃーくれんのんでー」と、無理を承知で言わざるを得ない園長の胸の内は苦しいのです。

 

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救急車

2013年03月05日 | 日記・エッセイ・コラム

 

先週のこと。昼食も終わったのんびりとした時間の流れる昼休み。遠くに救急車のサイレンが聞こえます。<o:p></o:p>

 

と思ったら、さっそく、玄関付近であれこれ話をしながら休憩時間を過ごしていた利用者が話題にし始めました。<o:p></o:p>

 

しばらく聞き耳を立てていると、救急車はさつき園の近くを通ってくるようです。さすがに私も気になって、玄関先まで出てみました。<o:p></o:p>

 

「救急車はどっちに行ったかのー?」と、そこにいた数人の利用者に聞いてみました。<o:p></o:p>

 

すると、すかさず○○さんが得意気にこう答えてくれました。<o:p></o:p>

 

「あのねぇ。あそこから来てねー、途中でお客さんを乗せてねー、ここを通って向こうに行ったんよ、園長」<o:p></o:p>

 

「!? お客さんを乗せた?」「うん!」<o:p></o:p>

 

「えー!? お客さんじゃなかろう。患者さんじゃろう」<o:p></o:p>

 

「あー、そうじゃった。患者さんじゃった」<o:p></o:p>

 

巧まざる笑いがうれしい、明日はもう弥生三月という二月の末のお昼休みのことでした。<o:p></o:p>

 

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