ワクチン接種会場で

2022年08月26日 | 日記・エッセイ・コラム

 先日、やっと岩国市から案内が届いたので、一昨日、コロナワクチンの4回目接種を受けてきた。

 岩国駅前通りにあるスーパーマーケットの6階が会場だ。

 3回目と同じように会場には思いのほかたくさんの係の人たちがいて、人の動きに滞りがないようにてきぱきと案内してくれていた。

 その日は65歳以上の高齢者が接種対象だった。今更言うことでもないが、私ももう十分な高齢者なのだ。

 会場に整然と置かれた椅子の、27番の番号札の付いた椅子に座るように促された。おもむろに椅子に座った私は、周りをゆっくり見渡しながら、「戦後77年。この国で、生まれた場所や生活環境はそれぞれ違うけれど、その内の少なくとも65年以上を、この人たちと同じ時代を過ごして来たんだなぁ……」と、妙に愛おしい、神妙な気分になっていた。

 順番がきて、係の人に促されて、椅子から立ち上がり、そして歩き始める見知らぬ彼や彼女らの後ろ姿が、余計にそう思わせていたのかもしれない。例え、いかに気持ちは高校生や二十歳(はたち)でも、もう若い頃の歩きはできないのだ。無論、私も然りだ。

 私は、無事接種を終えて屋上の駐車場に戻りながら、会場にいた4、50人の皆さんに向かって、「みなさん、これからも元気に行きましょう」と、声をかけたい気持ちになっていたよ。

 

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子どもの心

2022年08月12日 | 日記・エッセイ・コラム

 涼を求めて(?)、時折、図書館に行く。自分がそうだからという訳でもないが、みんな涼みに来ているように見えてしまう。中には机に伏して寝ている人もいるのだから。

 先日も出かけて来た。玄関を入ると、体温を測る装置が立っている。画面に向かって顔を近づけて測るのだ。その時、正常範囲と感知されれば短くメロディが鳴ったり、「正常!」などと辺りに聞こえるようにのたまわっている。

 玄関を入ったら、私の前に3人の親子が立っていた。母親は自分が測り終えるとそのまま通過しようとした。すると、5~6歳くらいの長女らしい子が「私も測る」とでも言うように、母親を促している。画面が子どもにはちょっと高い位置にあるので、その前には踏み台が置いてある。その子がその台に上がって顔を近づけるが、近づけ過ぎており、画面が反応しない。母親は私を認めたせいか、その子を踏み台から降りるように手を引っ張ろうとした。私は声をかける。「顔が近すぎるんですよ」と。私に声をかけられて驚いた母親は、思い直して娘に再度画面に顔を向けるように促す。何度か顔を遠ざけたり近づけたりしているうちに、メロディが鳴った。その子は喜んで満足げに踏み台を降りた。母親は私を気にするようにして、3人でその場を立ち去ろうとする。すると、下の娘が当たり前のように踏み台に片足をかけた。私もそう思った。ところが、母親は「あんたはいいのよ」とでも言うように、その子の腕を少し強く引いた。私は気持ちを立て直して、「どうぞ」と言って、その子に踏み台に上がるように手で促した。母親は私に向かって頭を下げて、その子を踏み台に上がらせる。女の子は姉がしたことをまねるように、画面に向かって顔を前後に動かす。「できるかな?」と、私にちょっと不安がよぎった。と、メロディが鳴った。その子はニコッと笑って踏み台から弾むように降りた。母親がもう一度私に向かって頭を下げた。3人はお互いに手をつないで図書館の入り口に向かって行った。私はほっとしていた。こういう時、下の子に上の子と同じようにさせるのが大事と思う。他人への遠慮でそれをさせないとすると、下の子はその母親の気持ちを察することなく、自分への意地悪ととる。「私も測りたかったのに、お母さんはお姉ちゃんだけにやらせた」と。母親の気持ちも分かる。分かるが、後の人が私ではなかったら、おそらく下の子は測らせてもらえなかったかもしれない。後に待つ人がどんな人かも大事だ。私は殊更に「私はいい人」と言いたいのではない。私は「子どもは親だけが育てているのではない。こうして見知らぬ他人も見知らぬ子を育てているのだ」と言いたいのだと自分の思いをおもんぱかる。私にはあの二人の姉妹がそれぞれどんな人生を歩むのかは、到底、知り得ないことだけれども……。

 

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